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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520859 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1191115
審判番号 不服2005-12015  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-24 
確定日 2009-01-13 
事件の表示 平成 8年特許願第250905号「肌荒れ改善・防止用皮膚外用剤」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月17日出願公開、特開平10- 72332〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年9月2日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年5月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】アルギニン塩の1種または2種以上を0.01?10重量%と、コラーゲンを0.01?10重量%および/またはケラチンを0.01?10重量%含有することを特徴とする肌荒れ改善・防止用皮膚外用剤。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第92/06667号パンフレット(以下、「引用例A」という。)には以下の事項が記載されている。

(A-1)「1.L-アルギニン-L-アスパラギン酸塩及び薬理学的に支障のない担体を含んでなる皮膚外用剤。
2.L-アルギニン-L-アスパラギン酸塩の含有量が0.0001?10重量%である請求の範囲第1項記載の皮膚外用剤。」(請求の範囲1?2、12頁2?5行)

(A-2)「本発明の皮膚外用剤はさらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品、…等に一般に用いられている各種成分、すなわち…コラーゲン…等の保湿剤…を必要に応じて適宜配合ができる。」(2頁17行?4頁21行)

(A-3)L-アルギニン-L-アスパラギン酸塩の保湿能を水分蒸発速度定数を算出することにより評価し、L-アルギニン-L-アスパラギン酸塩は水の蒸発を抑制し保湿効果があることが記載されている。(9頁下から7行?10頁表1の下3行)

3.対比
引用例Aには、「L-アルギニン-L-アスパラギン酸塩の含有量が0.0001?10重量%である皮膚外用剤」(摘記事項(A-1) 以下、「引用発明」という。)が記載されている。
L-アルギニン-L-アスパラギン酸塩は、アルギニンのL型光学異性体とアスパラギン酸塩のL型光学異性体との塩であるから、引用例AのL-アルギニン-L-アスパラギン酸塩は、本願発明のアルギニン塩に相当する。また、引用例AのL-アルギニン-L-アスパラギン酸塩の含有量の「0.0001?10重量%」は、本願発明のアルギニン塩の含有量の「0.1?10重量%」を含むものである。
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は「アルギニン塩の1種を0.01?10重量%含有することを特徴とする皮膚外用剤」である点で一致し、本願発明は、「コラーゲンを0.01?10重量%含有する」のに対し、引用発明はこの点の記載がない点(相違点1)、および本願発明は「肌荒れ改善・防止用」であるのに対し、引用発明はこの特定がされていない点(相違点2)で相違する。

4.当審の判断
(相違点1)について
引用例Aには、L-アルギニン-L-アスパラギン酸塩は水の蒸発を抑制し保湿効果がある(摘記事項(A-3))ことが記載され、さらに必要に応じて、上記の効果を損なわない範囲で、化粧品等に一般に用いられている各種成分、すなわちコラーゲン等の保湿剤を必要に応じて適宜配合ができる(摘記事項(A-2))とされている。
そして、皮膚外用剤の分野においては、保湿作用のある物質を複数組み合わせて配合することは上記の記載を待つまでもなく本願の出願前に周知の技術事項であるし、コラーゲンが皮膚の保湿作用を有することもよく知られていることである(例えば、「フレグランス ジャーナル」、皮膚外用剤としての肌荒れ防止剤の開発の現状、1993-7、第46?52頁、特に50頁表3、及び「フレグランスジャーナル」 臨時増刊No.9(1988)第129頁 特に「1.はじめに」の項を参照)。
してみれば、引用発明において、アルギニン塩を含有する皮膚外用剤に、さらに化粧品に一般に用いられている保湿剤であるコラーゲンを配合することは当業者が容易に想起することであって、その配合量を0.01?10重量%等に設定することも当業者が適宜行いうる範囲のことである。

(相違点2)について
引用発明に含有されるL-アルギニン-L-アスパラギン酸に保湿作用があることは上記のとおりであるが、一般に肌荒れの直接原因は角質層の水分の減少であり、従来から、保湿剤が荒れ防止剤の1種として使用され、肌荒れ用化粧品などに汎用されていることは周知である(上記の「フレグランス ジャーナル」の特に第46頁右欄、第49頁右欄を参照)から、引用発明の皮膚外用剤が、肌荒れ改善や肌荒れ防止作用を奏するであろうことは当業者が容易に理解しうることである。
したがって、引用発明の皮膚外用剤を肌荒れ改善・防止作用皮膚外用剤として使用する点に格別の困難性は見いだせない。
また、本願発明の効果にしても当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、請求人は、本願発明で用いるコラーゲンは、加水分解等行わずにそのまま用いるものである旨主張するが、本願明細書にはコラーゲンについて単に「本発明に用いられるコラーゲンは膠原質ともいい、結合組織を構成する主要タンパク成分である。」(【0009】)と記載するのみで、加水分解の有無までは特定していない。そして、通常、化粧品等の皮膚外用剤の分野において「コラーゲン」という場合、加水分解等を行わないものに格別限定されるものではない(化粧品原料基準外成分規格1993 平成5年10月14日 第1刷発行 厚生省薬務局審査課監修 株式会社薬事日報社発行 第372?384頁を参照)から、引用例Aに保湿剤として挙げられているコラーゲンと本願発明のコラーゲンが格別区別されるものでもない。
したがって、上記主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-18 
結審通知日 2008-11-19 
審決日 2008-12-02 
出願番号 特願平8-250905
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼岡 裕美  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 弘實 謙二
谷口 博
発明の名称 肌荒れ改善・防止用皮膚外用剤  
代理人 長谷川 洋子  

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