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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16D
管理番号 1191550
審判番号 不服2007-23043  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-22 
確定日 2009-01-19 
事件の表示 特願2000-193117「等速自在継手」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月18日出願公開、特開2002- 13544〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯の概要
本願は、平成12年6月27日の出願であって、平成19年7月19日(起案日)付けで拒絶査定され、これに対し、平成19年8月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年9月19日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年9月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年9月19日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲について、
「【請求項1】 球面状の内径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した外側継手部材と、球面状の外径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した内側継手部材と、外側継手部材の案内溝とこれに対応する内側継手部材の案内溝とが協働して形成される8本のボールトラックに配された8個のトルク伝達ボールと、トルク伝達ボールを保持する8個の窓形のポケットを有する保持器とを備え、前記ボールトラックが軸方向の一方に向かって楔状に開いた等速自在継手であって、
前記保持器のポケットは、該保持器の軸線方向で対向する一対の軸方向壁面と、該保持器の周方向で対向する一対の周方向壁面と、前記軸方向壁面と前記周方向壁面とを繋ぐ隅アール部とで構成されていると共に、前記周方向壁面が円弧で描かれ、かつ、前記隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達ボールの直径dとの比(R/d)がR/d≧0.22であることを特徴とする等速自在継手。
【請求項2】 球面状の内径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した外側継手部材と、球面状の外径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した内側継手部材と、外側継手部材の案内溝とこれに対応する内側継手部材の案内溝とが協働して形成される8本のボールトラックに配された8個のトルク伝達ボールと、トルク伝達ボールを保持する8個の窓形のポケットを有する保持器とを備え、前記ボールトラックが軸方向の一方に向かって楔状に開き、かつ、前記外側継手部材および内側継手部材の各案内溝に直線状の溝底を有するストレート部が設けられた等速自在継手であって、
前記保持器のポケットは、該保持器の軸線方向で対向する一対の軸方向壁面と、該保持器の周方向で対向する一対の周方向壁面と、前記軸方向壁面と前記周方向壁面とを繋ぐ隅アール部とで構成されていると共に、前記周方向壁面が円弧で描かれ、かつ、前記隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達ボールの直径dとの比(R/d)がR/d≧0.22であることを特徴とする等速自在継手。
【請求項3】 前記隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達ボールの直径dとの比(R/d)が0.45≦R/d≦0.62であることを特徴とする請求項1又は2記載の等速自在継手。
【請求項4】 前記保持器の8個のポケットが、周方向長さが相互に異なる第1ポケットと第2ポケットとで構成され、かつ、周方向長さの短い第1ポケットが90度又は180度の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の等速自在継手。
【請求項5】 前記保持器の8個のポケットの周方向長さが相互に同じであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の等速自在継手。
【請求項6】 前記保持器のポケットの壁面のうち、少なくとも該保持器の軸線方向で対向する一対の軸方向壁面が、該保持器の熱処理後の切削によって形成されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の等速自在継手。」
を、
「【請求項1】 球面状の内径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した外側継手部材と、球面状の外径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した内側継手部材と、外側継手部材の案内溝とこれに対応する内側継手部材の案内溝とが協働して形成される8本のボールトラックに配された8個のトルク伝達ボールと、トルク伝達ボールを保持する8個の窓形のポケットを有する保持器とを備え、前記ボールトラックが軸方向の一方に向かって楔状に開いた等速自在継手であって、
前記保持器のポケットは、該保持器の軸線方向で対向する一対の軸方向壁面と、該保持器の周方向で対向する一対の周方向壁面と、前記軸方向壁面と前記周方向壁面とを繋ぐ4つの同じ曲率半径の隅アール部とで構成されていると共に、前記周方向壁面が円弧で描かれ、かつ、前記隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達ボールの直径dとの比(R/d)が0.45≦R/d≦0.62であることを特徴とする等速自在継手。
【請求項2】 球面状の内径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した外側継手部材と、球面状の外径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した内側継手部材と、外側継手部材の案内溝とこれに対応する内側継手部材の案内溝とが協働して形成される8本のボールトラックに配された8個のトルク伝達ボールと、トルク伝達ボールを保持する8個の窓形のポケットを有する保持器とを備え、前記ボールトラックが軸方向の一方に向かって楔状に開き、かつ、前記外側継手部材および内側継手部材の各案内溝に直線状の溝底を有するストレート部が設けられた等速自在継手であって、
前記保持器のポケットは、該保持器の軸線方向で対向する一対の軸方向壁面と、該保持器の周方向で対向する一対の周方向壁面と、前記軸方向壁面と前記周方向壁面とを繋ぐ4つの同じ曲率半径の隅アール部とで構成されていると共に、前記周方向壁面が円弧で描かれ、かつ、前記隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達ボールの直径dとの比(R/d)が0.45≦R/d≦0.62であることを特徴とする等速自在継手。
【請求項3】 前記保持器の8個のポケットが、周方向長さが相互に異なる第1ポケットと第2ポケットとで構成され、かつ、周方向長さの短い第1ポケットが90度又は180度の間隔で配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の等速自在継手。
【請求項4】 前記保持器の8個のポケットの周方向長さが相互に同じであることを特徴とする請求項1又は2に記載の等速自在継手。
【請求項5】 前記保持器のポケットの壁面のうち、少なくとも該保持器の軸線方向で対向する一対の軸方向壁面が、該保持器の熱処理後の切削によって形成されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の等速自在継手。」
と補正する内容を含むものである。

本件補正は、まず補正前の請求項3を削除するとともに、補正前の請求項4ないし6を補正後の請求項3ないし5と項番を繰り上げたものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に規定された請求項の削除を目的としたものに該当する。また、請求項1及び2の「隅アール部」を「4つの同じ曲率半径の隅アール部」に、「R/d≧0.22」を「0.45≦R/d≦0.62」に構成を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物に記載された事項
(2-1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開平10-103365号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「等速自在継手」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「【請求項1】 球面状の内径面に軸方向に延びる複数の案内溝を形成した外側継手部材と、球面状の外径面に軸方向に延びる複数の案内溝を形成した内側継手部材と、外側継手部材の案内溝とこれに対応する内側継手部材の案内溝とが協働して形成される複数のボールトラックにそれぞれ配されたトルク伝達ボールと、トルク伝達ボールを保持する保持器とを備え、前記ボールトラックが軸方向の一方に向って楔状に開いた等速自在継手において、
前記ボールトラックの本数およびトルク伝達ボールの配置数が8であることを特徴とする等速自在継手。」

(イ)「【0005】本発明は、上述したような等速自在継手において、より一層のコンパクト化を図り、また、比較品(上述したような6個ボールの等速自在継手)と同等以上の強度、負荷容量および耐久性を確保することを目的とする。」

(ウ)「【0018】図1に示すように、この実施形態の等速自在継手は、球面状の内径面1aに8本の曲線状の案内溝1bを軸方向に形成した外側継手部材としての外輪1と、球面状の外径面2aに8本の曲線状の案内溝2bを軸方向に形成し、内径面に軸部5を連結するためのセレーション(又はスプライン)2cを形成した内側継手部材としての内輪2と、外輪1の案内溝1bとこれに対応する内輪2の案内溝2bとが協働して形成される8本のボールトラックにそれぞれ配された8個のトルク伝達ボール3と、トルク伝達ボール3を保持する保持器4とで構成される。」

(エ)「【0030】図4は、保持器4を示している。保持器4には、トルク伝達ボール3を収容保持する8つの窓状のポケット4cが円周等間隔に設けられている。8つのポケット4cのうち4つは円周方向寸法の大きな長ポケット4c1、残りの4つは円周方向の小さな短ポケット4c2で、長ポケット4c1と短ポケット4c2とは交互に配列されている。また、内輪2を組入れる保持器4の入口部4dの径(B)は、図3に示す内輪2の外径(A)と、最大間隔(C)に対して、C≦B〈Aの関係になるように設定されている。入口部4dの奥側(内径面4bと入口部4dとの境界部分)は段差4eになっている。」

以上の記載事項及び図面の記載からみて、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

[刊行物1記載の発明]
「球面状の内径面1aに軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝1bを形成した外側継手部材と、球面状の外径面2aに軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝2bを形成した内側継手部材と、外側継手部材の案内溝1bとこれに対応する内側継手部材の案内溝2bとが協働して形成される8本のボールトラックに配された8個のトルク伝達ボール3と、トルク伝達ボール3を保持する8つの窓状のポケット4cを有する保持器4とを備え、前記ボールトラックが軸方向の一方に向かって楔状に開いた等速自在継手」

(2-2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である実願平2-120680号(実開平4-77027号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、「等速ジョイント」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。

(オ)「本考案の等速ジョイントでは、ボール保持窓の辺で外方継手部材の底部側に位置する辺の両端側にある両角部が、外方継手部材の開口側に位置する辺の両端側にある両角部よりも曲率の小さい曲面で形成されている。これにより、隣り合う2個のボール保持窓の間に形成される柱部は、曲率の大きい曲面で形成された両角部の部分の幅が広くなり、強度的に補強されている。このため、等速ジョイントが大きなジョイント角をとったとき、第1案内溝の終端から溝部にはみ出したケージのイン側の部分に内方継手部材から荷重が負荷されてもたわみの発生する可能性が少なくなり、したがって疲労強度が向上する。」(明細書第5ページ第10行?第6ページ第3行)。

(3)対比・判断
本願補正発明と刊行物1記載の発明を対比すると、その機能からみて、刊行物1記載の発明の「内径面1a」は本願補正発明の「内径面」に相当し、以下同様に、「案内溝1b」は「案内溝」に、「外径面2a」は「外径面」に、「案内溝2b」は「案内溝」に、「トルク伝達ボール3」は「トルク伝達ボール」に、「8つの窓状のポケット4c」は「8個の窓形のポケット」に、「保持器4」は「保持器」にそれぞれ相当する。
したがって、本願補正発明の用語を使用して記載すると、両者は、
「球面状の内径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した外側継手部材と、球面状の外径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した内側継手部材と、外側継手部材の案内溝とこれに対応する内側継手部材の案内溝とが協働して形成される8本のボールトラックに配された8個のトルク伝達ボールと、トルク伝達ボールを保持する8個の窓形のポケットを有する保持器とを備え、前記ボールトラックが軸方向の一方に向かって楔状に開いた等速自在継手」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願補正発明は、「保持器のポケットは、該保持器の軸線方向で対向する一対の軸方向壁面と、該保持器の周方向で対向する一対の周方向壁面と、前記軸方向壁面と前記周方向壁面とを繋ぐ4つの同じ曲率半径の隅アール部とで構成されていると共に、前記周方向壁面が円弧で描かれ、かつ、前記隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達ボールの直径dとの比(R/d)が0.45≦R/d≦0.62である」のに対し、刊行物1記載の発明はそのような構成を有しているのか明らかでない点。

上記相違点について検討する。
等速自在継手の保持器のポケットの形状を、保持器の軸線方向で対向する一対の軸方向壁面と、該保持器の周方向で対向する一対の周方向壁面とで構成し、周方向壁面が円弧とすることは、従来周知の事項(例えば、実願平4-22882号(実開平5-75525号)のCD-ROMの図3、実願平3-99655号(実開平5-42759号)のCD-ROMの図9等参照)であり、刊行物1記載の発明において保持器のポケットの形状として、該周知の事項を採用することに格別困難性は認められない。
また、本願補正発明において、隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達ボールの直径dとの比(R/d)を0.45≦R/d≦0.62と限定した根拠は、本願の明細書の段落【0011】の記載によれば、(a)FEM解析により求めた結果から、保持器の柱部に作用する最大主応力荷重は、R/d=0.537で極小値とる。(b)トルク伝達ボールの各サイズごとにR/d=0.537となるR寸法を求め、公差分を考慮して、0.45≦R/d≦0.62とした、である。
しかしながら、例えば、刊行物2にはケージの強度を向上させるため、ボール保持窓の角部の曲率を底部側と開口側で異ならせた等速ジョイントの発明が記載されている(上記摘記事項(オ)参照)ように、等速自在継手の保持器の強度を向上させるため、ボール保持窓の角部の曲率を適宜調整するという技術的思想は、従来公知である。また、上記FEM解析についてもどのような条件下を想定して解析されたのか不明であり、R/d=0.537で保持器の柱部に作用する最大主応力荷重が極小値をとることに関する技術的意義も記載されていない。
そうすると、FEM解析の結果から、最適なR/d値を決定し、トルク伝達ボールのサイズや公差分を考慮して、R/d値の最適な範囲を見出したとしても、それは当業者が適宜なし得る設計的事項の範囲内にすぎず、0.45≦R/d≦0.62という範囲が格別な技術的意義ないしは臨界的意義を有するとは認められない。
よって、等速自在継手の保持器の強度向上という一般的な技術的課題を解決するために、隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達ボールの直径dとの比(R/d)を0.45≦R/d≦0.62と限定することは、当業者が通常の創作能力を発揮して数値範囲を最適化したものにすぎない。また、4つの隅アール部の曲率半径を同じとすることも当業者が適宜なし得る設計的事項である。
したがって、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明及び上記周知の事項を適用し、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到できることである。

また、本願補正発明の作用効果について検討しても、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知の事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとは認められない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ところで、請求人は、平成19年10月26日付け手続補正書(方式)において、「さらに、本願発明の「前記隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達ボールの直径dとの比(R/d)が0.45≦R/d≦0.62である」という保持器のポケット構造は、引用文献1?3及び特開平3-282014号公報の何れにも開示されていない。上述のように、本願発明は、8個ボールRzeppaジョイントにおいて、保持器の機能を損なうことなくポケット構造を最適化し、それによって、保持器の強度及び耐久性、ひいては継手の強度及び耐久性を向上させることを技術課題とし、当該課題を解決するために、{(R/d)-(最大主応力荷重)}線図がR/d=0.537で極小値を取るという、FEM解析から得られた知見を基礎として、「前記隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達ボールの直径dとの比(R/d)が0.45≦R/d≦0.62である」という構成を採用したものである。このような本願発明の課題及びその解決手段は、引用文献1?3及び特開平3-282014号公報の何れにも開示も示唆もされていない。
従って、引用文献1?3及び特開平3-282014号公報に基づいて本願発明に想到することは当業者にとって容易ではない。」(【本願が登録されるべき理由】の3.本願発明と引用文献に記載された発明との対比の項参照)と主張している。
しかしながら、R/dの範囲を0.45≦R/d≦0.62と限定する点については、上記において検討したとおり、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

(4)むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成19年9月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成19年2月5日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものであると認める。
「【請求項1】 球面状の内径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した外側継手部材と、球面状の外径面に軸方向に延びる8本の曲線状の案内溝を形成した内側継手部材と、外側継手部材の案内溝とこれに対応する内側継手部材の案内溝とが協働して形成される8本のボールトラックに配された8個のトルク伝達ボールと、トルク伝達ボールを保持する8個の窓形のポケットを有する保持器とを備え、前記ボールトラックが軸方向の一方に向かって楔状に開いた等速自在継手であって、
前記保持器のポケットは、該保持器の軸線方向で対向する一対の軸方向壁面と、該保持器の周方向で対向する一対の周方向壁面と、前記軸方向壁面と前記周方向壁面とを繋ぐ隅アール部とで構成されていると共に、前記周方向壁面が円弧で描かれ、かつ、前記隅アール部の曲率半径Rとトルク伝達ボールの直径dとの比(R/d)がR/d≧0.22であることを特徴とする等速自在継手。」

(2)刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1,2及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、実質的に前記2.で検討した本願補正発明から、その発明特定事項である「4つの同じ曲率半径の隅アール部」を「隅アール部」に、「0.45≦R/d≦0.62」を「R/d≧0.22」に構成を拡張するものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)に記載したとおり、刊行物1,2に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、刊行物1,2に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、刊行物1,2に記載の発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2ないし6に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-27 
結審通知日 2008-11-28 
審決日 2008-12-09 
出願番号 特願2000-193117(P2000-193117)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16D)
P 1 8・ 121- Z (F16D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 亮  
特許庁審判長 川上 益喜
特許庁審判官 溝渕 良一
藤村 聖子
発明の名称 等速自在継手  
代理人 田中 秀佳  
代理人 白石 吉之  
代理人 熊野 剛  
代理人 城村 邦彦  
代理人 江原 省吾  

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