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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F23R
管理番号 1191649
審判番号 不服2006-26128  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-20 
確定日 2009-01-14 
事件の表示 平成10年特許願第525745号「環状燃焼器を備えた発電システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月11日国際公開、WO98/25082、平成14年 6月25日国内公表、特表2002-518987〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、1997年12月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1996年12月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成11年6月3日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面とともに明細書、特許請求の範囲及び図面の翻訳文が提出され、同日付けで特許法第184条の8第1項の規定による補正書翻訳文が提出され、さらに平成13年10月2日付け手続補正書及び平成14年4月23日付け手続補正書が提出され、平成16年10月29日付けで拒絶理由が通知され、平成17年5月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成17年11月11日付けで拒絶理由(最後)が通知されたが、指定期間内に応答がなく、平成18年8月10日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、平成18年11月20日に同拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成18年12月20日に手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がなされたものである。

[2]平成18年12月20日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成18年12月20日付けの手続補正を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正の内容、及び補正の目的
平成18年12月20日付けの手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成17年5月9日付けの手続補正書により補正された)下記の(ロ)に示す請求項1乃至5を下記の(イ)に示す請求項1乃至3と補正するものである。

(イ)本件補正後の特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
1.発電システムであって、以下を有する、 本体、 前記本体に設けられた燃焼器、ロータに固定された複数のタービン・ブレードから成り、前記本体に設けられ、かつ、前記燃焼器と流体連通されたタービン、 前記本体に設けられ、かつ、前記燃焼器と流体連通されたコンプレッサ・チャンバ、 前記ロータに固定された複数のコンプレッサ・ブレード、これらコンプレッサ・ブレードはコンプレッサ・チャンバ内に配置されている、 前記コンプレッサ・チャンバと流体連通された空気取り入れポート、前記タービンと流体連通された取り出しポート、 前記ロータに固定された複数のマグネット、そして 前記本体に設けられた磁気吸引性材から成るステータ、該ステータは前記複数のマグネットの近傍に配置され、これによって、前記ロータの回転によって前記ステータ周りの磁束が変化し、電気が発生する、そして 前記燃焼器に流体連通された燃料絞り弁、前記燃料絞り弁は、先端部を備えたプランジャを有する比例ソレノイド、前記プランジャは長手軸心に沿って延出するように、かつ長手方向に移動可能に構成されている、プランジャ凹部、入口及び出口を形成した弁本体、前記プランジャは前記プランジャ凹部内で延出している、そして オリフィスを形成した流動プレート、前記流動プレートは前記弁本体に固定されるとともに、前記入口と前記出口との間において前記プランジャ凹部内に配置され、これによって、前記プランジャが前記長手方向に移動すると、前記オリフィスを通って延出し、前記先端部が前記長手軸心に対して変化する直径を有し、前記流動プレートに形成された前記オリフィスと協動して、前記オリフィスのサイズを変化させ、前記流動プレートに形成された前記オリフィスを通して前記入口から前記出口へと流れる流量を変化させ、前記先端部の前記流動プレートに対する位置によって、前記燃焼器への燃料の流れを制御する。
2. 請求項1の発電システムであって、前記先端部の直径は、前記流動プレートに形成された前記オリフィスの直径よりも小さな直径から、前記流動プレートに形成された前記オリフィスの直径よりも大きな直径へ変化し、これによって、前記プランジャは、前記長手方向の第1長手方向と第2長手方向との両方に移動するように構成され、前記プランジャが前記第1長手方向に於いて第1距離移動すると、前記プランジャ先端部は前記流動プレートに形成された前記オリフィスを通って延出して、阻止位置に於いて前記流動プレートを介する流れを阻止し、前記プランジャが前記阻止位置から前記第2方向に移動すると、前記先端部は前記流動プレートから離間して位置する、そして、前記流動プレートを通る流れは、前記先端部の長手方向位置の関数として変化する。
3.請求項1又は2の発電システムであって、前記燃焼器が環状燃焼器である。」

(ロ)本件補正前の特許請求の範囲
「特許請求の範囲:
1. 発電システムであって、以下を有する、 本体、 前記本体に設けられた燃焼器、ロータに固定された複数のタービン・ブレードから成り、前記本体に設けられ、かつ、前記燃焼器と流体連通されたタービン、 前記本体に設けられ、かつ、前記燃焼器と流体連通されたコンプレッサ・チャンバ、 前記ロータに固定された複数のコンプレッサ・ブレード、これらコンプレッサ・ブレードはコンプレッサ・チャンバ内に配置されている、 前記コンプレッサ・チャンバと流体連通された空気取り入れポート、前記タービンと流体連通された取り出しポート、 前記ロータに固定された複数のマグネット、そして 前記本体に設けられた磁気吸引性材から成るステータ、該ステータは前記複数のマグネットの近傍に配置され、これによって、前記ロータの回転によって前記ステータ周りの磁束が変化し、電気が発生する、そして 前記燃焼器に流体連通された燃料絞り弁、前記燃料絞り弁は、先端部を備えたプランジャを有する比例ソレノイド、前記プランジャは長手軸心に沿って延出するように、かつ長手方向に移動可能に構成されている、プランジャ凹部、入口及び出口を形成した弁本体、前記プランジャは前記プランジャ凹部内で延出している、そして 穴を形成した流動プレート、前記流動プレートは前記弁本体に固定されるとともに、前記入口と前記出口との間において前記プランジャ凹部内に配置され、これによって、前記プランジャが前記長手方向に移動すると、前記先端部が前記流動プレートに形成された前記穴と協動して、前記流動プレートに形成された前記穴を通して前記入口から前記出口へと流れる流量を変化させる。
2.請求項1の発電システムであって、前記先端部は、前記長手軸心に対して変化する直径を有する。
3.請求項2の発電システムであって、前記先端部の直径は、前記流動プレートに形成された前記穴の直径よりも小さな直径から、前記流動プレートに形成された前記穴の直径よりも大きな直径へ変化し、これによって、前記プランジャは、前記長手方向の第1長手方向と第2長手方向との両方に移動するように構成され、前記プランジャが前記第1長手方向に於いて第1距離移動すると、前記プランジャ先端部は前記流動プレートに形成された前記穴を通って延出して、阻止位置に於いて前記流動プレートを介する流れを阻止し、前記プランジャが前記阻止位置から前記第2方向に移動すると、前記先端部は前記流動プレートから離間して位置する、そして、前記流動プレートを通る流れは、前記先端部の長手方向位置の関数として変化する。
4.発電システムであって、以下を有する、 本体、 前記本体に設けられた燃焼器、ロータに固定された複数のタービン・ブレードから成り、前記本体に設けられ、かつ、前記燃焼器と流体連通されたタービン、 前記本体に設けられ、かつ、前記燃焼器と流体連通されたコンプレッサ・チャンバ、 前記ロータに固定された複数のコンプレッサ・ブレード、これらコンプレッサ・ブレードはコンプレッサ・チャンバ内に配置されている、 前記コンプレッサ・チャンバと流体連通された空気取り入れポート、前記タービンと流体連通された取り出しポート、 前記ロータに固定された複数のマグネット、前記本体に設けられた磁気吸引性材から成るステータ、該ステータは前記複数のマグネットの近傍に配置され、これによって、前記ロータの回転によって前記ステータ周りの磁束が変化し、電気が発生する、そして 前記燃焼器に流体連通された燃料絞り弁、前記燃料絞り弁は、以下を有する、長手軸心に沿って延出するように、かつ長手方向に移動可能に構成されたプランジャを備えた比例ソレノイド、前記プランジャに取り付けられたマニホルド、そして、プランジャ凹部と入口と出口とを形成した弁本体、前記プランジャは前記プランジャ凹部内で延出している、前記マニホルドの軸穴は前記入口と前記出口と流体連通され、流路が形成されている、前記マニホルドにリングが形成され、前記リングを形成している前記マニホルドの外側部分は、前記入口と前記出口との一方又は両方を通過する流れを阻止又は変化させる阻止部材として作用する、これによって、前記マニホルドが長手方向に移動すると、前記阻止部材が、前記入口と前記出口と協動して、前記弁体を通って前記入口から前記出口へと流れる流量を変化させる。
5.請求項1乃至4の何れか1項の発電システムであって、前記燃焼器が環状燃焼器である。」

請求項1に係る本件補正は、本件補正前は「穴」とされていたものを「オリフィス」と補正し、「プランジャ」について「オリフィスを通って延出し」と具体化し、また、「流れる流量を変化させる」ことについて、変化させる対象を「燃料」と特定するとともに、流れの制御を「先端部の前記流動プレートに対する位置によって」と具体化するものであるから、本件補正前の請求項1の発明特定事項を限定的に減縮するものであって、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲を減縮することを目的とするものと認められる。

2.独立特許要件について
本件補正により補正された請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて検討する。

(1) 引用例
1)米国特許第5497615号明細書(1996年3月12日発行。以下、「引用例1」という。)
2)実願平4-81030号(実開平6-40529号)のCD-ROM(以下、「引用例2」という。)

(2) 当審の判断
1)引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された本願優先日前に頒布された刊行物である上記引用例1には、次の事項が記載されている。

ア.「TECHNICAL FIELD
The Invention relates to ・・・ to stand alone generator sets for providing economical electrical power.」(公報第1欄第2?9行)
(以下、[]内は当審による仮訳である。)
[技術分野
本発明は、蓄電池、フライホイール又は他のエネルギ貯蔵手段との組合せにて非常に効率的でコンパクトな小型のガスタービン駆動式発電機を使用することにより、発電を改善することに関するものである。このシステムは、経済的な電力を発生する、自己推進車輌から独立型の発電機に至るまでの多数の用途の電力需要を充足する。]

イ.「The overall system in general terms will now be described. ・・・, and then exhausted to the ambient atmosphere.」(公報第6欄末行から第20行?第7欄第4行)
[これよりシステムを概説する。
図1Aは本発明のガスタービン発電装置100を一部破断して示している。
ガスタービンが始動すると、大気が矢印102により示されている如く圧縮機インペラ312によりオルタネータステータ202を経て吸入される。圧縮機インペラ312により形成された圧縮空気は周方向型復熱装置110のマニホールドセクションへ供給され、該セクションに於いてエンジンの排気ガスにより加熱される。かくして加熱された周方向型復熱装置110よりの圧縮空気は燃焼器700へ供給される。加熱された圧縮空気は燃焼器700内に於いて燃料タンク(図示せず)よりの燃料と混合されて燃焼され、これにより高温のガスを発生する。高温の高圧ガスはタービンホイール400を経て排出され、これにより回転出力を発生する。この回転出力は圧縮機インペラ312及びオルタネータロータ222を回転駆動し、オルタネータロータ222はオルタネータステータ202内にて回転し、これにより電気エネルギを発生する。タービンホイール400より排出される排気ガスは周方向型復熱装置110のマニホールドセクションへ流入し、後に詳細に説明する複数個の周方向排気ガス通路116へ導かれ、しかる後大気中へ排出される。]

ウ.「Rotating Assembly
FIG.3 shows the rotating assembly 201 comprising the rotating group 200 prior to insertion into chamber 132 of circumferential recuperator 110. ・・・
FIG.3A shows an exploded view of the rotating elements of the rotating assembly 201, ・・・, as will be more fully described below.」(公報第8欄末行から第14行?第9欄第35行)
[回転組立体
図3は周方向型復熱装置110の室132に挿入される前の状態にて回転群200を含む回転組立体201を示している。・・・
図3Aは回転組立体201の回転要素を示す分解斜視図であり、より詳細には圧縮機インペラ312がスラスト及びラジアル柔軟フォイルフランジ付きロータ510の前面512に当接して配置され、タービンホイール400がスラスト及びラジアル柔軟フォイル軸受シャフト510の反対側の面514に当接して配置されている。圧縮機インペラ312及びタービンホイール400は連結バー610によりスラスト及びラジアルシャフト510に対し固定的に組み付けられ、連結バー610は圧縮機インペラ312及びタービンホイール400を互いに圧縮状態にて固定している。更に連結バー610は支持シャフト204のリセス210に締り嵌め状態にて係合し、これによりオルタネータロータ222、圧縮機インペラ312、空気軸受シャフト510、タービンホイール400は互いに一体となって回転する。
連結バー610の一部はオルタネータロータ222と圧縮機インペラ312との間に於いてクイルシャフト612として使用される。クイルシャフト612は後に詳細に説明する如く回転群200の高速回転中に整合手段として使用される。]

エ.「Alternator
As seen in FIG.3 ・・・, thereby enhancing generator efficiency.」(公報第10欄第1?34行)
[オルタネータ
図3に示されている如く、本発明のオルタネータステータ202は、図1Aに示されている如く燃焼器700及びタービンホイール400とは反対の側にて圧縮機ハウジング310内に配置されている。このことにより発電機の複数の磁石206が高温になるタービンより十分に離れた状態に維持され、これにより冷却の必要性が排除される。液体冷却は信頼性を低下させ、メンテナンスの問題を招来する。また高圧ブリード空気による冷却の場合にはエンジン100の利用可能な動力及び効率が低減される。
図4には、図1Aに示されている如くオルタネータステータ202の中央部内に配置されるオルタネータロータ222が図示されている。好ましい実施形態に於いては、円柱形の鋼棒にて形成される支持シャフト204が円筒形の磁石206を収容する大きさの孔224をその中央に有している。磁石206は円筒形のスリーブ208により所定の位置に保持され、スリーブ208は締り嵌めにより支持シャフト204に固定され、或いは当技術分野に於いて公知の熱収縮法を用いてシャフト204に固定される。支持シャフト204の一端には、後に詳細に説明する如く連結バー610を受ける孔210が設けられている。
図4Aはステータ本体236を構成する全体的に薄い平坦なラミネートフォイル214を示している。各フォイル214は磁性鋼にて形成されており、約700枚のフォイルが積層されることによりステータ本体236が形成される。ラミネートフォイル214は複数個のステータ要素218のうちの一つであり、ステータ要素218は半径方向内方へ延在し実質的にT形をなしている。複数個の平坦なラミネートフォイル214が互いに積層され、これによりオルタネータ222のスリーブ208の外周部を受ける大きさの中央孔226が形成される。ステータ要素218により画定される内径及びオルタネータロータ222により画定される外径は、それらの間の間隔が磁気的接続状態を最大にして発電効率を向上させる大きさに設定される。]

オ.「Turbine
Referring to FIG.5 ・・・ for passage of the hot combustive exhaust gases into recuperator 110.」(公報第11欄第4?24行)
[タービン
図5及び図5Aに於いて、タービンホイール400は半径方向にテーパ状をなす従来の形態の本体404を有し、該本体の一端には前述の如く回転組立体201の連結バー610を受ける同心に配置された連結バー受け入れ孔412が設けられている。タービンホイール400は更に実質的に三角形をなし径方向外方へ延在する複数のタービンブレード410を有している。三角形状に加え、タービンブレード410は、排気ガスがそれに衝突することによりタービンホイール400を効率的に回転させる。
図6に示されている如く、タービン排気部材412が細長い円筒体408を含んでおり、円筒体408はその一端にスプリング支持溝406を有し、その他端に排気ガスマニホールド422を有している。排気ガスマニホールド422は、タービンホイール400を受けタービンブレード410の回転を許すクリアランスを与える大きさの内径を有する環状キャビティ420を有している。スプリング支持溝406(原文の「group」は「groove」(溝)の誤記と認める。)と排気ガスマニホールド422との間には、高温の排気ガスを復熱装置110内へ導く円筒形の内部通路414が延している。]

カ.「Combustor
Shown in FIG.8 is the modular combustor assembly 700.・・・ The combustor 726 can be a standard or conventional ignition combustor, or as in the preferred embodiment, a catalytic combustor.」(公報第12欄第11?25行)
[燃焼器
図8はモジュール式の燃焼器組立体700を示している。燃焼器組立体700は燃焼室726を有し、燃焼室726は一端側にサーマルカップル組立体714を有し他端側に燃焼器キャップ724を有している。燃焼器キャップ724は熱膨張スプリング716により燃焼器組立体700に係合する。更に燃焼器組立体700は混合室728の周りに配置され複数個の円形孔720を含む環状の燃料供給マニホールド718を含み、導入される高圧の圧縮機吐出空気と混合されるよう燃料を供給する燃料ノズル722が配置されている。図には示されてないが、燃料導入口722はカバー724を貫通して延在している。燃焼器726は標準的な燃焼器、即ち従来の着火式の燃焼器であってもよく、また好ましい実施形態に於いては触媒燃焼器であってよい。]

キ.「The turbine wheel 400, compressor impeller 300 ・・・ by alternator-stator lead 250 to the outside environment.」(公報第14欄第24?32行)
[タービンホイール400、圧縮機インペラ300、オルタネータロータ222は、二作用型の柔軟フォイルスラスト軸受620、柔軟フォイルスラスト軸受640、二つの圧縮機ラジアル柔軟フォイル軸受234により支持された共通のシャフト610に固定された状態で回転する。好ましい実施形態に於いては、回転群200は96000rpmにて回転し、オルタネータステータリード線250により周囲環境へ供給される24キロワットの電気エネルギをオルタネータステータ202により連続的に発生する。]

ク.「In the preferred embodiment, ・・・ by lowering the turbine inlet temperature as required in prior art designs.」(公報第14欄第55?60行)
[好ましい実施形態に於いては、回転群200は96000rpmの回転速度にて回転するよう設計され、これによりエンジンの効率が30%になる。部分負荷時には回転速度が低減され、これにより圧力比を低下させることによって出力が低減され、また従来の構造に於いて必要なタービン入口温度を低下させることによって質量流量が低減される。]

ケ.上記ア.の記載からみて、引用例1は、発電に係るシステムに関するものであることが分かる。

コ.上記ウ.において、原文では符号510が付されている部材に対して種々の語が使用されているが、ウ.及び図3Aの記載からみて同一部材であることから、以下、仮訳として「スラスト及びラジアルシャフト510」という。

サ.上記ウ.の「圧縮機インペラ312」に関する記載及び図3Aから、引用例1の圧縮機インペラ312は、複数の圧縮機ブレードを備えることが分かる。

シ.上記エ.の記載並びに図4及び図4Aからみて、引用例1の発電に係るシステムは、磁性鋼から成るステータ本体236を備え、該ステータ本体236は磁石206の近傍に配置されていることが分かる。

ス.上記イ.及び上記ク.の記載からみて、引用例1の発電に係るシステムは、燃焼器への燃料流量を制御することで回転速度や負荷を制御することが分かり、技術常識を考慮すると、燃料の流れを制御する手段を有することが推認される。

上記ア.乃至ス.及び各図の記載によれば、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。

「発電に係るシステムであって、以下を有する、 ガスタービン発電装置100、 前記ガスタービン発電装置100に設けられた燃焼器700、スラスト及びラジアルシャフト510に固定された複数のタービンブレード410から成り、前記ガスタービン発電装置100に設けられ、かつ、前記燃焼器700と流体連通されたタービンホイール400、 前記ガスタービン発電装置100に設けられ、かつ、前記燃焼器700と流体連通された圧縮機ハウジング310、 前記スラスト及びラジアルシャフト510に固定された複数の圧縮機ブレード、これら複数の圧縮機ブレードは圧縮機ハウジング310内に配置されている、 前記圧縮機ハウジング310と流体連通されたオルタネータセクション336、前記タービンホイール400と流体連通されたタービン排気部材412、 前記スラスト及びラジアルシャフト510に固定された複数の磁石206、そして 前記ガスタービン発電装置100に設けられた磁性鋼から成るステータ本体236、該ステータ本体236は前記複数の磁石206の近傍に配置され、これによって、前記スラスト及びラジアルシャフト510の回転によって前記ステータ本体236周りの磁束が変化し、電気が発生する、そして、前記燃焼器700に流体連通された燃料の流れを制御する手段、前記燃焼器700への燃料の流れを制御する。」(以下、「引用例1記載の発明」という。)

2)引用例2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された本願優先日前に頒布された刊行物である上記引用例2には、次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は流体の流れ量を制御するポペット型制御弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のポペット型制御弁は、例えば図3に断面図を示すように、弁体01,スリーブ02,03,ポペット04,抑えバネ05,弁駆動部06,駆動軸07,流入ポート08,流出ポート09,支持台010,Oリング011,012等から成っている。
【0003】
このようなポペット型制御弁では、ポペット04は右端面より抑えバネ05によって常に紙面左方へ押され、ポペット04中央部のテーパ面はスリーブ02の右端面エッジに押し付けられており、流体が流入ポート08から流出ポート09へ流れて行くのを遮断している。
【0004】
流体の流れを得る場合には、左端部の弁駆動部06(電磁ソレノイド,モータなど)を作動させ、駆動軸07を紙面右方へ必要な変位量だけ変位させ、ポペット04を右方へ移動させることで、スリーブ02の端面シート部02aの右端エッジとポペットテーパ面04aの間に流路を形成し、必要な流量を得ることができる。」(明細書段落【0001】?【0004】)

イ.「【0017】
【実施例】
本考案の一実施例を図1および図2に示す。
図1は全体断面図、図2は自動調心の作用図である。
図1および図2において、1は弁体、2はスリーブ、3は後部スリーブ、4はポペット、5は抑えバネ、6は弁駆動部、7は駆動軸、8は流入ポート、9は流出ポート、10は支持台、11および12はOリング、13は弁シートリング、14は弁シート抑え、15はOリング、16はシール溝である。
【0018】
弁駆動部6は従来例と同様、ソレノイドやモータなどを使ったポペット4の変位手段であり、駆動軸7を介して任意の変位量をポペット4に与え、流出量を制御することができる。ポペット4右方の抑えバネ5はポペット4を常時弁シートリング13に押し付けるためのもので、弁駆動部6が無作動時はポペットテーパ面4aと弁シートリング13の内面エッジ部が接触し、弁閉止の状態を保っており、流入ポート8から流出ポート9への流体の流れは遮断されている。
【0019】
弁シートリング13はスリーブ2の右端のスリーブ切欠き部2aに装着されており、外径D_(1)はスリーブ切欠き部2aの内径D_(2)より0.2?0.3mm小さく設定されている。また、弁シートリング13の厚さt_(1 )はスリーブ切欠き部2aの深さt_(2)よりやはり0.1?0.2mm程度薄く設定されており、弁シート抑え14とスリーブ切欠き部2aで形成される空間内で自由に動くことができる。」(明細書段落【0017】?【0019】)

ウ.上記ア.及びイ.の記載並びに図1及び図3からみて、ポペット型制御弁は、弁体(1、01)、支持台(10、010)及び後部スリーブ(3、03)から外形が画され、内部に弁体(1、01)を収容する凹部を有することが分かる。

エ. 上記ア.及びイ.の記載並びに図1及び図3からみて、スリーブ02又はシートリング13は、ポペットのテーパ面との間の流路を形成し、駆動軸の変位により流量を制御することから、引用例2には、リング状の部材(スリーブ02又はシートリング13)に設けられた穴、該穴を通って延出し、ポペットがテーパ面すなわち長手軸心に対して変化する直径を有し、リング状の部材に形成された前記穴と協動して、前記穴のサイズを変化させ、前記流リング状の部材に形成された前記穴を通して流入ポート(8、08)から流出ポート(9、09)へと流れる流量を変化させ、前記ポペットの前記リング状の部材に対する位置によって、流体の流れ量を制御するものが記載されていることが分かる。

上記ア.乃至エ.及び各図の記載によれば、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。

「流体の流れ量を制御するポペット型制御弁は、ポペット(4、04)を備えた駆動軸(7、07)を有する電磁ソレノイド(6、06)、前記駆動軸(7、07)は長手軸心に沿って延出するように、かつ長手方向に移動可能に構成されている、凹部、流入ポート(8、08)及び流出ポート(9、09)を形成した弁体(1、01)、前記駆動軸(7、07)は前記凹部内で延出している、そして 穴を形成したリング状の部材、前記リング状の部材は前記弁体01に固定されるとともに、前記流入ポート(8、08)と前記流出ポート(9、09)との間において前記凹部内に配置され、これによって、前記駆動軸(7、07)が前記長手方向に移動すると、前記穴を通って延出し、前記ポペット(4、04)がテーパ面を有し、前記リング状の部材に形成された前記穴と協動して、前記穴のサイズを変化させ、前記リング状の部材に形成された前記穴を通して前記流入ポート(8、08)から前記流出ポート(9、09)へと流れる流量を変化させ、前記ポペット(4、04)の前記リング状の部材に対する位置によって、流体の流れ量を制御する。」(以下、「引用例2記載の発明」という。)

3) 対比
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、機能又は構成からみて、引用例1記載の発明の「発電に係るシステム」が本願補正発明の「発電システム」に相当する。以下同様に、引用例1記載の発明の「ガスタービン発電装置100」は本願補正発明の「本体」に、「燃焼器700」は「燃焼器」に、「スラスト及びラジアルシャフト510」は「ロータ」に、「複数のタービンブレード410」は「複数のタービン・ブレード」に、「タービンホイール400」は「タービン」に、「圧縮機ハウジング310」は「コンプレッサ・チャンバ」に、「複数の圧縮機ブレード」は「コンプレッサ・ブレード」に、「オルタネータセクション336」は「空気取り入れポート」に、「タービン排気部材412」は「取り出しポート」に、「磁石206」は「マグネット」に、「磁性鋼」は「磁気吸引性材」に、「ステータ本体236」は「ステータ」に、それぞれ相当する。
また、引用例1記載の発明の「燃料の流れを制御する手段」は、「燃料の流れを制御する手段」という限りにおいて、本願補正発明の「燃料絞り弁」に相当する。

してみると、両者は、
「発電システムであって、以下を有する、 本体、 前記本体に設けられた燃焼器、ロータに固定された複数のタービン・ブレードから成り、前記本体に設けられ、かつ、前記燃焼器と流体連通されたタービン、 前記本体に設けられ、かつ、前記燃焼器と流体連通されたコンプレッサ・チャンバ、 前記ロータに固定された複数のコンプレッサ・ブレード、これらコンプレッサ・ブレードはコンプレッサ・チャンバ内に配置されている、 前記コンプレッサ・チャンバと流体連通された空気取り入れポート、前記タービンと流体連通された取り出しポート、 前記ロータに固定された複数のマグネット、そして 前記本体に設けられた磁気吸引性材から成るステータ、該ステータは前記複数のマグネットの近傍に配置され、これによって、前記ロータの回転によって前記ステータ周りの磁束が変化し、電気が発生する、そして、前記燃焼器に流体連通された燃料の流れを制御する手段、前記燃焼器への燃料の流れを制御する。」の点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点
燃料の流れを制御する手段に関して、本願補正発明では、「燃料絞り弁」であり、「燃料絞り弁は、先端部を備えたプランジャを有する比例ソレノイド、前記プランジャは長手軸心に沿って延出するように、かつ長手方向に移動可能に構成されている、プランジャ凹部、入口及び出口を形成した弁本体、前記プランジャは前記プランジャ凹部内で延出している、そして オリフィスを形成した流動プレート、前記流動プレートは前記弁本体に固定されるとともに、前記入口と前記出口との間において前記プランジャ凹部内に配置され、これによって、前記プランジャが前記長手方向に移動すると、前記オリフィスを通って延出し、前記先端部が前記長手軸心に対して変化する直径を有し、前記流動プレートに形成された前記オリフィスと協動して、前記オリフィスのサイズを変化させ、前記流動プレートに形成された前記オリフィスを通して前記入口から前記出口へと流れる流量を変化させ、前記先端部の前記流動プレートに対する位置によって、前記燃焼器への燃料の流れを制御する」のに対して、引用例1記載の発明では、燃料の流れを制御する何らかの手段があることは推認されるが、その手段の具体的態様が明らかではない点(以下、「相違点」という。)。

4)判断
上記相違点について検討する。
燃焼器及びタービン等から構成される発電システムにおいて、燃料の流れを制御する手段として燃料絞り弁を用いることは、例えば特開平1-219322号公報(公報第2頁右下欄第2?7行、第3頁右下欄第17?19行、「燃料供給制御手段34」及び「燃料供給電磁弁」を特に参照されたい。)に示されるように周知の技術であり、引用例1記載の発明において、燃料の流れを制御する手段として燃料絞り弁を採用することは、当業者が適宜選択して採用する設計事項にすぎない。
ここで、公知の流体の流れ量を制御する絞り弁である上記引用例2記載の発明について検討する。
本願補正発明と上記引用例2記載の発明とを対比すると、機能・構成からみて、引用例2記載の発明の「ポペット(4、04)」は本願補正発明の「先端部」に相当する。以下同様に、引用例2記載の発明の「駆動軸(7、07)」は「プランジャ」に、「電磁ソレノイド(6、06)」は「比例ソレノイド」に、「凹部」は「ランジャ凹部」に、「流入ポート(8、08)」は「入口」に、「流出ポート(9、09)」は「出口」に、「弁体(1、01)」は「弁本体」に、「テーパ面」が「前記長手軸心に対して変化する直径」に、それぞれ相当する。また、引用例2記載の発明の「穴」は、流量を調整する機能を有するから、本願補正発明の「オリフィス」に実質的に相当する。そこで、引用例2記載の発明を本願補正発明に合わせて書くと、流体の流れ量を制御する絞り弁として、「先端部を備えたプランジャを有する比例ソレノイド、前記プランジャは長手軸心に沿って延出するように、かつ長手方向に移動可能に構成されている、プランジャ凹部、入口及び出口を形成した弁本体、前記プランジャは前記プランジャ凹部内で延出している、そして オリフィスを形成したリング状部材、前記リング状部材は前記弁本体に固定されるとともに、前記入口と前記出口との間において前記プランジャ凹部内に配置され、これによって、前記プランジャが前記長手方向に移動すると、前記オリフィスを通って延出し、前記先端部が前記長手軸心に対して変化する直径を有し、前記リング状部材に形成された前記オリフィスと協動して、前記オリフィスのサイズを変化させ、前記リング状部材に形成された前記オリフィスを通して前記入口から前記出口へと流れる流量を変化させ、前記先端部の前記リング状部材に対する位置によって、出口への流れを制御する」もの、すなわち、流体の流れ量を制御する絞り弁として、上記相違点に係る本願補正発明の燃料絞り弁と同様の構成を備えるものが記載されているといえる。
してみると、引用例1記載の発明の燃料の流れを制御する手段として燃料絞り弁を採用するという周知の知見の下、公知の流体の流れ量を制御する絞り弁の一である上記引用例2記載の発明を採用し、上記相違点に係る本願補正発明のように構成することは当業者が格別の創作力を要することなく想到することができたことである。なお、引用例2記載の発明を引用例1記載の発明に適用するに当たり、例えば、特開平8-49780号公報(1996年2月20日公開。図4を特に参照されたい。)、実願昭59-138075号(実開昭61-52777号)のマイクロフィルム(「弁体13’」及び「弁座14」を特に参照されたい。)又は特開平8-170753号公報(1996年7月2日公開。「オリフィス114」を特に参照されたい。)に示されるように周知の技術である、リング状部材をプレートとして構成することは、流量調整を行う対象である燃料の組成等に応じて当業者が適宜選択する設計事項である。
よって、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明及び周知の技術を適用し、上記相違点に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

また、本願補正発明を全体として検討しても、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明及び周知の技術から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

以上から、本願補正発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

[3]本願発明について
1. 本願発明
上記のとおり、平成18年12月20日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年5月9日付けの手続補正により補正された明細書及び成13年10月2日付けの手続補正により補正された図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、上記[2](ロ)に記載したとおりである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である米国特許第5497615号明細書及び実願平4-81030号(実開平6-40529号)のCD-ROMの記載事項は、上記[2]2.(2)1)及び2)に記載したとおりである。

3.当審の判断
本願発明は、前記[2]2.で検討した本願補正発明の発明特定事項のうち、「オリフィス」を「穴」とし、「プランジャ」について「オリフィスを通って延出し」及び「前記長手軸心に対して変化する直径を有し」なる特定を有しないもの、並びに、「流れる流量を変化させる」ことについて、対象たる「燃料」及び流れの制御内容たる「先端部の前記流動プレートに対する位置によって」なる特定を有しないものものに相当する。
そうすると、本願発明を特定する事項を全て含み、さらに本願発明を減縮したものに相当する本願補正発明が、上記[2]2.に記載したとおり、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、引用例2記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-18 
結審通知日 2008-08-19 
審決日 2008-09-01 
出願番号 特願平10-525745
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F23R)
P 1 8・ 121- Z (F23R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 泰亀田 貴志  
特許庁審判長 早野 公惠
特許庁審判官 金澤 俊郎
森藤 淳志
発明の名称 環状燃焼器を備えた発電システム  
代理人 宮川 貞二  

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