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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R |
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管理番号 | 1191750 |
審判番号 | 不服2005-18636 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-28 |
確定日 | 2009-01-14 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第517202号「モジュール式消音カバー」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月29日国際公開、WO95/17320、平成 9年 7月 8日国内公表、特表平 9-506842〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願発明 本件出願は、1994年12月22日(パリ条約による優先権主張 1993年12月22日 独国)を国際出願日とする出願であって、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項14に係る発明は、平成16年5月11日付け手続補正書により補正がなされた特許請求の範囲の請求項1ないし請求項14に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1には次のとおり記載されている。 「車両の内部区画室の音響励起面(14)を内張りするカバー(1)であって、 上方カバー層(3)と、このカバー層(3)の裏面(2)にしっかりと接着する内張りであって、対面する音響励起面(14)に対して面一嵌合するように形成されそして消音性を持つ内張りとを有するカバー(1)において、 複数の内張りモジュール(4-6)が、カバー層(3)の裏面(2)にしっかりと接着していること、 内張りモジュールが、面一嵌合状態で音響励起面(14)の対面する部分面上に置き得るように形成されていること、また、 内張りモジュール(4-6)の少なくとも1つが消音性を持っていることを特徴とするモジュール式消音カバー(1)。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。) 2 引用刊行物の記載事項 (1)当審における平成19年12月3日付け拒絶理由通知書の拒絶の理由に引用した、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-327931号公報(以下「刊行物1」という。)には、「カーペットとその製造方法」との発明に関し、以下の記載がある。 「【0003】 図7は自動車の床面に沿って配置されるカーペット10の斜視図である。自動車の床面のカーペット10は防音、防振、緩衝などのために、裏面にウレタンフォーム11などが裏打ちされたものが多用されている。」 「【0012】 【実施例】 以下本発明の一実施例について、図面を参照しながら説明する。尚、従来例で示した部品と同じ部品には同符号を付してある。 【0013】 図1は本発明に係るカーペット本体6の工程説明図である。図1において、カーペット成形型1はカーペット本体6を製品の形状に成形するための下型2と上型3とで構成され、下型2の上面2aの所要箇所にはレジンフェルトの囲い4をセットする設定面が形成されている。 【0014】 図2はカーペット本体6の加熱工程説明図である。図2において、カーペット本体6はカーペット層7の裏面にポリエチレンまたは合成樹脂に充填材が充填されたマスバックなどのバッキング層8が重合されており、加熱噐9によって加熱される。 【0015】 図4及び図5はウレタン発泡の工程説明図である。図4において、ウレタン発泡型20は成形されたカーペット本体6をセットする下型21とウレタンを発泡成形する上型22によって構成され、上型22にはウレタン5を注入する注入口23と、レジンフェルトから成る囲い4が嵌まり込んでウレタン5が注入される凹部24が設けられている。 【0016】 以上のように構成されたカーペットの製作工程について、以下その動作について説明する。図1に示すようにカーペット成形型1の下型2の上面2aの所要箇所にレジンフェルトを適宜の寸法、形状に合わせて囲い4を作ってセットし、予め加熱噐9によって加熱されたカーペット本体6をこのカーペット成形型1にセットして、上型3を押圧してカーペット本体6を成形する。この時囲い4が圧縮されると共に、カーペット本体6のバッキング層8と接着され、図3に示すような状態になる。 【0017】 次に、図4に示すようにウレタン発泡型20の下型21に図3の成形品をセットし上型22を下型21に押圧して、上型22のウレタン注入口23からウレタン5を注入すると、カーペット本体6の囲い4の中にウレタンフォーム11が形成される。この時囲い4は上型22の凹部24に嵌まり込んでおり、且つ上型22によって押圧されているので、ウレタン5の液が上型22と下型21の間から洩れることはない。従って、ウレタンフォーム11の密度は均一となる。」 これら記載と図面から、刊行物1には次の発明が開示されているものと認めることができる。 「自動車の床面に沿って配置されるカーペット10であって、 カーペット本体6と、この本体6の裏面に形成されたウレタンフォーム11であって、対面する自動車の床面に配置できるように形成されたウレタンフォーム11とを有するカーペット10において、 複数のウレタンフォーム11が、カーペット本体6の裏面に形成されていること、 ウレタンフォーム11が、自動車の床面の対面する部分面上に置き得るように形成されていること、また、 ウレタンフォーム11が、防音、防振、緩衝などの効果を持っているカーペット10。」 (2)同じく上記拒絶理由通知書の拒絶の理由に引用した、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭60-84858号(実開昭61-200744号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、「車両用フロアカーペット」に関し、カーペット層12(本願発明1の「上方カバー層(3)」に対応)の裏面に、フェルト又はウレタンチップ等から形成された緩衝材13がプレス成形により接合(バッキング材の加熱溶融により接着)された例が記載されている(特に明細書第4頁10行ないし5頁1行参照)。 (3)同じく上記拒絶理由通知書の拒絶の理由に引用した、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-342674号公報(以下「刊行物3」という。)にも、「車両用フロア及びその製造方法」に関し、【従来の技術】として、フロントフロアパン1の上面に張った制振材3の上にカーペット部材5(本願発明1の「上方カバー層(3)」に対応)を接着したものが記載されている(特に段落【0004】など参照)。 (4)同じく上記拒絶理由通知書の拒絶の理由に引用した、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭62-31345号(実開昭63-138261号)のマイクロフィルム(以下「刊行物4」という。)にも、「遮音防振材」に関し、バッキング層(12)の裏面に順に不織布(13),遮音防振材(14),フェルト(15)が貼着されたものが記載されている(特に明細書8頁15行ないし9頁8行参照)。 3 対比 本願発明1と刊行物1記載の発明とを比較すると次のことが明らかである。 ・刊行物1記載の発明の「自動車の床面」は、その床面に沿って防音、防振、緩衝など効果を持つカーペットが配置されるのであるから、本願発明1の「車両の内部区画室の音響励起面(14)」に相当する。 ・刊行物1記載の発明の「複数のウレタンフォーム11」と、本願発明1の「複数の内張りモジュール(4-6)」は、ともに音響励起面(床面)と上方カバー層(カーペット本体)との間に存在する「内張り」であって、また、刊行物1記載の発明の「ウレタンフォーム11」は、防音、防振、緩衝などの効果を持つのであるから、両者は、「複数の内張り部材」であって「消音性を持つもの」との点で共通する。 ・刊行物1記載の発明の「カーペット10」は、本願発明1の「カバー(1)」に相当する。同様に、「カーペット本体6」は、「上方カバー層(3)」に相当する。 すると、両者は、 「車両の内部区画室の音響励起面を内張りするカバーであって、 上方カバー層と、このカバー層の裏面に存在する内張りあって、対面する音響励起面に配置できるように形成されそして消音性を持つ内張りとを有するカバーにおいて、 複数の内張り部材が、カバー層の裏面に存在していること、 内張り部材が、音響励起面の対面する部分面上に置き得るように存在していること、また、 内張り部材の少なくとも1つが消音性を持っているカバー。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点; 内張り部材に関し、本願発明1のものが「内張りモジュール」であって、「カバー層(3)の裏面(2)にしっかりと接着」しており、「対面する音響励起面(14)に対して面一嵌合するように」かつ、「面一嵌合状態で音響励起面(14)の対面する部分面上に置き得るように形成されて」いるのに対して、刊行物1記載の発明のものは「ウレタンフォーム11」であって、「カーペット本体6の裏面に形成」されており、「自動車の床面に配置できるように」かつ、「自動車の床面の対面する部分面上に置き得るように形成されて」いる点。 4 相違点の検討 刊行物2ないし4に記載された技術は、いずれも車両用のフロアの内張りに関し、カーペットの層の裏面に消音等のための層を接着接合するものである。これら記載の技術によれば、フロアの内張りを接着等による積層構造とすることに、何ら困難性は見いだせず、当業者が容易になし得ることにすぎない。 また、刊行物1記載の発明において、その「カーペット本体6」に「ウレタンフォーム11」を積層するに際して、複数のウレタンフォーム11をモジュール化して構成し、カーペット本体6の裏面にしっかりと接着するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、これらを床面に配置する際、床面との間で隙間ができないように加工しなければならないことは当然必要とされる事項であって、そのウレタンフォーム11の車両の床面と対面する面を、対面する車両床面に対して面一嵌合するように、かつ、面一嵌合状態で床面の対面する部分面上に置き得るように形成することは格別のことではない。 してみれば、刊行物1記載の発明において、本願発明1の上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になしえたものである。 なお、刊行物2ないし4の技術において接着されているものはウレタンフォームではないが、ウレタンフォームであっても、これをシート状にしておいて積層接着させるなどの技術は周知である(例えば、特開平3-213334号公報、特開平1-150533号公報など参照)から、刊行物1記載の発明において、そのウレタンフォームを接着によって積層することを妨げる事情は存在しない。 そして、本願発明1が奏する効果も、刊行物1記載の発明、刊行物2ないし4に記載の技術及び周知の技術から当業者が予測し得たものであって、格別顕著なものとはいえない。 したがって、本願発明1は、刊行物1記載の発明、刊行物2ないし4に記載の技術及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-14 |
結審通知日 | 2008-08-19 |
審決日 | 2008-09-01 |
出願番号 | 特願平7-517202 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B60R)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 黒瀬 雅一 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
中川 真一 佐藤 正浩 |
発明の名称 | モジュール式消音カバー |
代理人 | 阿部 伸一 |
代理人 | 清水 善廣 |
代理人 | 辻田 幸史 |