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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20073466 審決 特許
不服200610726 審決 特許
不服20082356 審決 特許
無効2007800236 審決 特許
不服200626455 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1192659
審判番号 不服2005-1667  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-31 
確定日 2009-02-12 
事件の表示 平成 4年特許願第334600号「凍結乾燥された乳酸菌を含有する栄養学的及び/又は薬学的組成物、それらの調製及び使用」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 3月 1日出願公開、特開平 6- 56680〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年12月15日(優先権主張1992年2月10日 イタリア)を出願日とする出願であって、その特許請求の範囲の請求項1?14にかかる発明は、本願明細書の記載からみて、平成17年3月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載の次のとおりのものである。

【請求項1】 腸内細菌叢の働きを正常化すること、並びにヒト及び動物の健康(body welfare)を促進することが可能である栄養学的及び/又は薬学的組成物であって、
前記組成物が、
-凍結乾燥された乳酸菌の混合物、
-全細菌重量の0?10重量%の任意の薬学的に許容可能な賦形剤、及び
-全細菌重量の0?20重量%の任意の生理学的適合薬剤を含み;
前記凍結乾燥された乳酸菌の混合物が、
-10から40重量%の、7.4×10^(11)細菌/グラムの濃度のエス.テルモフィラス(S.thermophilus)、
-1から15重量%の、1.0×10^(11)細菌/グラムの濃度のエル.カセイ(L.casei)、
-1から20重量%の、1.0×10^(11)細菌/グラムの濃度のエル.プランタラム(L.plantarum)、
-10から40重量%の、3.8×10^(11)細菌/グラムの濃度のビフィドバッテリ(Bifidobatteri)の混合物、
-1から15重量%の、2.0×10^(10)細菌/グラムの濃度のエル.アシドフィラス(L.acidophilus)、
-1から20重量%の、3.5×10^(9)細菌/グラムの濃度のエル.ブルガリクス(L.bulgaricus)、及び
-1から20重量%の、1.0×10^(9)?5.0×10^(12)細菌/グラムの濃度のエス.フィシウム(S.faecium)から成る、栄養学的及び/又は薬学的組成物。
【請求項2】 前記組成物が、
-33重量%のエス.テルモフィラス(S.thermophilus)、
-9重量%のエル.カセイ(L.casei)、
-10重量%のエル.プランタラム(L.plantarum)、
-9重量%のエル.アシドフィラス(L.acidophilus)、
-10重量%のエル.ブルガリクス(L.bulgaricus)、および
-29重量%のビフィドバッテリ(Bifidobatteri)の混合物、
から成る凍結乾燥された乳酸菌の混合物を含み、
任意に0?10%の賦形剤および0?20%の適合薬剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】 前記ビフィドバッテリ(Bifidobatteri)の混合物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、及びビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacterium infantis)から成ることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】 前記ビフィドバッテリ(Bifidobatteri)の混合物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacterium infantis)、及びビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)から成ることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】 請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物であって、前記薬剤が、抗痙攣薬、抗コリン作用薬、抗ヒスタミン作用薬、アドレナリン作動薬、鎮静薬、抗炎症薬、解熱薬、防腐薬、鎮痛薬、抗リウマチ薬、利尿薬、抗精神病薬、抗菌薬、及び興奮薬から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項6】 請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物であって、前記組成物が、錠剤、コートされた錠剤、カプセル、小包、溶液、乳剤、懸濁液、顆粒剤、坐薬、シロップ、腟坐薬、外用薬、又はクリームの形態であることを特徴とする組成物。
【請求項7】 請求項1から6のいずれか一項に記載の栄養学的及び/又は薬学的組成物
を製造するための方法であって、脱水された形で個々の微生物が混合され、賦形剤及び任意に適切な薬剤を添加し、最終混合物を、密封されて保存されるバイアル中に注ぐことを特徴とする方法。
【請求項8】 以下の乳酸菌から成る、凍結乾燥された乳酸菌の混合物:
-10から40重量%の、7.4×10^(11)細菌/グラムの濃度のエス.テルモフィラス(S.thermophilus)、
-1から15重量%の、1.0×10^(11)細菌/グラムの濃度のエル.カセイ(L.casei)、
-1から20重量%の、1.0×10^(11)細菌/グラムの濃度のエル.プランタラム(L.plantarum)、
-10から40重量%の、3.8×10^(11)細菌/グラムの濃度のビフィドバッテリ(Bifidobatteri)の混合物、
-1から15重量%の、2.0×10^(10)細菌/グラムの濃度のエル.アシドフィラス(L.acidophilus)、
-1から20重量%の、3.5×10^(9)細菌/グラムの濃度のエル.ブルガリクス(L.bulgaricus)、及び
-1から20重量%の、1.0×109?5.0×1012細菌/グラムの濃度のエス.フィシウム(S.faecium)
を、下痢、便秘、腸炎、胃腸炎、大腸炎、内毒素の吸収、及び内因性毒物の生成の発症を治療するための栄養学的及び/又は薬学的組成物を調製するために使用する方法
【請求項9】 以下の乳酸菌から成る、凍結乾燥された乳酸菌の混合物:
-10から40重量%の、7.4×10^(11)細菌/グラムの濃度のエス.テルモフィラス(S.thermophilus)、
-1から15重量%の、1.0×10^(11)細菌/グラムの濃度のエル.カセイ(L.casei)、
-1から20重量%の、1.0×10^(11)細菌/グラムの濃度のエル.プランタラム(L.plantarum)、
-10から40重量%の、3.8×10^(11)細菌/グラムの濃度のビフィドバッテリ(Bifidobatteri)の混合物、
-1から15重量%の、2.0×10^(10)細菌/グラムの濃度のエル.アシドフィラス(L.acidophilus)、
-1から20重量%の、3.5×10^(9)細菌/グラムの濃度のエル.ブルガリクス(L.bulgaricus)、及び
-1から20重量%の、1.0×10^(9)?5.0×10^(12)細菌/グラムの濃度のエス.フィシウム(S.faecium)
を、高コレステロール血症、高リポ蛋白血症の発症を治療するための栄養学的及び/又は薬学的組成物を調製するために使用する方法。
【請求項10】 以下の乳酸菌から成る、凍結乾燥された乳酸菌の混合物:
-10から40重量%の、7.4×10^(11)細菌/グラムの濃度のエス.テルモフィラス(S.thermophilus)、
-1から15重量%の、1.0×10^(11)細菌/グラムの濃度のエル.カセイ(L.casei)、
-1から20重量%の、1.0×10^(11)細菌/グラムの濃度のエル.プランタラム(L.plantarum)、
-10から40重量%の、3.8×10^(11)細菌/グラムの濃度のビフィドバッテリ(Bifidobatteri)の混合物、
-1から15重量%の、2.0×10^(10)細菌/グラムの濃度のエル.アシドフィラス(L.acidophilus)、
-1から20重量%の、3.5×10^(9)細菌/グラムの濃度のエル.ブルガリクス(L.bulgaricus)、及び
-1から20重量%の、1.0×10^(9)?5.0×10^(12)細菌/グラムの濃度のエス.フィシウム(S.faecium)
を、肝疾患の発症を治療するための栄養学的及び/又は薬学的組成物を調製するために使用する方法。
【請求項11】 以下の乳酸菌から成る、凍結乾燥された乳酸菌の混合物:
-10から40重量%の、7.4×10^(11)細菌/グラムの濃度のエス.テルモフィラス(S.thermophilus)、
-1から15重量%の、1.0×10^(11)細菌/グラムの濃度のエル.カセイ(L. casei)、
-1から20重量%の、1.0×10^(11)細菌/グラムの濃度のエル.プランタラム(L.plantarum)、
-10から40重量%の、3.8×10^(11)細菌/グラムの濃度のビフィドバッテリ(Bifidobatteri)の混合物、
-1から15重量%の、2.0×10^(10)細菌/グラムの濃度のエル.アシドフィラス(L.acidophilus)、
-1から20重量%の、3.5×10^(9)細菌/グラムの濃度のエル.ブルガリクス(L.bulgaricus)、及び
-1から20重量%の、1.0×10^(9)?5.0×10^(12)細菌/グラムの濃度のエス.フィシウム(S.faecium)
を、免疫低下性疾患(immunosuppressant)の発症を治療するための栄養学的及び/又は薬学的組成物を調製するために使用する方法。
【請求項12】 前記凍結乾燥された乳酸菌の混合物が、
-33重量%のエス.テルモフィラス(S.thermophilus)、
-9重量%のエル.カセイ(L.casei)、
-10重量%のエル.プランタラム(L.plantarum)、
-9重量%のエル.アシドフィラス(L.acidophilus)、
-10重量%のエル.ブルガリクス(L.bulgaricus)、および
-29重量%のビフィドバッテリ(Bifidobatteri)の混合物、
から成ることを特徴とする請求項8?11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】 前記ビフィドバッテリ(Bifidobatteri)の混合物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、及びビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacterium infantis)から成ることを特徴とする請求項8?12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】 前記ビフィドバッテリ(Bifidobatteri)の混合物が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacterium infantis)、及びビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)から成ることを特徴とする請求項8?12の何れか一項に記載の方法。

2.原査定の理由の概要

これに対し原査定の拒絶の理由は、以下の点で本出願は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないというものである。
明細書中で、本願各請求項に係る発明に関連した実施の記録としては、【0027】以降の記載がこれに該当すると認められるところ、どの箇所においても、具体的にいかなる乳酸菌種組成の混合物を採用していかなる有利な効果が奏されたのかについて明確に記載されていない。
すなわち、本願明細書には、コレステロール、GOT、GPT、ガンマ-GT、NK活性等について示したデータ表が一応記載されているものの、本願発明のどの組成物を用いたのか不明であるから、当業者が追試により同データを容易に導き出すことができない。さらに、【実施例】として記載されているのは、各種の微生物種についての培養調製方法及び凍結乾燥微生物調製法のみであって、具体的に混合に供した微生物種やその混合比、賦形剤その他の添加物の有無やその配合比等、本願各請求項に規定される組成の組成物を調製については何等具体的に記載されていない。

3.当審の判断

特許請求の範囲の請求項1?14に係る発明(これを総称して「本願発明」ということがある。)は、特定の濃度の7種の乳酸菌を、特定の配合割合で含む凍結乾燥された乳酸菌混合物を組成物中に含むことをその発明の構成上の特徴とするものである。
このような発明において、当業者が容易にその発明を実施することができる程度にその発明の構成、効果が記載されているというためには、乳酸菌のうち特にこの7種が選定される理由、これらを特定の濃度、配合割合で混合して使用することの技術的な意義がそれによってもたらされる効果と関連して説明されている必要がある。
また、上記発明のうち請求項8?14に係る発明については、上記の凍結乾燥された乳酸菌の混合物を、腸内細菌叢の働きの正常化や健康促進という乳酸菌の通常の用途ではなく、腸炎、胃腸炎、大腸炎、高コレステロール血症、高リポ蛋白血、肝疾患、免疫低下性疾患等の特定疾病の発症を治療するための組成物の調製に使用することをその構成要件としている。
ある種の乳酸菌やその細胞抽出物に種々の生理活性作用が存在することは本願明細書の従来技術に参照されている各種文献に見るとおり、当業者のよく知るところではあるものの、上記発明において特定される、高濃度の複数の乳酸菌を特定の配合比で有する混合物が、通常の乳酸菌製剤が有する整腸作用を超え、特定の疾患の治療のための組成物すなわち医薬としての機能を発揮するか否かについては当業者といえども予測しうるところではない。
したがって、このような発明については、明細書の発明の詳細な説明にその混合物が各請求項に特定される疾病に対し治療効果をもたらすことを客観的に裏付けることができる程度の薬理試験の結果あるいはそれと同視できる記載がされていなければ、当業者は治療組成物の調製方法の発明を容易に理解し、これを実施することはできない。

そこで、これらの点につき、本願明細書の「発明の詳細な説明」についてみるに、当該組成物の薬理作用に関しては、以下の記載がある。(【】内は段落番号を示す。)

「【0011】
凍結乾燥した細菌を含有する本発明の新規組成物は、本組成物が消化器系に達したとき、細菌の活力が回復されるような適切な技術手段で細菌を処理することによって調製され得る。その結果、本組成物の投与は腸内微生物叢を変化させ、微じゅう毛の膜酵素の発現に影響し、腸内上皮細胞及び関連構造の保全を促進する。本発明の組成物によって腸管内で行なわれる再平衡化作用は、次いで、蛋白質分解細菌叢(proteolytic flora)による望ましくない物質の生成を減少させ、全身系における内毒素の吸収を減少させ、更に、腸管壁によって生成されるサイトカイン類(cytokines)及び糞便中に存在するサイトカインの量を変化させる。これらの働きの相乗作用によって、消化不良性全腸炎症候群(dyspeptic-enterocolitis syndromes)に関連した腸管運動性障害及び肝障害に苦しむ患者の臨床症状及び臨床試験パラメーターが改善される。
【0012】
本発明の目的組成物に存在する細菌は腸管内で生き残り、短時間でそこに集落を形成し、局所性及び全身性の免疫機構を刺激する。・・・ヒト及び細胞性免疫系を再活性化することによって、本組成物は、二次免疫欠損症又はストレス環境に関連した免疫学的変化の予防及び治療に使用しうる。
【0013】
本組成物に存在する幾つかの細菌株は、コレステロールを吸収することができるので、これらは、血中コレステロール低下作用及び抗アテローム硬化作用も有する。本組成物が血中のコレステロール値を低くする他の機構は、糞便中へのコレステロールの排泄の刺激である。
【0027】
微生物の数及び可能な汚染物質の両方を評価する目的で、個々の菌種及び最終混合物に微生物学的試験を行った。混合物を形成するバクテリアをカウントするために、以下の培地を使用した。 ・・・
可能な汚染物をカウントするために、以下の培地を使用した。・・・
混合物の微生物学的試験によって以下の平均値を得た。・・・
全微生物が組成物の一部となるので、成長及び濃度や乾燥の最適条件によって、高い充填を達成できることが、上の結果から結論され得る。
薬理学の部
健康なボランティア又は上述の病状の幾つかで苦しんでいるボランティアに対して試験を行ない、当該組成物の効果が証明された。
【0028】
これ以後は、実験室で行なわれる良好な通常の医学的手段に従って測定される幾つかのパラメータ、即ち、コレステロール、GOT、T CD4+リンパ球/CD8+リンパ球比、GPT、ガンマーGT及びNK(ナチュラルキラー)活性を示す。

コレステロール(mg/dl)
時間0 時間1 時間2 時間3
平均値 190.6 179.0 174.4 184.2
最大値 285.3 264.8 247.5 267.4
最小値 108.3 118.1 108.4 113.6
SD 59.9 44.7 44.0 54.3

GOT(IU/ml)
時間0 時間1 時間2 時間3
平均値 29.8 25.8 26.0 23.3
最大値 97.3 88.1 81.5 59.1
最小値 13.2 6.8 10.8 10.8
SD 23.1 22.0 19.1 13.7

・・・・・・・(中略)・・・・・・・・

NK活性(50:1)
時間0 時間1 時間2 時間3
平均値 60.8 87.8 59.1 51.8
最大値 74.0 100.0 65.0 63.0
最小値 48.0 69.0 42.0 30.0
SD 7.5 10.5 6.9 11.1 」

上記の【0011】?【0013】には、本願組成物が消化器系に達し、そこで生き残った場合の作用について記載されているが、これを客観的に確認するに足る具体的な説明はされていない。
また、【0027】?【0028】には、「薬理学の部」として組成物の効果が証明されたとして試験結果が示されているが、コレステロール等の各パラメータの測定はどのようなボランテイアに対して行われたのか(健康なボランテイアであるのか、疾患を有するボランテイアであればどのような疾患であるのか)、何名のボランテイアが測定対象とされたか、使用された組成物を調製するに当たりどのような乳酸菌菌株が使用されたのか、その濃度、配合比、投与形態、投与方法、投与量はどのようであったかについて何ら明らかにされていず、各試験結果における時間0、時間1、時間2、時間3の意味も不明であって、上記の試験結果から本願発明の組成物について何らかの薬理学的評価を行うことは不可能である。

さらに上記の段落に続く実施例(【0029】?【0038】)は、個々の微生物の培養、分離、凍結乾燥条件を具体的に記載するのみで、組成物の具体的処方やその処方により得られる薬理効果についての記載はない。そして、発明の詳細な説明全体を総合してみても、乳酸菌のうち特定の7種を特定の濃度、配合割合で混合して使用することの技術的な意義(【0011】に記載の「相乗作用」など)について理解することはできず、さらに、乳酸菌混合物が請求項8?14において特定される疾病を治療するための組成物の調製に使用しうることを当業者が理解するに足りる記載は見いだせない。

請求人は、上記の薬理学試験について、「40重量%のエス.テルモフィラス(S.thermophilus)、20重量%の、ビフィドバクテリウム・ロンガム(bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(bifidobacterium breve)、及びビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacterium infantis)の混合物、10重量%のエル.アシドフィラス(L.acidophilus)、15重量%のエス.フィシウム(S.faecium)、5重量%のエル.カセイ(L.casei)、5重量%のエル.ブルガリクス(L.bulgaricus)、及び5重量%のエル.プランタラム(L.plantarum)」の組成物を、18人の健康なボランティアに対し、1日あたり1グラム経口投与し、投与前(時間0)、投与1週間後(時間1)、投与2週間後(時間2)、治療を中断して2週間後(時間3)の各時間において、6種類のパラメータ(コレステロール、GOT、CD4とCD8の比、GPT、ガンマーGT、NK活性)が評価されているとし、このデータは、本発明の組成物が、腸内細菌叢を正常化することができるとともに、肝臓および免疫系に毒性がないことを示していると主張し、疾患を肝疾患に限定する補正案についても言及しているが、単に健康人に対し毒性がないことをもって疾病の治療に利用できることが裏付けられるものではないし、そもそも本願明細書の記載から上記の試験プロトコール自体も読み取ることはできない。
また、特定の濃度、配合割合で複数種の乳酸菌を使用する点に関し、請求人は、細菌の生理学的活性および代謝活性は、菌株特異的であり、同一種の菌株でも、同じ酵素活性/効果を示さないことがあるため、本発明では、9種類の特定の種の乳酸菌が、本発明の技術的効果を有することを保証するように、2つのパラメーター(パーセンテージと濃度)を規定し、パーセンテージと濃度を変動させることにより、前述の種の範囲内での相違を補っているとするが、発明の詳細な説明には、9種類の種で特定された乳酸菌の濃度と配合比率を規定すれば何故菌株特異的な活性や効果が保証されることについての合理的な説明も具体的な裏付けもなされていないことは上記したとおりである。

したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、本願発明を当業者が容易に実施できる程度に発明の構成、効果を記載したものとは認められない。

4.結論
以上のとおりであるから、本願は特許法第36条第4項の規定を満たしていない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-08 
結審通知日 2008-09-09 
審決日 2008-09-29 
出願番号 特願平4-334600
審決分類 P 1 8・ 531- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大久保 元浩  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 穴吹 智子
瀬下 浩一
発明の名称 凍結乾燥された乳酸菌を含有する栄養学的及び/又は薬学的組成物、それらの調製及び使用  
代理人 橋本 良郎  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 村松 貞男  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 村松 貞男  
代理人 橋本 良郎  

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