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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1192790 |
審判番号 | 不服2008-1594 |
総通号数 | 112 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-01-21 |
確定日 | 2009-02-09 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 64421号「結像レンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月17日出願公開、特開平11-249008〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成10年2月27日に出願された特願平10-64421号として出願されたものであって、平成19年7月24日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月10日付けで手続補正がなされ、同年12月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年1月21日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明について 1.本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、「結像レンズ」に関するものであり、平成19年9月10日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 物体側から順に平凹レンズもしくは両凹レンズ、ならびに両凸レンズを配列してなる前群と、絞りと、正の屈折力を有する後群とを物体側からこの順に配設し、結像面に対し、該後群のみを移動させることによってフォーカシングを行う結像レンズであって、全てのレンズが単レンズからなることを特徴とする結像レンズ。 【請求項2】 前記全てのレンズは、両面が共に球面で構成されたものであることを特徴とする請求項1記載の結像レンズ。 【請求項3】 前記後群が、物体側から順に、像面側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ、像面側に凹面を向けた負のメニスカスレンズおよび両凸レンズを配列してなることを特徴とする請求項1または2記載の結像レンズ。 【請求項4】 物体側から順に像面側に凹面を向けた負の平凹レンズもしくは両凹レンズ、ならびに両凸レンズを配列してなる前群と、絞りと、物体側から順に像面側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ、像面側に凹面を向けた負のメニスカスレンズおよび両凸レンズを配列してなる正の屈折力を有する後群とを物体側からこの順に配設し、全てのレンズが単レンズからなることを特徴とする結像レンズ。 【請求項5】 前記全てのレンズは、両面が共に球面でされたものであることを特徴とする請求項4記載の結像レンズ。 【請求項6】 前記後群の正のメニスカスレンズの焦点距離f_(3)が下記条件式(1)を満足することを特徴とする請求項3?5のうちいずれか1項記載の結像レンズ。 1.4<f_(3)/f<4.2 …(1) ただし、fは全系の焦点距離」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-122634号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (a)「【請求項1】 物体側より順に、負のパワーを有する前群レンズ、明るさ絞り、正のパワーを有する後群レンズからなる内視鏡用対物レンズにおいて、 上記前群レンズ中の少なくとも一面が、ガラスレンズ表面に付着した透明部材層からなる複合型非球面であり、 上記透明部材層を付着させたガラスレンズの屈折率nが、 n>1.65 であること、を特徴とする内視鏡用対物レンズ。 ・・・ 【請求項4】 請求項1から3のいずれか一項において、上記前群レンズは負のパワーを有する第1レンズ群からなり、上記後群レンズは、正のパワーを有する第2レンズ群、および正のパワーを有する第3レンズ群からなること、を特徴とする内視鏡用対物レンズ。」 (b)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、内視鏡、硬性鏡などに用いる対物レンズに関する。」 (c)「【0014】実施例3(図5)は、第1レンズ群Iのガラスレンズの最終面に非球面樹脂層を形成したことに特徴を有する。つまり、最も物体側にガラスレンズ31を配置し、その像側面 NO.2に、合成樹脂材を付加してプレス加工した透明樹脂層32を設け、透明樹脂層の像側面 NO.3を非球面としてある。明るさ絞り33sは、第1レンズ群Iと第2レンズ群IIとの間に配置してある。」 (d)「【0040】[実施例3] ** 【表3】 F_(NO)=2.9 f=0.80 M=-0.075 W=50 f_(B)=0.51 面 NO. r d n_(d) ν_(d) 1 ∞ 0.69 1.88300 40.8 2 0.900 0.40 1.52010 50.8 3 * -1.749 0.12 - - 絞り ∞ 0.20 - - 4 -0.927 0.31 1.80400 46.6 5 -0.554 0.19 - - 6 3.658 0.30 1.80518 25.4 7 0.740 0.70 1.72916 54.7 8 -1.659 - - - *は非球面 NO.3 : K=16.69143、A4=-0.15881、A6=5.10610」 (e)上記(c)、(d)および第5図の記載から、対物レンズが、物体側から順に、像面側に凹面を向けた負の平凹レンズと両凸レンズとからなる接合レンズである第1レンズ群Iと、明るさ絞り33Sと、像面側に凸面を向けた正のメニスカスレンズである第2レンズ群IIと、像面側に凹面を向けた負のメニスカスレンズおよび両凸レンズとからなる接合レンズである第3レンズ群IIIとを物体側からこの順に配設したものであることが見て取れる。 上記記載を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「物体側より順に、負のパワーを有する前群レンズ、明るさ絞り、正のパワーを有する後群レンズからなる内視鏡用対物レンズにおいて、 上記前群レンズは負のパワーを有する第1レンズ群からなり、上記後群レンズは、正のパワーを有する第2レンズ群、および正のパワーを有する第3レンズ群からなり、 上記第1レンズ群は、像面側に凹面を向けた負の平凹レンズと両凸レンズとからなる接合レンズであり、上記第2レンズ群は、像面側に凸面を向けた正のメニスカスレンズであり、上記第3レンズ群は、像面側に凹面を向けた負のメニスカスレンズおよび両凸レンズとからなる接合レンズである、内視鏡用対物レンズ。」 3.対比 本願の請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という)と引用発明とを対比する。 引用発明の「前群レンズ」、「明るさ絞り」、「正のパワーを有する後群レンズ」及び「内視鏡用対物レンズ」は、それぞれ、本願発明の「前群」、「絞り」、「正の屈折力を有する後群」及び「結像レンズ」に相当する。 引用発明の「像面側に凹面を向けた負の平凹レンズと両凸レンズとからなる接合レンズ」である「負のパワーを有する第1レンズ群」からなる「前群レンズ」と、本願発明の「像面側に凹面を向けた負の平凹レンズもしくは両凹レンズ、ならびに両凸レンズを配列してなる前群」とは、「像面側に凹面を向けた負の平凹レンズ、ならびに両凸レンズを配列してなる前群」である点で一致する。 引用発明の「像面側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ」である「第2レンズ群」及び「像面側に凹面を向けた負のメニスカスレンズおよび両凸レンズとからなる接合レンズ」である「第3レンズ群」からなる「後群レンズ」と、本願発明の「物体側から順に像面側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ、像面側に凹面を向けた負のメニスカスレンズおよび両凸レンズを配列してなる正の屈折力を有する後群」とは、「物体側から順に像面側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ、像面側に凹面を向けた負のメニスカスレンズおよび両凸レンズを配列してなる正の屈折力を有する後群」である点で一致する。 よって、本願発明と引用発明とは、 「物体側から順に像面側に凹面を向けた負の平凹レンズ、ならびに両凸レンズを配列してなる前群と、絞りと、物体側から順に像面側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ、像面側に凹面を向けた負のメニスカスレンズおよび両凸レンズを配列してなる正の屈折力を有する後群とを物体側からこの順に配設した結像レンズ。」の点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 本願発明では、全てのレンズが単レンズからなるのに対して、引用発明では、前群を構成する第1レンズ群が、像面側に凹面を向けた負の平凹レンズと両凸レンズとからなる接合レンズであり、後群の一部を構成する第3レンズ群が、像面側に凹面を向けた負のメニスカスレンズおよび両凸レンズとからなる接合レンズである点。 4.判断 上記相違点について検討する。 接合レンズを構成する際に、個々のレンズを接合せずに僅かに間隙を設けて配置すること、すなわち、個々のレンズを単レンズとして分離して配置することは、例えば特開平8-122667号公報(段落【0058】参照)、特開平7-20378号公報(【請求項1】および段落【0007】参照)、特開昭57-151910号公報(公報第1頁左下欄第6?8行参照)、および、特開昭54-30821号公報(公報第1頁左下欄第9?13行参照)に記載されるように周知であり、結像光学系を構成する際に、接合レンズを、個々のレンズを接合して構成するか、個々のレンズを接合せずに僅かに間隙を設けて配置するかは必要とする色収差特性等に応じて当業者が適宜選択しうることであるから、引用発明において、第1レンズ群および第3レンズ群の接合レンズにおける個々のレンズを単レンズとして分離して配置することは当業者が容易に想到しうることである。 そして、本願発明の作用効果は引用発明及び周知技術から当業者が予期できたものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-12-01 |
結審通知日 | 2008-12-04 |
審決日 | 2008-12-16 |
出願番号 | 特願平10-64421 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 原田 英信 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
安田 明央 吉野 公夫 |
発明の名称 | 結像レンズ |
代理人 | 川野 宏 |