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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1192821
審判番号 不服2007-14513  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-21 
確定日 2009-02-12 
事件の表示 平成11年特許願第 73087号「チップ型発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月29日出願公開、特開2000-269551〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年3月18日に特許出願したものであって、平成18年6月5日に手続補正がなされ、平成19年4月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月21日に拒絶査定不服審判請求がなされたところ、平成20年9月1日付けで当審において拒絶理由が通知されたものである。

そして、その請求項に係る発明は、平成18年6月5日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。

「【請求項1】基板と、該基板に搭載される発光ダイオード(LED)素子と、上下に貫通する上面視円形状の開口を有し、該開口部の内壁が傾斜面からなり、該傾斜面で前記LED素子を中央に囲むように前記基板上に載置されるリフレクタと、を備えるチップ型発光装置において、前記リフレクタの傾斜面は、LED素子の発光部より上側に、傾斜角の異なる少なくとも2つ以上の反射面を上方に連接して多面状に形成され、前記反射面のそれぞれは、前記LED素子の発光中心からの光を当該反射面の中腹部分で直上方向に反射するとともに、前記中腹部分の下方で前記開口部の内側に向けて反射するように選定されていることを特徴とするチップ型発光装置。」(以下「本願発明」という。)


2.刊行物の記載事項
本願出願前に頒布され、当審において通知した拒絶の理由に引用された刊行物である実願昭53-158502号(実開昭55-74065号)のマイクロフィルム(以下「引用刊行物1」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。

ア 「本案は発光ダイオード表示器に係り、特に製造容易な明るい薄型の発光ダイオード表示器に関するものである。
従来発光ダイオード表示器においては、第1図(a)に示す如く基板(10)の上に発光ダイオード(19)を載置し、その発光ダイオード(19)を囲繞する反射枠(11)を基板(10)上に設けていた。」(第1頁第11?17行)

イ 反射枠(11)は、その内壁が傾斜面からなっていること、そして、前記反射枠(11)の傾斜面は、発光ダイオード(19)の発光部より上側に、傾斜角の異なる2つの反射面を上方に連接して多面状に形成されていること、が第1図(a)から見て取れる。

よって、これらの記載を総合すると、引用刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「基板と、該基板の上に載置される発光ダイオードと、前記発光ダイオードを囲繞し、基板上に設けられ、その内壁が傾斜面からなっている反射枠と、を備える発光ダイオード表示器において、前記反射枠の傾斜面は、発光ダイオードの発光部より上側に、傾斜角の異なる2つの反射面を上方に連接して多面状に形成されている発光ダイオード表示器。」


同じく、本願出願前に頒布され、当審において通知した拒絶の理由に引用された刊行物である特開平1-143368号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。

ウ 「2.特許請求の範囲
(1)少なくとも1つの発光素子と、該発光素子に電力を供給するリード部と、前記発光素子の発光面側に前記発光素子と対向して設けられ且つ複数の平面状の反射面を全体形状が凹面状になるように接合してなり、前記発光素子が発する光を反射する凹面状反射面とを具備し、前記発光素子が発する光を一度前記凹面状反射面で反射した後に外部に放射するように構成したことを特徴とするLED表示素子。
(2)前記凹面状反射面は放物面状であり、前記発光素子は前記凹面状反射面の焦点に配置されたものである特許請求の範囲第1項記載のLED表示素子。
(3)前記各反射面は、前記発光素子の各反射面に対する各鏡映点が、各反射面の中央部を通る中心軸であって且つ前記凹面状反射面の中心軸と平行な中心軸上にあるように配置されているものである特許請求の範囲第1項又は第2項記載のLED表示素子。
(4)前記各反射面の大きさは、前記凹面状反射面の中心軸上に設けられた前記発光素子の前記各反射面に対する鏡映点を原点とし、該原点を通る前記中心軸に平行な軸に対して0度乃至35度以内にのもの(審決注:「35度以内のもの」の誤記と認められる。)である特許請求の範囲第1項乃至第3項の何れかに記載のLED表示素子。
(5)前記発光素子と前記リード部とは光透過性材料でモールドされている特許請求の範囲第1項乃至第4項の何れかに記載のLED表示素子。」(第1頁左下欄第4行?同頁右下欄第12行)

エ 「〔産業上の利用分野〕
本発明は、特に発光ダイオードを光源として用いたLED表示素子の改良に関するものである。」(第2頁左上欄第3?5行)

オ 「〔実施例〕
以下に本発明の第1の実施例を第1図乃至第4図を参照して説明する。・・・(中略)・・・。
第1図乃至第4図において1は発光ダイオード、2は透明ガラス基板、3及び4は回路パターン、5はワイヤ、6は反射部材、7は反射部材6に設けられた凹面状反射面であり、9つの平面状の反射面7a?7iを全体形状が凹面状になるように接合したものである。たとえば、反射部材6は平板状の樹脂であり、その平板状の樹脂に9つの平面によって凹面部を形成し、その凹面部を鍍金や金属蒸着等により鏡面加工して各反射面7a?7iとしたものである。1a?1iは発光ダイオード1の各反射鏡7a?7iに対する各鏡映点、8は光透過性樹脂、XはLED表示素子の中心軸である。・・・(中略)・・・。また、発光ダイオード1を覆うように反射部材6の凹面状反射面7が取り付けられ、凹面状反射面7を構成する各反射面7a?7iは、第2図に示すように発光ダイオード1の各反射面7a?7iに対する各鏡映点1a?1iが、各反射面7a?7iの中央部を通り且つ中心軸Xに平行な中心軸Xa?Xi(点線部)上にあるように配置されている。また、各反射面7a?7iの面の大きさは、第3図に示すように見掛け上の発光点(鏡映点1a?1i)を原点にして各中心軸Xa?Xiに対し角度35度の範囲内となるように形成されている。そして、透明ガラス基板2と凹面状反射面7との中空部には光透過性樹脂8が充填されている。・・・(中略)・・・。
上記の構成によれば、透明ガラス基板2に形成された回路パターン3・4とワイヤ5とにより発光素子1に電力が供給され、発光ダイオード1が発光する。そして、発光ダイオード1が発する光は第3図の矢印に示すように反射面7a?7iにより写し出された見掛け上の発光点(鏡映点1a?1i)から光が外部に放射される。また、各反射面7a?7iの面の大きさは、第3図に示すように見掛け上の発光点(鏡映点1a?1i)を原点にして各中心軸Xa?Xiに対し角度35度の範囲内となるように形成されている。従って、放射される光の角度は、見掛け上の発光点1a?1iを基準にして各中心軸Xa?Xiに対し角度35度の範囲内であるので、発光ダイオード1が放射する光をほぼ損失なく有効に外部に放射することができる。」(第3頁右上欄第11行?第4頁左上欄第14行)

カ 「第5図は本発明の第2の実施例の概略断面図であり、第6図はその光路図である。・・・(中略)・・・。
本発明の第2の実施例は、上記第1の実施例の反射面7a?7iを細分化して、発光ダイオード1を焦点とする放物面の疑似面を形成したものである。これにより中心軸Xと平行な方向への集光率が高まると共に、使用する発光ダイオード1が一個であるにもかかわらず見掛け上は多数個の発光ダイオード1を作り出すことができる。・・・(中略)・・・。
尚、上記の実施例では、凹面状反射面7は平板状の反射部材6に形成した場合について説明したが、・・・(略)・・・。」(第4頁右上欄第第19行?同頁右下欄第2行)

キ 複数の平面状の反射面は、「発光素子の各反射面に対する各鏡映点が、各反射面の中央部を通る中心軸であって且つ前記凹面状反射面の中心軸と平行な中心軸上にあるように配置されている」から(上記摘記事項ウ(3)参照。)、前記複数の平面状の各反射面は、発光ダイオード1からの光を、該複数の平面状の各反射面の中央部でLED表示素子の中心軸Xと平行な方向に反射するとともに、前記平面状の各反射面における前記中央部の下方で該LED表示素子の中心軸X側(内側)に向けて反射するものであることは、第3図に示された光路図から明らかである。

よって、これらの記載を総合すると、引用刊行物2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「発光ダイオードの発光面側に、該発光ダイオードと対向して設けられ且つ複数の平面状の反射面を全体形状が凹面状になるように接合してなり、前記発光ダイオードが発する光を反射する凹面状反射面、を具備してなるLED表示素子において、該複数の平面状の各反射面は、前記発光ダイオードが発する光を該複数の平面状の各反射面の中央部で該LED表示素子の中心軸Xと平行な方向に反射するとともに、前記中央部の下方で該LED表示素子の中心軸X側(内側)に向けて反射する構成となし、発光ダイオードが放射する光をほぼ損失なく有効に外部に放出することができるようにしたLED表示素子。」


3.対比、判断
本願発明と引用発明1を対比する。

ア 引用発明1の「基板」、「載置される」、「発光ダイオード」、「傾斜面」、「反射枠」、「発光ダイオード表示器」及び「発光ダイオードの発光部の上側」は、それぞれ本願発明の「基板」、「搭載される」、「発光ダイオード(LED)素子」、「傾斜面」、「リフレクタ」、「チップ型発光装置」及び「LED素子の発光部の上側」に相当する。

イ 引用発明1の「反射枠」は、「発光ダイオードを囲繞し、基板上に設けられ、その内壁が傾斜面からなっている」から、引用発明1は、本願発明の「上下に貫通する開口を有し、該開口部の内壁が傾斜面からなり、該傾斜面で前記LED素子を中央に囲むように前記基板上に載置されるリフレクタ」を備えている。

ウ 引用発明1の「前記反射枠の傾斜面は、発光ダイオードの発光部より上側に、傾斜角の異なる2つの反射面を上方に連接して多面状に形成され」なる事項は、本願発明の「前記リフレクタの傾斜面は、LED素子の発光部より上側に、傾斜角の異なる少なくとも2つ以上の反射面を上方に連接して多面状に形成され」なる事項と、「前記リフレクタの傾斜面は、LED素子の発光部より上側に、傾斜角の異なる2つの反射面を上方に連接して多面状に形成され」る点において一致する。

したがって、両者は、
「基板と、該基板に搭載される発光ダイオード(LED)素子と、上下に貫通する開口を有し、該開口部の内壁が傾斜面からなり、該傾斜面で前記LED素子を中央に囲むように前記基板上に載置されるリフレクタと、を備えるチップ型発光装置において、前記リフレクタの傾斜面は、LED素子の発光部より上側に、傾斜角の異なる2つの反射面を上方に連接して多面状に形成されるチップ型発光装置。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

相違点
[相違点1]
基板上に載置されるリフレクタの上下に貫通する開口の上面視形状が、本願発明は円形状であるのに対し、引用発明1は円形状であるかどうか不明な点。
[相違点2]
本願発明は、リフレクタの傾斜面をなす反射面のそれぞれが、LED素子の発光中心からの光を当該反射面の中腹部分で直上方向に反射するとともに、前記中腹部分の下方でリフレクタの開口部の内側に向けて反射するように選定されているのに対し、引用発明1は、当該反射面がそのように選定されているかどうか不明な点。

上記相違点につき検討する。
[相違点1]について
基板上に載置されるリフレクタの上下に貫通する開口の上面視形状を円形状とする半導体発光装置は本願出願前に周知であり(必要なら、特開平10-308535号公報(【0017】、図9)、特開平10-261821号公報(【0064】、図18、図19、【0003】、図22、図23、図24)参照。)、この周知技術を引用発明1に適用して上記[相違点1]に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に行うことができることである。
[相違点2]について
「発光ダイオードの発光面側に、該発光ダイオードと対向して設けられ且つ複数の平面状の反射面を全体形状が凹面状になるように接合してなり、前記発光ダイオードが発する光を反射する凹面状反射面、を具備してなるLED表示素子において、該複数の平面状の各反射面は、前記発光ダイオードが発する光を該複数の平面状の各反射面の中央部で該LED表示素子の中心軸Xと平行な方向に反射するとともに、前記中央部の下方で該LED表示素子の中心軸X側(内側)に向けて反射する構成となし、発光ダイオードが放射する光をほぼ損失なく有効に外部に放出することができるようにしたLED表示素子」の発明(引用発明2)は引用刊行物2に記載されており、発光ダイオードが放射する光をほぼ損失なく有効に外部に放出することができるようにするためにこの引用発明2を引用発明1に適用し、引用発明1において、リフレクタの傾斜面をなす反射面のそれぞれを、LED素子の発光中心からの光を当該反射面の中腹部分で直上方向に反射するとともに、前記中腹部分の下方でリフレクタの開口部の内側に向けて反射するように選定することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明によってもたされる効果は、上記引用発明1、引用発明2及び上記周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願発明は、引用刊行物1、引用刊行物2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物1、引用刊行物2に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-17 
結審通知日 2008-11-25 
審決日 2008-12-09 
出願番号 特願平11-73087
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 幸浩  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 岩本 勉
小牧 修
発明の名称 チップ型発光装置  
代理人 川崎 勝弘  

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