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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1192943
審判番号 不服2007-23700  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-29 
確定日 2009-02-16 
事件の表示 特願2002-180048「画像撮影装置及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月22日出願公開、特開2004- 23733〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成14年6月20日に出願されたものであって、平成19年5月1日付けで通知した拒絶理由により平成19年7月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成19年8月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1?13に係る発明は、平成19年7月6日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1?13に記載されたとおりのものと認められるところ、特許請求の範囲の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項3】 撮像素子によって被写体像を撮影する画像撮影装置であって、
撮影者が予め自らの生体情報を登録する登録手段と、
前記生体情報を記憶する記憶手段と、
前記生体情報を撮影画像に記録する個人データ記録手段とを有し、
前記個人データ記録手段は、撮影者が撮影画像を前記画像撮影装置より他の受像装置へ転送する指示動作に伴って、前記画像撮影装置の電源が入れられてから撮影された、もしくは、記録する生体情報が変更されてから撮影された、撮影済みの画像に生体情報の記録を実行することを特徴とする画像撮影装置。」
(以下、「本願発明」という。)

3.引用刊行物

原審が拒絶の理由に引用した特開2001-144937号公報(刊行物1)には、図面とともに次の各記載がある。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像データに電子透かしを用いてデータを埋め込む画像処理装置であって、
ユーザの身体的特徴から画像処理装置のユーザを識別する識別手段と、
前記識別手段に基づいて埋め込みを行う複数のモードから埋め込みを行う一つのモードを選択する選択手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】 前記識別手段はユーザの指紋パターン、声紋パターン、虹彩(又は網膜)パターンに基づいて識別を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
(中略)
【請求項6】 前記選択手段は前記識別手段により認証されたユーザのみが状況に応じて埋め込まれるデータを選択できることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項7】 ユーザを識別する識別手段と、
複数のユーザに対する電子透かしの埋め込みの設定情報を保持する保持手段と、
前記識別手段の識別結果に応じて前記設定手段の一つを選択し、該設定情報に基づいて入力画像データに電子透かしの埋め込みを行う、埋め込み手段とを有することを特徴とする画像処理装置。」

(イ)「【0103】[第3の実施形態]第2の実施形態では種別や強度、埋め込む位置などの埋め込みモードを複数設定可能なディジタルスチルカメラを示し、説明した。第3の実施形態では、ディジタルスチルカメラのユーザと電子透かしの埋め込みモードを関連付け、予めユーザの身体的特徴を入力しておくことにより、撮影時のユーザの身体的特徴によってユーザを素早く、確実に識別し、対応する埋め込みモードに速やかに変更することが可能なディジタルスチルカメラの実施形態を示し、説明する。
【0104】人物の同定に使用可能な身体的特徴としては、指紋、音声パターン(声紋)、虹彩(又は網膜)パターンが一般的である。
【0105】指紋の検出には、例えば特開平10-289304号広報で提案されている指紋入力装置に使用されている2次元イメージセンサを、ディジタルスチルカメラのレリーズ釦周辺に設けることで実現できる。
【0106】また、音声パターン(声紋)を用いる方法はより公知である。
【0107】さらに、虹彩(又は網膜)パターンの検出は、本出願人による特開平7-323008号広報で提案しているように、ディジタルスチルカメラの視線検出装置のエリアセンサを利用すれば、虹彩パターン検出専用の部材を追加することなく実現可能である。
【0108】いずれの身体的特徴を用いるにしろ、予めユーザー毎に特徴を入力しておく必要があり、例えば図12に示すような入力画面を用意し、この状態で適当な釦を押下すれば、四角で囲まれたユーザーの情報として、その時のユーザの身体的特徴が入力されるようにしておけば良い。
【0109】図10は特に上記虹彩パターンを身体的特徴とする場合のフローチャート、図11はそれに対応する設定画面の表示例である。
【0110】図11(a)、(b)は図9(b)、(c)と内容的にはそれぞれ同一なので説明は省略する。
【0111】さて、図10のフローチャートにおいて、ディジタルスチルカメラのレリーズ釦がオンされると、図1、図8と同様のレリーズ動作を実行する(図1と同様のステップに関しては説明を省略する)。ステップS302では、視線検出装置を用いてファインダーに接眼しているユーザの虹彩パターンを検出する。詳細は特開平7-323008号広報を参照のこと。ここで、ユーザの身体的特徴として他のパラメータ、つまり上記の指紋パターンや音声パターン(声紋)を用いる場合にはこのステップS302で「ユーザの虹彩を入力」をそれぞれ、「ユーザの指紋を入力」、「ユーザの音声パターン(声紋)を入力」とすることで実現できることは言うまでもない。また、以下のステップにおいてそれぞれの身体的特徴に対応したパターンを用いて比較、識別を行うことも言うまでもない。
【0112】そして次のステップS303で、予め入力してある虹彩パターンと比較を行い、ユーザーの識別を行う。
【0113】該当する虹彩パターンが存在しない場合や識別に失敗した場合は、ステップS310、S311へ移行し、電子透かし動作を行うことなく撮影動作を終了する。
【0114】ユーザーの識別に成功した場合は、ステップS305あるいはステップS307あるいはステップS309のいずれかで該当する埋め込み動作を実行し、最終的にはステップS310、S311に移行して撮影動作を終了する。
【0115】上記フローチャートでは、ユーザーの識別をレリーズ動作中に行っている。身体的特徴がユーザの指紋や虹彩パターンの場合は、このタイミングでも問題ないが、音声パターン(声紋)の場合には時間的に余裕がないので、レリーズ動作に先立って、例えば電源投入時などにユーザー識別のタイミングを設けた方が良い。」

(ウ)「【0124】
【発明の効果】よって本発明は被写体別や撮影目的別に電子透かしの設定を変えたい場合や、あるいは1台のカメラを複数のユーザで共同で使用する際、個別の設定に変更したい場合などに、操作をより快適にする効果がある。」

以上の記載からみて、刊行物1には、次の(エ)なる発明が記載されていると認められる。

(エ)「ディジタルスチルカメラによって被写体像を撮影する画像処理装置であって、
ユーザが予め自らの生体情報である指紋パターン、声紋パターン、虹彩パターン、網膜パターンを登録する登録手段と、
前記ユーザの生体情報すなわち指紋パターン、声紋パターン、虹彩パターン、網膜パターンを保持する保持手段と、
前記生体情報すなわち指紋パターン、声紋パターン、虹彩パターン、網膜パターンを撮影された画像に記録するユーザ個人に関するデータを記録する手段とを有し、
前記ユーザ個人に関するデータを記録する手段は、ユーザもしくは画像処理装置の指示に従って、撮影済みの画像に生体情報すなわち指紋パターン、声紋パターン、虹彩パターン、網膜パターンの記録つまり埋め込みを実行する画像処理装置。」
(以下、これを「引用発明」という。)

4.対比

本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「ディジタルスチルカメラ」は、本願発明の「画像撮影装置」に相当する。
(2)引用発明の「ユーザ毎の身体的特徴、例えば、指紋、音声パターン(音紋)、虹彩(又は網膜)等に係る生体情報」(段落【0103】?【0115】の記載参照。)は、本願発明の「撮影者の生体情報」に相当する。
(3)引用発明の「複数のユーザに対する電子透かしの埋め込みの設定情報を保持する保持手段」(特許請求の範囲の請求項7の記載参照。)は、本願発明の「生体情報を記憶する記憶手段」に相当する。
(4)引用発明は、予め、ディジタルスチルカメラのユーザ毎に身体的特徴、例えば指紋、音声パターン(音紋)、虹彩(又は網膜)の特徴を入力し登録しておく機能を備えている(段落【0103】,【0108】,【0112】の記載参照。)から、引用発明は、本願発明の「生体情報を登録する登録手段」に相当する構成を備えているといえる。
(5)引用発明は、予め入力してある虹彩パターン(又は指紋パターン又は音声パターン)と現ユーザの虹彩パターン(又は指紋パターン又は音声パターン)を比較し、ユーザの識別を行い、本人識別が確認されたら画像データに虹彩パターン(又は指紋パターン又は音声パターン)に対応する電子透かしを埋め込む機能を備えている(特許請求の範囲の請求項1,2の記載、及び段落【0079】,【0097】,【0102】,【0114】の記載参照。)から、引用発明は本願発明の「生体情報を撮像画像に記録する個人データ記録手段」に相当する構成を備えているといえる。

そうすると、本願発明と引用発明は、
「撮像素子によって被写体像を撮影する画像撮影装置であって、
撮影者が予め自らの生体情報を登録する登録手段と、
前記生体情報を記憶する記憶手段と、
前記生体情報を撮影画像に記録する個人データ記録手段とを有し、
前記個人データ記録手段は、撮影者もしくは撮影装置の指示動作に伴って、撮影された撮影済みの画像に生体情報の記録を実行する画像撮影装置。」
である点において一致し、次の各点で相違する。

(相違点1)
「個人データ記録手段」によって撮像済みの画像に生体情報の記録が実行されるタイミングが、本願発明は「撮影者が撮影画像を画像撮影装置より他の受像装置へ転送する指示動作に伴って」行われるのに対し、引用発明ではユーザが被写体を撮影する際に撮影装置がユーザの識別に成功した時点で行われる点。
すなわち、本願発明と引用発明とでは、撮像済みの画像に対して生体情報が記録されるタイミングが相違する点。

(相違点2)
生体情報の記録が実行される対象画像が、本願発明は、「画像撮影装置の電源が入れられてから撮影された、もしくは、記録する生体情報が変更されてから撮影された、撮影済みの画像」であるのに対し、引用発明は、撮影済みのすべての画像である点。
すなわち、本願発明と引用発明とでは、生体情報を添付する対象画像の範囲が相違する点。

5.判断

(1)相違点1について

上記相違点1について検討する。
(i)ユーザの識別タイミングをレリーズ動作中またはレリーズに先立つ電源投入時等のいずれかに設定することにより、撮影装置をユーザの使い勝手の良いものとすることは、刊行物1の段落【0115】にその旨が記載されているように当業者における技術常識である。
(ii)メモリカードに付加情報用固定ファイル名を書き込むタイミングを、メモリカード装着時、電源オン時、電源オフ時、またはユーザの書込指示キー操作時のいずれかに設定することにより、固定ファイル名の書き込みタイミングをユーザの都合の良いものとすることは、例えば、原審が拒絶の理由に引用した特開2001-69454号公報(段落【0043】の記載参照。)にその旨が記載されているように周知な技術事項である。
(iii)画像データ送信時に、送信する画像データに認証データを付加して受信側に送信することは、例えば、原審が拒絶の理由に引用した特開平11-313237号公報にその旨が記載されているように周知の技術事項である。
(iv)画像を圧縮したデータとその付加情報とを関連づけて別々に記憶管理し、後のデータ通信時に圧縮画像データと付加情報を編集処理することは、例えば、原審が拒絶の理由に引用した特開平10-56610号公報にその旨が記載されているように周知な技術事項である。

すなわち、上記(i)に示されるように、ユーザの識別タイミングを何時に設定するかは、ユーザの撮影動作に支障を与えない範囲であれば何時でも良いことは自明かつ明白である。そして、同様のことは生体情報の記録タイミングについてもいえることは明らかである。また、上記(ii)に示されるように、メモリカードに付加情報用固定ファイル名を書き込むタイミングを何時に設定するかは、ユーザの撮影操作に支障を与えない範囲であれば何時でも良いことは自明かつ明白である。そして、同様のことは生体情報の記録タイミングについてもいえることは明らかである。
そして、上記(iii)に示されるように、画像データ送信時に画像データに認証データを付加して受信側に送信することは周知な技術事項であり、また、上記(iv)に示されるようにデータ通信時に圧縮画像データと付加情報を編集処理することも周知な技術事項である。

してみれば、引用発明に上記周知技術事項を適用して本願発明の如く「個人データ記録手段は、撮影者が撮影画像を画像撮影装置より他の受像装置へ転送する指示動作に伴って、撮影済みの画像に生体情報の記録を実行する」ことは当業者が適宜なし得ることである。

(2)相違点2について

上記相違点2について検討する。

(i)虹彩パターン等の個人情報をディジタル透かし情報として画像データに添付するか否かをユーザが自由に決定すること、すなわち生体情報を添付する画像対象範囲をユーザが自由に設定することは、例えば、原審が拒絶の理由に引用した特開平2001-94847号公報(段落【0033】?【0041】の記載、特に段落【0035】及び【0041】の記載参照。)にその旨の記載があるように、周知な技術事項である。

(ii)ディジタルスチルカメラの使用者に変更がある時、使用者の生体情報である虹彩パターン等を識別して使用者を特定し、画像データに現使用者の生体情報(虹彩パターン等)をディジタル透かし情報として画像データに添付することは、刊行物1及び原審が拒絶の理由に引用した特開2001-94847号公報に記載されている。
以上、(i)に示されるように、生体情報を付加する対象画像をユーザが自由に設定することは当業者の周知技術事項であり、また(ii)に示されるように、ディジタルスチルカメラの使用者に変更がある場合画像データに現使用者の生体情報を付加することも当業者の周知技術事項であるから、したがって、引用発明に上記周知技術事項を適用して本願発明の如く「画像撮影装置の電源が入れられてから撮影された、もしくは、記録する生体情報が変更されてから撮影された、撮影済みの画像に生体情報の記録を実行する」ことは当業者が適宜なし得ることである。

そして、本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

なお、本願発明は、電源が入れられる以前の過去に撮影された画像、及び生体情報に変更がある以前に撮影された画像については何らの特定をしていない。つまり、本願発明は、電源が入れられる以前の過去に撮影された画像、及び生体情報に変更がある以前に撮影された画像に対しては、生体情報を付加しないとの限定をしていないから、これは本願発明の構成ではなく、論点ではない。

これを論点とした場合、何ら限定していないのであるから、電源が入れられる以前に撮影された画像及び生体情報変更前に撮影された画像に対して、生体情報を記録する場合を含むと解釈される。
然るに、引用発明は、電源が入れられる以前と以後に撮影された画像、及び生体情報変更前に撮影された画像と変更後に撮影された画像のすべての画像について生体情報を記録するものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは共に、電源が入れられる以前と以後に撮影された画像、及び生体情報変更前に撮影された画像と変更後に撮影された画像のすべての画像について生体情報を記録する点では同じである。また、電源が入れられてから撮影された画像、もしくは生体情報が変更されてから撮影された画像に対して生体情報を記録することについても、本願発明と引用発明とでは全く同じである。故に、当該相違点は実質的に相違点とはならない。

また、本願発明も引用発明も、撮影者が画像撮像装置によって撮像された画像に撮影者を特定する情報を付加するものであるから、仮に本願発明が“電源が入れられる以前の過去に撮影された画像、及び生体情報に変更がある以前に撮影された画像に対しては、生体情報を付加しない”という限定をするものであっても、その目的を鑑みれば、「画像撮影装置の電源が入れられてから撮影された画像」のみを付加の対象とすることや「記録する生体情報が変更されてから撮影された、撮影済みの画像のみ」を対象とすることは、きわめて普通の発想でしかない。
よって、本願発明が仮にそのような限定をしたものであっても、そのような限定は当業者が容易に想考できることである。

したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-18 
結審通知日 2008-12-22 
審決日 2009-01-06 
出願番号 特願2002-180048(P2002-180048)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 曽我 亮司  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 加藤 恵一
畑中 高行
発明の名称 画像撮影装置及びその制御方法  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康徳  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康弘  
代理人 下山 治  
代理人 木村 秀二  
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