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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A62D
管理番号 1193049
審判番号 不服2006-1554  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-25 
確定日 2009-02-19 
事件の表示 特願2005-160105「ダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニルの分解方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月14日出願公開、特開2006-333986〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成17年5月31日の出願であって、平成17年12月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年1月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年2月23日に手続補正書が提出され、当審において平成20年9月16日付けで拒絶理由通知がなされ、その指定期間内の同年11月25日付けで意見書の提出及び手続補正がなされたもので、その請求項2に係る発明は、同年11月25日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。
「ダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニル(PCB)を含有する被処理物と硫黄と金属のイオン結合体である硫化物とを加圧した水蒸気中で反応させ、その後、沈殿分離して薬液と沈殿物を得ることによってダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニルを分解することを特徴とするダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニルの分解方法。」

2.引用文献の記載事項
これに対して、当審における、平成20年9月16日付けの拒絶の理由に引用した、本願の出願の日前に頒布された特開2001-47000号公報(以下、「引用文献」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「ハロゲン化有機化合物含有物を溶媒中にてアルカリ金属硫化物,アルカリ金属多硫化物,アルカリ土類金属硫化物及びアルカリ土類金属多硫化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硫黄供給源と反応させることによりハロゲン化有機化合物を分解処理することを特徴とするハロゲン化有機化合物含有物の処理方法。」(【請求項1】)
(イ)「溶媒が有機アミド,・・・及び水からなる群から選ばれるものである請求項1又は2記載のハロゲン化有機化合物含有物の処理方法。」(【請求項3】)
(ウ)「1.ハロゲン化有機化合物含有物
本発明において用いられるハロゲン化有機化合物含有物としては、ダイオキシン類,ポリ塩化ビフェニル(PCB)類・・・などのハロゲン化有機化合物を含有する物質が挙げられる。」(段落【0008】)
(エ)「反応温度は100℃以上が好ましく、130?300℃が更に好ましい。」(段落【0037】)
(オ)「実施例1
1LのオートクレーブにNメチル2ピロリドン400g,無水硫化ナトリウム7.8gを採り、次いで都市ごみ焼却炉から発生した飛灰100gを少量づつ攪拌しながら添加した。添加後徐々に200℃にまで温度をあげ、攪拌しながら1時間200℃に保持した。反応後室温にまで冷却し、ろ過を行い、固形分と液体成分に分離した。重金属の溶出量の測定は、分離した固形分を告示13号に準じて水抽出を行い、重金属の溶出試験を行った。結果を表1に示した。一方ダイオキシンの測定は液体成分と固形成分を別々に分析した。すなわち固体試料は厚生省マニュアルの灰のダイオキシン測定法に準拠し、また液体成分は水試料の測定法に準拠しダイオキシンを測定し、その両者の合計を反応に用いた灰の1g当たりのダイオキシン量として表1に示した。結果は重金属については埋立て基準を満足する値まで溶出を防止できた。ダイオキシンに関しては1ng/g以下(土壌に対する暫定基準値)にすることが出来た。」(【0038】)
(カ)「実施例5
1Lのフラスコ中にイオン交換水400g,二硫化ナトリウム5.5gを採り、次いで都市ごみ焼却炉から発生した飛灰100gを少量づつ攪拌しながら添加した。添加後徐々に100℃にまで温度をあげ、還流しながら5時間攪拌を続けた。反応後室温にまで冷却し、ろ過を行い、固形分と液体成分に分離した。重金属の溶出量の測定およびダイオキシンの測定は実施例1と同様にして行った。結果は表1に示すとおり重金属については埋立て基準を満足する値まで溶出を防止できた。ダイオキシンに関しては1ng/g以下(土壌に対する暫定基準値)にすることが出来た。」(【0042】)

3.引用文献に記載された発明
引用文献の記載事項(ア)には、「ハロゲン化有機化合物含有物を溶媒中にてアルカリ金属硫化物,アルカリ金属多硫化物,アルカリ土類金属硫化物及びアルカリ土類金属多硫化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硫黄供給源と反応させることによりハロゲン化有機化合物を分解処理する・・・ハロゲン化有機化合物含有物の処理方法。」が記載されている。
そして、前記「ハロゲン化有機化合物含有物の処理方法」における「ハロゲン化有機化合物」に関し、記載事項(ウ)に「本発明において用いられるハロゲン化有機化合物含有物としては、ダイオキシン類,ポリ塩化ビフェニル(PCB)類・・・などのハロゲン化有機化合物を含有する物質が挙げられる。」と記載されているから、引用文献には、前記「ハロゲン化有機化合物」をダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニル(PCB)類とすることが記載されているといえる。
また、前記「ハロゲン化有機化合物含有物の処理方法」における「溶媒」に関し、記載事項(イ)に「溶媒が・・・及び水からなる群から選ばれるものである」と記載されているから、引用文献には、前記「溶媒」を水とすることが記載されているといえる。
さらに、記載事項(カ)には、「100℃にまで温度をあげ、・・・反応後・・・、ろ過を行い、固形分と液体成分に分離」することが記載されている。
以上のことから、記載事項(ア)、(イ)、(ウ)及び(カ)を本願発明の記載振りに則して整理すると、引用文献には、「ダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニル(PCB)類を含有する物質とアルカリ金属硫化物、アルカリ金属多硫化物、アルカリ土類金属硫化物及びアルカリ土類金属多硫化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硫黄供給源とを水中にて100℃で反応させ、反応後、ろ過を行い、固形分と液体成分に分離することによりダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニル(PCB)類を分解処理するハロゲン化有機化合物含有物の処理方法」の発明(以下「引用文献発明」という。)が記載されていると認められる。

4.対比・判断
本願発明と引用文献発明とを対比する。
引用文献発明における「ダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニル(PCB)類を含有する物質」及び「アルカリ金属硫化物、アルカリ金属多硫化物、アルカリ土類金属硫化物及びアルカリ土類金属多硫化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の硫黄供給源」は、それぞれ、本願発明における「ダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニル(PCB)を含有する被処理物」及び「硫黄と金属のイオン結合体である硫化物」にそれぞれ相当する。
そして、引用文献発明の「ダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニル(PCB)類を分解処理するハロゲン化有機化合物含有物の処理方法」は、本願発明の「ダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニルを分解する・・・ダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニルの分解方法」に相当する。
また、引用文献発明における「ろ過」及び「固形分」は、本願発明における「沈殿分離」及び「沈殿物」と「分離」及び「固形物」の点で共通するから、引用文献発明において「反応後、ろ過を行い、固形分と液体成分に分離する」ことは、本願発明において「その後、沈殿分離して薬液と沈殿物を得」ることと「その後、分離して薬液と固形物を得」る点で共通する。
以上のことから、本願発明と引用文献発明は、「ダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニル(PCB)を含有する被処理物と硫黄と金属のイオン結合体である硫化物とを反応させ、その後、分離して薬液と固形物を得ることによってダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニルを分解するダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニルの分解方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点a:本願発明は、「加圧した水蒸気中で反応させ」るのに対して、引用文献発明は、「水中にて100℃で反応させる」点 、
相違点b:本願発明は、「沈殿分離して薬液と沈殿物を得」るのに対して、引用文献発明は「ろ過を行い、固形分と液体成分に分離する」点 。
以下、各相違点について検討する。
・相違点aについて
引用文献発明において「水中にて100℃で反応させる」点 は、「反応温度は100℃以上が好ましく、130?300℃が更に好ましい」(記載事項(エ))ことを達成するための唯一の手段ではなく、「1LのオートクレーブにNメチル2ピロリドン400g,無水硫化ナトリウム7.8gを採り、次いで都市ごみ焼却炉から発生した飛灰100gを少量づつ攪拌しながら添加した。添加後徐々に200℃にまで温度をあげ、攪拌しながら1時間200℃に保持した。」(記載事項(オ))とあるようにオートクレーブが用いられる処理が他の実施例として記載されており、オートクレーブが高圧化学反応器であって、水を媒体とした場合、100℃以上に加熱すれば加圧した水蒸気になることが周知であり、反応温度が高くなれば反応速度が向上することが一般的に知られているから、引用文献における他の実施例で用いられたオートクレーブを引用文献発明に採用し、100℃より高温の「加圧した水蒸気中で反応」させることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
・相違点bについて
本願発明でいう「沈殿分離」は、本願の出願当初の明細書を参照しても「次に、回収物を冷却し、沈澱分離し薬液と沈澱物を得る。ここでは、薬液130重量部と沈澱物20重量部を得ることができるた。」(【0034】)とあるだけで、固体と液体を分離すること以上の技術的意義は記載されておらず、そして、引用文献も実施例に限定されるものではなく、記載される「ろ過」は「固形分と液体成分に分離する」ための手段の例示といえるので、結局、両発明における固液分離手段の機能には本質的な相違がないというべきである。したがって、引用文献発明において「ろ過」を「沈殿分離」とすることは、当業者であれば容易に想到し得る周知手段の置換にすぎない。
そして、これらの相違点を採用することによって得られる本願発明の効果も格別のものとすることはできない。

5.むすび
本願発明は、引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-19 
結審通知日 2008-12-24 
審決日 2009-01-06 
出願番号 特願2005-160105(P2005-160105)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 幹  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 小川 慶子
斉藤 信人
発明の名称 ダイオキシン類又はポリ塩化ビフェニルの分解方法  
代理人 内野 美洋  
代理人 内野 美洋  
代理人 内野 美洋  
代理人 内野 美洋  

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