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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1193078
審判番号 不服2006-21353  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-22 
確定日 2009-02-19 
事件の表示 特願2002- 78566「電気二重層キャパシタ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月 3日出願公開、特開2003-282376〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年3月20日の出願であって、平成18年8月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年9月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年10月17日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成20年8月14日付けで審尋がなされ、同年10月17日に回答書が提出されたものである。

第2 平成18年10月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年10月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、補正前の請求項1は、補正後の請求項1として、
「【請求項1】
正極体と負極体とセパレータを交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、キャパシタ本体を電解液と共に密封する容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、
活性炭電極により挟持された集電極から前記負極体を構成し、
2つ折りにした前記セパレータの内側に挟み込まれた正極体の数よりも前記負極体の数を1つ多く設定し、
キャパシタ本体の積層方向の両端をともに前記負極体に設定して、
最外層に設定される前記負極体の集電極から外側には前記活性炭電極と前記セパレータを配置しないようにしたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。」と補正された。

2 特許法第17条の2第3項について
(1)本件補正によって、補正前の「前記負極体の数を正極体の数よりも1つ多く設定し」を補正後の「2つ折りにした前記セパレータの内側に挟み込まれた正極体の数よりも前記負極体の数を1つ多く設定し」とする補正(以下、「補正事項1」という。)がなされ、この補正について、請求人は、請求の理由において、「(2)補正の根拠の明示 本意見書と同日にした手続補正1の請求項1において「B:前記負極体の数を正極体の数よりも1つ多く設定し、」を「B:2つ折りにした前記セパレータの内側に挟み込まれた正極体の数よりも前記負極体の数を1つ多く設定し、」に補正した。 これは、段落[0016]の「セパレータ3は、セルロースなど紙から、2つ折りの内側に単位体4を1つずつ挟み込み可能に作成される。」と、段落[0020]の「最外層のセパレータ3は、本来の機能(1対の活性炭電極1a,2a間を隔てる)を果たすものでなく、省略しても差し支えはない。」という記載を補正の根拠とする。つまり、最外層のセパレータ3は省略され、セパレータ3を2つ折りにして単位体4を挟み込むのであるから、正極体1が2つ折りにされたセパレータ3によって挟み込まれる。」(第1頁下から4行目?第2頁第6行)と主張している。

(2)上記「2つ折りにした前記セパレータの内側に挟み込まれた正極体の数よりも前記負極体の数を1つ多く設定し」とする補正事項1は、「正極体」のみを「2つ折りにした前記セパレータの内側に挟み込」み、「負極体」は「2つ折りにした前記セパレータの内側に挟み込」まれない場合も含むことになる。

(3)本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の【0016】には、「正極体1および負極体2は、活性炭電極1a,2a(分極性電極)と集電極1b,2b(アルミ電極)とからなり、この例においては、集電極1b,2bの両面に活性炭電極1a,2aを一体化する3層構造の単位体4に形成される。セパレータ3は、セルロースなど紙から、2つ折りの内側に単位体4を1つずつ挟み込み可能に作成される。」と記載され、同【0020】には、「最外層のセパレータ3は、本来の機能(1対の活性炭電極1a,2a間を隔てる)を果たすものでなく、省略しても差し支えはない。・・・」と記載されている。
そして、本願の図1と図2及び【0016】によれば、単位体4は、正極体又は負極体のそれぞれを指すものであるから、【0016】の「2つ折りの内側に単位体4を1つずつ挟み込み可能に作成される。」とは、正極体と負極体の両方を別々に2つ折りにしたセパレータの内側に挟み込むことを意味すると解釈できても、単位体4のうち、2つ折りにしたセパレータの内側に正極体のみを挟み込み、負極体は挟み込まないことを意味するとは解釈できない。
よって、「正極体のみを2つ折りにした前記セパレータの内側に挟み込む」ことを技術的事項として含む、「2つ折りにした前記セパレータの内側に挟み込まれた正極体の数よりも前記負極体の数を1つ多く設定」することは、当初明細書等に記載がなく、また当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
したがって、補正後の請求項1の「2つ折りにした前記セパレータの内側に挟み込まれた正極体の数よりも前記負極体の数を1つ多く設定」すると補正することは、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、補正事項1についての補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものではない。

(4)以上のとおり、補正事項1を含む本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 独立特許要件について
本件補正において、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記負極体の数を正極体の数よりも1つ多く設定し」を「2つ折りにした前記セパレータの内側に挟み込まれた正極体の数よりも前記負極体の数を1つ多く設定し」と限定した点は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、仮に、上記補正事項1が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしているとした場合、補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)刊行物及び周知例の主な記載事項
(ア)刊行物1:特開2002-75802号公報
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1には、「電気二重層コンデンサ」(発明の名称)に関して、図1ないし図3とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は、引用箇所のうち特に強調する部分に付加した。以下、同様。)
「【0020】そして、以上のような活性炭表面での酸化反応が発生すると活性炭の組織が壊れて微粒子となって電解液中に移動し、漏れ電流の増加や短絡の原因ともなる。また、活性炭の組織が壊れるため、分極性電極そのものの電気抵抗が増大し、電気二重層コンデンサ全体としての内部抵抗増加の原因ともなる。」
「【0047】1)スタック構造の電気二重層コンデンサ素子
本発明に係るスタック構造の電気二重層コンデンサ素子を図1、図2並びに図3に示す。
【0048】このスタック構造電気二重層コンデンサ素子は、負極側分極性電極9と正極側分極性電極7をセパレータ5を挟んで対極させ複数層積層させたものである。複数層積層した際に正極側の分極性電極7のうち最も外層部となる分極性電極のさらに外側に、前記負極側の分極性電極9が配置される。負極側分極性電極9は、活性炭シートからなる2枚の分極性電極3をアルミニウム箔からなる集電体1を挟んで対極させる。正極側分極性電極7も負極側分極性電極と同様に、活性炭シートからなる2枚の分極性電極3をアルミニウム箔からなる集電体1を挟んで対極させる。このとき正極側の分極性電極7の活性炭シート3の面積は、負極側分極性電極9の活性炭シート3の面積より小さく形成してある。すなわち、活性炭シート3の一辺の長さを短くしておいて、正極側の分極性電極の縁部よりも常に内側となるように構成した。また、投影面積を除けば負極側分極性電極9と正極側分極性電極7とは同一種類の素材を同一の組成として用いている。また、分極性電極は活性炭で形成されているため、体積が同じであれば、表面積がほぼ同じになる。そのため,それぞれの分極性電極毎の静電容量もほぼ同じとなり、正極と負極での合成容量を考えた場合に損失が少ない。
【0049】また、このスタック構造の電気二重層コンデンサ素子の最外層は必ず集電体が配置されるようにし、活性端シート3は最外層とならない配置とした。活性炭シート3が最外層にあっても対向電極が無いため、コンデンサの静電容量に寄与しない。コンデンサの小型化のためには、最外層は必ず集電体が配置される方が望ましい。」
「【0052】実施例と比較例とを200℃で24時間減圧状態で乾燥し、吸着水分を十分に取り除いた後、水分含有量10ppm以下の電解液を含浸した後、ケースに入れて窒素雰囲気中で封止し、電気二重層コンデンサを得た。」
さらに、図1には、正極側分極性電極7と負極側分極性電極9を交互に積層して構成される電気二重層キャパシタにおいて、積層方向両端の電極を負極側分極性電極とし、負極側分極性電極の数を正極側分極性電極よりも1つ多く設定し、セパレータ5を最外層に配置しないことが示されている。
また、図2には、正極側分極性電極7と負極側分極性電極9を交互に積層して構成される電気二重層キャパシタにおいて、積層方向両端の電極を負極側分極性電極とし、負極側分極性電極の数を正極側分極性電極よりも1つ多く設定し、積層方向両端に配置される負極側分極性電極9の集電体1の外側には活性炭シート3を設けないようにして、最外層にセパレータ5を配置することが示されている。
以上から、刊行物1には、
「正極側分極性電極と負極側分極性電極とセパレータを交互に積層して構成される電気二重層コンデンサ素子と、電気二重層コンデンサ素子を電解液と共に密封するケースと、を備える電気二重層コンデンサにおいて、
活性炭シートにより挟持された集電体から前記負極側分極性電極を構成し、
正極側分極性電極の数よりも前記負極側分極性電極の数を1つ多く設定し、
電気二重層コンデンサ素子の積層方向の両端をともに前記負極側分極性電極に設定して、
最外層に設定される前記負極側分極性電極の集電体から外側には前記活性炭シートを配置しないようにしたことを特徴とする電気二重層コンデンサ。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(イ)周知例1:特開2001-244149号公報
本願の出願前に頒布された周知例1には、「積層型電気二重層コンデンサ」(発明の名称)に関して、図2及び図4とともに以下の事項が記載されている。
「【0025】次に、上記集電体2と分極性電極3、3との積層体を、導電体1の一部、具体的には、後述する導電体1の折り畳み部が突出するように2枚のセパレータ5、5内に収納する(工程(b)参照)。この時、セパレータ5内に収納される導電体1の幅は、端子6の幅となるよう、すなわち端子6の高さ分だけ集電体2および分極性電極3の積層体の辺がセパレータ5の辺よりも内側になるように配設されることが望ましい。」
「【0027】ここで、セパレータ5、5は、少なくとも導電体1が突出する辺間が開口し、特に、2枚のセパレータ5、5の一辺間が接触固定されたものであることが分極性電極3の位置ずれを防止する上で望ましく、具体的には、1枚のセパレータ5形成用の層状体を中央部で折り畳んで2枚としたもの、2枚のセパレータ5、5の少なくとも一辺間を接着したもの、2枚のセパレータを袋状体としたもの等が挙げられる。」
以上から、周知例1には、1枚のセパレータを折り畳んで2枚としたものの中に、集電体と分極性電極の積層体を収納することが記載されている。

(ウ)周知例2:特開2000-182895号公報
本願の出願前に頒布された周知例2には、「電気二重層キャパシタ」(発明の名称)に関して、図1ないし図3とともに以下の事項が記載されている。
「【0018】(実施例1)図1に示した形状を有するセパレータ1を各点線で示した折り返し点3で内側に折り込み、集電体4を2枚の分極シート6で挟み込んで構成した電極体を図2に示すように折り返し部2が形成されていない部分から電極引出部5のみを突き出させて包み込み、図3に示した断面を有する電気二重層キャパシタを作成した。かくして作成した電気二重層キャパシタを20個まとめて、収納用のケースに電極引出部5側を上にして、押し込み、収納して所望の電気二重層キャパシタを製造した。この収納時に、収納ケースに押し込んだが、各電気二重層キャパシタ間のずれは勿論、各電極引出部にもずれは認められなかった。」
以上から、周知例2には、セパレータを折り込んだ中に、集電体を2枚の分極シートで挟み込んで構成した電極体を包み込むことが記載されている。

(2)本願補正発明と引用発明との対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「正極側分極性電極」、「負極側分極性電極」、「電気二重層コンデンサ素子」、「ケース」、「電気二重層コンデンサ」、「活性炭シート」、「集電体」は、それぞれ本願補正発明の「正極体」、「負極体」、「キャパシタ本体」、「容器」、「電気二重層キャパシタ」、「活性炭電極」、「集電極」に相当する。
ゆえに、両者は、
「正極体と負極体とセパレータを交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、キャパシタ本体を電解液と共に密封する容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、
活性炭電極により挟持された集電極から前記負極体を構成し、
正極体の数よりも前記負極体の数を1つ多く設定し、
キャパシタ本体の積層方向の両端をともに前記負極体に設定して、
最外層に設定される前記負極体の集電極から外側には前記活性炭電極を配置しないようにしたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]本願補正発明は、「2つ折りにしたセパレータの内側に挟み込まれた正極体」との構成を備えているのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。
[相違点2]本願補正発明は、「最外層に設定される前記負極体の集電極から外側には」「セパレータを配置しないようにした」との構成を備えているのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

(ア)本願補正発明を特定する構成要素である「2つ折りにした前記セパレータの内側に挟み込まれた正極体の数よりも前記負極体の数を1つ多く設定し」では、正極体については「2つ折りにしたセパレータの内側に挟み込まれた正極体」と特定されているが、負極体については、セパレータに関して何ら特定されていないので、「負極体も2つ折りにしたセパレータの内側に挟み込まれる」場合と、「負極体は2つ折りにしたセパレータの内側に挟み込まれない」場合すなわち「正極体のみを2つ折りにしたセパレータの内側に挟み込む」場合の少なくとも2通りの解釈が可能で、どちらの場合も、本願補正発明に含まれる。
そこで、本願補正発明の解釈として、「負極体も2つ折りにしたセパレータの内側に挟み込まれる」場合について、以下に検討する。
[相違点1について]
(a)周知例1及び周知例2には、2つ折りにしたセパレータの内側に、集電体と分極性電極の積層体、又は、集電体を2枚の分極性電極で挟み込んで構成した電極体(本願補正発明の「正極体」及び「負極体」に相当。)を挟み込むことが記載されている。
(b)よって、引用発明におけるセパレータとして、2つ折りにしたセパレータを用い、その内側に正負両電極を挟み込み、引用発明が、本願補正発明のごとく「2つ折りにしたセパレータの内側に挟み込まれた正極体」との構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

[相違点2について]
(a)刊行物1の図1には、セパレータ5を最外層に配置しないことが示されている。
(b)電気二重層キャパシタにおけるセパレータは、正極体と負極体を分離するためのものであるから、最外層のセパレータが不要であることは、当業者にとって明らかであり、本願補正発明も本願明細書に「【0020】最外層のセパレータ3は、本来の機能(1対の活性炭電極1a,2a間を隔てる)を果たすものでなく、省略しても差し支えはない。」と記載されているように、同様の理由により省略したに過ぎない。
(c)よって、引用発明において、最外層のセパレータを省略し、引用発明が、本願補正発明のごとく、「最外層に設定される前記負極体の集電極から外側には」「セパレータを配置しないようにした」との構成を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(イ)仮に、上記2通りの解釈のうち「正極体のみを2つ折りにしたセパレータの内側に挟み込む」場合しか解釈できないとした場合について、念のため以下に検討する。
[相違点2について]
(a)刊行物1の図1には、セパレータ5を最外層に配置しないことが示されている。
(b)電気二重層キャパシタにおけるセパレータは、正極体と負極体を分離するためのものであるから、最外層のセパレータが不要であることは、当業者にとって明らかであり、本願補正発明も本願明細書に「【0020】最外層のセパレータ3は、本来の機能(1対の活性炭電極1a,2a間を隔てる)を果たすものでなく、省略しても差し支えはない。」と記載されているように、同様の理由により省略したに過ぎない。
(c)よって、引用発明において、最外層のセパレータを省略し、引用発明が、本願補正発明のごとく、「最外層に設定される前記負極体の集電極から外側には」「セパレータを配置しないようにした」との構成を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

[相違点1について]
(a)周知例1及び周知例2には、2つ折りにしたセパレータの内側に、集電体と分極性電極の積層体、又は、集電体を2枚の分極性電極で挟み込んで構成した電極体(本願補正発明の「正極体」及び「負極体」に相当。)を挟み込むことが記載されている。
(b)また、[相違点2について]において検討したとおり、引用発明において、本願補正発明のごとく、「最外層に設定される前記負極体の集電極から外側には」「セパレータを配置しないようにした」との構成を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(c)重量、体積の面からセパレータは重ねない方がよいことは明らかであるから、正極側分極性電極のみ2つ折りのセパレータで挟み込むことに格別の困難性は認められない。
(d)以上の点を考慮すれば、引用発明において、正極側分極性電極のみ2つ折りにしたセパレータの内側に挟み込み、引用発明が、本願補正発明のごとく「2つ折りにしたセパレータの内側に挟み込まれた正極体」との構成を備えるようにすることは、当業者が容易になし得たことである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知例1,2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、請求項1についての補正を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成18年10月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年9月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
正極体と負極体とセパレータを交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、キャパシタ本体を電解液と共に密封する容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、活性炭電極により狭持された集電極から前記負極体を構成し、前記負極体の数を正極体の数よりも1つ多く設定し、キャパシタ本体の積層方向の両端をともに前記負極体に設定して、最外層に設定される前記負極体の集電極から外側には前記活性炭電極と前記セパレータを配置しないようにしたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。」

第4 刊行物に記載された発明
刊行物1の記載事項及び刊行物1に記載された発明は、前記「第2 3(1)(ア)」に記載したとおりである。

第5 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「正極側分極性電極」、「負極側分極性電極」、「電気二重層コンデンサ素子」、「ケース」、「電気二重層コンデンサ」、「活性炭シート」、「集電体」は、それぞれ本願発明の「正極体」、「負極体」、「キャパシタ本体」、「容器」、「電気二重層キャパシタ」、「活性炭電極」、「集電極」に相当する。
ゆえに、両者は、
「正極体と負極体とセパレータを交互に積層して構成されるキャパシタ本体と、キャパシタ本体を電解液と共に密封する容器と、を備える電気二重層キャパシタにおいて、活性炭電極により狭持された集電極から前記負極体を構成し、前記負極体の数を正極体の数よりも1つ多く設定し、キャパシタ本体の積層方向の両端をともに前記負極体に設定して、最外層に設定される前記負極体の集電極から外側には前記活性炭電極を配置しないようにしたことを特徴とする電気二重層キャパシタ。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]本願発明は、「最外層に設定される前記負極体の集電極から外側には」「セパレータを配置しないようにした」との構成を備えているのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
[相違点1について]
(a)刊行物1の図1には、セパレータ5を最外層に配置しないことが示されている。
(b)電気二重層キャパシタにおけるセパレータは、正極体と負極体を分離するためのものであるから、最外層のセパレータが不要であることは、当業者にとって明らかであり、本願発明も本願明細書に「【0020】最外層のセパレータ3は、本来の機能(1対の活性炭電極1a,2a間を隔てる)を果たすものでなく、省略しても差し支えはない。」と記載されているように、同様の理由により省略したに過ぎない。
(c)よって、引用発明において、最外層のセパレータを省略し、引用発明が、本願発明のごとく、「最外層に設定される前記負極体の集電極から外側には」「セパレータを配置しないようにした」との構成を備えるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。

したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-12 
結審通知日 2008-12-16 
審決日 2009-01-05 
出願番号 特願2002-78566(P2002-78566)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01G)
P 1 8・ 575- Z (H01G)
P 1 8・ 561- Z (H01G)
P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑原 清  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 大澤 孝次
橋本 武
発明の名称 電気二重層キャパシタ  
代理人 後藤 政喜  

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