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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1193456
審判番号 不服2006-18457  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-24 
確定日 2009-03-13 
事件の表示 平成 8年特許願第332854号「IC用絶縁膜の作成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月19日出願公開、特開平10-163189〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年11月27日の出願であって、平成18年7月13日付で拒絶の査定がなされ、これに対し、同年8月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載の発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】 フロンガスと炭化水素ガスとの混合ガスを原料ガスとし、プラズマ重合により両ガスの共重合体から成る絶縁膜を成膜するIC用絶縁膜の作成方法。」

3.引用刊行物とその摘記事項
平成18年3月29日付の拒絶理由通知の拒絶の理由に引用した本願の出願前に頒布された下記の刊行物1には次の事項が記載されている。

刊行物1:特開平8-83842号公報(拒絶理由通知の引用文献1)

<刊行物1の摘記事項>
a.「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の半導体装置は、従来の層間絶縁膜に変えて、非晶質炭素膜101を層間絶縁膜に用いたもので、図1にその構造の一例を示す。
【0006】この非晶質炭素膜は、フッ素を含有させなくても比誘電率が3以下になる低誘電率絶縁材料であり、フッ素を含有させることによって、さらに比誘電率を2.5程度まで低下させることが可能である。非晶質炭素膜の構造は、炭素原子が高度に架橋した構造になるため、ポリイミドよりも耐熱性が高く、さらに重合時に水分の発生が無く膜中水分が存在しないなどの優れた特徴を有している。
【0007】この非晶質炭素膜を半導体装置の層間絶縁膜に使用することにより、素子の信頼性を損ねることなく、配線遅延を減少させた半導体装置を実現することが可能となる。」

b.「【0008】
【作用】本発明で使用する非晶質炭素膜は、炭化水素系のモノマー分子をプラズマ化し、生成された炭素のラジカル分子、イオンなどを基板上で反応させて形成される。用いる原料モノマー分子はCH_(4)、C_(2)H_(4)、C_(2)H_(2)などの炭化水素系ガス、あるいはナフタリンなどの固体、液体分子を用いても良い。またそのとき同時にCF_(4)、C_(2)F_(8)、C_(2)F_(4)、C_(2)F_(2)、SF_(6)等のフッ素系ガスを流入させ、同様にプラズマでフッ素ラジカル、イオンを発生させて、非晶質炭素膜中にフッ素を含有させる。」

c.「【0013】次に具体的な実験例を示す。図1は、本発明の非晶質炭素膜を絶縁材料に用いることを特徴とした半導体装置の断面模式図である。
【0014】まず公知の技術でトランジスタをシリコン基板105上等に形成し、アルミニウム等の電極材料を堆積後、公知のリソグラフィ技術により配線にパターンを形成する。次にアルミニウム配線102、103が形成されたシリコン基板を図2のプラズマ装置中に設置する。
【0015】シリコン基板を設置したプラズマ装置に、CH_(4)、C_(2)H_(4)、C_(2)H_(2)等の炭化水素系ガスを流入させ、続いて電極に高周波電力を印加して放電させ、炭化水素系ガスをプラズマ化する。・・・そして生成された炭化水素のラジカル分子、イオン等を用いて、シリコン基板上に膜を堆積させる。
【0016】また膜中にフッ素を含有させる場合は、同時にCF_(4)、SF_(6)、C_(2)F_(4)、NF_(3)、C_(2)F_(6)などのフッ素系ガスを流入させて、同様にガスをプラズマ化してフッ素を含有させる。
【0017】CH_(4)ガスのみを10SCCM装置に流入させ、真空度0.1Torr、高温で高周波を50W印加させて、下部電極で成膜した場合の膜の比誘電率は2.9であった。同じ条件で高周波を100W印加すると比誘電率は3.2に上昇した。高周波電力を上昇させると、より膜の架橋が進み、比誘電率が上昇したと考えられる。続いて非晶質炭素膜中にフッ素を含有させた実施例を示す。下部電極に試料を設置して、CH_(4)ガスを5SCCM、CF_(4)ガスを50SCCMプラズマ装置中に流入させ、RF電力100Wを印加して成膜した場合、膜の誘電率は2.5まで低下した。この含フッ素非晶質炭素膜と、CH_(4)ガスのみを10SCCM流入させて高周波電力100Wで成膜した非晶質炭素膜の、2次イオン質量分析法による、深さ方向フッ素含有量評価の結果を図3に示す。フッ素を含有させた試料のフッ素含有量(a)は、含有させていないもの(b)に対して約2桁大きい。またこのフッ素含有量は炭化水素系ガスに対するフッ素系ガスの流量を変化させることによって制御することが可能である。炭化水素とフッ素ガスの流量比に対する膜中フッ素濃度の関係は図4のようになった。」

4.当審の判断
(1)刊行物1に記載の発明
上記刊行物1には、摘記事項aの段落0007の「非晶質炭素膜を半導体装置の層間絶縁膜に使用する」との記載、および、摘記事項bの段落0008の「CH_(4)、C_(2)H_(4)、C_(2)H_(2)などの炭化水素系ガス、・・・同時にCF_(4)、C_(2)F_(8)、C_(2)F_(4)、C_(2)F_(2)・・・等のフッ素系ガスを流入させ、同様にプラズマでフッ素ラジカル、イオンを発生させて、非晶質炭素膜中にフッ素を含有させる」との記載から、CH_(4)、C_(2)H_(4)、C_(2)H_(2)などの炭化水素系ガスをプラズマ化し、生成された炭素のラジカル分子、イオンなどを基板上で反応させて非晶質炭素膜を形成するとともに、同時にCF_(4)、C_(2)F_(8)、C_(2)F_(4)、C_(2)F_(2)等のフッ素系ガスを流入させ、同様にプラズマでフッ素ラジカル、イオンを発生させて、非晶質炭素膜中にフッ素を含有させることにより、比誘電率を低下させた非晶質炭素膜を形成し、この非晶質炭素膜を半導体装置の層間絶縁膜として用いることが記載されている。
上記記載によれば、炭化水素系ガスをプラズマ化し、非晶質炭素膜を形成するとともに、同時にフッ素系ガスを流入させてプラズマ化することにより、非晶質炭素膜にフッ素を含有させていることから、炭化水素系ガスとフッ素系ガスとの混合ガスをプラズマ化して、フッ素含有非晶質炭素膜を生成しているものと認められる。
さらに、CF_(4)、C_(2)F_(8)、C_(2)F_(4)、C_(2)F_(2)等のフッ素系ガスについては、本件審判請求人が拒絶理由に対する意見書に添付した甲第2号証(「化学大辞典」東京化学同人 1989 p2086)に記載されているように、塩素を含むクロロフルオロカーボンとともに、塩素を含まないフルオロカーボンも、慣用名として「フロン」が使用されていることからみて、刊行物1に記載のCF_(4)、C_(2)F_(8)、C_(2)F_(4)、C_(2)F_(2)等のフッ素系ガスは、慣用名の「フロン」ガスに該当するものである。
そうすると、刊行物1には、「炭化水素系ガスとフッ素系ガスであるフロンガスとを混合ガスとしてプラズマ化し、フッ素含有非晶質炭素膜を形成して、半導体装置の層間絶縁膜とする方法」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていることになる。

(2)対比・判断
本願発明1と刊行物1発明とを対比すると、摘記事項cの段落0013?0014の「図1は、本発明の非晶質炭素膜を絶縁材料に用いることを特徴とした半導体装置の断面模式図である。まず公知の技術でトランジスタをシリコン基板105上等に形成し、アルミニウム等の電極材料を堆積後、公知のリソグラフィ技術により配線にパターンを形成する」との記載からみて、刊行物1に記載の「半導体装置」には「トランジスタ」が含まれるから、上記「半導体装置」は本願発明1の「IC」に相当する。また、本願発明も、刊行物1発明も、ともに、同じ低誘電率絶縁膜を得ることを目的としている。

そうすると、両者は、「フロンガスと炭化水素ガスとの混合ガスを原料ガスとし、プラズマ化して絶縁膜を成膜するIC用絶縁膜の作成方法」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点
成膜される絶縁膜が、本願発明では、「プラズマ重合によるフロンガスと炭化水素ガスとの共重合体から成る絶縁膜」であるのに対し、刊行物1発明では、「フッ素含有非晶質炭素膜」である点。

検討
刊行物1発明のフッ素含有非晶質炭素膜は、3.bに摘記したように、炭化水素系ガスとフッ素系ガスとの混合ガスをプラズマ化して、フッ素含有非晶質炭素膜を生成しており、プラズマにより炭素のラジカル分子、イオン及びフッ素のラジカルを形成し、基板上で反応させて成膜している点で、本願発明が採用する製造方法によるものと同一の反応プロセスにより絶縁膜が形成されていると認められる。また、本願発明も、刊行物1発明も、ともに、同じ低誘電率絶縁膜を得るという同じ発明の効果を奏しており、膜質に違いがあるとは認められない。
この点に関し、出願人は塩素を含まない単なるフッ化炭素と、塩・フッ化炭素とで化学プロセスが異なる旨主張するが、フロンには、これら両者が含まれるので、この主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であって、採用できない。
よって、刊行物1発明のフッ素を含有する非晶質炭素膜を、本願発明の、プラズマ重合により両ガスの共重合体から成る絶縁膜とすることは、当業者が容易になし得るものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1発明から容易になし得るものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の請求項2、請求項3に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-19 
結審通知日 2007-11-27 
審決日 2007-12-10 
出願番号 特願平8-332854
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 淳一  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 真々田 忠博
小川 武
発明の名称 IC用絶縁膜の作成方法  
代理人 小林 良平  

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