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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200615564 審決 特許
不服200728660 審決 特許
不服200524685 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 4号方法の発明の実施に使用するもの。 特許、登録しない。 C07K
審判 査定不服 1号課題同一 特許、登録しない。 C07K
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C07K
管理番号 1193461
審判番号 不服2004-25112  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-09 
確定日 2009-03-06 
事件の表示 平成 6年特許願第516868号「β-アミロイドまたはその誘導体に対する抗体およびその用途」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 8月 4日国際公開、WO94/17197〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明1
本願は,1994年1月24日(優先権主張1993年1月25日,優先権主張1993年2月5日,優先権主張1993年11月16日及び優先権主張1993年12月28日,日本国)を国際出願日とする出願であって,平成16年10月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成16年12月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされたもので,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は,平成16年5月14日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,以下のとおりのものである。

「β-アミロイドのN端のアミノ酸から数えて25番目以降のアミノ酸配列を有する部分ペプチド;または
β-アミロイドのN端部のアミノ酸が1ないし17残基欠落したもの,L-アスパラギン酸がL-イソアスパラギン酸,D-イソアスパラギン酸もしくはD-アスパラギン酸に異性化したもの,およびN端部にピログルタミン酸を有するものから選ばれるβ-アミロイドの誘導体;のβ-アミロイドのN端のアミノ酸から数えて25番目以降のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する部分ペプチド;
に特異的に反応し,且つ
β-アミロイド(1-28)を認識しない
ことを特徴とする抗体」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された,本願優先日前に頒布された刊行物であるProc.Natl.Acad.Sci.USA,1990年5月,vol.87,p.3947-3951(以下,「引用例」という。)には,
「β-アミロイド配列の異なる部分に対応する合成ペプチドに対して抗体を作成した。これらの抗体はアルツハイマー病状態の海馬体において異なる種類のアミロイド分布を染色することから、β-アミロイド分子の凝集または折り畳みが異なる状態で存在すると考えられる。β-アミロイドの中央領域に対して作成された抗体は核を持たないアミロイド斑を主として染色したが、β-アミロイドのカルボキシル末端に対して作成された抗体は核を有するアミロイド斑のみを染色した。β-アミロイドのアミノ末端に対して作成された抗血清は、濃縮体を含む多くの細胞と物体、ならびにプラークの神経突起部分と神経網スレッドも染色した。これらの抗体を抗タウ抗体と組み合わせて用いることによって、アミロイド沈着と神経原線維濃縮体の間に密接な空間的関係性が示された。」(要約の欄)と記載され,
「材料と方法
抗体。いくつかのポリクローナル抗血清と1種類のモノクローナル抗体を、ヒトβ-アミロイドまたはタウタンパク質の異なる部分より誘導された合成ペプチドに対して作成し、これらを今回の研究全体で用いた(表1)。4G8は基本的にβ-アミロイドの17-24残基に対して作成されたモノクローナル抗体であり(35)、BR88とBR89はポリクローナルウサギ抗血清であって、それぞれβ-アミロイドのアミノ酸1-12と28-40番アミノ酸に対して作成されたものである(表1)」(3947頁最終段落)と記載されている。

3.対比
本願発明1と上記引用例に記載された発明を対比すると,本願発明1の抗体が,「β-アミロイドのN端のアミノ酸から数えて25番目以降のアミノ酸配列を有する部分ペプチド;またはβ-アミロイドのN端部のアミノ酸が1ないし17残基欠落したもの,L-アスパラギン酸がL-イソアスパラギン酸,D-イソアスパラギン酸もしくはD-アスパラギン酸に異性化したもの,およびN端部にピログルタミン酸を有するものから選ばれるβ-アミロイドの誘導体;のβ-アミロイドのN端のアミノ酸から数えて25番目以降のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する部分ペプチド;に特異的に反応し,且つβ-アミロイド(1-28)を認識しない抗体」であるのに対し,「BR89」と記載される抗体が,(1)「β-アミロイドのN端のアミノ酸から数えて25番目以降のアミノ酸配列を有する部分ペプチド;またはβ-アミロイドのN端部のアミノ酸が1ないし17残基欠落したもの,L-アスパラギン酸がL-イソアスパラギン酸,D-イソアスパラギン酸もしくはD-アスパラギン酸に異性化したもの,およびN端部にピログルタミン酸を有するものから選ばれるβ-アミロイドの誘導体;のβ-アミロイドのN端のアミノ酸から数えて25番目以降のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する部分ペプチド;に特異的に反応」すること,及び(2)「β-アミロイド(1-28)を認識しない」ことが,引用例に明記されていない点で一応相違している。

4.判断(新規性について)
上記相違点について検討する。
(1)引用例に記載されるBR89は,β-アミロイドの28-40番のアミノ酸配列を有するペプチド(以下,「β-アミロイド(28-40)」という。)に対して作成されたもので,β-アミロイドのN端のアミノ酸から数えて25番目以降のアミノ酸配列を有する部分ペプチドより,N端の3つのアミノ酸が短くなっているだけのものであり,しかもポリクローナル抗体であるから,該部分ペプチドとも特異的に反応する可能性が極めて高いものである。
(2)抗体と抗原の関係に,鍵と鍵穴の関係に例えられるような特異性があることは,よく知られたことで,引用例に記載されるBR89は,β-アミロイド(28-40)のN端の1つのアミノ酸が,β-アミロイド(1-28)のC端のアミノ酸と同じというだけで,その配列は相違しているのであるから,これを認識する可能性は極めて低いものである。
そうであるから,(1)(2)の点について,引用例に記載されるBR89は,本願発明1の抗体と相違はしていないものと推定することができる。そして,請求人は,BR89がβ-アミロイド(1-28)を認識する可能性があることを主張はしているが,該可能性は極めて低いものであって,請求人の主張は,BR89がβ-アミロイド(1-28)と交差反応することを明確に示しているものでないから,BR89は,本願発明1の抗体と同じであると認めざるを得ないものである。
したがって,本願発明1は,引用例に記載された発明と同じことになり,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許を受けることができない。

5.特許第37条に関して
(1)請求項8,12,15に係る発明について
請求項8,12及び15に係る発明(以下,「本願発明8」「本願発明12」及び「本願発明15」という。)は,以下の通りのものである。

「【請求項8】
配列番号:7で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドおよび(または)配列番号:10で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識することを特徴とするβ-アミロイドまたはβ-アミロイドのN端部のアミノ酸が1ないし17残基欠落したもの、L-アスパラギン酸がL-イソアスパラギン酸、D-イソアスパラギン酸またはD-アスパラギン酸に異性化したもの、N端部にピログルタミン酸を有するものから選ばれるβ-アミロイドの誘導体のN端側の部分ペプチドに特異的に反応する、受託番号FERM BP-4138で標示されるハイブリドーマ細胞から産生されるモノクローナル抗体。
【請求項12】
配列番号:7で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識せず、配列番号:12で表されるアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識することを特徴とするβ-アミロイドまたはβ-アミロイドのN端部のアミノ酸が1ないし17残基欠落したもの、L-アスパラギン酸がL-イソアスパラギン酸、D-イソアスパラギン酸またはD-アスパラギン酸に異性化したもの、N端部にピログルタミン酸を有するものから選ばれるβ-アミロイドの誘導体に特異的に反応する抗体。
【請求項15】
請求の範囲第1項記載の抗体を用いることを特徴とする被検液中のβ-アミロイドの定量法。」

(2)判断(特許法第37条について)
本願発明1を特定発明としたときに,引用例のみならず,審査において引用された他の先行技術文献にもβ-アミロイドの測定に用いることができる抗体が記載されているのであるから,本願発明1の解決しようとする課題が,本願発明8や12における解決しようとする課題と同一とはならないものである。請求人は,「本発明が解決しようとする真の課題は「β-アミロイドの優れた測定法を開発」すること(明細書第5頁第20行)であり、より具体的には「β-アミロイド(1-28)と交差反応することなしにβ-アミロイドを高感度にかつ特異的に検出」すること(明細書第4頁第14行)」であることを主張しているが,本願発明8の抗体は,β-アミロイド(1-28)を認識するものであり,本願発明1の抗体は,親和性が必ずしも高くなく,高感度にβ-アミロイドを検出できないものも包含しているし,本願発明12の抗体は,明細書67頁16-17行に記載されるように,β-アミロイド(1-40)と反応しないような,β-アミロイドの検出に利用できないものも包含しているのであるから,請求人の主張は採用できない。
また,請求人は,「補正後の請求項15は被検液中のβ-アミロイドの定量法であり、これが特定発明であるので、2)請求項8-11に係る発明、3)請求項12-14に係る発明も、この定量法のために必須の抗体に関する発明であるから、それぞれ特許法第37条に規定する要件を満たしている」と主張しているが,本願発明8の抗体も本願発明12の抗体も,本願発明15において必須のものとなっておらず,請求項1に記載の抗体を用いる本願発明15の方法における使用に適したものであるともいえない。
したがって,本願は,特許法第37条に規定するいずれの要件も満たしていない。

6.むすび
以上のとおり,本願発明1は,引用例に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定に該当し,特許を受けることができない。また,本願は,特許法第37条に規定するいずれの要件も満たしていない。

したがって,本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく,本出願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-17 
結審通知日 2008-12-09 
審決日 2008-12-26 
出願番号 特願平6-516868
審決分類 P 1 8・ 644- Z (C07K)
P 1 8・ 641- Z (C07K)
P 1 8・ 113- Z (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小暮 道明  
特許庁審判長 平田 和男
特許庁審判官 鵜飼 健
上條 肇
発明の名称 β-アミロイドまたはその誘導体に対する抗体およびその用途  
代理人 大多和 明敏  
代理人 大多和 曉子  

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