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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1193517 |
審判番号 | 不服2008-9840 |
総通号数 | 112 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-04-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-04-17 |
確定日 | 2009-03-02 |
事件の表示 | 特願2003- 47855「基板処理方法および基板処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 6672〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年(2003年)2月25日(国内優先権主張、平成14年4月19日)に出願した特願2003-47855号であって、平成19年9月26日付で拒絶理由が通知され、平成19年12月3日付で意見書とともに手続補正書が提出され、平成19年12月20日付で最後の拒絶理由が通知され、平成20年2月22日付で意見書とともに手続補正書が提出され、平成20年3月12日付で、平成20年2月22日付手続補正書でなされた手続補正に対して補正の却下の決定がなされ、同日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年4月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付で手続補正がなされたものである。 第2 平成20年4月17日付の手続補正についての補正の却下の決定について [補正の却下の決定の結論] 平成20年4月17日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 1 本件補正について 平成20年2月22日付手続補正書でなされた手続補正は、平成20年3月12日付の補正の却下の決定で却下されたため、本件補正は、平成19年12月3日付手続補正で補正された特許請求の範囲、明細書及び図面に対して、補正するものである。 本件補正により、特に、特許請求の範囲の請求項7に係る発明は、平成19年12月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載の、 「チャンバと、 このチャンバ内に配され、基板をほぼ水平に保持して回転する基板回転手段と、 上記チャンバ内に配され、上記基板回転手段により回転されている基板の下面に向けて処理液を吐出する下面処理液吐出ノズルと、 上記チャンバ内に配され、上記基板回転手段により回転されている基板の上面に向けて処理液を吐出する上面処理液吐出ノズルと、 上記基板回転手段により基板が回転されているときに、上記下面処理液吐出ノズルから処理液を吐出して基板の周縁部を処理する周縁部処理状態と、上記下面処理液吐出ノズルおよび上記上面処理液吐出ノズルから処理液を同時に吐出して基板の両面を処理する両面処理状態とを選択的に切り換えて実行する吐出制御手段とを備え、 上記周縁部処理状態において、上記下面処理液吐出ノズルから吐出される処理液が、エッチング液を含み、 上記両面処理状態において、上記下面処理液吐出ノズルおよび上記上面処理液吐出ノズルから吐出される処理液が、基板の表面に付着しているパーティクルを除去するためのパーティクル除去液を含むことを特徴とする基板処理装置。」が、 「チャンバと、 このチャンバ内に配され、基板をほぼ水平に保持して回転する基板回転手段と、 上記チャンバ内に配され、上記基板回転手段により回転されている基板の下面に向けて処理液を吐出する下面処理液吐出ノズルと、 上記チャンバ内に配され、上記基板回転手段により回転されている基板の上面に向けて処理液を吐出する上面処理液吐出ノズルと、 上記基板回転手段により基板が回転されているときに、上記下面処理液吐出ノズルから処理液を吐出して基板の周縁部を処理する周縁部処理状態と、上記下面処理液吐出ノズルおよび上記上面処理液吐出ノズルから処理液を同時に吐出して基板の両面を処理する両面処理状態とを選択的に切り換えて実行する吐出制御手段とを備え、 上記両面処理状態は、上記周縁部処理状態の前に、上記基板回転手段により回転されている基板の両面に洗浄液を吐出して洗浄するものであり、 上記周縁部処理状態において、上記下面処理液吐出ノズルから吐出される処理液が、エッチング液を含み、 上記両面処理状態において、上記下面処理液吐出ノズルおよび上記上面処理液吐出ノズルから吐出される洗浄液が、基板の表面に付着しているパーティクルを除去するためのパーティクル除去液を含み、このパーティクル除去液は、アンモニア水、過酸化水素水、および水の混合物からなることを特徴とする基板処理装置。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。 2 補正の目的について 上記補正は、 (1)両面処理状態について「上記両面処理状態は、上記周縁部処理状態の前に、上記基板回転手段により回転されている基板の両面に洗浄液を吐出して洗浄するものであ」る点を追加して限定する補正事項、 (2)両面処理状態における「処理液」を「洗浄液」とした補正事項、及び (3)パーティクル除去液について「このパーティクル除去液は、アンモニア水、過酸化水素水、および水の混合物からなる」点を追加して限定した補正事項、 からなる。 そして、上記の補正事項(1)は、両面処理状態の態様を具体的に限定するもの、上記の補正事項(2)は、「処理液」の用途を具体的にするもの、上記の補正事項(3)は、パーティクル除去液の成分を限定するものであり、いずれも、それぞれの発明特定事項についてその態様、用途、成分を具体化するものであるといえるから、いわゆる限定的減縮を目的とするものである。 すなわち、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下、単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に掲げる事項を目的とするものを含む。 2 独立特許要件違反についての検討 そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項7に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。 (1)本願補正発明 本願補正発明は、平成20年4月17日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載されている次の事項により特定されるものである。 「チャンバと、 このチャンバ内に配され、基板をほぼ水平に保持して回転する基板回転手段と、 上記チャンバ内に配され、上記基板回転手段により回転されている基板の下面に向けて処理液を吐出する下面処理液吐出ノズルと、 上記チャンバ内に配され、上記基板回転手段により回転されている基板の上面に向けて処理液を吐出する上面処理液吐出ノズルと、 上記基板回転手段により基板が回転されているときに、上記下面処理液吐出ノズルから処理液を吐出して基板の周縁部を処理する周縁部処理状態と、上記下面処理液吐出ノズルおよび上記上面処理液吐出ノズルから処理液を同時に吐出して基板の両面を処理する両面処理状態とを選択的に切り換えて実行する吐出制御手段とを備え、 上記両面処理状態は、上記周縁部処理状態の前に、上記基板回転手段により回転されている基板の両面に洗浄液を吐出して洗浄するものであり、 上記周縁部処理状態において、上記下面処理液吐出ノズルから吐出される処理液が、エッチング液を含み、 上記両面処理状態において、上記下面処理液吐出ノズルおよび上記上面処理液吐出ノズルから吐出される洗浄液が、基板の表面に付着しているパーティクルを除去するためのパーティクル除去液を含み、このパーティクル除去液は、アンモニア水、過酸化水素水、および水の混合物からなることを特徴とする基板処理装置。」 (2)引用例 ア 引用例1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前である平成14年3月29日に頒布された刊行物である特開2002-93891号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。(後述の「イ 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。) 「【0017】 【発明の実施の形態】以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を示す縦断面図である。この装置は、処理対象の半導体ウエハ(基板)Wに薬液や純水を用いた回転処理を施すためのものであり、薬液と廃液とを分離して排液する機能を備えている。 【0018】基板Wは、基板保持手段としてのスピンチャック1に水平姿勢で保持される。このスピンチャック1は、回転軸2の上端に一体回転可能に取り付けられた回転支持板としてのスピンベース3を有している。スピンベース3の上面には、基板Wの外周端縁を3箇所以上で保持する3個以上の基板保持部材4が、スピンベース3の周縁に沿って等間隔で立設されている。なお、図1以下では、図面が煩雑になることを避けるために、2個の基板保持部材4のみを示している。 【0019】各基板保持部材4は、基板Wの外周端縁を下方から支持する支持面4aと支持面4aに支持された基板Wの外周端面に当接して基板Wの移動を規制する案内立ち上がり面4bとを備えている。 【0020】回転軸2の下端付近には、ベルト伝動機構5などによって基板回転手段としての電動モーター6が連動連結されていて、電動モーター6を駆動することによって、回転軸2、スピンチャック1とともに、スピンチャック1に保持された基板Wを鉛直方向の軸芯J周りで回転させる。 【0021】また、回転軸2は中空を有する筒状の部材で構成され、この中空部に洗浄液供給管7が貫通され、その上端部の洗浄液供給部7aからスピンチャック1に保持された基板Wの下面の回転中心付近に洗浄液を供給できるように構成されている。洗浄液供給管7は配管8に連通接続されている。この配管8の基端部は分岐されていて、一方の分岐配管8aには薬液供給源9が連通接続され、他方の分岐配管8bには純水供給源10が連通接続されている。各分岐配管8a、8bには開閉バルブ11a、11bが設けられていて、これら開閉バルブ11a、11bの開閉を切り換えることで、洗浄液供給部7aから薬液と純水とを選択的に切り換えて供給できるようになっている。」 「【0032】図1に戻って、スピンチャック1の上方には中心部に開口を有する雰囲気遮断部材60が配置されている。この雰囲気遮断部材60は、基板Wの径より若干大きく、かつ、案内部材30の気体取り込み口32a、32bの径Rよりも小さい径を有していて、中空を有する筒状の支持軸61の下端部に一体回転可能に取り付けられている。そして、雰囲気遮断部材60の下面には、基板Wの外周部に3箇所以上で当接する3個以上の押圧部材68が、雰囲気遮断部材60の周縁に沿って等間隔で立設されている。ここで、押圧部材68と雰囲気遮断部材60が本発明の押圧手段に相当する。なお、図1以下では、図面が煩雑になることを避けるために、2個の押圧部材68のみを示している。 【0033】支持軸61は、支持アーム62に回転自在に支持されている。支持軸61には従動プーリ63が一体回転可能に取り付けられている。その従動プーリ63と、モーター64の駆動軸に連結された主動プーリ65との間に無端ベルト66が架け渡されていて、モーター64を駆動することにより支持軸61とともに雰囲気遮断部材60が鉛直方向の軸芯J周りに回転されるように構成されている。 【0034】また、支持アーム62は、移動手段に相当する接離機構67によって昇降され、この支持アーム62の昇降によって、スピンチャック1に対して雰囲気遮断部材60が接離されるように構成されている。この装置では、雰囲気遮断部材60がスピンチャック1に保持された基板Wの上面に対して押圧部材68が当接し押圧する近接位置LHと、雰囲気遮断部材60がスピンチャック1に保持された基板Wの上面から上方に離れた離間位置である下方位置MHと、大きく離れた上方位置HHとの3段階の位置との間で雰囲気遮断部材60が昇降できるように構成されている。このような接離動を実現する接離機構67は、昇降機構45と同様に螺軸などを用いた機構や、あるいは、エアシリンダなどで構成されている。そして、図5に示すように、この接離制御も制御部50によって行われるように構成されている。 【0035】図1に戻って、雰囲気遮断部材60の中心の開口及び支持軸61の中空部には、洗浄液供給管70が貫通され、その下端部の洗浄液供給部70aからスピンチャック1に保持された基板Wの上面の回転中心付近に洗浄液を供給できるように構成されている。洗浄液供給管70は配管71に連通接続されている。この配管71の基端部は分岐されていて、一方の分岐配管71aには薬液供給源9が連通接続され、他方の分岐配管71bには純水供給源10が連通接続されている。各分岐配管71a、71bには開閉バルブ72a、72bが設けられていて、これら開閉バルブ72a、72bの開閉を切り換えることで、洗浄液供給部70aから薬液と純水とを選択的に切り換えて供給できるようになっている。」 「【0046】さらに、制御部50は、共通の駆動制御信号を与え、モーター6、64を同期回転させる。ただし、モーター6、64は互いに反対方向に回転する。これにより、上下の回転筒38、58が同じ方向に回転され、これらの回転筒38、58に固定されている雰囲気遮断部材60およびスピンベース3がそれぞれの中心を通る鉛直軸芯Jまわりに一体的に同期回転することになる。したがって、スピンベース3に保持されている基板Wは、水平に保持された状態で、そのほぼ中心を通る鉛直軸芯Jまわりに回転されることになる。 【0047】次いで、この状態で、制御部50は、洗浄液供給部7aから薬液を基板Wの下面に供給して本発明の第一処理工程としての薬液処理を開始する。すなわち、開閉バルブ11aを開成することにより、洗浄液供給管7の洗浄液供給部7aから洗浄用薬液としてのエッチング液を吐出させる。これにより、基板Wの下面の中央に向けてエッチング液が至近距離から供給される。供給されたエッチング液は、基板Wの回転に伴う遠心力によって回転半径方向外方側へと導かれるので、結果として、基板Wの下面の全域に対して隈無く薬液洗浄を行うことができる。 【0048】また、基板Wの下面を伝わって下面周辺部に向ったエッチング液が基板Wの上面に這い上がって上面の周辺部を処理する。このとき固定系である洗浄液供給部7aからのエッチング液が、回転している基板Wの下面に触れることとにより抵抗となり、基板支持部材4上面に摺動自在に保持されている基板Wはスピンベース3に対し遅れて回転することとなる。つまり、基板Wとスピンベース3の回転数に差が生じて基板Wが基板保持部材4の基板保持部4aを滑り出す。従って、基板支持部材4が基板Wの端縁の同じ位置に当接し続けることがないので、保持に起因する処理ムラを防止することができる。なお、この薬液処理期間中、開閉バルブ11bは、閉成状態に保持される。」 「【0054】予め定めた一定時間だけエッチング液が供給された後、制御部50は、開閉用バルブ11aを閉成して薬液処理工程を終了するとともに、開閉用バルブ11b、72bを開成する。これにより、洗浄液供給部7a、70aからは、リンス液(純水、オゾン水、電解イオン水など)が、基板Wの上下面の中央に向けて供給されることになる。この状態で、洗浄液供給部7a、70aからリンス液を基板Wの上下両面に供給して基板Wに付着している薬液を純水で洗い落とすリンス処理を行う。こうして、薬液処理工程後の基板Wの上下面に存在するエッチング液を洗い流すためのリンス工程が行われる。 【0055】このリンス処理の際に、回転される基板Wの外周部から振り切られて周囲に飛散する廃液(薬液が混ざった純水)は、傾斜部31bで受け止められ、傾斜部31b、垂直部34bに沿い、開口35から第2の排液槽24bに導かれ、第2の排液口28bから排液され、廃棄ドレイン29を経て廃棄されることになる。」 イ 引用例1に記載された発明の認定 上記記載事項から、引用例1には、 「基板Wは、基板保持手段としてのスピンチャック1に水平姿勢で保持され、このスピンチャック1は、回転軸2の上端に一体回転可能に取り付けられた回転支持板としてのスピンベース3を有し、回転軸2は中空を有する筒状の部材で構成され、この中空部に洗浄液供給管7が貫通され、その上端部の洗浄液供給部7aからスピンチャック1に保持された基板Wの下面の回転中心付近に洗浄液を供給できるように構成され、洗浄液供給管7は配管8に連通接続され、この配管8の基端部は分岐されていて、一方の分岐配管8aには薬液供給源9が連通接続され、他方の分岐配管8bには純水供給源10が連通接続され、各分岐配管8a、8bには開閉バルブ11a、11bが設けられていて、これら開閉バルブ11a、11bの開閉を切り換えることで、洗浄液供給部7aから薬液と純水とを選択的に切り換えて供給でき、スピンチャック1の上方には中心部に開口を有する雰囲気遮断部材60が配置され、雰囲気遮断部材60の中心の開口及び支持軸61の中空部には、洗浄液供給管70が貫通され、その下端部の洗浄液供給部70aからスピンチャック1に保持された基板Wの上面の回転中心付近に洗浄液を供給できるように構成され、洗浄液供給管70は配管71に連通接続され、この配管71の基端部は分岐されていて、一方の分岐配管71aには薬液供給源9が連通接続され、他方の分岐配管71bには純水供給源10が連通接続され、各分岐配管71a、71bには開閉バルブ72a、72bが設けられていて、これら開閉バルブ72a、72bの開閉を切り換えることで、洗浄液供給部70aから薬液と純水とを選択的に切り換えて供給でき、 スピンベース3に保持されている基板Wは、水平に保持された状態で、そのほぼ中心を通る鉛直軸芯Jまわりに回転され、次いで、この状態で、制御部50は、洗浄液供給部7aから薬液を基板Wの下面に供給して第一処理工程としての薬液処理を開始し、すなわち、開閉バルブ11aを開成することにより、洗浄液供給管7の洗浄液供給部7aから洗浄用薬液としてのエッチング液を吐出させ、供給されたエッチング液は、基板Wの回転に伴う遠心力によって回転半径方向外方側へと導かれるので、結果として、基板Wの下面の全域に対して隈無く薬液洗浄を行うことができ、また、基板Wの下面を伝わって下面周辺部に向ったエッチング液が基板Wの上面に這い上がって上面の周辺部を処理し、 予め定めた一定時間だけエッチング液が供給された後、制御部50は、開閉用バルブ11aを閉成して薬液処理工程を終了するとともに、開閉用バルブ11b、72bを開成し、これにより、洗浄液供給部7a、70aからは、リンス液(純水、オゾン水、電解イオン水など)が、基板Wの上下面の中央に向けて供給され、このリンス処理の際に、基板Wは回転される基板処理装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 ウ 引用例2 また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-210648号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。(後述の「(6)当審の判断」において直接引用した記載に下線を付した。) 「【0030】(第1の実施形態)本発明の第1の実施形態に係る電子デバイス(半導体装置)の製造方法について、図1(a)?(e)及び図2を参照しながら説明する。図1(a)?(e)は、本実施形態におけるTiN膜の形成工程からメタル膜のパターニング工程までの各工程を示す断面図である。 【0031】まず、図1(a)に示す工程で、基板上のシリコン酸化膜11(例えば基板上の層間絶縁膜あるいは素子分離用絶縁膜)の上に、反応性スパッタリング法及び通常のスパッタリング法により膜厚が約50nmのTiN膜12と、膜厚が約0.45μmのアルミニウム膜13(SiやCuが添加されたアルミニウム合金膜を意味する)と、膜厚が約30nmのTiN膜14とを順次堆積させる。そして、このTiN膜14の上に、プラズマCVD法により膜厚が約200nmのシリコン酸化膜15を堆積する。 【0032】その後、シリコン酸化膜15の上に化学増幅型フォトレジストを塗布してフォトレジスト膜を形成し、KrFエキシマレーザーによるリソグラフィー技術を用いて、約0.7μmの膜厚を有するフォトレジストマスク16を形成する。 【0033】次に、図1(b)に示す工程で、フォトレジストマスク16をエッチングマスクとして用いたドライエッチングにより、シリコン酸化膜15をパターニングして、TiN用ハードマスク17を形成する。その際には、一般的な平行平板型の反応性イオンエッチング装置を用い、例えば、反応ガスとしてCHF_(3) とO_(2) とを、流量CHF_(3) /O_(2) ≒0.1/0.01(slm),ガス圧力が約100Paの条件で流し、上下の両電極間に高周波電力約400Wを印加してエッチングを行う。このとき、オーバーエッチングによってTiN膜14も部分的にエッチ ングされる。 【0034】このエッチング後に、TiN膜14の上に異物として堆積物18が局所的に成長する。この堆積物18は、TiN膜14中のTiとエッチングガス中のFとが反応して、局所的にチタンのフッ化物が生成され、これが成長して形成されたものと思われる。TiとFとが反応すると、気体のTiF_(3) と固体のTiF_(3) とが生成されることが一般的に知られていることから、この堆積物18は、固体であるTiF_(3) などであると考えられる。 【0035】次に、図1(c)に示す工程で、アッシングを行ない、フォトレジストマスク16を除去する。アッシングは、マイクロ波を用いたダウンストリーム法によって行なう。 【0036】次に、図1(d)に示す工程で、発煙硝酸を用いて25℃で5分間ウエハーを洗浄し、その後純水でリンスする。その結果、TiN膜14の上に存在していた堆積物18はほぼ除去されている。また、新たな堆積物18の発生は認められていない。 【0037】その後、図1(e)に示す工程で、TiN用ハードマスク17をエッチングマスクとして用いたドライエッチングにより、下地のメタル積層膜20(TiN膜14,アルミニウム膜13及びTiN膜12の積層膜)をパターニングして、メタル配線パターン19を形成する。その際、一般的な平行平板型の反応性イオンエッチング装置を用い、例えば、反応ガスとしてBCl_(3) とCl_(2) とを、流量BCl_(3) /Cl_(2) ≒0.03/0.04(slm),ガス圧力が約10Paの条件で流し、上下の電極間に高周波電力約250Wを印加してエッチングを行う。 【0038】このように、TiN膜14,アルミニウム膜13及びTiN膜12の積層膜からメタル配線パターン19を構成することにより、アルミニウム膜13の耐エレクトロマイグレーション特性、耐ストレスマイグレーション特性が向上し、信頼性の高い配線構造を有する電子デバイスが形成される。」 エ 引用例3 また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平8-45886号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。 「【0003】すなわち、パーティクル除去にはアルカリ性の薬品、主としてNH_(4)OHとH_(2)O_(2)とH_(2)Oを混合した薬液を用いるSC-1洗浄(以下、単にSC-1洗浄という。)が行われていて、半導体基板をエッチングすることにより、パーティクルを半導体基板表面から除去している。しかし、このSC-1洗浄は、薬液の純度に依存するものであって、金属除去に関しては一部の元素を除き効果が低く、そのため、別途酸洗浄が行われている。」 (3)対比 ここで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「スピンチャック1」は、基板Wを水平姿勢で保持し、回転軸2の上端に一体回転可能に取り付けられたものであるから、本願補正発明の「基板をほぼ水平に保持して回転する基板回転手段」に相当する。 引用発明の「洗浄液供給管7」は、その上端部の洗浄液供給部7aからスピンチャック1に保持された基板Wの下面の回転中心付近に洗浄液を供給できるように構成され、より詳細には、開閉バルブ11aを開成することにより、洗浄用薬液としてのエッチング液を吐出させるものであるから、本願補正発明の「基板回転手段により回転されている基板の下面に向けて処理液を吐出する下面処理液吐出ノズル」に相当する。 引用発明の「洗浄液供給管70」は、その下端部の洗浄液供給部70aからスピンチャック1に保持された基板Wの上面の回転中心付近に洗浄液を供給できるように構成され、より詳細には、開閉用バルブ72bを開成することにより、リンス液(純水、オゾン水、電解イオン水など)を基板Wの上面に向けて供給するものであるから、本願補正発明の「基板回転手段により回転されている基板の上面に向けて処理液を吐出する上面処理液吐出ノズル」に相当する。 引用発明の「スピンベース3に保持されている基板Wは、水平に保持された状態で、そのほぼ中心を通る鉛直軸芯Jまわりに回転され、次いで、この状態で、制御部50は、洗浄液供給部7aから薬液を基板Wの下面に供給して第一処理工程としての薬液処理を開始し、すなわち、開閉バルブ11aを開成することにより、洗浄液供給管7の洗浄液供給部7aから洗浄用薬液としてのエッチング液を吐出させ、供給されたエッチング液は、基板Wの回転に伴う遠心力によって回転半径方向外方側へと導かれるので、結果として、基板Wの下面の全域に対して隈無く薬液洗浄を行うことができ、また、基板Wの下面を伝わって下面周辺部に向ったエッチング液が基板Wの上面に這い上がって上面の周辺部を処理」する状態は、本願補正発明の「基板回転手段により基板が回転されているときに、上記下面処理液吐出ノズルから処理液を吐出して基板の周縁部を処理する周縁部処理状態」に相当する。 引用発明の「開閉用バルブ11b、72bを開成し、これにより、洗浄液供給部7a、70aからは、リンス液(純水、オゾン水、電解イオン水など)が、基板Wの上下面の中央に向けて供給され、このリンス処理の際に、基板Wは回転される」状態は、本願補正発明の「基板回転手段により基板が回転されているときに、・・・上記下面処理液吐出ノズルおよび上記上面処理液吐出ノズルから処理液を同時に吐出して基板の両面を処理する両面処理状態」に相当する。 引用発明の「制御部50」は、開閉用バルブ11a,11b、72bにより、薬液を基板Wの下面から吐出する状態とリンス液を基板Wの上下面から供給する状態とを切り換える制御を行うものであるから、本願補正発明の「周縁部処理状態と両面処理状態とを選択的に切り換えて実行する吐出制御手段」に相当する。 引用発明の「洗浄液供給部7aから薬液を基板Wの下面に供給して第一処理工程としての薬液処理を開始し、すなわち、開閉バルブ11aを開成することにより、洗浄液供給管7の洗浄液供給部7aから洗浄用薬液としてのエッチング液を吐出させ」ることは、本願補正発明の「周縁部処理状態において、上記下面処理液吐出ノズルから吐出される処理液が、エッチング液を含」むことに相当する。 (4)一致点 したがって、本願補正発明と引用発明とは、 「基板をほぼ水平に保持して回転する基板回転手段と、 上記チャンバ内に配され、上記基板回転手段により回転されている基板の下面に向けて処理液を吐出する下面処理液吐出ノズルと、 上記チャンバ内に配され、上記基板回転手段により回転されている基板の上面に向けて処理液を吐出する上面処理液吐出ノズルと、 上記基板回転手段により基板が回転されているときに、上記下面処理液吐出ノズルから処理液を吐出して基板の周縁部を処理する周縁部処理状態と、上記下面処理液吐出ノズルおよび上記上面処理液吐出ノズルから処理液を同時に吐出して基板の両面を処理する両面処理状態とを選択的に切り換えて実行する吐出制御手段とを備え、 上記周縁部処理状態において、上記下面処理液吐出ノズルから吐出される処理液が、エッチング液を含む基板処理装置。」の点で一致し、以下の各点で相違する。 (5)相違点 ア 相違点1; 本願補正発明は、「チャンバ」を備え、基板回転手段、下面処理液吐出ノズル及び上面処理液吐出ノズルが「チャンバ内に配され」ているのに対し、引用発明にはそのような限定がなされていない点。 イ 相違点2; 両面処理状態が、本願補正発明においては、「周縁部処理状態の前に」上記基板回転手段により回転されている基板の両面に洗浄液を吐出して洗浄するものであるのに対し、引用発明においては、「予め定めた一定時間だけエッチング液が供給された後」リンス液(純水、オゾン水、電解イオン水など)が、基板Wの上下面の中央に向けて供給されるものである点。 ウ 相違点3; 両面処理状態において、下面処理液吐出ノズルおよび上面処理液吐出ノズルから吐出される洗浄液が、本願補正発明においては「基板の表面に付着しているパーティクルを除去するためのパーティクル除去液を含み、このパーティクル除去液は、アンモニア水、過酸化水素水、および水の混合物からなる」のに対して、引用発明においては「リンス液(純水、オゾン水、電解イオン水など)」であり、作用についての限定がない点。 (6)当審の判断 次に、上記各相違点について検討する。 ア 相違点1について 基板のエッチング及び洗浄装置において、装置がチャンバで覆われ、その中に基板の保持・回転手段や処理液供給ノズルを配設することは、周知技術であり、引用発明においても、該周知技術を採用して、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 第1に、相違点2の、両面処理状態と周縁処理状態との前後関係については、処理の手順(方法)に関する事項であって、本願補正発明の対象である「基板処理装置」という物に関する事項ではないから、物の発明を何ら特定するものではない。すなわち、発明をカテゴリーの観点を踏まえて認定すれば、相違点2に係る本願補正発明の特定事項は、発明の対象である「基板処理装置」という物と無関係の事項を記載したものに過ぎないといえるから、それによって発明の新規性・進歩性に関する判断が影響されるものではない。 第2に、引用例2の上記記載事項から、引用例2には、「TiN用ハードマスク17をエッチングマスクとして用いたドライエッチング」(【0037】段落)の前に「発煙硝酸を用いて25℃で5分間ウエハーを洗浄し、その後純水でリンスする」(【0036】段落)こと、すなわち、エッチングの前に洗浄することが記載されている。 また、その他、例えば、 ・特開2001-277522号公報(【0027】段落) ・特開2001-230236号公報(【請求項4】【0022】【0023】) ・特開平6-236867号公報(【請求項1】,【0018】【0019】段落) にも記載されているように、エッチングの前工程として洗浄工程を設けることは周知の技術的事項である。 そして、基板のエッチング・洗浄技術という技術分野の共通性から、該周知技術を、引用発明に採用し、引用発明において、さらにエッチング前の洗浄工程を設けることは当業者が容易に想到し得たことである。そして、基板の上下面から処理液を供給できる引用発明において、上記の周知技術の採用に際して、洗浄液を基板の上下面から供給することは、当業者が必要に応じて容易に設定し得た事項である。 なお、上記の周知技術の採用、すなわち、エッチングの前の洗浄工程を設定する点は、引用発明のエッチング後のリンス液による洗浄に代えて設定する趣旨ではなく、エッチング後のリンス液による洗浄はそのまま残して、さらに別途、エッチングの前の洗浄工程を設定することを意味しているから、上記の周知技術の採用に何らの阻害要因も認められない。 ウ 相違点3について 引用例3の上記記載事項から、引用例3には、「パーティクル除去にはアルカリ性の薬品、主としてNH_(4)OHとH_(2)O_(2)とH_(2)Oを混合した薬液を用いるSC-1洗浄」が記載されている。 また、その他、例えば、 ・特開2001-277522号公報(【0027】段落) ・特開2001-230236号公報(【請求項4】【0023】) にも記載されているように、アンモニア水、過酸化水素水、および水の混合物からなるパーティクル除去液による洗浄は「SC1」洗浄として周知技術である。 引用発明においても、上記相違点2で検討したエッチング前の洗浄工程を設定した際に、該周知技術を採用し、洗浄液としてアンモニア水、過酸化水素水、および水の混合物からなるパーティクル除去液を用い、SC1洗浄を行うことは当業者が容易に想到し得たことである。 エ 本願補正発明の作用効果について そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明並びに引用例2及び引用例3に記載された周知技術を含む上記の周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。 オ まとめ したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 (5)むすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。すなわち、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではなく、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成20年2月22日付の手続補正は原審においてすでに却下の決定がなされており、また、平成20年4月17日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成19年12月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものであるところ、その本願の請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記手続補正書書の特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「チャンバと、 このチャンバ内に配され、基板をほぼ水平に保持して回転する基板回転手段と、 上記チャンバ内に配され、上記基板回転手段により回転されている基板の下面に向けて処理液を吐出する下面処理液吐出ノズルと、 上記チャンバ内に配され、上記基板回転手段により回転されている基板の上面に向けて処理液を吐出する上面処理液吐出ノズルと、 上記基板回転手段により基板が回転されているときに、上記下面処理液吐出ノズルから処理液を吐出して基板の周縁部を処理する周縁部処理状態と、上記下面処理液吐出ノズルおよび上記上面処理液吐出ノズルから処理液を同時に吐出して基板の両面を処理する両面処理状態とを選択的に切り換えて実行する吐出制御手段とを備え、 上記周縁部処理状態において、上記下面処理液吐出ノズルから吐出される処理液が、エッチング液を含み、 上記両面処理状態において、上記下面処理液吐出ノズルおよび上記上面処理液吐出ノズルから吐出される処理液が、基板の表面に付着しているパーティクルを除去するためのパーティクル除去液を含むことを特徴とする基板処理装置。」 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成20年4月17日付の手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独特許要件違反についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、本願補正発明から、上記「第2 平成20年4月17日付の手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」で述べた、 (1)両面処理状態について「上記両面処理状態は、上記周縁部処理状態の前に、上記基板回転手段により回転されている基板の両面に洗浄液を吐出して洗浄するものであ」る点を追加して限定する補正、 (2)両面処理状態における「処理液」を「洗浄液」とした補正、及び (3)パーティクル除去液について「このパーティクル除去液は、アンモニア水、過酸化水素水、および水の混合物からなる」点を追加して限定した補正、 による限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成20年4月17日付の手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」において記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-12-16 |
結審通知日 | 2008-12-18 |
審決日 | 2009-01-13 |
出願番号 | 特願2003-47855(P2003-47855) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 秀樹 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 安田 明央 |
発明の名称 | 基板処理方法および基板処理装置 |
代理人 | 河津 康一 |
代理人 | 稲岡 耕作 |
代理人 | 川崎 実夫 |
代理人 | 皆川 祐一 |