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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1193584
審判番号 不服2006-90  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-04 
確定日 2009-03-05 
事件の表示 特願2003- 72082「遠隔教育システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月 7日出願公開、特開2004-279808〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成15年3月17日の出願であって、平成17年4月26日付けの拒絶理由通知に対して、平成17年9月16日付けで意見書と共に手続補正書が提出され、同年11月21日付けで拒絶査定がなされたところ、平成18年1月4日付けで、拒絶査定不服審判が請求されたものである。
したがって、本願の請求項1?6に係る発明は、平成17年9月16日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
ネットワークを介して教育サービスをユーザに提供する遠隔教育システムであって、
複数の構成要素から成る教材を利用した前記教育サービスを前記ユーザへ前記ネットワークを介して提供する教育提供手段と、
所定の段階毎に、前記教材に関連付けられたテストを前記ネットワークを介して前記ユーザに送信し、前記テストに対する回答を送信するよう促すテスト送信手段と、
前記ユーザから前記ネットワークを介して前記回答を受信し、これを評価する評価手段と、
前記評価手段の評価結果を前記ユーザに前記ネットワークを介して送信する評価送信手段と、
教育支援者、教育支援者の対応可能な専門分野、および教育支援者の連絡先、を予め登録した教育支援者データベースと、
前記ネットワークを介して前記ユーザから受信した支援要求の専門分野、或いは、前記ユーザに提供している教育サービスの専門分野、と一致する専門分野を持つ前記教育支援者を前記教育支援者データベースから選び出す支援者選択手段と、
前記選び出された教育支援者の前記連絡先と、前記ユーザとの前記ネットワークを介した接続を仲介し、両者の間で情報を伝達させる接続仲介手段と、
を含む遠隔教育システム。」

2.引用文献の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用された文献には以下の記載が図示とともにある。

2-1 特開2002-258729号公報(以下、「引用文献1」)
段落【0006】「【課題を解決するための手段】本発明による外国語学習システムは、ネットワークに接続される1または複数の情報処理端末とサーバとより成る外国語学習システムにおいて、所定の学習期間内において、該学習期間を複数の単位期間に区切り、該単位期間毎に、前記情報処理端末は、前記サーバから配信される学習課題に基づいて学習内容をチェックしながら学習を行なわせる学習手段と、該学習の結果を蓄積し前記単位期間の区切り毎にサーバに送信する通信手段とを備え、前記サーバは、前記情報処理端末から送信される学習結果に応じて、次の単位期間における学習課題を選択/決定する学習課題決定手段と、該決定した学習課題を対応する情報処理端末に配信する課題配信手段とを備えるように構成する。」
段落【0007】「上記外国語学習システムによれば、単に問題を提示して回答を出したり採点するのではなく、学習内容をチェックしながら学習を行なわせることができると共に、各学習者の語学力、学習結果(語学力の向上、学習進行状況)に応じた各学習者にその都度適切な学習課題を選択して提示するので、計画的に、着実に外国語能力を向上させるようにできる。」

段落【0012】「【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。尚、以下の実施の形態の説明では、外国語として英語を例にして説明するが、勿論これに限るわけではなく、本例による外国語学習システムは、基本的には全ての外国語学習に適用できる。」
段落【0020】「図1は、本例による外国語学習システム全体の概略的なシステム構成図である。同図に示す外国語学習システムは、各ユーザ(学習者)が携帯する携帯情報端末1、外国語学習の各種課題や問題文、更に各ユーザの学習結果や学習履歴等の情報を格納するデータベース(不図示)を備えるサーバ装置2、公衆回線網、専用線網(PHS網、携帯電話網等)、インターネット等であるネットワーク(学校内の閉じたネットワークも含む)3より成る。」
段落【0021】「ユーザは、所望のときに、携帯情報端末1を操作して、ネットワーク3を介してサーバ装置2にアクセスし、例えば一週間分の学習課題(またはその都度必要な分の学習課題)をダウンロードする。そして、詳しくは後述する各種学習を行う。携帯情報端末1は後述するように学習内容をチェックしつつユーザに学習を行なわせ、また学習結果(課題終了(後述する“合格”)した学習項目名や問題に対する回答またはその採点結果)をサーバ装置2に送る。」
段落【0027】「図3は、外国語学習システムによる学習方法の概略的な処理フローチャートである。その前に前提として、まず、各ユーザに対し標準化されているプレースメントテストを実施し、ユーザの外国語能力を客観的に評価する。すなわち、まず、テスト問題は、サーバ2側にプールされており、サーバ2はこの中から客観的な外国語能力を測定するのに必要な問題を選択して、この問題を各ユーザに配信する(携帯情報端末1にダウンロード)。各ユーザは与えられた20?30問の問題の回答を入力すると、携帯情報端末1は回答をサーバ2側に返信する。サーバ2は、採点を行ない、ユーザの外国語能力のレベルを判定する。」
段落【0028】「そして、以後の学習期間においては、最初はテスト結果に応じて、各ユーザ毎に適切な課題(例えばそのユーザのレベルに応じた難易度の課題)を、各ユーザに配信する(ステップS1)。その後は、後述する学習結果の分析結果に応じて、次の課題を選択して提示する(例えば、分析の結果、ユーザの能力が向上した度合いに応じて、次の課題の難易度を上げる等)。」

前記段落【0006】及び【0007】の記載から、当該引用文献1に係る外国語学習システムは、サーバから学習課題がネットワークに接続される1または複数の情報処理端末に配信され、この学習課題の送信を受けた前記情報処理端末では各学習者がこれに基づいて学習を行い、その学習の結果をサーバに送信するものであることが把握できる。
そして、当該外国語学習システムでは、各学習者の語学力、学習結果(語学力の向上、学習進行状況)に応じた各学習者にその都度適切な学習課題を選択して提示することで、計画的に、着実に外国語能力を向上させることが意図されている。
ここで、当該引用文献1に係る外国語学習システムは、「ネットワークを介してサービスをユーザである学習者に提供する遠隔教育システム」といえ、「各学習者の語学力、学習結果(語学力の向上、学習進行状況)に応じた各学習者にその都度適切な学習課題を選択して提示」するものであるから、「複数の構成要素から成る学習課題を利用した外国語学習サービスを学習者へネットワークを介して提供する学習課題提供手段」を備えていることは明らかである。
また、段落【0012】以降の【発明の実施の形態】に開示される発明の実施の形態に係るシステムにおいては、サーバから学習課題を入手して、各自で学習内容をチェックしつつ学習すること(段落【0021】)、学習者の外国語能力を客観的に評価すべく、サーバからテスト問題を配信して、学習者がこれに対する回答を入力してサーバに返信し、この回答をサーバで採点して学習者の外国語能力のレベルを判定すること(段落【0027】)が可能なものとして記載されている。
よって、サーバにはテストを学習者に送信するテスト送信手段、学習者の回答を受信して評価する評価手段が備えられているといえ、サーバで回答を採点するのであることから、サーバがユーザにテスト問題を送信するのと共に、当該テスト問題に対する回答をサーバに送信するように促すことは当然のことといえる。
また、段落【0028】の記載を参照するに、当該実施の形態に係るシステムは、各ユーザ毎にそのレベルに応じた適切な課題を配信し、その学習結果の分析結果に応じて、更に次の課題を設定してユーザに学習を行わせるものであることから、前記外国語学習サービスは「教育サービス」ということができ、ここでいう学習課題が教材であることも明らかである。
したがって、当該引用文献1の記載からは、以下の発明が把握できる。
「ネットワークを介して教育サービスをユーザに提供する遠隔教育システムであって、
複数の構成要素から成る教材を利用した前記教育サービスを前記ユーザへ前記ネットワークを介して提供する教育提供手段と、
所定の段階毎に、前記教材に関連付けられたテストを前記ネットワークを介して前記ユーザに送信し、前記テストに対する回答を送信するよう促すテスト送信手段と、
前記ユーザから前記ネットワークを介して前記回答を受信し、これを評価する評価手段と、
を含む遠隔教育システム。」(以下、「引用文献1記載発明」という。)

2-2 特開2002-72846号公報(以下、「引用文献2」)
段落【0002】「【従来の技術】従来の通信網を利用した教育システムとしては、テレビジョン放送、ラジオ放送を利用した教育システムが知られている。他方、地域毎に教室を設け受講者に個別指導を行う教育システムも知られている。」
段落【0003】「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、テレビジョン放送、ラジオ放送を利用した教育システムは不特定多数の受講者を相手に行うものであり受講者に個別教育を施すものではなかった。更に、行われる教育は講師側から一方方向であり、受講者から講師側への質問等の接触は別途郵便等の手段によらねばならず、教室における授業のように講師側から受講者側への接触と受講者側から講師側への接触を同時に行い進行することは困難である課題を有した。他方、教室を設け受講者に個別指導を行う教育システムでは、講師側から受講者側への接触と受講者側から講師側への接触を同時に行い進行することは可能である。しかしながら、同教育システムでは講師と受講者とが同一時間に同一場所に存在しなければならず、教師と受講者が別の場所あるいは離れた場所に所在する場合は、移動の為の時間的ロスを有し、教授の可能な時刻も限定される問題点を有した。あるいは、講師と受講希望者が遠隔地間に所在する場合そもそも教育が不可能となる課題を有した。」
段落【0004】「【課題を解決するための手段】この発明は、受講希望者からの受講を希望するとともに、教授を受けたい講師を指定した旨の情報を受領すると、受講希望者により選択された講師側の画面に受講希望者から伝送される情報を表示させるとともに、受講希望者の画面には受講希望者により選択された講師からの情報を表示させることを特徴とする教育システム、を提供する。」
段落【0015】「【発明の実施の形態】この発明の実施の形態に係る教育システムのブロック図をあらわす図1、同第1実施例に係る教育システムのフローチャートをあらわす図2、同第2実施例に係る教育システムのフローチャートをあらわす図3、同第3実施例に係る教育システムのフローチャートをあらわす図4、同第4実施例に係る教育システムのフローチャートをあらわす図5、同第5実施例に係る教育システムのフローチャートをあらわす図6、同受講者側の画面をあらわす図7、図8、図9、同講師側の画面をあらわす図10、図11、同受講者側の画面をあらわす図12、図13にしたがってこの発明の実施の形態を説明する。」
段落【0016】「図1において、11はWWWサーバ、12はデーターベースサーバ、13はシステム運用サーバである。WWWサーバ11、データーベースサーバ12、システム運用サーバ13で教育本部側サーバを構成する。データーベースサーバ11では、講師及び受講者に関する情報が格納される。講師に関する情報としては、出身大学、年齢、顔写真、現在の稼働状態等が該当する。現在の稼働状態としては、現在他の質問を受付け教授中であるか、現在教授の受付が可能であるか、予約設定可能であるか、一週間の授業、授業予約のスケジュール等が該当する。データーベースサーバ12に格納された情報は常に更新される。生徒である受講者に関する情報としては、受験を控えた受講者向けの授業を受る受検コースに所属するか、一般の授業を受る一般コースに所属するかのコースに関する情報、年齢、学年に関する情報が該当する。図1において、14は教育支社毎に設置される拠点サーバである。21は、講師用クライアントである講師側端末の内の教育本部に所在する講師の為の本部講師側端末である。本部講師側端末21は教育本部に所在する講師毎に設置される。WWWサーバ11、データーベースサーバ12、システム運用サーバ13、拠点サーバ14、本部講師側端末21はLANにより接続される。31はファイアーウォール、32はルータである。22は、講師側端末の内在宅で教育する講師の為の在宅講師側端末である。在宅講師側端末22は、在宅する講師毎に設置される。51は、受講者側端末である。受講者側端末31は、受講者側である生徒の所在場所毎に設置される。受講者の所在地は、教育本部内外、教育本部の設置された国内外を問わない。41は、通信ネットワークである。通信ネットワーク41は、LAN、インターネット、公衆回線を介したパソコン通信網、その他任意の有線又は無線を使用したネットワークを利用することが可能である。」
段落【0017】「WWWサーバ11、データーベースサーバ12、システム運用サーバ13、拠点サーバ14、本部講師側端末21はファイアーウォール31、ルータ32を介して、通信ネットワーク41に接続される。在宅講師側端末22、受講者側端末31は通信ネットワーク41に接続される。在宅講師側端末22、受講者側端末31は通信ネットワークに接続可能な端末でもよく、携帯電話端末による通信ネットワークサービス例えばいわゆるi-mode(登録商標)でもよい。」
段落【0018】「この発明の実施の形態に係る教育システムのフローチャートをあらわす図2に従い第1実施例について説明する。第1実施例では、受講希望者側の画面に表示されるリアルタイム授業可能な講師は、教育本部に現在所在する本部講師を優先して表示し、次いで在宅講師を表示し、リアルタイム授業を選択しない場合はその後質問予約の設定をさせ、予約設定をしない場合はその後eメール質問の設定を可能とする。まず、教育本部に所在する本部講師がログインする。すなわち本部講師はあらかじめシフトを組み、提示にホームページ上の認証画面でログインし、生徒の質問に備える。あるいは、在宅講師の場合は、教育本部の教務担当から稼働要請があった場合に、自宅の通信端末からインターネット等通信ネットワークに接続し、ホームページ上の認証画面でログインし、受講者である生徒の質問に備える。次いで、受講希望者である生徒がログインする。すなわち、図7の画面で受講者は、ユーザーID、パスワードを入力する。次いで、受講希望者は、今すぐリアルタイムの質問を希望するか、希望しないかを判断する。受講希望者がリアルタイム質問を希望するときは、質問したい受講者はまず、ホームページ上の認証画面でログインする。すなわち、図8に図示される画面により、質問したい科目、生徒のコース例えば、受検を控えた受講者向けの授業を受る受検コースに所属するか、一般の授業を受る一般コースに所属するかのコースに関する情報、年齢、学年に関する情報を入力する。更に、受講を希望する科目を入力する。更に、講師に対する希望、例えば出身大学、年齢層を入力する。すると、教育システムでは条件を満たす講師の検索判断をする。」
段落【0019】「すると、図9に図示されるように検索に係った講師であって教育本部に所在する本部講師が、顔写真、出身大学、年齢等のプロフィール、担当教科、現在質問受付中であるか、現在受付可能であるか、受講予約の設定可能であるか、一週間のスケジュール等の現在の稼働状況がインジケータに示される。」
段落【0020】「受講希望者である生徒は、図9に図示される画面から現在「授業可能」とされる講師を選択するか否かを判断する。「授業可能」とされる講師を選択したときは、リアルタイム質問が開始される。すなわち、講師側の画面には、図10に講師側画面イメージが図示されるように画面中Aにはリアルタイムで受講者である生徒の動画が写る。画面中Bにより、リアルタイムで講師および受講者の双方向の音声のやりとりが行われる。画面中Cによりテキストチャット機能が行われる。画面中Dは白板ホワイトボードであり、白板Dにより、テキストも読み込める双方向ホワイトボードが提供される。同じく図11により講師画面の機能を説明する。図11において、Eは、授業開始ボタンである。授業開始ボタンEが選択された時から課金計算の基になる時間計算が開始する。Fは、質問許可ボタンであり、質問をしたい受講者である生徒を当てて質問をさせる為の発言許可ボタンである。Gは、質問不許可ボタンである。質問不許可ボタンGは、複数人が質問を同時に行った場合に、質問を講師の判断で保留するボタンである。Hは、自由質問ボタンである。自由質問ボタンHは、自由に質疑応答する権限を与えるボタンである。Iは、授業終了ボタンである。授業終了ボタンIは、授業を終了し、課金の基となる時間のカウントを止るためのボタンである。」
段落【0021】「受講希望者である生徒が「授業可能」とされる講師を、選択されリアルタイム質問が開始すると、生徒側画面には、図12、図13に図示される画面が表示される。すなわち、生徒側画面イメージをあらわす図12に図示されるように、図12中Jには、リアルタイムで動画で講師の画像が写る。画面中Kにより、リアルタイムで講師および受講者の双方向の音声のやりとりが行われる。画面中Lによりテキストチャット機能が行われる。画面中Mは白板であり、白板Mにより、テキストも読み込める双方向ホワイトボードが提供される。受講者である生徒側画面の機能をあらわす図13において、Nは、質問ボタンである。質問ボタンNは、生徒が講師に対して質問したいことを示すためのボタンであり、主に集合授業形態をとる時に使用するボタンである。質問ボタンNを押すと生徒が手をあげる画像となる。Oは、質問をストップするための質問終了ボタンである。講師側画面には、受講者である生徒が当該講師の授業を選択した旨の図があらわれ、講師は受講者に発言権を与え、動画を配信するボタンを選択する。講師あるいは生徒が端末画面に表示される白板D、Mに書き込む必要がある場合には、自由に白板D、Mに書込みが可能である。講師あるいは受講者がテキストを読み込みたいと考える場合には、テキストデータを読み込むことが可能である。このテキストデータは生徒、講師の白板で共有でき、尚且つ上書きの形で解説を付することが可能である。質問解説が終了した時は、アプリケーションの画面右上の×印を選択するか、ファイルメニューの閉じるを選択すると授業は終了する。リアルタイム部分の課金は、リアルタイム授業開始をもって始まり、受講者のログアウトをもって終了する。予約に関しては、実際にリアルタイム授業、質問が行われた時をもって課金が始まり、受講者のログアウトをもって終了する。メール質問に関しては質問件数を数え上げることで課金する。」
段落【0026】「第1実施例では、今すぐに授業を受け質問をしたいという受講希望者のニーズに応えることが可能となる。第1実施例では、一般的な勉強に関する質問のように講師と相性と比較的関係が薄い分野で効果的である。」

段落【0002】及び【0003】を参照するに、従来から存在する教育システムにおいて、不特定多数の受講者を対象とする教育の場合は講師側からの一方方向のものであって、受講者側から講師側への質問等の接触を行い得ない問題点を有し、他方、教室を設けて受講者に個別指導を行う場合には、講師側と受講者側との接触を同時進行することが可能なるも、両者が同一時間、同一場所に存在する必要があり、遠隔地間ではそもそも実現性がないという問題点を有していたことが問題点として指摘されている。
そして、段落【0004】から、これらの問題を解消すべく、受講希望者からみて教授を受けたい講師を指定可能とし、指定した講師からの情報を受講者が入手可能とすることが解決課題とされていることが把握できる。
また、段落【0015】?【0026】には、当該引用文献2に係る教育システムの第1実施例に関して、システム構成及びフローが示されている。
具体的に、システム構成に係る段落【0016】?【0017】には、教育本部に、講師及び受講者に関する情報が格納されたデータベースサーバが備えられていること、講師に関する情報には、講師が現在他の質問を受付け教授中であるか、現在教授の受付が可能であるか、予約設定可能であるか等、現在の稼働状態に係る情報も含まれていること、教育本部側に所在する講師はLAN接続された本部講師側端末を使用しているが、在宅で教育する場合には通信ネットワークにより接続された在宅講師側端末を用い得ること、受講者側端末は受講者側である生徒の所在場所毎に設置されるものの、教育本部内外、教育本部の設置された国内外を問わないこと、及び、通信ネットワークとしては、LAN、インターネット、公衆回線を介したパソコン通信網、その他任意の有線又は無線を使用したネットワークを利用可能であり、前記在宅講師側端末、受講者側端末としては、携帯電話端末も含まれていることが記載されている。
また、フローに係る段落【0018】?【0026】には、前記講師側端末と受講者側端末がネットワークにより接続されていることで、受講者と講師との間で情報交換が可能であって、受講者がリアルタイム質問を行うことも可能であることが開示されている。
さらに、段落【0018】では、受講者が希望科目等の希望を受講者側端末から入力して、教育システムが受講者の希望条件を満たす講師を検索することも開示されている。

3.対比
本願発明と引用文献1記載発明とを対比する。
引用文献1記載発明は、前記で認定したものであるから、両者を対比した場合、以下記載の点で一致する一方、以下に記載する点で相違している。

<一致点>
「ネットワークを介して教育サービスをユーザに提供する遠隔教育システムであって、
複数の構成要素から成る教材を利用した前記教育サービスを前記ユーザへ前記ネットワークを介して提供する教育提供手段と、
所定の段階毎に、前記教材に関連付けられたテストを前記ネットワークを介して前記ユーザに送信し、前記テストに対する回答を送信するよう促すテスト送信手段と、
前記ユーザから前記ネットワークを介して前記回答を受信し、これを評価する評価手段と、
を含む遠隔教育システム。」

<相違点1>
本願発明においては、遠隔教育システムが、「前記評価手段の評価結果を前記ユーザに前記ネットワークを介して送信する評価送信手段」を有すると特定されているのに対して、引用文献1記載発明ではこの特定を有しない点。

<相違点2>
本願発明においては、遠隔教育システムが、
「教育支援者、教育支援者の対応可能な専門分野、および教育支援者の連絡先、を予め登録した教育支援者データベースと、
前記ネットワークを介して前記ユーザから受信した支援要求の専門分野、或いは、前記ユーザに提供している教育サービスの専門分野、と一致する専門分野を持つ前記教育支援者を前記教育支援者データベースから選び出す支援者選択手段と、
前記選び出された教育支援者の前記連絡先と、前記ユーザとの前記ネットワークを介した接続を仲介し、両者の間で情報を伝達させる接続仲介手段と、」を含むと特定されているのに対して、
引用文献1記載発明では、この特定を有しない点。

4.判断
(1)相違点1の検討
引用文献1には、サーバ2はユーザに採点結果や判定されたレベルを送信することの明記はないものの、サーバ2はユーザの回答を採点してレベルの判定を行い、ユーザのレベルに応じた課題を各ユーザに配信するものである。
また、テストの結果をテスト受験者に提示することはごく一般的に行われている周知の手法である。
してみれば、引用文献1記載発明において、サーバ2がユーザにレベルに応じた課題を配信する際に、そのユーザのテストの採点結果や判定されてレベルを共に配信するように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2の検討
引用文献2は、不特定多数の受講者を相手に行う教育システムを前提とするものではあるが、受講者と講師との情報伝達を可能とする手段を備えることで、授業を受け直ちに質問をしたいという受講希望者のニーズに応えることを可能とするものである。
他方、引用文献1記載発明は、受講者であるユーザの学習状況を評価・把握して学習に適した教材を配信するネットワークを介した教育システムであることから、受講者の個々を識別した接続を行っている。
そして、引用文献2に記載されるように、講師側の個々を識別した接続手段を加えれば、ネットワーク上で受講者と講師との情報伝達が直ちに可能になるのであって、このような個々を識別した接続手段自体は、コンピュータ技術としてきわめて一般的なものである。
してみれば、相違点2として抽出した構成のうち、講師側と受講者側とを接続する手段は、要請を受ければ当業者が直ちに想起し得るものである。
さて、当該相違点2として抽出した構成には、教育支援者データベースを備え、これを用いて支援者を選択する支援者選択手段と、その後に用いられる接続仲介手段とが含まれているので、これら手段についてさらに検討する。

引用文献1記載発明は、先のとおり、ネットワークを介した遠隔教育システムにおいて、受講者であるユーザの学習状況を評価・把握して学習に適した教材を配信するものであり、この遠隔教育システムにおいても、受講者が学習内容について疑問等をもって、質問や説明を欲することは至極当然に想定されることであり、それに対して然るべきサポート体制、すなわち教育支援体制を要請することも当然のニーズといえる。
すると、引用文献1記載発明に対して、引用文献2に記載されるように、講師側の個々を識別した接続を行うことで、受講者と講師との両者の間で情報伝達を可能にして、この教育支援のための手段を追加することは、当業者であれば上記要請に応えて直ちに採用し得るものといえるのであって、これを阻害する要因は見あたらない。
また、前記教育支援を行う教育支援者である教師又は講師の人材に関して、適切な人材を希望するユーザ(受講者)に対して、それに該当する者(人材)を斡旋することは、教育システムにおいて、教育仲介処理装置と題した特開2002-183487号公報、教育指導システムと題した特開2002-132964号公報、学習支援サービスシステムと題した特開2002-318859号公報等にみられるように枚挙にいとまがなく、ネットワークを介して上記斡旋をすることも、web人材紹介サービスと題した特開2003-6313号公報にみられるようにきわめて周知の手法である。
そして、上記教育支援者の人材斡旋に際して、斡旋対象となる人材に係る情報を蓄積したデータベースを用いることは、上記各公報にも示されているごとく周知の技術事項に過ぎず、その人材に係る情報として、専門分野の情報、及び連絡先の情報が含まれることも、その斡旋の趣旨から見て容易に推察可能なことであり、当然のこととしてこれらが上記データベースの登録情報となるものである。
さらに、前記引用文献2の実施の形態についてのシステム構成が記載される段落【0015】?【0017】及びフローチャートの説明がされている段落【0018】?【0026】を参照するに、引用文献2には、遠隔教育システムにおいて、授業を受けて直ちに質問をしたいという受講希望者のニーズに応えることを可能としたシステムが記載されており、この受講希望者のニーズに応えることが、いわゆる教育支援に相当することは明らかである。
そのために引用文献2に記載されたシステムは、受講者側端末と講師側端末とをネットワークを介して接続する手段を採用することにより、受講者と講師との情報伝達を可能とするもの(なお、その接続に際して、講師の連絡先を用いることは明らかである。)であるし、また同引用文献2に記載されたシステムは、受講者の希望科目等の希望に添った講師を検索することが可能であることから、受講者の支援要求に沿った講師をデータベースから選び出し、受講者側端末と講師側端末との接続を仲介することは、当業者が容易に想到することである。
すなわち、引用文献1記載発明に先に記載した教育支援のための手段を追加するに当たり、前記の周知の手法・技術、及び引用文献2に記載された前記の接続手段を用いて、当該相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るといえるのである。

(3)まとめ
前記のように、引用文献1記載発明に相違点1及び相違点2に係る構成を備えることは、引用文献1、2に記載された事項及び前記周知の手法或いは技術常識に基づいて、当業者が容易に想到できることである。
また、相違点1、2に係る構成を備えたことによる作用効果も当業者であれば容易に推察可能なものでしかない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1記載発明及び引用文献2記載の技術事項及び周知の手法に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-24 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-19 
出願番号 特願2003-72082(P2003-72082)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安久 司郎  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 菅藤 政明
岩崎 伸二
発明の名称 遠隔教育システム  
代理人 藤原 英治  
代理人 杉村 興作  
代理人 徳永 博  
代理人 冨田 和幸  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 岩佐 義幸  
代理人 来間 清志  

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