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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1193597
審判番号 不服2006-21958  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-28 
確定日 2009-03-05 
事件の表示 特願2003-396311号「超音波切開凝固装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月11日出願公開、特開2004- 73890号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年4月6日に出願した特願平7-81466号の一部を平成15年10月27日に新たな特許出願とした特願2003-366718号の一部をさらに平成15年11月26日に新たな特許出願としたものであって、平成18年8月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年9月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年10月30日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年10月30日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年10月30日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「超音波振動を発生する超音波振動子と、
前記超音波振動子に接続され、前記超音波振動を生体組織に対して処置を行う為の処置部へ伝達する振動伝達部材としてのプローブと、
前記プローブの遠位端に配設され、当該プローブを伝達する前記超音波振動により振動される先端部材と、
前記先端部材との間に生体組織を把持する把持面部を有する把持部材と、
前記先端部材と前記把持部材とにより生体組織を把持及び開放する為の操作を行う操作手段と、
を備え、
前記先端部材における前記把持部材の把持面部との間で生体組織を把持する面部であって当該生体組織を切開または凝固するための把持鉗子面部は、近位側の基端側から遠位側の先端に向けて当該プローブの軸方向に対して略平行に延出して形成され、当該先端部材における前記把持鉗子面部の裏面側部は、先端から基端側に向けて漸次太径化して剥離操作を行うためのテーパー形状に形成されたことを特徴とする超音波切開凝固装置。」と補正された。(下線部は補正箇所を示す。)

(2)補正の目的の適否
上記補正は、平成18年4月10日付け手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「拒絶査定時の特許請求の範囲」という。)の請求項1に記載された発明の「先端部材」に限定を付加して「当該プローブを伝達する前記超音波振動により振動される先端部材」とし、「先端部材との間に生体組織を把持する把持部材」に限定を付加して「先端部材との間に生体組織を把持する把持面部を有する把持部材」とし、「先端部材における前記把持部材との間で生体組織を把持する把持鉗子面部」に限定を付加して「先端部材における前記把持部材の把持面部との間で生体組織を把持する面部であって当該生体組織を切開または凝固するための把持鉗子面部」とし、「把持鉗子面部は、近位側から遠位側に向けて当該プローブの軸方向に対して略平行に延出して形成され」に限定を付加して「把持鉗子面部は、近位側の基端側から遠位側の先端に向けて当該プローブの軸方向に対して略平行に延出して形成され」とするとともに「近位側から遠位側に向けて漸次細径化して」を「先端から基端側に向けて漸次太径化して」と言い換えたもので、かつ、補正前の発明と補正後の発明とは、その産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、新規事項を追加するものでもない。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。

ア.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物である、国際公開第94/16631号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「Reference will now be made in detail………with the clamp of accessory 12.(本発明の好適な実施態様について図を参照して詳細に説明する。
図1a?図1cは本発明によって構成された超音波手術器機を示す図であり、該超音波手術器機は通常10で表示される超音波手術器具、および通常12で表示されるクランプ凝固用付属部品を備えている。超音波器具10は、超音波発生器および変換器を備えているハウジングすなわち把持部14を含んでおり、変換器は圧電磁器変換器が好ましく、例えば55,000Hz正弦波形の電気信号を機械的な長手方向の振動に変換する。図1a?図2を参照すると、器具10はさらにブレード連結延長部16を含んでおり、該ブレード連結延長部16はその遠位端部にねじ留められたブレード連結部18を有しており、ブレード連結部18はブレード20を有している。図2に示すように延長部16の近位端部は把持部14の一端から突出しているスタッドにねじ留められ、かつ変換器に接続され、それによって長手方向の超音波振動は延長部16およびブレード連結部18に沿ってブレード20へと伝達される。
クランプ凝固用付属部品12は、遠位端部にクランプ顎部24をその軸上に有し、近位端部にクランプ顎部作動装置26を有する細長いチューブ22からなるクランプ部品を含んでいる。付属部品12はまた、クランプ部品およびアダプタすなわちノーズコーン30に接続されたクランプ部品基部28をも有している。ノーズコーン30は、図1および図2に示しており、把持部14の先端と好ましくはねじ留めによって取り付けられているが、ノーズコーンすなわちアダプタ30、手術器具10をクランプ付属部品12との併用に適用させるためクランプ凝固用付属部品の一部を含んでいる。)」(12ページ2行?13ページ1行。()内は、対応する特表平8-505801号公報による翻訳文。以下、同様。)
(イ)「Mechanism 26 includes scissors-like gripping handles…………pivoted to housing 58 by pin 74.(装置26はクランプ顎部を開および閉位置との間に軸回転させるためのはさみ状の握り柄すなわちグリップを含んでいる。特に、装置26は固定した指ハンドルすなわちグリップ70およびピン74によってハウジング58に軸回転させる親指ハンドルすなわちグリップ72を含んでいる。)」(14ページ23?26行)
(ウ)「Referring now to Figures 3,6 and 7,………cutting/coagulating effects.(図3、図6および図7を参照して、クランプ顎部24にブレード18とクランプ顎部24との間の組織をブレード18の側面に対して圧縮するためのパッド110を取り付け、振動の剪断作用を利用し組織切断/凝固効果を高める。」(16ページ27行?17ページ2行)
(エ)図1aには、把持部14にブレード連結延長部16及びブレード連結部18が接続され、ブレード連結部18の遠位端にブレード20が配設されていることが図示されている。
(オ)上記記載事項(ウ)から、クランプ顎部24はブレード20とクランプ顎部24との間に生体組織を把持する把持面部を有することは自明なことである。
(カ)図1a、図3には、ブレード20におけるクランプ顎部24の把持面部との間で生体組織を把持する面部は、近位側の基端側から遠位側の先端に向けて当該ブレード連結延長部16およびブレード連結部18の軸方向に対して略平行に延出して形成されている様子が図示されている。

上記記載事項及び図示事項を総合すると、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「超音波発生器および変換器を備えているハウジングすなわち把持部14と、
前記把持部14に接続され、超音波振動が伝達されるブレード連結延長部16及びブレード連結部18と、
前記ブレード連結部18の遠位端に配設され、当該ブレード連結延長部16およびブレード連結部18から超音波振動が伝達されるブレード20と、
前記ブレード20との間に生体組織を把持する把持面部を有するクランプ顎部24と、
前記クランプ顎部24を開および閉位置との間に軸回転させるためのグリップを含んでいるクランプ顎部作動装置26と、
を備え、
前記ブレード20における前記クランプ顎部24の把持面部との間で生体組織を把持する面部は、近位側の基端側から遠位側の先端に向けて当該ブレード連結延長部16およびブレード連結部18の軸方向に対して略平行に延出して形成され、前記クランプ顎部24と前記ブレード20との間の組織の凝固と切断を行う超音波手術器機。」

イ.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「超音波発生器および変換器を備えているハウジングすなわち把持部14」は、その機能ないし構造からみて、前者の「超音波振動を発生する超音波振動子」に相当し、以下同様に、「超音波振動が伝達されるブレード連結延長部16およびブレード連結部18」は「超音波振動を生体組織に対して処置を行う為の処置部へ伝達する振動伝達部材としてのプローブ」に、「ブレード連結延長部16およびブレード連結部18から超音波振動が伝達されるブレード20」は「プローブを伝達する前記超音波振動により振動される先端部材」に、「クランプ顎部24」は「把持部材」に、「クランプ顎部24を開および閉位置との間に軸回転させるためのグリップを含んでいるクランプ顎部作動装置26」は「前記先端部材と前記把持部材とにより生体組織を把持及び開放する為の操作を行う操作手段」に、「前記ブレード20における前記クランプ顎部24の把持面部との間で生体組織を把持する面部」は「前記先端部材における前記把持部材の把持面部との間で生体組織を把持する面部であって当該生体組織を切開または凝固するための把持鉗子面部」に、「前記クランプ顎部24と前記ブレード20との間の組織の凝固と切断を行う超音波手術器機」は「超音波切開凝固装置」に、それぞれ相当する。

そうすると両者は、
「超音波振動を発生する超音波振動子と、
前記超音波振動子に接続され、前記超音波振動を生体組織に対して処置を行う為の処置部へ伝達する振動伝達部材としてのプローブと、
前記プローブの遠位端に配設され、当該プローブを伝達する前記超音波振動により振動される先端部材と、
前記先端部材との間に生体組織を把持する把持面部を有する把持部材と、
前記先端部材と前記把持部材とにより生体組織を把持及び開放する為の操作を行う操作手段と、
を備え、
前記先端部材における前記把持部材の把持面部との間で生体組織を把持する面部であって当該生体組織を切開または凝固するための把持鉗子面部は、近位側の基端側から遠位側の先端に向けて当該プローブの軸方向に対して略平行に延出して形成された超音波切開凝固装置。」である点で一致しており、次の点で相違している。
相違点:本願補正発明においては、先端部材における把持鉗子面部の裏面側部は、先端から基端側に向けて漸次太径化して剥離操作を行うためのテーパー形状に形成されているのに対し、引用発明においては、先端部材(ブレード20)の把持鉗子面部(クランプ顎部24の把持面部との間で生体組織を把持する面部)の裏面側部はそのようなテーパー形状に形成されていない点。

ウ.当審の判断
上記相違点について検討する。
鉗子等の先端部材の把持面部の裏面側部の形状を先端から基端側に向けて漸次太径化したテーパー形状とすることは、例えば、特開平6-217987号公報、特開平6-311985号公報等により周知の技術手段であり、このようなテーパー形状とすることにより剥離操作が容易となることは自明のことであるから、引用発明の先端部材に上記周知の技術手段を適用して、上記相違点に係る本願補正発明の特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、上記相違点に係る本願補正発明の特定事項による効果も当業者が予測し得る範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「超音波振動を発生する超音波振動子と、
前記超音波振動子に接続され、前記超音波振動を生体組織に対して処置を行う為の処置部へ伝達する振動伝達部材としてのプローブと、
前記プローブの遠位端に配設された先端部材と、
前記先端部材との間に生体組織を把持する把持部材と、
前記先端部材と前記把持部材とにより生体組織を把持及び開放する為の操作を行う操作手段と、
を備え、
前記先端部材における前記把持部材との間で生体組織を把持する把持鉗子面部は、近位側から遠位側に向けて当該プローブの軸方向に対して略平行に延出して形成され、当該先端部材における前記把持鉗子面部の裏面側部は、近位側から遠位側に向けて漸次細径化して剥離操作を行うためのテーパー形状に形成されたことを特徴とする超音波切開凝固装置。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用例及びその記載事項は、上記「2.(3)ア.」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明の特定事項を全て含み、さらに、上記「2.(2)」に記載した限定を付加する本願補正発明が、上記「2.(3)ウ.」に記載したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-25 
結審通知日 2009-01-06 
審決日 2009-01-19 
出願番号 特願2003-396311(P2003-396311)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 智宏石川 太郎土田 嘉一  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 増沢 誠一
岩田 洋一
発明の名称 超音波切開凝固装置  
代理人 伊藤 進  

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