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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60B
管理番号 1194244
審判番号 不服2007-6241  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-01 
確定日 2009-03-12 
事件の表示 特願2002- 9623号「転がり軸受装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月30日出願公開、特開2003-211908号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1手続の経緯
本願は、平成14年1月18日の出願であって、平成19年1月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年3月1日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、平成19年4月2日付けで手続補正がなされたものである。

2平成19年4月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年4月2日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明について
上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「外輪部材に内輪部材が転動体を介して軸心回りに回転自在に支持され、前記内輪部材の中心穴に挿通されるとともに軸方向一端部の外周面に径方向外向きに突出してブレーキディスクを取付けるための取付けフランジが形成された軸体の軸方向他端部を、内周縁部に予め曲面状に面取りを施した前記内輪部材の端面に対して拡径してかしめることで、前記内輪部材と軸体とが一体化される転がり軸受装置であって、
前記内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量が、0を超えて200μmを超えない範囲に設定されることにより、軸体に形成された取付けフランジの面振れが20μm以下に抑えられたことを特徴とする転がり軸受装置。」と補正された。
上記補正は、平成18年11月27日付け手続補正書請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「ブレーキディスクを取付けるための取付フランジ」が形成される「外周面」に「軸方向一端部の」の限定を付加し、同じく軸体の拡径してかしめる部分を「軸方向他端部」と限定し、更に、内輪部材の面取りを施す部分を「内周縁部」としたものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)原査定の拒絶の理由に引用した文献等の記載
[刊行物1]特開2000?211302号公報(原審における引用例1)
【発明の詳細な説明】の発明の実施の形態の第1例【0013】?【0015】と、該第1例を示す半部断面図【図1】,一部を省略して示す、図1のA部拡大図【図2】及び【符号の説明】の記載事項から、上記刊行物1には、
「外輪4に内輪3が玉5を介して軸心回りに回転自在に支持され、前記内輪3の中心穴に挿通されるとともに軸方向一端部の外周面に径方向外向きに突出して部材を取付けるための第一のフランジ6が形成されたハブ2bの軸方向他端部を、内周縁部に予め第二の曲面部25を施した前記内輪3の端面に対してかしめ部20で、前記内輪3とハブ2bとが一体化される車輪支持用転がり軸受ユニット1a」が記載されているものと認められる。

【0033】後段には、
「又、上記かしめ部20の基端部外径面が当接する、上記内輪3の内端開口周縁部には、断面円弧状の第二の曲面部25を形成している。従って、上記かしめ部20の基端部の曲率半径が小さくなる事はなく、この基端部にも無理な応力が加わりにくくなる。」と記載されている。
上記「基端部」は、「ハブ2b」の一部であるから、上記「基端部にも無理な応力が加わりにくくなる。」の記載は、「ハブ2b」への応力を「抑える」ことである。

かしめ装置に関する【0035】中段には、
「これら図9?11に示した揺動プレス装置36は何れも、第一のフランジ6の外周縁を含むハブ2bの外周面(図11に示した第3例の場合には受治具40bの外周面)と上記ホルダ38の内周面とを隙間嵌により嵌合自在としている。この様に隙間嵌により嵌合する周面同士は、上記ホルダ38内に上記ハブ2bをセットする際のガイド面として機能し、前記押型32に対するこのハブ2bの心合わせを図る一方、このハブ2bの微妙な揺動変位を許容して、上記かしめ部20の形成時に、このハブ2bにモーメント(曲げ応力)が加わる事を防止する。」と記載され、
上記「かしめ部20の形成時に、このハブ2bにモーメント(曲げ応力)が加わる事を防止する。」は、ハブ2bへの曲げ応力を「抑える」ことである。

これらの事実から、刊行物1には、
「外輪4に内輪3が玉5を介して軸心回りに回転自在に支持され、前記内輪3の中心穴に挿通されるとともに軸方向一端部の外周面に径方向外向きに突出して部材を取付けるための第一のフランジ6が形成されたハブ2bの軸方向他端部を、内周縁部に予め第二の曲面部25を施した前記内輪3の端面に対してかしめ部20で、前記内輪3とハブ2bとが一体化される車輪支持用転がり軸受ユニット1aであって、ハブ2bへの応力を抑える車輪支持用転がり軸受ユニット」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

[周知技術例としての刊行物2]特開2001-162338号公報
この周知技術例の刊行物2には、車両用ハブユニットのかしめ方法に関する発明に関して、
【0048】には、
「よって、実施形態1のかしめ方法によると、小径円筒部4にはかしめに伴い、それを変形させようとする力が作用しなくなる。したがって、フランジ5の変形も発生しないからその真円度が保持され、フランジ5は、面振れすることがなくなる。」と記載され、この記載は、「取付フランジの面振れはかしめ方法の影響を受ける」ことを示している。
また、【0007】には、「ハブホイール1の軸部3におけるフランジ5の円周数箇所にボルト挿通孔5aが形成されており、各ボルト挿通孔5aそれぞれにボルトが貫通状態で挿入される。不図示のディスクブレーキ装置のディスクロータは、これらボルトを介してフランジ5の片面に密着した状態で小径円筒部4に取り外し可能に取り付けられる。」と記載され、この記載から「軸受装置の軸部の取付けフランジにブレーキディスクを取り付ける」ことを示している。
(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「外輪4」は、本願補正発明の「外輪部材」に対応し、以下、「内輪3」は「内輪部材」に、「玉5」は「転動体」に、「第一のフランジ6」は「取付けフランジ」に、「ハブ2b」は「軸体」に、「第二の曲面部25」は「曲面状に面取り」に、「かしめ部20」は「拡径してかしめること」に、「車輪支持用転がり軸受ユニット1a」は「転がり軸受装置」にそれぞれ該当する。

このことから、本願補正発明と引用発明とは、
「外輪部材に内輪部材が転動体を介して軸心回りに回転自在に支持され、前記内輪部材の中心穴に挿通されるとともに軸方向一端部の外周面に径方向外向きに突出して部材を取付けるための取付けフランジが形成された軸体の軸方向他端部を、内周縁部に予め曲面状に面取りを施した前記内輪部材の端面に対して拡径してかしめることで、前記内輪部材と軸体とが一体化される転がり軸受装置であって、軸体への応力を抑える転がり軸受装置」点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点a> 本願補正発明では、取付けフランジに取り付ける部材が「ブレーキディスク」であるのに対して、引用発明では、「ブレーキディスク」の限定がない点。
<相違点b> 本願補正発明では、内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量が、0を超えて200μmを超えない範囲に設定されることにより、軸体に形成された取付けフランジの面振れが20μm以下に抑えるのに対し、引用発明には、軸体への応力を抑える示唆があるが、該偏心と面振れの関係及び偏心量及び面振れ量に関して不明な点。

(4)判断
そこで、上記相違点について検討する。
<相違点a>に関しては、転がり軸受装置の軸体の取付けフランジに「ブレーキディスク」を取り付けることは周知の事項であるから(上記周知例の段落【0007】の記載事項参照)、該相違点aについては、引用発明に周知事項を施すことにより当業者が容易に成し得たものと認められる。
<相違点b>に関しては、内輪部材のような円筒状物の面取りに際し、面取り精度を上げ、円筒状物の径方向中心と面取りの径方向中心とを一致させることは設計上の常識である。
また、転がり軸受装置において、取付フランジの面振れは、当然外輪、軸体、転動体、内輪等のそれぞれの寸法精度、および、各部の強度、加締の方法等々を含めた、多くの影響を受けることも当該分野では設計上の常識であって、本願補正発明での「かしめ」との関係における一例を示せば上記周知技術例のとおりであり、また、刊行物1にも、内輪の第二の曲面部25の曲率半径に関する事項及びかしめ装置の構成により、取付フランジの面振れに直結する軸体への応力を抑えることが示されている。
したがって、上記内輪の第二の曲面部25の曲率半径やかしめ装置の構成に代え、上記一般的な設計上の常識である面取り精度に着目し、「内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量」を一定の範囲内とし、「取付フランジの面振れ」を一定範囲以下に抑えようとすることは、当業者なら容易に想到しうることと認められる。
なお、「偏心量が、0を超えて200μmを超えない範囲に設定」することと「面振れが20μm以下に」することは、技術常識からみて単に希望的な数値を限定したに過ぎず、この数値限定は単なる設計上の事項ということができる。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明と周知技術と設計上の常識から当業者であれば予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3本願発明について
(1)本願第2発明
平成19年4月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明は、平成18年11月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「外輪部材に内輪部材が転動体を介して軸心回りに回転自在に支持され、前記内輪部材の中心穴に挿通されるとともに外周面に径方向外向きに突出してブレーキディスクを取付けるための取付けフランジが形成された軸体の端部を、予め曲面状に面取りを施した前記内輪部材の端面に対して拡径してかしめることで、前記内輪部材と軸体とが一体化される転がり軸受装置であって、
前記内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量が、0を超えて200μmを超えない範囲に設定されることにより、軸体に形成された取付けフランジの面振れが20μm以下に抑えられたことを特徴とする転がり軸受装置。」(以下「本願第2発明」という。)

(2)刊行物等
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物等、および、その記載事項は、前記「2(2)」に記載したとおりである。

(3)判断
本願第2発明は、前記「2」で検討した本願補正発明から、「ブレーキディスクを取付けるための取付フランジ」が形成される「外周面」を限定する「軸方向一端部の」の構成を省き、軸体の拡径してかしめる部分を限定する「軸方向他端部」、及び内輪部材の面取りを施す部分の限定事項である「内周縁部」の構成を省いたものである。
そうすると、本願第2発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2(4)」に記載したとおり、引用発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願第2発明も、同様の理由により、引用発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願第2発明は、引用発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-09 
結審通知日 2009-01-13 
審決日 2009-01-27 
出願番号 特願2002-9623(P2002-9623)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60B)
P 1 8・ 121- Z (B60B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小関 峰夫  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 渡邉 洋
中川 真一
発明の名称 転がり軸受装置  
代理人 岡田 和秀  

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