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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T |
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管理番号 | 1194495 |
審判番号 | 不服2007-5975 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-26 |
確定日 | 2009-03-18 |
事件の表示 | 平成10年特許願第147956号「画像処理装置及び画像処理方法並びにメモリ媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月10日出願公開、特開平11-339016〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成10年5月28日の出願であって、平成18年9月29日付け拒絶理由通知に対して平成18年12月5日付けで手続補正書が提出されたが、平成19年1月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成19年2月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年3月26日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2 平成19年3月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成19年3月26日付けの補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 当該補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりのものである。 (下線部は補正箇所) 【請求項1】 多値の画像信号を量子化する画像処理装置であって、 注目画素に係る多値の画像信号を量子化する量子化手段と、 量子化により生じた量子化誤差に基づいて生成される誤差成分を圧縮してメモリに格納する圧縮手段と、 前記メモリから圧縮された誤差成分を読み出して復元する復元手段と、 復元された誤差成分に基づいて、前記量子化手段が参照する注目画素に係る多値の画像信号を補正する補正手段とを有し、 前記圧縮手段は、n(n≧2)画素を単位として、各単位について、当該単位に属する各誤差成分の総和を演算し、該総和を当該単位における圧縮された誤差成分として前記メモリに格納することを特徴とする画像処理装置。 (以下、「本願補正後発明」とする。) 上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「圧縮手段」について、「n(n≧2)画素を単位として、各単位について、当該単位に属する各誤差成分を合成した合成データを生成して該合成データを当該単位における圧縮された誤差成分として前記メモリに格納する」を「n(n≧2)画素を単位として、各単位について、当該単位に属する各誤差成分の総和を演算し、該総和を当該単位における圧縮された誤差成分として前記メモリに格納する」とすることにより、その内容を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号)の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができたものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用刊行物の記載 原査定の拒絶の理由で引用された刊行物1(特開平05-268470号公報)には、対応する図面と共に、以下の内容が記載されている。 (ア) 「 【請求項1】 光電変換素子を用いて入力した画像信号の信号処理において、 シェーディング補正のための白基準信号(b bit/画素)を1画素あたりd bit(データ幅はb>dとする)に圧縮伸長する手段、 注目する画素の信号(e bit/画素)を、隣接した複数の画素の信号(f bit/画素)を用いてエッジ強調する手段、 疑似中間調画像を算出するために注目する画素の信号と既に2値化処理を行なった画素の誤差成分(j bit/画素)を用いて2値化した出力信号を求める誤差拡散手段、 1画素あたりの信号のデータ幅をd+f+j=8として信号蓄積を行なうラインメモリから構成することを特徴とする画像信号処理装置。 」 (イ) 「 【0011】 【課題を解決するための手段】 本発明は、上記課題を解決するために、画像信号(a bit/画素)を白基準信号(b bit/画素)を用いて補正し出力信号(c bit/画素)を求めるシェーディング補正手段において、それぞれのデータ幅を、a=c、a>bと設定し、 白基準信号(b bit/画素)は、該信号を圧縮伸長する手段と、圧縮した白基準信号(d bit/画素)で蓄積する手段を用いて、各データ幅をb>dと設定し、 注目する画素の信号(e bit/画素)を、隣接する複数の画素の信号(f bit/画素)を用いて補正し出力信号(g bit/画素)を求めるエッジ強調手段において、それぞれのデータ幅を、e≧fと設定し、注目する画素の信号(i bit/画素)と2値化処理前後における誤差成分(j bit/画素)を用いて、あらかじめ定めた演算手順に基づき2値化した出力信号(k bit/画素)を求める誤差拡散処理手段において、それぞれのデータ幅を、i>j、k=1と設定し、1画素あたり8ビットのメモリを上記手段のため分配し、d+f+j=8とする。 」 (ウ) 「 【0031】 誤差拡散処理では、複数の画素における2値化処理の前後の誤差成分を重み付け加算して、順次フィードバックする形をとるため、それぞれの誤差成分のデータ幅jを注目画素の画像信号のデータ幅iと同一としなくても(i>jとする)、大局的な画像の濃度は保存されることになる。また、誤差拡散手段では、隣接するN画素の誤差成分を平均化し、N画素分のメモリで該誤差成分を記憶することで、画素単位で必要とするメモリ容量を低減することができる。このため、図6に示すように、隣接する2画素(N=2)で誤差成分を平均化し4ビット幅(j=4)のデータとしたうえで、1画素あたり2ビット(j’=j/N)でメモリに蓄積する。メモリに蓄積した誤差成分の参照は、図7に示すように実行する。 」 当該(ア)?(ウ)及び図面の記載を総合すると、刊行物1には、次の(エ)なる発明が記載されている。 (エ) 注目するeビットの画素を2値化処理する画像信号処理装置であって、 注目する画素に隣接する複数の画素信号を用いて強調化した後に誤差拡散処理を行うものであり、 誤差拡散手段は、注目する画素の信号(i bit/画素)と2値化処理前後における誤差成分(j bit/画素)を用いて、演算Sにより2値化した出力信号(k bit/画素)を求めるものであって、 その演算が、隣接するN画素の誤差成分を平均化し、N画素分のメモリで該誤差成分を記憶することで、画素単位で必要とするメモリ容量を低減するために、隣接する2画素(N=2)で誤差成分を平均化し4ビット幅(j=4)のデータとしたうえで、1画素あたり2ビット(j’=j/N)でメモリに蓄積するものである。 3.対比 本願補正後発明と当該引用例発明(エ)とを対比する。 引用例発明はeビットの画素信号を2値化処理するものであるから、これは量子化手段を用いて多値の画像信号を量子化する画像処理装置である。 また、引用例発明は、注目する画素の信号(i bit/画素)と2値化処理前後における誤差成分(j bit/画素)を用いて、演算Sにより2値化した出力信号(k bit/画素)を求めるものであって、その演算が、隣接するN画素の誤差成分を平均化し、N画素分のメモリで該誤差成分を記憶記憶、すなわち格納するものであるから、これは量子化により生じた量子化誤差に基づいて生成される誤差成分を圧縮してメモリに格納する圧縮手段、該メモリから圧縮された誤差成分を読み出して復元する復元手段、復元された誤差成分に基づいて、量子化手段が参照する注目画素に係る多値の画像信号を補正する補正手段とを実質的に備えているものである。 そして、圧縮手段は、隣接する2画素を単位として、各単位について、当該単位に属する各誤差成分の平均値を演算し、該平均値を当該単位における圧縮された誤差成分として前記メモリに格納するものである。 「総和」も「平均値」も、隣接する画素の誤差成分を演算して求まる値であるから、本願補正後発明と引用例発明は以下の点で一致、あるいは相違する。 [一致点] (カ)多値の画像信号を量子化する画像処理装置であって、 注目画素に係る多値の画像信号を量子化する量子化手段と、 量子化により生じた量子化誤差に基づいて生成される誤差成分を圧縮してメモリに格納する圧縮手段と、 前記メモリから圧縮された誤差成分を読み出して復元する復元手段と、 復元された誤差成分に基づいて、前記量子化手段が参照する注目画素に係る多値の画像信号を補正する補正手段とを有し、 前記圧縮手段は、n(n≧2)画素を単位として、各単位について、当該単位に属する各誤差成分の演算値を当該単位における圧縮された誤差成分として前記メモリに格納することを特徴とする画像処理装置。 [相違点] (キ)メモリに記憶する隣接する画素の誤差成分を単位として、当該単位に属する各誤差成分の演算値を当該単位における圧縮された誤差成分として前記メモリに格納する値が、本願補正後発明において「当該単位に属する各誤差成分の総和」であるのに対し、引用例発明では「当該単位に属する各誤差成分の平均値」である点。 4.相違点の判断 相違点(キ)について検討する。 本願補正後発明は、メモリに格納された誤差成分を用いて誤差補正処理を行う際に、該格納されている「当該単位に属する各誤差成分の総和」をどのように用いるかを、発明の構成要件としていない。 本願補正後発明は、「当該単位に属する各誤差成分の総和」を誤差補正処理に“平均値に変換して”使用するものも、「当該単位に属する各誤差成分の総和」を“そのまま”用いるものも包含する。 そして本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌するに、その実施例は、段落0058?0061に記載されているように、誤差は2で除して復元され、これを用いて誤差補正処理が行われ、結果として、誤差補正部302では、図6に示すように、注目画素に対して、1ライン前の画素Aを2値化したとき量子化誤差の誤差成分EAと、1画素前の画素Bを2値化したときの量子化誤差の誤差成分EBとを加算する処理を行うものである。 そうすると、本願補正後発明は、前者を想定して、「各単位について、当該単位に属する各誤差成分の総和を演算し、該“総和”を当該単位における圧縮された誤差成分として前記メモリに格納」しているものと判断できる。 したがって、本願補正後発明と引用例発明との相違点(キ)は、実質的に、 (キ’)メモリに記憶する隣接する画素の誤差成分を単位として、当該単位に属する各誤差成分の演算値を当該単位における圧縮された誤差成分として前記メモリに格納し、この値を用いて誤差補正処理をする際に、本願補正後発明において「当該単位に属する各誤差成分の総和」を格納し、誤差補正処理の際に平均値に変換して用いるのに対し、引用例発明ではメモリに予め「当該単位に属する各誤差成分の平均値」を格納し、誤差補正処理の際に格納されている値を用いるものである。 ということになる。 すなわち、本願補正後発明も、誤差成分の総和を平均化(1/N)して用いるものであって、N画素分の誤差を平均化した誤差成分を使用する画像処理装置という点で引用例発明とに相違はなく、両者の実質的相違点は、メモリに誤差の総和を格納し読み出し時に平均化(1/N倍)するか、総和の平均値(1/N倍)を格納するかの違いということになる。 しかしながら、信号処理装置一般において、ある信号値の変換値をその後の処理において用いて一連の複数の処理を実行する場合に、変換値を格納しておいてこれを後で変換して用いるか、先に変換した値を格納しておき、格納されている値を用いるかは格別顕著な構成の違いではない。 変換される前の値が他の処理にも用いるようなケースでは変換される前の値を格納しておくことが相応しく、変換後の値を他の処理にも用いるようなケースでは変換後の値を格納しておく方が相応しく、どちらの構成とするかは必要に応じて適宜決定すべき設計的事項にすぎない。 してみれば、本願補正後発明における「誤差成分の総和」も、引用例発明における「誤差成分の平均値」も、これら値が他の処理にも用いられるものではないから、メモリにどちらを格納しておくかは任意であって、引用例発明において「誤差成分の平均値」を記憶することに代えて「誤差成分の総和」を格納するようにすることは単なる設計的事項にすぎないことである。 したがって、当該本願補正後発明が格別顕著な構成であり、格別顕著な効果を奏するものであるということはできないから、本願補正後発明は、引用刊行物1に記載された引用例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本願補正後発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができたものではない。 なお、「当該単位に属する各誤差成分の総和」を誤差補正処理に“そのまま”使用するとする場合には、2画素を単位とした場合には本来の誤差成分の2倍の値を誤差補正処理に用いることになる。 しかしながら、誤差拡散が、量子化の際の誤差が目立たないように拡散するものであって、各画素について誤差拡散処理を実行した後に、全画素の誤差が、目立たないようにプラス誤差とマイナス誤差を均衡させてトータル誤差が存在しないように処理するものであることは自明であるから、誤差成分をあえて2倍にして誤差補正処理を行うことは不自然であり、本願明細書には、そのような場合についての実施例は記載されていない。 したがって、本願補正後発明が「当該単位に属する各誤差成分の総和」を誤差補正処理に“そのまま”使用するとするものとしての発明であると解釈することはできないから、本願補正後発明は上記検討内容に判断することが妥当である。 5.むすび したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明の認定 平成19年3月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成18年12月5日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項14までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりである。 【請求項1】 多値の画像信号を量子化する画像処理装置であって、 注目画素に係る多値の画像信号を量子化する量子化手段と、 量子化により生じた量子化誤差に基づいて生成される誤差成分を圧縮してメモリに格納する圧縮手段と、 前記メモリから圧縮された誤差成分を読み出して復元する復元手段と、 復元された誤差成分に基づいて、前記量子化手段が参照する注目画素に係る多値の画像信号を補正する補正手段とを有し、 前記圧縮手段は、n(n≧2)画素を単位として、各単位について、当該単位に属する各誤差成分を合成した合成データを生成して該合成データを当該単位における圧縮された 誤差成分として前記メモリに格納することを特徴とする画像処理装置。 2.引用刊行物に記載の発明 原査定の拒絶理由に引用された刊行物1および、その記載事項は、前記「第2における[理由]の2.」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願請求項1に係る発明は、前記「第2における[理由]の1.」で検討した本願補正後発明における「圧縮手段」について、「n(n≧2)画素を単位として、各単位について、当該単位に属する各誤差成分の総和を演算し、該総和を当該単位における圧縮された誤差成分として前記メモリに格納する」が、「n(n≧2)画素を単位として、各単位について、当該単位に属する各誤差成分を合成した合成データを生成して該合成データを当該単位における圧縮された誤差成分として前記メモリに格納する」となるものであって、これは、メモリに格納される値に対する“当該単位に属する各誤差成分の総和”」なる限定事項を省き、その上位概念である、“当該単位に属する各誤差成分を合成した合成データ”としたものである。 そうすると、本願請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正後発明が、前記「第2における[理由]の4.」に記載したとおり、引用刊行物1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用刊行物1の記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、残る請求項2から請求項14に係る各発明について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 第4 まとめ 審判請求の理由について審理した結果は上記のとおりであり、拒絶査定を取り消す理由は存在しないから、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-21 |
結審通知日 | 2009-01-23 |
審決日 | 2009-02-03 |
出願番号 | 特願平10-147956 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06T)
P 1 8・ 575- Z (G06T) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲広▼島 明芳 |
特許庁審判長 |
板橋 通孝 |
特許庁審判官 |
廣川 浩 原 光明 |
発明の名称 | 画像処理装置及び画像処理方法並びにメモリ媒体 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 大塚 康弘 |