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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60B
管理番号 1194622
審判番号 不服2007-6240  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-01 
確定日 2009-03-19 
事件の表示 特願2001-399349号「転がり軸受装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 9日出願公開、特開2003-191709号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1手続の経緯
本願は、平成13年12月28日の出願であって、平成19年1月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年3月1日に拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、平成19年4月2日付けで手続補正がなされたものである。

2平成19年4月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年4月2日付けの手続補正を却下する。
本件補正は、補正前の平成18年11月17日付け手続補正書の請求項1の記載である
「車体側に非回転に支持される外輪部材と、この外輪部材に複列の転動体を介して軸心回りに回転自在に支持される円筒状の内輪部材と、軸心方向一端側に内輪部材に挿通される軸部を有するとともに継手の一部を構成する椀形外輪部材とを備え、
前記内輪部材が、一方列の転動体の軌道面を有する第一軌道輪と、他方列の転動体の軌道面を有して第一軌道輪の前記軸心方向一端側に隣接して配置されるとともに外周面に車輪を取付けるためのフランジが一体形成された第二軌道輪とから構成され、
前記第二軌道輪は、前記フランジの外側側面から軸方向外側に突出した突出部が形成されて、前記椀形外輪部材の軸部にスプラインを介して圧入され、
前記スプラインは、前記第二軌道輪の軌道面に相当する軸方向位置から前記突出部にかけての部位に存在する、
ことを特徴とする転がり軸受装置。」を、
「車体側に非回転に支持される外輪部材と、この外輪部材に複列の転動体を介して軸心回りに回転自在に支持される円筒状の内輪部材と、軸心方向一端側に内輪部材に挿通される軸部を有するとともに継手の一部を構成する椀形外輪部材とを備え、
前記内輪部材が、一方列の転動体の軌道面を有する第一軌道輪と、他方列の転動体の軌道面を有して第一軌道輪の前記軸心方向一端側に隣接して配置されるとともに外周面に車輪を取付けるためのフランジが一体形成された第二軌道輪とから構成され、
前記第二軌道輪は、前記フランジの外側側面から軸方向外側に突出した突出部が形成されて、前記椀形外輪部材の軸部にスプラインを介して圧入され、
前記スプラインは、前記第二軌道輪の軌道面に相当する軸方向位置から前記突出部にかけての部位に存在し、
前記椀形外輪部材の軸部は、先端部が径方向外向きに拡径されて前記第二軌道輪の端部にかしめられ、前記椀形外輪部材の軸部の径方向中心側には、前記かしめ側に向けて開口する凹部が形成されるとともに、前記椀形外輪部材の軸部は、前記第一軌道輪が前記椀形外輪部材に圧接する端面から前記第二軌道輪の軌道面に隣接する位置にかけての間が中実部とされ、前記中実部は、径方向中心に向かうに従って軸方向の幅が狭くされている、ことを特徴とする転がり軸受装置。」と補正するものである。
[理由1]
しかしながら、補正後の「前記第一軌道輪が前記椀形外輪部材に圧接する端面から前記第二軌道輪の軌道面に隣接する位置にかけての間が中実部とされ」の構成に関しては、願書に最初に添付した明細書に、「中実部」及びその範囲を示す記載はなく、願書に最初に添付した図面からも「第一軌道輪が前記椀形外輪部材に圧接する端面から前記第二軌道輪の軌道面に隣接する位置にかけての間が中実部」であることを見ることができない。
よって、「前記第一軌道輪が前記椀形外輪部材に圧接する端面から前記第二軌道輪の軌道面に隣接する位置にかけての間が中実部とされ」の補正事項は、当初明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものではないから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由2]
(1)本願補正発明について
上記補正事項は、[理由1]で、当初明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものではないとなったが、仮に上記補正が、当初明細書及び図面に記載した事項の範囲内のものであるとした場合について検討する。
先ず、上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「椀形外輪部材の軸部」の形状について「先端部が径方向外向きに拡径されて前記第二軌道輪の端部にかしめられ、前記椀形外輪部材の軸部の径方向中心側には、前記かしめ側に向けて開口する凹部が形成されるとともに、前記椀形外輪部材の軸部は、前記第一軌道輪が前記椀形外輪部材に圧接する端面から前記第二軌道輪の軌道面に隣接する位置にかけての間が中実部とされ、前記中実部は、径方向中心に向かうに従って軸方向の幅が狭くされている」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、
本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)原査定の拒絶の理由に引用した文献等の記載
[刊行物1]特開2001?150908号公報(原審における拒絶理由通知の引用例1)
刊行物1には、車輪軸受装置に関する発明が記載され、その第1の実施形態の一部省略断面図【図1】と、ハブ輪9と内輪11の隣接部分の拡大図【図2】とから、
(イ)「車体側に非回転に支持される外方部材3と、この外方部材3に複列の外側転動体6,内側転動体6’を介して軸心回りに回転自在に支持される円筒状の内方部材5と、軸心方向一端側に内方部材5に挿通される継手軸部17を有するとともに等速自在継手7の一部を構成する外輪16とを備え、
前記内方部材5が、一方列の内側転動体6’の内側転走面4’を有する内輪11と、他方列の外側転動体6の外側転走面4を有して内輪11の前記軸心方向一端側に隣接して配置されるとともに外周面に車輪を取付けるためのフランジ8が一体形成されたハブ輪9とから構成され、
前記ハブ輪9は、前記外輪16の継手軸部17にスプライン12,12’を介して圧入され、
前記スプライン12,12’は、前記ハブ輪9の外側転走面4に相当する軸方向位置から存在し、
前記外輪16の継手軸部17は、前記内輪11が前記外輪16に圧接する端面から前記ハブ輪9の外側転走面4に隣接する位置にかけての間の一部が中実部とされている軸受装置。」が記載されているものと認められる。

【0036】【0037】には、
(ロ)「【0036】上記の等速自在継手7は、その継手軸部17が内輪11とハブ輪9の内径面に嵌入され、そのスプライン12’がハブ輪9のスプライン12に係合される。継手軸部17のスプライン12’以外の軸状部分はハブ輪9の嵌合溝28に近い部分と内輪11の内径面に所要の締代をもって嵌合される。
【0037】なお、上記のスプライン12、12’のいずれか一方又は両方に軸線に対する微小な傾き角を設け、両者の係合に予圧を付与してガタつきを防止することができる。また、上記の継手軸部17のねじ部35に固定ボルト37が螺入され、その固定ボルト37の頭部がハブ輪9の端面に当接することにより、該継手軸部17がハブ輪9に固定される。」と記載され、
上記(ロ)の記載事項には、「ハブ輪9は、外輪16の継手軸部17にスプラインを介して圧入されている」ことが記載されているものと認められる。

これらの記載事項から、刊行物1には、
「車体側に非回転に支持される外方部材3と、この外輪部材に外側転動体6と内側転動体6’を介して軸心回りに回転自在に支持される円筒状の内方部材5と、軸心方向一端側に内方部材5に挿通される継手軸部17を有するとともに等速自在継手7の一部を構成する外輪16とを備え、
前記内方部材5が、内側転動体6’の内側転走面4’を有する内輪11と、外側転動体6の外側転走面4を有して内輪11の前記軸心方向一端側に隣接して配置されるとともに外周面に車輪を取付けるためのフランジ8が一体形成されたハブ輪9とから構成され、
前記ハブ輪9は、前記外輪16の継手軸部17にスプラインを介して圧入され、
前記スプラインは、前記ハブ輪9の外側転走面4に相当する軸方向位置からの部位に存在し、
前記外輪16の継手軸部17は、前記内輪11が前記外輪16に圧接する端面から前記ハブ輪9の外側転走面4に隣接する位置にかけての間の一部が中実部とされていることを特徴とする転がり軸受装置。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

[周知技術例]特開2001?334806号公報(原審の拒絶査定時提示の周知例)
【図1】を見ると、ハブホイール1は、ハブホイールのフランジ11外側側面から軸方向外側に突出した突出部が形成されている。
また、【図1】及び 【0020】中段の「円筒軸部36の外周面における所要領域には、ハブホイール1のメススプラインに嵌合されるオススプラインが形成されている」の記載から、「突出部にかけての部位にもスプラインが存在している」ということが認められる。
次に、【図1】円筒軸部36を見ると、先端部が径方向外向きに拡径されてハブホイール1の端部にかしめられ、前記円筒軸部36の径方向中心側には、前記かしめ側に向けて開口する凹部が形成され、凹部の底となる「中実部」は、「径方向中心に向かうに従って軸方向の幅が狭くされている」ことが認められる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「外方部材3」は、本願補正発明の「外輪部材」に相当し、
以下、同様に「外側転動体6,内側転動体6’」は「複列の転動体」に、「内方部材5」は「内輪部材」に、「継手軸部17」は「軸部」に、「等速自在継手7」は「継手」に、「外輪16」は「椀形外輪部材」に、「内側転動体6’」は「一方列の転動体」に、「内側転走面4’」は「一方列の軌道面」に、「内輪11」は「第一軌道輪」に、「外側転動体6」は「他方列の転動体」に、「外側転走面4」は「他方列の軌道面」に、「フランジ8」は「フランジ」に、「ハブ輪9」は「第二軌道輪」にそれぞれ相当する。

以上のことから、本願補正発明と引用発明とは、
「車体側に非回転に支持される外輪部材と、この外輪部材に複列の転動体を介して軸心回りに回転自在に支持される円筒状の内輪部材と、軸心方向一端側に内輪部材に挿通される軸部を有するとともに継手の一部を構成する椀形外輪部材とを備え、
前記内輪部材が、一方列の転動体の軌道面を有する第一軌道輪と、他方列の転動体の軌道面を有して第一軌道輪の前記軸心方向一端側に隣接して配置されるとともに外周面に車輪を取付けるためのフランジが一体形成された第二軌道輪とから構成され、
前記第二軌道輪は、前記椀形外輪部材の軸部にスプラインを介して圧入され、
前記スプラインは、前記第二軌道輪の軌道面に相当する軸方向位置からの部位に存在する転がり軸受装置。」の点で一致し、
以下の点で相違する。
<相違点a>
本願補正発明では、「第二軌道輪は、前記フランジの外側側面から軸方向外側に突出した突出部が形成され」、かつ、「スプライン」は、「突出部にかけての部位に存在する」のに対して、引用発明においては、「突出部」が形成されてなく、「スプライン」は、「突出部にかけての部位に存在」していない点。
<相違点b>
本願補正発明では、「前記椀形外輪部材の軸部は、先端部が径方向外向きに拡径されて前記第二軌道輪の端部にかしめられ、前記椀形外輪部材の軸部の径方向中心側には、前記かしめ側に向けて開口する凹部が形成され」、かつ、「中実部は、径方向中心に向かうに従って軸方向の幅が狭くされている」のに対し、引用発明には、該構成が不明な点。
<相違点c>
中実部について、本願補正発明では「椀形外輪部材の軸部は、第一軌道輪が椀形外輪部材に圧接する端面から第二軌道輪の軌道面に隣接する位置にかけての間」とされているのに対し、引用発明では「外輪16の継手軸部17は、内輪11が外輪16に圧接する端面からハブ輪9の外側転走面4に隣接する位置にかけての間の一部」である点。

(4)判断
しかしながら、
<相違点a>に関しては、「第二軌道輪は、前記フランジの外側側面から軸方向外側に突出した突出部が形成され」、かつ、「スプライン」は、「突出部にかけての部位に存在する」ことは周知技術であるから、引用発明に該周知技術を組み合わせ本願補正発明のように構成することは、当業者なら容易に想到成し得たものと認められる。
<相違点b>に関しても、「前記椀形外輪部材の軸部は、先端部が径方向外向きに拡径されて前記第二軌道輪の端部にかしめられ、前記椀形外輪部材の軸部の径方向中心側には、前記かしめ側に向けて開口する凹部が形成され」、かつ、「中実部は、径方向中心に向かうに従って軸方向の幅が狭くされている」技術は、同じく周知技術であるから、引用発明に該周知技術を組み合わせ本願発明のように構成することは、当業者なら容易に成し得たものと認められる。
<相違点c>に関しては、中実部を応力が集中する部分に設けることは設計上の常識であり、引用発明において、応力が集中する部分が「外輪16の継手軸部17は、内輪11が外輪16に圧接する端面からハブ輪9の外側転走面4に隣接する位置にかけての間」であるので、その部分に中実部を設けただけであるから、該相違点cの構成とすることは、当業者においては設計上の事項に過ぎないということができる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明と周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上、[理由2]のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によっても却下すべきものである。

3本願発明について
(1)本願発明
平成19年4月2日付けの手続補正は上記のとおり[理由1]あるいは[理由2]により却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年11月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるもので、次のとおりのものである。
「車体側に非回転に支持される外輪部材と、この外輪部材に複列の転動体を介して軸心回りに回転自在に支持される円筒状の内輪部材と、軸心方向一端側に内輪部材に挿通される軸部を有するとともに継手の一部を構成する椀形外輪部材とを備え、
前記内輪部材が、一方列の転動体の軌道面を有する第一軌道輪と、他方列の転動体の軌道面を有して第一軌道輪の前記軸心方向一端側に隣接して配置されるとともに外周面に車輪を取付けるためのフランジが一体形成された第二軌道輪とから構成され、
前記第二軌道輪は、前記フランジの外側側面から軸方向外側に突出した突出部が形成されて、前記椀形外輪部材の軸部にスプラインを介して圧入され、
前記スプラインは、前記第二軌道輪の軌道面に相当する軸方向位置から前記突出部にかけての部位に存在する、
ことを特徴とする転がり軸受装置。」

(2)刊行物等
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物等、および、その記載事項は、前記「2[理由2](2)」に記載したとおりである。

(3)判断
本願発明は、前記「2[理由2]」で検討した本願補正発明から「椀形外輪部材の軸部」の限定事項である「先端部が径方向外向きに拡径されて前記第二軌道輪の端部にかしめられ、前記椀形外輪部材の軸部の径方向中心側には、前記かしめ側に向けて開口する凹部が形成されるとともに、前記椀形外輪部材の軸部は、前記第一軌道輪が前記椀形外輪部材に圧接する端面から前記第二軌道輪の軌道面に隣接する位置にかけての間が中実部とされ、前記中実部は、径方向中心に向かうに従って軸方向の幅が狭くされている」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2[理由2](4)」に記載したとおり、引用発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明と周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-15 
結審通知日 2009-01-20 
審決日 2009-02-02 
出願番号 特願2001-399349(P2001-399349)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60B)
P 1 8・ 121- Z (B60B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小関 峰夫  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 渡邉 洋
中川 真一
発明の名称 転がり軸受装置  
代理人 岡田 和秀  

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