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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1194645 |
審判番号 | 不服2007-32800 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-05 |
確定日 | 2009-03-19 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 51680号「現像ローラ及び現像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月17日出願公開、特開平11-249433〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成10年3月4日の出願であって、その請求項1?5に係る発明は、平成19年9月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明1」という。)は次のとおりである。 「回転自在に配設されたスリーブ内にマグネットローラが配設され、このマグネットローラの磁気特性によって、現像剤からなる薄層が形成されたスリーブを画像形成体表面に接触又は近接させ、該スリーブ上の現像剤を画像形成体表面に飛翔させて供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成させる現像ローラにおいて、前記マグネットローラが5以上の奇数の磁極を有し、かつその表面に有するN極とS極のうち、総数の少ない磁極側且つ磁力1010ガウスを有する磁極に現像極が設けられていることを特徴とする現像ローラ。」 2.引用例1記載の発明 2-1.引用例1 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平8-95385号公報(以下「引用例1」という)には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 2-1a.「【特許請求の範囲】 【請求項1】円筒スリーブと、この円筒スリーブの内部に当該円筒スリーブの軸方向に沿い半径方向に磁極をもつ回転可能に設置された永久磁石とを有し、前記円筒スリーブと前記永久磁石とがそれぞれの軸の周りに互いに回転自在に保持されてなる画像形成装置の現像部の現像剤供給機構を構成するマグネットロールにおいて、前記永久磁石を、その両端部で前記スリーブの少なくとも一方に結合されたフランジとは接触点を有しない独立した保持部で支持してなることを特徴とするマグネットロール。 ・・・(略)・・・ 【請求項5】外側に円筒スリーブを有し、内部に複数の磁極を有す永久磁石と、前記永久磁石の軸線に沿って設けた支持軸とから構成された回転自在のマグネットロールにおいて、前記支持軸がクランク状に屈曲した形状を有すると共に、前記磁極のうちの所定の磁極が、その軸方向領域内で前記永久磁石の回転中心からオフセットされてなり、前記永久磁石の少なくとも一部の磁極の磁力を大きくしてマグネットボリュームを確保することを特徴とするマグネットロール。 ・・・(略)・・・ 【請求項8】外側に円筒スリーブを有し、内部に複数の磁極を有する永久磁石を配置した回転自在のマグネットロールにおいて、前記円筒スリーブの両端フランジ部、または前記両端フランジ部の外側に配置した永久磁石軸受と、前記円筒スリーブの内面にて前記永久磁石を支持する第三の軸受を設けたことを特徴とするマグネットロール。」 2-1b.「【0048】 【実施例】以下、本発明の実施例につき、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明によるマグネットロールを現像剤担持体として備えた現像装置の一構成例を説明する模式断面図であって、17は感光体、31はマグネットロール、31aはマグネット、31bはスリーブ、32はハウジング、33は現像剤(トナー)、34は層厚規制部材(トリマー)、35は攪拌部材を構成するパドル、36は攪拌部材を構成するオーガ、37は現像剤回収ロール、37aはマグネット、37bはスリーブ、38は掻きとり部材、39はフランジ、40は現像剤収容器、41は現像装置である。 【0049】図示したように、現像装置41は現像剤収容器40と現像剤担持体31とからなり、現像剤収容器40内には2本のオーガ36を有している。現像剤収容器40内に収容された現像剤33はオーガ36で攪拌されてパドル35、トリマー34によりマグネットロール31のスリーブ31b表面に所定の厚みで付着させられる。 【0050】現像剤33はスリーブ31bの内部に設置されたマグネット31aにより吸着されて感光体17に供給される。図2は本発明によるマグロールの第1実施例を説明する概略説明図であって、(a)はマグネットロールに支持軸を取付ける前の状態を示し、(b)は現像装置に組み込むための支持軸を取付けた状態を示す。 【0051】同図において、47はマグネットロール、47aは永久磁石(マグネット)、47bは円筒回転体(スリーブ)、48はフランジ、49は軸受、50はマグネット保持部材である。マグネット47aは現像装置として組立てられた時に非回転となる支持部材50およびその連結手段で支持されて、スリーブ47bが軸受49で回転自在の構造に構成される。」 2-1c.「【0058】スリーブ51aとドナーロール55との間には、0.2?3.0mmのギャップが設けてあり、バイアスを印加することで、ドナーロール55上に帯電された非磁性トナーだけを均一に現像させる。ドナーロール55上に現像されたトナーは、ドナーロール55の回転により感光体67に対向する位置に運ばれ、ドナーロール55と感光体67の間に配置されたワイヤー64に印加されたACバイアスの効果でドナーロール55上のトナーを飛翔させて現像する。その際、感光体67からドナーロール55へ移動してした第一現像剤の磁性トナーは、磁力によりドナーロール55の下流側でドナーロール55に対向して設けられたマグネット56を内蔵する金属ローラ52に、回収される。 2-1d.「【0061】以上により、材料費や加工費低減がもたらすコストメリットと、小径化等の磁力低下も補う為スペース効率が高く、無駄な構成材料を削除した小型の現像器を提供することができ、長期間にわたって小型で安定した画質を維持できるマグネットロールを得ることが可能となる。図7は本発明によるマグネットロールを現像剤担持体として備えた現像装置の他例を説明する概略断面図であって、図1と同一符号は同一部分に対応する。 【0062】同図において、現像装置41は現像剤収容器40と現像剤担持体31とからなり、現像剤収容器40内には2本のオーガ36を備えている。マグネットロール31aの軸はスリーブ31bの軸に対してオフセットされている。図8はマグネットロール部品を小径化した場合のマグネットロール軸のオフセット無しの場合の磁力の高低の説明図であり、(a)はマグネットロールの断面図で(a-1)はスリーブ径が20mm(20Φ)を(a-2)はスリーブ径が16mm(16Φ)を示し、(b)はスリーブ径と磁力の高低の関係を説明図である。 【0063】同図(a)に示したように、所定のマグネットボリュームよりマグネット径が細くなる為に磁力も低下する。また、図9はスリーブを小径化したマグネットロールのマグネット軸をスリーブ軸からオフセットした場合の磁力の高低の説明図であり、(a)はマグネットロールの断面図でスリーブ径が16mm(16Φ)を示し、(b)はスリーブ径と磁力の高低の関係を説明図である。 【0064】同図(b)に示したように、マグネットの軸をオフセットした場合において、D側磁極の磁力が低下しない。図10は本発明によるマグネットロールの第5実施例を説明する概略断面図であって、両端支持された一体物の内部マグネット47aの軸をマグネット領域外の二か所でクランク状に屈曲させたものである。」 2-1e.「【0066】さらに、前記図10、図11で説明したマグネット47aの軸の回転中心からオフセットしている領域を含めた軸の断面形状は一定でなくても良く、軸径を段階的に細くしたり、部分的に薄くしてもよい。なお、マグネット47aの軸の回転中心からオフセットさせるいずれの軸形状も、上記したような矩形の屈曲でなくても良く、マグネットボリュームのコントロールを軸全体形状で行い、結果的に磁力の大きさを補正するようなオフセット形状とすることでも安定した磁力を得ることができる。要は、一般的に高めの磁力を必要とする現像極のマグネットボリュームを、スリーブの回転中心からオフセットしている軸により、現像極ほど磁力を必要としない従来の対極側のボリューム分を付加することで、全体のマグネットボリュームを有効に活用することができる。」 2-1f.上記段落【0048】、【0061】、【0062】及び【0063】で参照している【図1】、【図7】、【図8】及び【図9】は、以下に示すものである。 2-1g.そして、上記【図1】及び【図7】等より、マグネットロールは、5の磁極を有し、かつその表面に有するN極とS極のうち、総数の少ない磁極側に現像極が設けられている。 2-1h.さらに、上記【図8】、【図9】、段落【0064】及び【0066】等より、現像極の磁力は1050ガウスを有している。 上記2-1a.?2-1h.の摘記事項等を総合して勘案すると、引用例1には以下の発明(以下「引用例1記載の発明」という)が実質的に記載されている。 「回転自在に配設されたスリーブ内にマグネットロールが配設され、このマグネットロールの磁気特性によって、現像剤からなる薄層が形成されたスリーブを感光体表面に近接させ、該スリーブ上の現像剤を感光体表面に飛翔させて供給することにより、該感光体表面に可視画像を形成させる現像剤担持体において、前記マグネットロールが5の奇数の磁極を有し、かつその表面に有するN極とS極のうち、総数の少ない磁極側且つ磁力1050ガウスを有する磁極に現像極が設けられている現像剤担持体。」 3.本願発明1と引用例1記載の発明の対比 引用例1記載の発明の「マグネットロール」、「感光体」及び「現像剤担持体」は、それぞれ、本願発明1の「マグネットローラ」、「画像形成体」及び「現像ローラ」に相当する。 したがって、両者は、 「回転自在に配設されたスリーブ内にマグネットローラが配設され、このマグネットローラの磁気特性によって、現像剤からなる薄層が形成されたスリーブを画像形成体表面に近接させ、該スリーブ上の現像剤を画像形成体表面に飛翔させて供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成させる現像ローラにおいて、前記マグネットローラが5以上の奇数の磁極を有し、かつその表面に有するN極とS極のうち、総数の少ない磁極側且つ所定の磁力を有する磁極に現像極が設けられている現像ローラ。」である点で一致し、以下の点で相違する。 3-1.相違点 現像極の所定の磁力が、本願発明1は、1010ガウスであるのに対し、引用例記載の発明は、1050ガウスである点。 4.相違点についての判断 上記相違点について検討する。 特開平9-281752号公報、特開平7-271133号公報、特開平7-110605号公報及び特開平8-69131号公報において、現像極の磁束密度(磁力)を500?1200ガウス程度とする点が記載されている。これらのことから、当業者ならこれら範囲内において、設計にあたって適宜最適な値を選択することは周知の技術である。 そして、本願発明1は、1010ガウスを有する磁極に設定されているが、1010ガウスを選択した事による格別の相違を見出せるものでもない。 してみると、引用例1記載の発明において、現像極の磁力を1010ガウスとすることは、当業者が適宜行う設計的事項に過ぎない。 また、現像極の磁力を1010ガウスとすることによる予期せざる格別の作用効果が奏せられるものでもない。 なお、請求人は審判請求書において、総数の少ない磁極側であり、且つ磁力1010ガウスを有する磁極を現像極とした点で引用文献とは相違すると述べ、この磁力の規定が、単なる設計的事項として済まされるものではない理由として、磁極の設定状況について指摘し、磁極S1において、当業者が任意に1010ガウスという高い磁力を設定できるものではないと主張している。 しかしながら、本願発明1において磁極の設定状況について限定がされているわけではないから、当該理由は採用できない。 また、1010ガウスを越える1200ガウス程度の高い磁力を現像極において設けることが特開平9-281752号公報、特開平7-271133号公報、特開平7-110605号公報及び特開平8-69131号公報等にあるように周知技術であることから、1010ガウスという磁力を設定することになんら困難性はない。 5.むすび 以上のとおりであり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1記載の発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-14 |
結審通知日 | 2009-01-20 |
審決日 | 2009-02-03 |
出願番号 | 特願平10-51680 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 祐介 |
特許庁審判長 |
山下 喜代治 |
特許庁審判官 |
木村 史郎 大森 伸一 |
発明の名称 | 現像ローラ及び現像装置 |
代理人 | 大谷 保 |