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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1194885
審判番号 不服2007-33014  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-06 
確定日 2009-03-26 
事件の表示 特願2006-116636「ズームレンズおよびデジタルカメラおよび携帯情報機器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年11月 1日出願公開、特開2007-286548〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年(2006年)4月20日に出願した特願2006-116636号であって、平成19年11月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年12月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成19年12月21日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成20年10月10日付けで当審から請求人に審尋を行い、期間を指定して回答書を提出する機会を与えたが、請求人からの応答はなかった。

第2 平成19年12月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成19年12月21日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成19年6月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、
「像面からの距離が固定された負の屈折力を有する第1群レンズと、
正の屈折力を有し、ズーミング時に移動する第2群レンズと、
正の屈折力を有し、ズーミング時に移動する第3群レンズと、
像面からの距離が固定された負の屈折力を有する第4群レンズとからなり、
上記第1群レンズ,第2群レンズ,第3群レンズおよび第4群レンズが物体側から上記像面に向かって順に配置され、
ズーミング時、広角端における上記第1群レンズと上記第2群レンズとの間隔よりも望遠端における上記第1群レンズと上記第2群レンズとの間隔が小さくなり、かつ、上記第3群レンズと上記第4群レンズとの間隔が広角端から望遠端になるほど大きくなるように、上記第2群レンズおよび上記第3群レンズを光軸方向に移動させるためのレンズ移動機構を備え、
上記第3群レンズは、開口絞りと、正の屈折力を有するレンズと、負の屈折力を有するレンズからなり、上記開口絞りと上記正の屈折力を有するレンズと上記負の屈折力を有するレンズとが、上記物体側から上記像面側に向かって順に配置されていることを特徴とするズームレンズ。」が、

「像面からの距離が固定された負の屈折力を有する第1群レンズと、
正の屈折力を有し、ズーミング時に移動する第2群レンズと、
正の屈折力を有し、ズーミング時に移動する第3群レンズと、
像面からの距離が固定された負の屈折力を有する第4群レンズとからなり、
上記第1群レンズ,第2群レンズ,第3群レンズおよび第4群レンズが物体側から上記像面に向かって順に配置され、
ズーミング時、広角端における上記第1群レンズと上記第2群レンズとの間隔よりも望遠端における上記第1群レンズと上記第2群レンズとの間隔が小さくなり、かつ、上記第3群レンズと上記第4群レンズとの間隔が広角端から望遠端になるほど大きくなるように、上記第2群レンズおよび上記第3群レンズを光軸方向に移動させて、上記像面に結像させる物体像の大きさを変えながら結像位置の変動を補正するレンズ移動機構を備え、
上記第3群レンズは、開口絞りと、正の屈折力を有するレンズと、負の屈折力を有するレンズからなり、上記開口絞りと上記正の屈折力を有するレンズと上記負の屈折力を有するレンズとが、上記物体側から上記像面側に向かって順に配置されていることを特徴とするズームレンズ。」と補正された。

上記本件補正は、レンズ移動機構に関し、「像面に結像させる物体像の大きさを変えながら結像位置の変動を補正する」機能について限定したものであるから、いわゆる限定的減縮を目的としたものであるということができ、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものということができる。

2 独立特許要件違反についての検討
次に、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(1)本願補正発明について
本願補正発明は、平成19年12月21日付け手続補正書でなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(「1 本件補正について」の記載参照。)

(2)引用例
ア 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-248312号公報(以下「引用例1」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。(下記の「イ 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した箇所に下線を付した。)

「【0039】 各収差図から、本実施例は諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることが明らかである。
〔実施例6〕 図26は、実施例6のレンズ構成図であり、上部に広角端、下部に望遠端でのレンズ構成を示している。物体側から順に、負の第1レンズ群G1と、正の第2レンズ群G2と、正の第3レンズ群G3と、負の第4レンズ群G4から構成し、第2レンズ群と第3レンズ群との間に絞りを有し、広角端から望遠端への変倍に際して、第1レンズ群と第4レンズ群は静止し、第2レンズ群と第3レンズ群はいずれも物体方向に移動し、第1レンズ群と第2レンズ群との空気間隔は減少し、第2レンズ群と第3レンズ群との空気間隔は広角端近傍では拡大し、望遠端近傍では縮小し、第3レンズ群と第4レンズ群の空気間隔は拡大する。
【0040】 また、遠距離物体から近距離物体へのフォーカシングは、第2レンズ群を像面側に移動させて行なう。 以下の表6に、本発明における実施例6の諸元の値を掲げる。実施例の諸元表中のfは焦点距離、FはFナンバー、 2ωは画角を表す。そして、左端の数字は物体側からの順序を表し、rはレンズ面の曲率半径、dはレンズ面間隔、n及びνは屈折率及びアッベ数のd線(λ=587.6nm)に対する値である。また、可変間隔表中のRは撮影距離である。
【0041】
【表6】
f=41.00?55.00?78.00
F/ 4.10? 4.82? 6.01
2ω=58.08?43.29?30.77゜
r d ν n
1 56.1797 1.7000 58.5 1.65160
2 19.0753 9.0000
3 -102.6072 1.2000 55.6 1.69680
4 -402.8601 0.5000
5 23.8515 3.6000 30.0 1.69895
6 30.4342 (d 6)
7 26.5142 4.0000 57.0 1.62280
8 -45.0000 1.0000 38.8 1.67163
9 3813.9157 1.0000
10 18.6686 1.0000 35.7 1.90265
11 15.1761 (d11)
12 (絞り) 0.0000
13 15.9858 4.0000 49.7 1.55200
14 138.2929 1.5000
15 -153.5728 6.0000 35.2 1.74950
16 15.3828 2.0000
17 27.3218 4.5000 47.2 1.67003
18 -89.4819 (d18)
19 355.8035 1.2526 60.0 1.64000
20 124.5345
可変間隔表
f 41.00 55.00 78.00
R inf inf inf
d6 29.85350 16.02182 3.99996
d11 10.00955 14.11697 10.05648
d18 6.99989 16.72415 32.80650
f 41.00 55.00 78.00
R 500.00 500.00 500.00
d6 36.05087 21.92996 10.04931
d11 3.81218 8.20883 4.00713
d18 6.99989 16.72415 32.80650
条件対応値
|f1|/fw=1.220
f2/f3=1.000
x2/x3=1.002
f2/(|f1|+e1w)=0.823
f2/(|f1|+e1t)=1.183
β2t= 6.463
β2w=-4.660
図27、図28は、それぞれ実施例6の撮影距離R=infにおける広角端で諸収差図、望遠端での諸収差図を示し、図29、図30は、それぞれ実施例6の撮影距離R=500における広角端での諸収差図、望遠端での諸収差図を示す。各収差図において、FNOはFナンバー、NAは開口数、Yは像高、dはd線(λ=587.6nm)及びgはg線(λ=435.6nm)を示している。球面収差図における破線はd線の正弦条件を示し、非点収差図における実線はサジタル像面を、破線はメリジオナル像面をそれぞれ示す。」

【図26】には、実施例6のレンズ構成図が示されており、第3レンズ群(G3)が、開口絞りと、物体側の正の屈折力を有するレンズと、負の屈折力を有するレンズと、像面側の正の屈折力を有するレンズとからなり、上記開口絞りと上記物体側の正の屈折力を有するレンズと上記負の屈折力を有するレンズと上記像面側の正の屈折力を有するレンズとが、物体側から像面側に向かって順に配置されていることが読み取れる。

イ 引用例1に記載された発明の認定
引用例1の【表6】と【図26】の対応関係から、第3レンズ群G3の負の屈折力を有するレンズと像面側の正の屈折力を有するレンズの、それぞれの両面の諸元のデータが、【表6】の15ないし18番目のデータに対応していることが理解できる。そして、【表6】の15ないし18番目のデータから、上記の第3レンズ群G3の負の屈折力を有するレンズと像面側の正の屈折力を有するレンズの合成焦点距離は、約-56.0と算出されるから、上記の第3レンズ群G3の負の屈折力を有するレンズと像面側の正の屈折力を有するレンズとは、それら全体で負の屈折力を有しているといえる。

よって、上記記載から、引用例1には、ズームレンズに関し、
「物体側から順に、負の第1レンズ群G1と、正の第2レンズ群G2と、正の第3レンズ群G3と、負の第4レンズ群G4から構成され、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間に絞りを有し、広角端から望遠端への変倍に際して、第1レンズ群G1と第4レンズ群G4は静止し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3はいずれも物体方向に移動し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との空気間隔は減少し、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との空気間隔は広角端近傍では拡大し、望遠端近傍では縮小し、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の空気間隔は拡大し、
第3レンズ群G3が、開口絞りと、物体側の正の屈折力を有するレンズと、負の屈折力を有するレンズと、像面側の正の屈折力を有するレンズとからなり、上記開口絞りと上記物体側の正の屈折力を有するレンズと上記負の屈折力を有するレンズと上記像面側の正の屈折力を有するレンズとが、物体側から像面側に向かって順に配置され、
上記第3レンズ群G3の負の屈折力を有するレンズと像面側の正の屈折力を有するレンズとは、それら全体で負の屈折力を有しているズームレンズ。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

ウ 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-53633号公報(以下「引用例2」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。(下記の「(4) 当審の判断」の「ア 相違点についての検討」において直接参照する箇所に下線を付した。)

「【0094】
【発明の実施の形態】以下、まず、本発明の撮像装置に用いられるズームレンズの実施例1?12について説明する。これらの実施例の無限遠物点合焦時の広角端(a)、中間状態(b)、望遠端(c)でのレンズ断面図をそれぞれ図1?図12に示す。各図中、第1群はG1、第2群はG2、第3群はG3、第4群はG4、光路折り曲げプリズムはP、近赤外シャープカットコートを施したローパスフィルターはF、電子撮像素子であるCCDのカバーガラスをC、ローパスフィルターとCCDのカバーガラスを一体化し波長選択コートを施した平行平板をF’、CCDの像面をIで示してあり、物体側から順に配置された、光学的ローパスフィルターF、カバーガラスCは、第2群G2又は又は第4群G4と像面Iの間に固定配置されている。また、光量調節(ND)フィルター若しくはシャッター位置をNで示してある。なお、光量調節フィルターとシャッターは両方を併設してもよいことはもんである。
【0095】実施例1のズームレンズは、図1に示すように、負屈折力の第1群G1、正屈折力の第2群G2からなり、無限遠物点合焦時に広角端から望遠端に変倍する際は、第1群G1は像面側に移動し、第2群G2は物体側に移動して、第1群G1と第2群G2の間隔が小さくなる。
【0096】実施例1の第1群G1は、両凹レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズとからなり、第2群G2は、絞りと、その後に配置された両凸レンズと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズとからなる。非球面は、全てのレンズ面8面に用いられている。」

(3) 本願補正発明と引用発明の対比
ア ここで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明における「負の第1レンズ群G1」は、広角端から望遠端への変倍に際して静止していることから、本願補正発明の「像面からの距離が固定された負の屈折力を有する第1群レンズ」に相当する。

引用発明における「正の第2レンズ群G2」は、広角端から望遠端への変倍に際して物体方向に移動することから、本願補正発明の「正の屈折力を有し、ズーミング時に移動する第2群レンズ」に相当する。

引用発明における「正の第3レンズ群G3」は、広角端から望遠端への変倍に際して物体方向に移動することから、本願補正発明の「正の屈折力を有し、ズーミング時に移動する第3群レンズ」に相当する。

引用発明における「負の第4レンズ群G4」は、広角端から望遠端への変倍に際して静止していることから、本願補正発明の「像面からの距離が固定された負の屈折力を有する第4群レンズ」に相当する。

引用発明の「物体側から順に、負の第1レンズ群G1と、正の第2レンズ群G2と、正の第3レンズ群G3と、負の第4レンズ群G4から構成」されていることが、本願補正発明の「上記第1群レンズ,第2群レンズ,第3群レンズおよび第4群レンズが物体側から上記像面に向かって順に配置され」ることに相当する。

引用発明の「広角端から望遠端への変倍に際して、・・・第2レンズ群G2と第3レンズ群G3はいずれも物体方向に移動し、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との空気間隔は減少し、・・・第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の空気間隔は拡大」することが、本願補正発明の「ズーミング時、広角端における上記第1群レンズと上記第2群レンズとの間隔よりも望遠端における上記第1群レンズと上記第2群レンズとの間隔が小さくなり、かつ、上記第3群レンズと上記第4群レンズとの間隔が広角端から望遠端になるほど大きくなるように、上記第2群レンズおよび上記第3群レンズを光軸方向に移動させ」ることに相当する。

引用発明がズームレンズであることから、引用発明が、各レンズ群の移動に際して、本願補正発明の「像面に結像させる物体像の大きさを変えながら結像位置の変動を補正する」との事項を備えることは明らかである。

イ 本願補正発明と引用発明の一致点
したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「像面からの距離が固定された負の屈折力を有する第1群レンズと、
正の屈折力を有し、ズーミング時に移動する第2群レンズと、
正の屈折力を有し、ズーミング時に移動する第3群レンズと、
像面からの距離が固定された負の屈折力を有する第4群レンズとからなり、
上記第1群レンズ,第2群レンズ,第3群レンズおよび第4群レンズが物体側から上記像面に向かって順に配置され、
ズーミング時、広角端における上記第1群レンズと上記第2群レンズとの間隔よりも望遠端における上記第1群レンズと上記第2群レンズとの間隔が小さくなり、かつ、上記第3群レンズと上記第4群レンズとの間隔が広角端から望遠端になるほど大きくなるように、上記第2群レンズおよび上記第3群レンズを光軸方向に移動させて、上記像面に結像させる物体像の大きさを変えながら結像位置の変動を補正するレンズ移動機構を備えるズームレンズ。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。

ウ 本願補正発明と引用発明の相違点
相違点;
本願補正発明においては、第3群レンズが「開口絞りと、正の屈折力を有するレンズと、負の屈折力を有するレンズからなり、上記開口絞りと上記正の屈折力を有するレンズと上記負の屈折力を有するレンズとが、上記物体側から上記像面側に向かって順に配置されている」のに対して、引用発明においては、第3レンズ群が「開口絞りと、物体側の正の屈折力を有するレンズと、負の屈折力を有するレンズと、像面側の正の屈折力を有するレンズとからなり、上記開口絞りと上記物体側の正の屈折力を有するレンズと上記負の屈折力を有するレンズと上記像面側の正の屈折力を有するレンズとが、物体側から像面側に向かって順に配置されている」点。

(4) 当審の判断
ア 相違点についての検討
次に、上記相違点について検討する。

(ア)第1に、本願補正発明の第3群レンズについて、平成19年12月21日付けで補正された本願明細書の【0069】段落には、
「【0069】
また、第3群レンズG3を、物体側から像面側に向かって順に、開口絞りs、正の屈折力を有するレンズ23、負の屈折力を有するレンズ24,25となるように配置することによって、レンズ23およびレンズ24,25の有効径を、開口絞りsの有効径と同程度にすることができる。上記開口絞りsの有効径を小さくすることによって、第3群レンズG3のレンズの有効径を小さくすることができる。このとき、レンズ24とレンズ25の合成屈折力が負であれば、レンズ24の屈折力は正でもよい。」
と記載されており、また、同じく【0076】段落の【表4】のデータと【図2】及び【0120】段落の【表10】のデータと【図4】から、レンズ24とレンズ25、及びレンズ44とレンズ45とは、それぞれ、負の単レンズと正の単レンズとが接合されたレンズであることが理解できるから、本願補正発明の「第3群レンズ」中の「負の屈折力を有するレンズ」は、「負の単レンズ」と「正の単レンズ」とを接合したレンズを含むものである。
一方、引用発明の第3レンズ群G3中の「負の屈折力を有するレンズと像面側の正の屈折力を有するレンズ」とは、それら全体で負の屈折力を有しているものであるから、引用発明の第3レンズ群G3中の「負の屈折力を有するレンズ」及び「像面側の正の屈折力を有するレンズ」は、それぞれ、本願補正発明の第3群レンズ中の負の屈折力を有するレンズを構成する「負の単レンズ」及び「正の単レンズ」に相当するとともに、本願補正発明の第3群レンズ中の「負の屈折力を有するレンズ」を構成する「負の単レンズ」及び「正の単レンズ」と、引用発明の第3レンズ群G3中の「負の屈折力を有するレンズ」及び「像面側の正の屈折力を有するレンズ」とは、本願補正発明では、両者が接合レンズで構成されているのに対し、引用発明では、両者が分離されている点で相違する。
ところで、隣接して配される2枚のレンズを、空隙をあけて配置するかわりに両者を接合して接合レンズとなし、これをレンズ系の構成レンズとして用いる技術は、本願の出願前に周知である(例えば、特開平7-20378号公報(【請求項1】【0005】)、特開昭57-151910号公報(第1ページ左下欄第6?8行)、特開昭54-30821号公報(第1ページ左下欄第9?13行)参照。)から、引用発明において、第3レンズ群における「負の屈折力を有するレンズと像面側の正の屈折力を有するレンズ」を、2枚分離するかわりに、接合レンズとして構成することは当業者が容易になし得ることである。

(イ)第2に、複数のレンズ群の間隔を変化させて焦点距離を変化させるズームレンズにおいて、ズーミング(変倍)の際に移動する正の屈折力を有するレンズ群を、「開口絞りと、正の屈折力を有するレンズと、負の屈折力を有するレンズからなり、上記開口絞りと上記正の屈折力を有するレンズと上記負の屈折力を有するレンズとが、上記物体側から上記像面側に向かって順に配置されている」レンズ群で構成する技術は、例えば、引用例2(下線を付してある記載参照)や、特開2001-201685号公報(【0009】【0021】【図1】参照)に記載されているように本願の出願前に周知の技術であるから、引用発明において、ズーミングに際して移動する第3群レンズに、上記の周知の技術を採用し、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得た事項である。

イ 本願補正発明が奏する効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び上記の周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記の周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、本件補正は、同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。

第3 本願発明について
(1) 本願発明
平成19年12月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年6月29日付け手続補正書でなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(「第2 平成19年12月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成19年12月21日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明における、レンズ移動機構に関し「像面に結像させる物体像の大きさを変えながら結像位置の変動を補正する」機能について限定した補正を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成19年12月21日付けの手続補正についての補正却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」において記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-21 
結審通知日 2009-01-27 
審決日 2009-02-10 
出願番号 特願2006-116636(P2006-116636)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 英信  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 吉野 公夫
森林 克郎
発明の名称 ズームレンズおよびデジタルカメラおよび携帯情報機器  
代理人 仲倉 幸典  
代理人 山崎 宏  
代理人 田中 光雄  

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