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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1194939 |
審判番号 | 不服2007-10267 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-11 |
確定日 | 2009-03-27 |
事件の表示 | 平成11年特許願第217141号「把手付き合成樹脂製容器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月20日出願公開,特開2001- 48189〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は,平成11年7月30日の出願であって,平成19年3月5日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年4月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 II.当審の判断 1.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成18年9月4日付けの手続補正書により補正された明細書の,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「円筒状の胴部2上端から上内方へ起立する肩部3を介して口頸部4を起立し,かつ胴部の後方上部には,後面および左右両側面を開放する,把手付き部材取付け用の凹部5を設けた容器本体1と,把手12の上下両端部から上下脚板13,14 を前方突出する把手付き部材11とからなり,上記両脚板のうち,上方脚板13上面は凹部5の上面へ,又下方脚板14下面は凹部5の下面へ,それぞれ接し,かつそれ等両脚板の前端部は凹部奥壁の上下両端部へインサート成形により埋設固定させ,凹部5および把手12上方の容器本体胴部の後方上部部分には,指当て用の窪み21を付形し,該窪みの左右両側面および上面を,後外方へ拡開傾斜する第1リブ兼用壁22で形成したことを特徴とする把手付き合成樹脂製容器。」 2-1.引用例の記載事項 [引用例1] 原査定の拒絶の理由に引用された,特開平7-156952号公報(以下,「引用例1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。 a.記載a(段落0004) 「図5に示すように,ボトル本体(210)の一側壁に設けられた把手取付用凹陥部(240)に,この把手取付用凹陥部(240)の中央壁と嵌合する上下に嵌合部をもつ垂直な嵌合子(120)を有する別体の把手(100)を接合したことを特徴とする把手付二軸延伸ブロー成形ボトル(200)である。また,前記別体の把手(100)は,把手取付用凹陥部(240)の上方壁と下方壁のどちらか一方又は両方に嵌合する嵌合部(141)を設けてもよい。」 b.記載b(段落0010) 「このプリフォームは,型締めされた二軸延伸ブロー成形金型内で,延伸ロットで縦方向に延伸されたのち,プリフォーム内にエアが吹き込まれてボトルに成形されると同時に,予め胴部金型(300)内に装着された別体の把手をインサート成形して接合するものである。」 c.記載c(段落0025) 「ボトル本体(710)の把手取付用凹陥部(740)の上方には,補強用凹部(754)が設けられている。この補強用凹部は,把手を持って内容物を注ぐときに,この部分を親指で押さえることが多いため,変形しないように補強のために設けたものであり,この部分の肉厚を,厚くしておく方がより変形が防げる。」 そして,図5や図6には,ボトル本体210が,胴部上端から上内方へ起立する肩部を介して口頸部を起立した形状であること,把手取付用凹嵌部240がボトル本体の後面および左右両側面を開放する状態に設けられていることが示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合し,本願発明の記載ぶりに則って整理すると,引用例1には,「胴部上端から上内方へ起立する肩部を介して口頸部を起立し,かつボトル本体の一側壁には後面および左右両側面を開放する,把手取付用凹嵌部を設けたボトル本体と,前記把手取付用凹嵌部の上方壁と下方壁の両方に嵌合する嵌合部を設け,かつ,把手をインサート成形によりボトル本体に接合し,ボトル本体の肩部には親指で押さえるための補強用凹部を設けたことを特徴とする把手付2軸延伸ブロー成形ボトル。」に関する発明(以下,「引用発明」という。)が開示されている。 [引用例2] 同じく引用された実開平6-65232号公報(以下,「引用例2」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。 d.記載d(段落0003) 「【考案が解決しようとする課題】 しかしながら,別体の把手を取り付けたPETボトルは,把手を持って使用する時に,ボトルを把手で持ち上げると,把手取付け部の上方のボトル本体の胴部や肩部が,ボトルの内容物の重量で変形して,ボトル本体と把手部材の嵌合にガタを生じたり,ひどい時には,把手が外れてしまうことがあった。また,ボトルを把手を持って持ち上げ,傾けて内容物を排出する時に,把手取付部の下方のボトル本体の胴部が,ボトルの内容物の重量で変形して,ボトル本体と把手部材の嵌合にガタを生じたり,ひどい時には,把手が外れてしまうことがあった。これらの事故を防ぐために,把手取付用凹部の強度を向上する方法としては,縦方向,横方向及び斜め方向に凹凸面を形成する方法(例えば,特開平2-191155号公報),上面の一部に縦方向のリブを形成する方法(例えば,特開平3-124557号公報),結晶化する方法(実開昭64-2734号公報)などがあり,さらには,把手取付用凹部の下端に連続して,あるいは直下に周方向の凹リブを形成する方法(特開平3-43355号公報)や把手取付用凹部とほぼ同じ高さの位置に,ボトル本体のほぼ全周にわたって凹リブを形成する方法(実開昭63-294352号公報)などがあるが,ボトル本体の補強のためのリブが,把手取付部の上方及び下方の両方になかったり,形成したリブにクッション機能があったりして,使用時のボトル本体と把手部材との嵌合部のガタの発生や把手外れを,十分に防ぐことが出来なかった。」 e.記載e(段落0009) 「【実施例】 まず,図1に示したように,ボトル本体(110)の胴部(111)に形成された凹状の把手取付部(113)の上部と下部とに把手取付用の嵌合部を有し,さらに,把手取付部の上方部の肩部(112)と把手取付部の下方部の胴部とに楕円形状の縦方向の凸状に突起したリブ(121,122)を数本ずつ設けた本実施例に係わるボトル本体を,延伸ブロー成形法で,ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて作製した。」 そうすると,引用例2には,補強のため把手取付部の上部と下部にリブを形成することに関する技術が記載されている。 2-2.対比 本願発明と引用発明とを対比すると,その構造または機能からみて,引用発明の「ボトル本体の一側壁」は,本願発明の「胴部の後方上部」に相当し,以下同様に,「把手取付用凹嵌部」は「把手付き部材取付け用の凹部」に,「補強用凹部」は「窪み」に,「把手付2軸延伸ブロー成形ボトル」は「把手付き合成樹脂製容器」にそれぞれ相当し,引用発明の「ボトル本体」は,本願発明の「容器本体」と同義であり,同様に「親指で押さえるための」は「指当て用の」と,「設けた」は「付形した」とそれぞれ同義である。 また,引用発明の「把手取付用凹嵌部の上方壁と下方壁の両方に嵌合する嵌合部を設け,かつ,把手をインサート成形によりボトル本体に接合し」は,本願発明の「把手の上下両端部から上下脚板を前方突出する把手付き部材とからなり,上記両脚板のうち,上方脚板上面は凹部の上面へ,又下方脚板下面は凹部の下面へ,それぞれ接し,かつそれ等両脚板の前端部は凹部奥壁の上下両端部へインサート成形により埋設固定させ」とも表現できる。 そこで,本願発明と引用発明とは,本願発明の用語を用いて表現すると,下記の点で一致する。 「胴部上端から上内方へ起立する肩部を介して口頸部を起立し,かつ胴部の後方上部には,後面および左右両側面を開放する,把手付き部材取付け用の凹部を設けた容器本体と,把手の上下両端部から上下脚板を前方突出する把手付き部材とからなり,上記両脚板のうち,上方脚板上面は凹部の上面へ,又下方脚板下面は凹部の下面へ,それぞれ接し,かつそれ等両脚板の前端部は凹部奥壁の上下両端部へインサート成形により埋設固定させ,指当て用の窪みを付形した,ことを特徴とする把手付き合成樹脂製容器。」 そして,両者は,次の点で相違する(なお,対応する引用例記載の用語を括弧内に示す)。 (相違点1) 容器本体(ボトル本体)の胴部の形状に関して,本願発明の胴部は円筒状であるのに対して,引用発明は胴部の形状が不明である点。 (相違点2) 窪み(補強用凹部)の設置箇所に関して,本願発明の窪みは「凹部および把手上方の容器本体胴部の後方上部部分」に付形されているのに対して,引用発明の補強用凹部は肩部に設けられている点。 (相違点3) 窪み(補強用凹部)の構造に関して,本願発明は「窪みの左右両側面および上面を,後外方へ拡開傾斜する第1リブ兼用壁で形成し」た構造であるのに対し,引用発明の補強用凹部はリブ兼用壁を備えていない点。 2-3.相違点の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) 把手付き合成樹脂製容器において,容器本体の胴部を円筒状とすることは例示するまでもなく周知の技術手段である。 そこで,引例発明のボトル本体の胴部の形状に,当該周知の技術手段を適用して,相違点1に関して本願発明のような構成とすることは当業者が容易に想到しうる事項である。 (相違点2について) 本願発明の窪みも,引例発明の補強用凹部も,親指を当てるためのものであるので,この目的を達成できる窪み(補強用凹部)の設置箇所は,把手を親指以外の指で握った状態で親指が到達可能な箇所といえる。 してみると,このような箇所は,把手の取付け位置(特に把手の上部内面)と容器本体(ボトル本体)の胴部や肩部との位置関係に依存するものである。 したがって,該箇所,即ち,窪み(補強用凹部)の設置箇所を本願発明のような凹部および把手上方の容器本体胴部の後方上部部分とするか,引例発明のような肩部とするかは,設計者が把手の取付け位置(特に把手の上部内面)と容器本体(ボトル本体)の胴部や肩部との位置関係を考慮して,把手を親指以外の指で握った状態で親指が到達する箇所を選定することになるので,相違点2は単なる設計事項にすぎないといえる。 したがって,相違点2に関して本願発明のような構成とすることは当業者が容易に想到しうる事項である。 (相違点3について) 引用例2には,把手取付部近傍の強度を高める目的で把手取付部上方部の肩部に楕円形状の凸条に突起したリブを設けることが開示されている(2-1.d.e.参照)。 そして,引例発明の補強用凹部は,親指で押さえるための機能に加え,把手取付部近傍の強度補強の機能も備えている。 そして,この把手取付部近傍の強度補強の機能をさらに強化するために該部分の肉厚を,厚くしておくことが開示されている。(2-1.c.参照。) そこで,このさらなる機能強化の手段として,肉厚を,厚くしておく手段に代えて引用例2記載の手段を採用することは当業者が容易に想到しうる事項である。 また,該採用に際し凸条に突起したリブの形状を「後外方へ拡開傾斜するリブ兼用壁」とし,配置を「凹陥部(窪み)の左右両側面および上面」とすることは当業者が任意に選定しうる単なる設計事項にすぎない。 してみると,引用発明に引用例2記載の技術手段を付加し,本願発明の相違点2のような構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本願発明の相違点1?3に関する効果も当業者が予測し得た程度のものであって,格別のものとはいえない。 そうすると,本願発明は,周知の技術手段を考慮すると,引用発明及び引用例2に記載された技術手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお,請求人は平成19年5月11日付の審判請求書の手続補正書の4頁13?21行目において,「引用文献1の補強用凹部は,図7(a)に示すようにボトル本体710のうち本願にいう肩部分に形成されており,胴部には形成されていない。また,引用文献1の補強用凹部の上部分は,図7(a)に点線で描くように斜め前方へ延びており,後外方へ延びる本願のリブ兼用壁部とは傾斜の向きが正反対である。引用文献1の構成では,図7(a)から判るようにテーパ状の肩部に補強用凹部754を形成しているから,この補強用凹部の上端部には把手を持つ手の指が届きにくく,仮に届いても指が滑ってしまう可能性が高い。従って容器体を傾けて液体を注出する際に窪みに係止させた指が滑らないという本願効果を奏しない。」と主張している。 しかし,窪み(補強用凹部)に係止させた指が滑らないことは,窪みを設けた目的を考慮すれば当然必要なものであり,且つ,引例発明のように補強用凹部(窪み)を肩部に設けたとしても肩部の傾斜の程度や形状,把手の上部内面の形状によっては補強用凹部(窪み)に係止させた指が滑らないことも可能なので,この請求人の主張は採用できない。 さらに,請求人は同書の2頁41?45行目において[窪み21の左右両側面および上面を,後外方へ拡開傾斜する第1リブ兼用壁22で形成したから,この第1リブ兼用壁が図1に示すように庇状に後方へ張り出すこととなるので,窪みにかけた指が滑りにくく,その結果,「把手を持つ手の拇指を窪み21に当ててそのまま窪みを押下げることで容器本体を傾け,収納液を注出する」(明細書段落0017)という注出動作を的確に行うことができる。]と主張している。 しかし,引用例2には凸条に突起したリブを設けることが開示されており,これを引例発明に採用すれば凸条に突起したリブが庇状に後方へ張り出すことになり補強用凹部(窪み)にかけた指が滑りにくくことは充分推測される,そしてこの効果が,窪み(補強用凹部)の形状を「後外方へ拡開傾斜するリブ兼用壁」とし,窪み(補強用凹部)の配置を「凹陥部(窪み)の左右両側面および上面」とすることにより増大するとは必ずしも言えない。 なぜならば,窪み(補強用凹部)に係止させた指が滑らないための要件は,第1リブ兼用壁(凸条突起したリブ)自身の形状,配置に加え,容器本体(ボトル本体)の肩部の傾斜の状態(例えば,内部に向かって湾曲している)や,把手の上部内面の形状にも依存することは当然考えられる。 したがって,この請求人の主張も採用できない。 III.むすび 以上のとおり,本願発明は,周知の技術手段を考慮すると,引用発明及び引用例2に記載された技術手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 それゆえ,本願出願は,特許請求の範囲の請求項2?4に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-01-23 |
結審通知日 | 2009-01-28 |
審決日 | 2009-02-10 |
出願番号 | 特願平11-217141 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 武内 大志 |
特許庁審判長 |
松縄 正登 |
特許庁審判官 |
熊倉 強 村上 聡 |
発明の名称 | 把手付き合成樹脂製容器 |
代理人 | 今岡 憲 |