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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16D
管理番号 1194946
審判番号 不服2007-26267  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-26 
確定日 2009-03-27 
事件の表示 特願2000-386880「等速自在継手」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月 5日出願公開、特開2002-188653〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成12年12月20日の出願であって、平成19年8月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年9月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月26日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成19年10月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年10月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
平成19年10月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
外輪の球形内面に、溝底縦断面形状が曲線状のトラック溝を軸方向に沿って形成し、内輪の球形外面に、溝底縦断面形状が曲線状のトラック溝を、外輪のトラック溝に対向して形成し、これらのトラック溝間にボールを組み込み、このボールが収容されるポケットを有する保持器に、上記外輪の球形内面と面接触する球形外面、および上記内輪の球形外面と面接触する球形内面を設け、上記外輪の軸方向断面におけるトラック溝の曲率中心と上記内輪の軸方向断面におけるトラック溝の曲率中心を、継手の角度中心に対して左右に等距離にオフセットしたプロペラシャフト用の等速自在継手において、
上記外輪の球形内面およびトラック溝の両方を、焼入れ後の切削面とし、これらの焼入れ後の切削面は表面粗さをRa0.8以下とし、上記外輪および内輪のトラック溝の内面とピッチ円上にあるボールとの継手径方向の距離である継手径方向隙間d1,d2の和を、0.005?0.045mmの範囲とし、上記保持器のポケットとボールとの軸方向隙間であるポケット隙間d3を、-0.004?+0.020mmの範囲とし、少なくとも上記保持器の表面に、摩擦抵抗を低減させる表面処理層を形成したことを特徴とする等速自在継手。」
と補正された。(なお、下線は補正箇所を示す。)
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「保持器」について「少なくとも上記保持器の表面に、摩擦抵抗を低減させる表面処理層を形成し」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下で検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物のうちの
(1)特開2000-230570号公報(以下「刊行物1」という。)
(2)特開平6-173967号公報(以下「刊行物2」という。)
には、それぞれ、次の事項が記載されている。

(1)刊行物1(特開2000-230570号公報)の記載事項
刊行物1には、「等速自在継手」に関して、図とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0002】
【従来の技術】自動車のドライブシャフト等で使用されているBJ(ボール・フィクスト・ジョイント)1は、図2および図3に示すように、外輪2、内輪3、トルク伝達ボール4、保持器5から構成される。外輪2と内輪3との間に保持器5が介在し、保持器5は、外輪2の球面状内周面2aおよび内輪3の球面状外周面3aとそれぞれ球面接触している。
【0003】外輪2の内周面2aと内輪3の外周面3aにそれぞれ複数の曲線状の案内溝2b,3bが形成されており、外輪2と内輪3の案内溝2b,3bの球面中心O_(TO),O_(TI)はそれぞれ継手中心O(外輪の球面状内周面2aおよび内輪の球面状外周面3aの球面中心に同じ)に対して対称な位置にある。換言すれば、球面中心O_(TO)と球面中心O_(TI)は継手中心Oから逆方向に等距離、軸方向にオフセットされている。このため、外輪2の案内溝2bと内輪3の案内溝3bとで形成されるボールトラックは、軸方向の一方から他方へ向かって徐々に広がったくさび状を呈する。各トルク伝達ボール4はこのくさび状のボールトラック内に収容され、外輪2と内輪3との間で負荷を伝達する。すべてのトルク伝達ボール4を継手平面P(作動角の二等分線に垂直な平面)に保持するため、保持器5が組み込まれている。」
イ 「【0021】これに対し、オフセット角φ_(T)を従来品よりも小さくすれば、上記軸力が弱まるため、ポケットとトルク伝達ボール4との間の締め代を正隙間とすることができると考えられる。
……
【0025】なお、ここでいう正隙間は、図6に示すように軸方向の隙間を意味し、その幅tは0以上で25μm以下とするのが望ましい(図中の隙間の幅は誇張して描いている)。……」
ウ 「【0030】等速自在継手の構成部材のうち、相手側部材との間で滑り摩擦を生じる表面部に保護層を設けると、等速自在継手の作動性を改善することができる。保護層を形成する表面部としては、外側部材2や内側部材3と摺接する保持器5の表面部が一例として挙げられる。保護層としては、母材同士の金属接触の防止または抑制に効果のある膜、例えば硫化鉄などの化成処理膜や二硫化モリブデンなどの吸着膜が考えられる。……」
エ 「【0034】図1?図3に示すように、この実施形態の等速自在継手1は、球面状の内周面2aに複数(通常は6本)の曲線状の案内溝2bを軸方向に形成した外側部材2(外輪)と、球面状の外周面3aに複数(通常は6本)の曲線状の案内溝3bを軸方向に形成した内側部材3(内輪)と、外側部材2の案内溝2bと内側部材3の案内溝3bとが協働して形成されるボールトラックにそれぞれ配された複数(通常は6個)のトルク伝達ボール4と、トルク伝達ボール4を保持する保持器5とで構成される。
【0035】外側部材2の案内溝2bの中心O_(TO)と内側部材3の案内溝3bの中心O_(TI)とは、継手中心Oに対して軸方向に等距離だけ反対側(中心O_(TO)は継手の開口側、O_(TI)は継手の奥部側)にオフセットされている。そのため、ボールトラックは開口側が広く、奥部側に向かって漸次縮小した形状(くさび状)になっている。
【0036】保持器5の外周面5aの球面中心、および当該外周面5aの案内面となる外側部材2の内周面2aの球面中心は、何れも継手中心Oに一致する。また、保持器5の内周面5bの球面中心、および当該内周面5bの案内面となる内側部材3の外周面3aの球面中心も何れも継手中心Oに一致する。外側部材2と内側部材3とが角度θだけ角度変位すると、保持器5に案内されたトルク伝達ボール4は常にどの作動角θにおいても、角度θの二等分面(θ/2)内に維持され、継手の等速性が確保される。」
オ 「【0040】保持器5の外周面5aや内周面5bには、外側部材2や内側部材3との金属接触を防止または抑制すべく、硫化鉄などの化成処理膜や二硫化モリブデンなどの吸着膜からなる保護層が形成される。保護層は、相対的な滑り接触を生じる二部材間に介在していればよく、保持器5側に形成する他、外側部材2側や内側部材3側に、すなわち外側部材2の内周面2aや内側部材3の外周面3aに形成してもよい。もちろん、保持器5側と、外側部材2側および内側部材3側との双方に保護層を形成してもよい。」

上記記載事項ア?オ及び図の記載を総合すると、刊行物1には、
「外側部材2(外輪)の球面状の内周面2aに、溝底縦断面形状が曲線状の案内溝2bを軸方向に沿って形成し、内側部材3(内輪)の球面状の外周面3aに、溝底縦断面形状が曲線状の案内溝3bを、外側部材2(外輪)の案内溝2bに対向して形成し、これら案内溝2b,3b間にトルク伝達ボール4を組み込み、このトルク伝達ボール4が収容されるポケット51を有する保持器5に、上記外側部材2(外輪)の球面状の内周面2aと面接触する外周面5a、および上記内側部材3(内輪)の球面状の外周面3aと面接触する内周面5bを設け、上記外側部材2(外輪)の軸方向断面における案内溝2bの中心O_(TO)と上記内側部材3(内輪)の軸方向断面における案内溝3bの中心O_(TI)を、継手中心Oに対して左右に等距離にオフセットしたドライブシャフト等で使用される等速自在継手1において、
上記保持器5のポケット51とトルク伝達ボール4との軸方向の隙間を意味する正隙間の幅tを、0以上で25μm(=0.025mm)以下とし、上記保持器5の表面に、二硫化モリブデンの吸着膜からなる保護層を形成した等速自在継手1。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)刊行物2(特開平6-173967号公報)の記載事項
刊行物2には、「等速ジョイント用アウターレース」に関して、図とともに次の事項が記載されている。
カ 「【0013】実施例2
S55C鋼にバナジウム、クロム、モリブデンを添加した構造用鋼を温間鍛造および機械加工を行い、その後570[℃]×180[分]ガス軟窒化処理し、さらにボール溝部においては、7.5[Hz]の周波数、140[Kw]の電力にて3.6秒間高周波加熱した後焼き入れ処理を行った。最終仕上げとしてボール溝部においては、表層部0.2[mm]切削除去し、第五図の1に示す形状の等速ジョイント用アウターレースに仕上げた。……」

上記記載事項カは、要するに、ボール溝部においては、焼き入れ処理を行い、最終仕上げとして表層部を切削除去して、等速ジョイント用アウターレースに仕上げたというものであって、切削除去した表層部が焼き入れ後の切削面となることは明らかであるから、刊行物2には、
「等速ジョイント用アウターレースのボール溝部を、焼き入れ後の切削面とすること」
が記載されているものと認められる。

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「外側部材2(外輪)」は本願補正発明の「外輪」に相当し、以下同様に、外側部材2(外輪)の「球面状の内周面2a」は外輪の「球形内面」に、外側部材2(外輪)の「案内溝2b」は外輪の「トラック溝」に、「内側部材3(内輪)」は「内輪」に、内側部材3(内輪)の「球面状の外周面3a」は内輪の「球形外面」に、内側部材3(内輪)の「案内溝3b」は内輪の「トラック溝」に、「トルク伝達ボール4」は「ボール」に、「ポケット51」は「ポケット」に、「保持器5」は「保持器」に、外側部材2(外輪)の球面状の内周面2aと面接触する「外周面5a」は外輪の球形内面と面接触する「球形外面」に、内側部材3(内輪)の球面状の外周面3aと面接触する「内周面5b」は内輪の球形外面と面接触する「球形内面」に、外側部材2(外輪)の軸方向断面における「案内溝2bの中心O_(TO)」は外輪の軸方向断面における「トラック溝の曲率中心」に、内側部材3(内輪)の軸方向断面における「案内溝3bの中心O_(TI)」は内輪の軸方向断面における「トラック溝の曲率中心」に、「継手中心O」は「継手の角度中心」に、「等速自在継手1」は「等速自在継手」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「軸方向の隙間を意味する正隙間」は本願補正発明の「軸方向隙間であるポケット隙間d3」に相当し、両者の数値範囲に関し、引用発明の「0以上で25μm(=0.025mm)以下」と本願補正発明の「-0.004?+0.020mm」とは、「0?+0.020mm」の範囲で重複する。
さらに、引用発明の「二硫化モリブデンの吸着膜からなる保護層」は、摩擦抵抗を低減させる機能を有するものと考えられるから、本願補正発明の「摩擦抵抗を低減させる表面処理層」に相当する。
よって、本願補正発明と引用発明とは、
[一致点]
「外輪の球形内面に、溝底縦断面形状が曲線状のトラック溝を軸方向に沿って形成し、内輪の球形外面に、溝底縦断面形状が曲線状のトラック溝を、外輪のトラック溝に対向して形成し、これらのトラック溝間にボールを組み込み、このボールが収容されるポケットを有する保持器に、上記外輪の球形内面と面接触する球形外面、および上記内輪の球形外面と面接触する球形内面を設け、上記外輪の軸方向断面におけるトラック溝の曲率中心と上記内輪の軸方向断面におけるトラック溝の曲率中心を、継手の角度中心に対して左右に等距離にオフセットした等速自在継手において、
上記保持器のポケットとボールとの軸方向隙間であるポケット隙間d3を、0?+0.020mmの範囲とし、上記保持器の表面に、摩擦抵抗を低減させる表面処理層を形成した等速自在継手。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
等速自在継手の用途に関し、本願補正発明は、「プロペラシャフト用の」等速自在継手であるのに対して、引用発明は、「ドライブシャフト等で使用される」等速自在継手1である点。
[相違点2]
本願補正発明は、「上記外輪の球形内面およびトラック溝の両方を、焼入れ後の切削面とし、これらの焼入れ後の切削面は表面粗さをRa0.8以下とし」たものであるのに対して、引用発明は、そのようなものではない点。
[相違点3]
本願補正発明は、「上記外輪および内輪のトラック溝の内面とピッチ円上にあるボールとの継手径方向の距離である継手径方向隙間d1,d2の和を、0.005?0.045mmの範囲とし」たものであるのに対して、引用発明は、そのようなものではない点。

4.当審の判断
そこで、上記各相違点について以下で検討する。

(1)相違点1について
引用発明は、「ドライブシャフト等で使用される」とあることから、ドライブシャフト以外であるプロペラシャフトで使用されることを排除するものではないし、ドライブシャフトとプロペラシャフトとはごく近接する技術分野であり、両者で使用される等速自在継手に構造や機能等に特段の差異はなく、プロペラシャフトで使用されることを妨げる特段の事情も見あたらないから、引用発明の等速自在継手1を「プロペラシャフト用の」ものとすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

(2)相違点2について
上記のとおり刊行物2には、「等速ジョイント用アウターレースのボール溝部を、焼き入れ後の切削面とすること」が記載されているものと認められ、当該刊行物2記載の「等速ジョイント用アウターレースのボール溝部」は本願補正発明の「外輪のトラック溝」に相当するから、上記刊行物2記載の事項は、上記相違点2に係る本願補正発明の構成のうちの「外輪のトラック溝を、焼入れ後の切削面とし」たことに相当するものである。
そして、引用発明において、上記刊行物2に記載された等速自在継手の加工に関する技術を適用することは、当業者にとって容易に想到し得るものである。さらに、外輪を焼入れ後に仕上げ加工をする場合に、仕上げ加工の方法や仕上げ加工する箇所は、当業者であれば必要に応じて適宜選択し得るものであるから、引用発明に上記刊行物2記載の事項を適用するに際して、引用発明の外側部材2(外輪)の案内溝2b(トラック溝)のみならず球面状の内周面2a(球形内面)も、焼入れ後の切削面とすることは、当業者であれば容易になし得る設計上の事項である。
また、切削加工により切削面の表面粗さをRa0.8以下とすることは、周知の技術(例えば、実願平4-57744号(実開平6-11905号)のCD-ROMの段落【0009】の記載、及び特表平62-502324号公報の第2ページ右下欄第2行ないし第5行の記載参照。)である。
よって、引用発明に上記刊行物2記載の事項及び上記周知の技術を適用した上で設計変更を施し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

(3)相違点3について
自動車のプロペラシャフト等に使用される等速自在継手の技術分野において、滑らかな屈曲作動性、スライド抵抗減少のためボールとトラック溝との間に隙間を設けたり、逆にガタや発熱を回避するためにボールとトラック溝との間に予圧をかけることは、周知の技術(例えば、実願昭61-121350号(実開昭63-27721号)のマイクロフィルムの第2ページ第18行ないし第3ページ第2行、実願平5-63163号(実開平7-28233号)のCD-ROMの段落【0002】及び【0003】参照。)である。
そうすると、外輪および内輪のトラック溝の内面とピッチ円上にあるボールとの継手径方向の距離である継手径方向隙間の和を、適宜調整することは、当業者であれば通常考慮する設計上の事項といえる。
そして、上記継手径方向隙間の和の数値範囲を、加工可能性を考慮した上でできるだけ小さいものとして最適化又は好適化することは、当業者の通常の創作能力の発揮というべきものであるから、引用発明において、外側部材2(外輪)および内側部材3(内輪)の案内溝2b,3bの内面とピッチ円上にあるトルク伝達ボール4(ボール)との継手径方向の距離である継手径方向隙間の和を、0.005?0.045mmの範囲とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。

(4)作用効果について
そして、本願補正発明が奏する作用効果も、引用発明、上記刊行物2記載の事項及び上記各周知の技術から予測される程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明並びに上記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成19年10月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成19年3月19日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 外輪の球形内面に、溝底縦断面形状が曲線状のトラック溝を軸方向に沿って形成し、内輪の球形外面に、溝底縦断面形状が曲線状のトラック溝を、外輪のトラック溝に対向して形成し、これらのトラック溝間にボールを組み込み、このボールが収容されるポケットを有する保持器に、上記外輪の球形内面と面接触する球形外面、および上記内輪の球形外面と面接触する球形内面を設け、上記外輪の軸方向断面におけるトラック溝の曲率中心と上記内輪の軸方向断面におけるトラック溝の曲率中心を、継手の角度中心に対して左右に等距離にオフセットしたプロペラシャフト用の等速自在継手において、
上記外輪の球形内面およびトラック溝の両方を、焼入れ後の切削面とし、これらの焼入れ後の切削面は表面粗さをRa0.8以下とし、上記外輪および内輪のトラック溝の内面とピッチ円上にあるボールとの継手径方向の距離である継手径方向隙間d1,d2の和を、0.005?0.045mmの範囲とし、上記保持器のポケットとボールとの軸方向隙間であるポケット隙間d3を、-0.004?+0.020mmの範囲としたことを特徴とする等速自在継手。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び2とその記載事項は、上記【2】2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「【2】1.」で検討した本願補正発明から、「保持器」の限定事項である「少なくとも上記保持器の表面に、摩擦抵抗を低減させる表面処理層を形成し」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記【2】4.に記載したとおり、刊行物1及び刊行物2に記載された発明並びに上記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1及び刊行物2に記載された発明並びに上記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明並びに上記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2ないし11に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-09 
結審通知日 2009-01-20 
審決日 2009-02-03 
出願番号 特願2000-386880(P2000-386880)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16D)
P 1 8・ 121- Z (F16D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 亮  
特許庁審判長 溝渕 良一
特許庁審判官 川上 益喜
岩谷 一臣
発明の名称 等速自在継手  
代理人 野田 雅士  

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