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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1194991
審判番号 不服2007-1491  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-16 
確定日 2009-03-23 
事件の表示 特願2003- 49089「スロットマシン及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月16日出願公開、特開2004-254928〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成15年2月26日の出願であって、平成18年11月24日付けで拒絶の査定がされた(同日付けで平成18年8月30日付け手続補正が却下された。)ため、これを不服として平成19年1月16日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正の当否及び本願発明の認定
1.本件補正の内容
本件補正前(平成18年3月23日付け手続補正後)の特許請求の範囲は請求項1?請求項5から成っているのに対し、本件補正後のそれは単一の請求項1から成っている。
そうすると、4つの請求項が削除されていることになり、請求人の「今般本書と同日付で提出した手続補正書において、特許請求の範囲の請求項1の補正は、発明の特徴又は記載をより明確にするためのものであって、新規事項の追加はありません。」(審判請求書4頁7?9行)との主張からみて、請求項2?5が削除されたものと解するのが妥当である。
そこで、本件補正前後の請求項1の記載を比較すると、「特別役に対応する図柄の組み合わせを形成する図柄の一部が入賞ライン上に停止している場合に、」と「始動操作手段により回転リールの回転を開始させる操作が実行されたときに、」の記載順序が入れ替わり(それとともに「場合に」の「に」が削除されている。)、「前記特別役が入賞するまで継続して行う制御手段」が「前記特別役が入賞するゲームまで継続して行うリール制御手段」と補正されているだけである。
そこで検討するに、「特別役に対応する図柄の組み合わせを形成する図柄の一部が入賞ライン上に停止している場合に、」と「始動操作手段により回転リールの回転を開始させる操作が実行されたときに、」の記載順序を入れ替えてもその技術内容が変更されると解することはできないし、補正前の記載が不明確であると認めることもできない。
また、本件補正前後に共通して「フラグが成立した役に対応する各回転リールの図柄組み合わせが入賞ライン上に揃ったときに入賞と判定」及び「回転リールを回転させた後に停止させることを1ゲームとし、これを繰り返し遊技するスロットマシン」とある以上、1回のゲームにおいて特別役に対応する各回転リールの図柄組み合わせが入賞ライン上に揃うことが「特別役が入賞」に該当し、そうである以上、「前記特別役が入賞するまで」と「前記特別役が入賞するゲームまで」に相違があると認めることはできないし、補正前の「前記特別役が入賞するまで」が不明確と認めることもできない。
さらに、本件補正前においても「制御手段」は「特別役に対応する図柄の組み合わせを形成する図柄の一部を構成する回転リールに対してはこれを回転させる制御は行わない一方、それ以外の回転リールに対してはこれを回転させる制御を行うとする処理を」行うのだから、それを「リール制御手段」と表現することは、単なる命名変更でしかなく、補正前の記載が不明確であると認めることもできない。
以上のとおりであるから、請求項1の補正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正または明りようでない記載の釈明の何れにも該当せず、厳密にいうと違法であるが、特許請求の範囲が拡張されたわけでも、不明確になったわけでもないから、この点は不問に付す。

2.請求項1に係る発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技媒体の投入口、該投入口への遊技媒体の投入量に応じて入賞ラインの数を設定する入賞ライン設定手段、周面に互いに種類の異なる複数の図柄が周方向に沿って配列されている複数の回転リール、各回転リールをそれぞれ個別に回転させることにより各回転リールの図柄をそれぞれ個別に変動させるための複数の駆動源、駆動源に始動信号を与えて回転リールを回転させて図柄の変動を開始させるための始動操作手段、回転リールの図柄の変動を停止させるために各回転リールに対応して設けられる複数の停止操作手段、上記始動操作手段が操作されることを契機に特別役を含む役を抽選対象として当該役のフラグの成立に関する抽選を行う抽選手段、及び抽選手段により役のフラグが成立し、該フラグが成立した役に対応する各回転リールの図柄組み合わせが入賞ライン上に揃ったときに入賞と判定する入賞判定手段を備え、回転リールを回転させた後に停止させることを1ゲームとし、これを繰り返し遊技するスロットマシンにおいて、
抽選手段によりフラグが成立した特別役を、当該特別役に対応する図柄の組み合わせで入賞ラインに揃い入賞するまで次ゲームへとそのフラグ成立を持ち越すフラグ持ち越し手段と、
特別役のフラグが成立しているときのゲームにおいて始動操作手段により回転リールの回転を開始させる操作が実行されたときに、特別役に対応する図柄の組み合わせを形成する図柄の一部が入賞ライン上に停止している場合、上記特別役に対応する図柄の組み合わせを形成する図柄の一部を構成する回転リールに対してはこれを回転させる制御は行わない一方、それ以外の回転リールに対してはこれを回転させる制御を行うとする処理を、前記特別役が入賞するゲームまで継続して行うリール制御手段とを有することを特徴とするスロットマシン。」

第3 本件審判請求についての判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-143384号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?クの記載が図示とともにある。
ア.「複数種類の図柄を可変表示する可変表示遊技を行う可変表示部を備える可変表示装置と、
前記可変表示遊技を含む遊技を開始させるスタートスイッチと、
前記可変表示遊技における可変表示を停止させるストップスイッチと、
前記スタートスイッチの操作に基づいて抽選を行う抽選手段と、
前記抽選手段による抽選結果が入賞であることを条件に入賞フラグを発生させるフラグ発生手段と、
前記フラグ発生手段により発生された入賞フラグに対応して予め定められた所定の停止図柄を、前記ストップスイッチの操作に基づいて停止表示させるように可変表示装置を制御する停止制御手段と、
続けて行われる2つの遊技のうち後に行われる遊技の契機となるスタートスイッチの操作時期が早い場合には、先に行われる遊技が特定段階に達する時点から後に行われる遊技が特定段階に達する時点までの間隔が一定時間よりも短くならないようにさせるために、後に行われる遊技が特定段階に達する時期を遅延させる遅延時間を設ける遅延手段と、
遊技に前記遅延時間が設けられることに関連して、何らかの入賞フラグが成立している可能性があることを報知する成立フラグ報知手段と、を備えることを特徴とするスロットマシン。」(【請求項1】)
イ.「小役、リプレイなどの入賞フラグは、該入賞フラグが成立した成立ゲーム(当該遊技)のみ有効で、次回以降の遊技には入賞フラグが持ち越されない・・・ボーナス入賞の入賞フラグは、該入賞フラグが成立した成立ゲーム(遊技)以降、該入賞フラグに対応した所定の停止図柄が停止表示となってボーナスゲームが開始されるまで継続して毎回の遊技に持ち越される(有効である)。」(段落【0007】)
ウ.「可変表示装置の可変表示部20は、それぞれ独立に回転可能な複数(例えば、3つ)のリール、即ち、第1リール20a、第2リール20b、第3リール20cを備えて構成される。図3に示すように、これらリール20a?20cには、複数種類の図柄からなる図柄列(例えば、0番から20番までの都合21コマ分の図柄列)が表記されている。そして、これら図柄列中の図柄のうち、連続する所定数(例えば、3つ)の図柄が、各リール20a?20c毎に表示窓5を介して視認可能となっている。なお、図柄の種類は、図3に示すように、例えば、「7(白)」(第1リール20aの20番等)、「チェリー」(第1リール20aの19番等)、「BAR」(第1リール20aの18番等)、「ベル」(第1リール20aの17番等)、「スイカ」(第1リール20aの16番等)、「リプレイ」(第1リール20aの15番等)、「7(網掛け)」(第1リール20aの13番等)の都合7種類となっている。また、可変表示装置は、リール20a?20cをそれぞれ独立に回転駆動ならびに回転停止させるリール駆動部40(図2)を備えている。」(段落【0037】)
エ.「前扉2前面のうち、表示窓5の下方片側には、遊技を開始するためのスタートレバー(スタートスイッチ)13が設けられている。さらに、前扉2前面のうち、表示窓5の下方には、各リール20a?20cと一対一で対応付けられて各リール20a?20cの回転をそれぞれ停止させて、図柄を停止表示させるためのストップボタン、即ち、第1リールストップボタン(ストップスイッチ)14a、第2リールストップボタン(ストップスイッチ)14b、第3リールストップボタン(ストップスイッチ)14cが設けられている。」(段落【0039】)
オ.「スタートレバー13の操作に基づき遊技が開始され、必要に応じて所定の遊技演出を行った後に、リール20a?20cの回転を開始させることで可変表示遊技が開始され、ストップボタン14a?14cの操作により全リール20a?20cを停止させることで可変表示遊技が終了し、さらにその後、必要に応じて所定の遊技演出を行って、1回の遊技が終了する。」(段落【0040】)
カ.「メダルのベット等に関する処理について説明する。先ず、クレジット選択ボタン12により「非クレジット状態」が選択されている場合に、メダル投入口6よりメダルが投入されると、このメダルがメダル検出センサ6aにより検出されて該検出信号が遊技制御装置50に入力される。さらに、この検出信号に基づいて、メダルのベット数の記憶が加算されると共に、そのベット数がベット数表示部31に表示される。」(段落【0048】)
キ.「メダルのベット数(賭け数)に応じて、有効となる有効ラインの数が増加するようになっている。即ち、例えば、ベット数が1の場合には、中央の横一列の有効ラインだけが有効になり、ベット数が2の場合には、横三列の有効ラインだけが有効になり、ベット数が3の場合には、5つ全ての有効ラインが有効となる。」(段落【0051】)
ク.「各リール停止ボタン14a?14cの操作に基づき、又は、スタートレバー13の操作から一定時間(例えば、30秒)が経過することにより、停止表示がされた結果、図柄が有効ライン上で入賞態様を構成した場合には、各入賞に対応した所定数のメダルの払出が行われる。」(段落【0068】)

2.引用例1記載の発明の認定
記載アの「可変表示部」の具体例は、記載ウの「それぞれ独立に回転可能な複数(例えば、3つ)のリール」である。
記載アの「ストップスイッチ」は、記載エのとおり各リールと一対一で対応付けられて、リール数だけ設けられている。
したがって、記載ア?クを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「複数種類の図柄を可変表示する可変表示遊技を行うための、それぞれ独立に回転可能な複数3つのリール及び各リールをそれぞれ独立に回転駆動ならびに回転停止させるリール駆動部を備える可変表示装置と、前記可変表示遊技を含む遊技を開始させるスタートスイッチと、各リールと一対一で対応付けられたストップスイッチと、前記スタートスイッチの操作に基づいて抽選を行う抽選手段と、前記抽選手段による抽選結果が入賞であることを条件に入賞フラグを発生させるフラグ発生手段と、前記フラグ発生手段により発生された入賞フラグに対応して予め定められた所定の停止図柄を、前記ストップスイッチの操作に基づいて停止表示させるように可変表示装置を制御する停止制御手段とを備え、図柄が有効ライン上で入賞態様を構成した場合には、各入賞に対応した所定数のメダルの払出が行われるスロットマシンであって、
続けて行われる2つの遊技のうち後に行われる遊技の契機となるスタートスイッチの操作時期が早い場合には、先に行われる遊技が特定段階に達する時点から後に行われる遊技が特定段階に達する時点までの間隔が一定時間よりも短くならないようにさせるために、後に行われる遊技が特定段階に達する時期を遅延させる遅延時間を設ける遅延手段と、遊技に前記遅延時間が設けられることに関連して、何らかの入賞フラグが成立している可能性があることを報知する成立フラグ報知手段とをさらに備え、
メダル投入口及びメダル検出センサを有し、メダル検出信号に基づいて、メダルのベット数の記憶を加算し、ベット数に応じて有効ラインの数を決定するように構成され、
小役、リプレイなどの入賞フラグは、該入賞フラグが成立した成立ゲームのみ有効で、次回以降の遊技には入賞フラグが持ち越さず、ボーナス入賞の入賞フラグは、該入賞フラグが成立した成立ゲーム以降、該入賞フラグに対応した所定の停止図柄が停止表示となってボーナスゲームが開始されるまで継続して毎回の遊技に持ち越されるように構成したスロットマシン。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「メダル」、「メダル投入口」及び「有効ライン」は、本願発明の「遊技媒体」、「投入口」及び「入賞ライン」にそれぞれ相当し、引用発明1は本願発明の「入賞ライン設定手段」を備えている。
引用発明1の「3つのリール」は本願発明の「複数の回転リール」に相当し、「周面に互いに種類の異なる複数の図柄が周方向に沿って配列されている」ことは当然一致点である。
引用発明1の「リール駆動部」は「複数」かどうかは別として、本願発明の「各回転リールをそれぞれ個別に回転させることにより各回転リールの図柄をそれぞれ個別に変動させるための駆動源」に相当する。
引用発明1の「スタートスイッチ」及び「各リールと一対一で対応付けられたストップスイッチ」は、本願発明の「駆動源に始動信号を与えて回転リールを回転させて図柄の変動を開始させるための始動操作手段」及び「回転リールの図柄の変動を停止させるために各回転リールに対応して設けられる複数の停止操作手段」にそれぞれ相当する。
引用発明1の「スタートスイッチの操作に基づいて」と本願発明の「上記始動操作手段が操作されることを契機に」は、表現上の相違しかなく、引用発明1の「抽選手段」は「役のフラグの成立に関する抽選を行う抽選手段」といえる。
引用発明1の「ボーナス入賞」は「該入賞フラグが成立した成立ゲーム以降、該入賞フラグに対応した所定の停止図柄が停止表示となってボーナスゲームが開始されるまで継続して毎回の遊技に持ち越される」のだから、本願発明の「特別役」に相当し、「抽選手段」が「特別役を含む役を抽選対象」とすること、及び「抽選手段によりフラグが成立した特別役を、当該特別役に対応する図柄の組み合わせで入賞ラインに揃い入賞するまで次ゲームへとそのフラグ成立を持ち越すフラグ持ち越し手段」を備えることは、本願発明と引用発明1の一致点である。
引用発明1は、「前記フラグ発生手段により発生された入賞フラグに対応して予め定められた所定の停止図柄を、前記ストップスイッチの操作に基づいて停止表示させるように可変表示装置を制御」し、「図柄が有効ライン上で入賞態様を構成した場合には、各入賞に対応した所定数のメダルの払出が行われる」から、「該フラグが成立した役に対応する各回転リールの図柄組み合わせが入賞ライン上に揃ったときに入賞と判定する入賞判定手段」は引用発明1に備わっている。そして、引用発明1が「回転リールを回転させた後に停止させることを1ゲームとし、これを繰り返し遊技するスロットマシン」であることは明らかである(記載オには、「回転リールを回転させた後に停止させることを1ゲーム」とすることが明記されている。)。
したがって、本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「遊技媒体の投入口、該投入口への遊技媒体の投入量に応じて入賞ラインの数を設定する入賞ライン設定手段、周面に互いに種類の異なる複数の図柄が周方向に沿って配列されている複数の回転リール、各回転リールをそれぞれ個別に回転させることにより各回転リールの図柄をそれぞれ個別に変動させるための駆動源、駆動源に始動信号を与えて回転リールを回転させて図柄の変動を開始させるための始動操作手段、回転リールの図柄の変動を停止させるために各回転リールに対応して設けられる複数の停止操作手段、上記始動操作手段が操作されることを契機に特別役を含む役を抽選対象として当該役のフラグの成立に関する抽選を行う抽選手段、及び抽選手段により役のフラグが成立し、該フラグが成立した役に対応する各回転リールの図柄組み合わせが入賞ライン上に揃ったときに入賞と判定する入賞判定手段を備え、回転リールを回転させた後に停止させることを1ゲームとし、これを繰り返し遊技するスロットマシンにおいて、
抽選手段によりフラグが成立した特別役を、当該特別役に対応する図柄の組み合わせで入賞ラインに揃い入賞するまで次ゲームへとそのフラグ成立を持ち越すフラグ持ち越し手段と、リール制御手段とを有するスロットマシン。」
〈相違点1〉本願発明の「駆動源」が「複数」あるのに対し、引用発明1のそれが複数あるかどうか明らかでない点。
〈相違点2〉本願発明が「特別役のフラグが成立しているときのゲームにおいて始動操作手段により回転リールの回転を開始させる操作が実行されたときに、特別役に対応する図柄の組み合わせを形成する図柄の一部が入賞ライン上に停止している場合、上記特別役に対応する図柄の組み合わせを形成する図柄の一部を構成する回転リールに対してはこれを回転させる制御は行わない一方、それ以外の回転リールに対してはこれを回転させる制御を行うとする処理を、前記特別役が入賞するゲームまで継続して行うリール制御手段」を有するのに対し、引用発明1はかかる手段を有さない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用発明1の「リール駆動部」は、3つのリールをそれぞれ独立に回転駆動ならびに回転停止させるものである。独立に駆動する以上、駆動源はリールに対応してリール数分存すると解するのが自然であり、相違点1に係る本願発明の構成を採用することはせいぜい設計事項程度である。

(2)相違点2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-129149号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のケ?シの各記載がある。
ケ.「【発明が属する技術分野】本発明は、文字や数字や絵柄などの識別記号を付した抽選用回転板を有する複数の表示手段を用い、これら複数の表示手段の識別記号を揃えて遊ぶ遊技機に関する。」(段落【0001】)
コ.「特定の識別記号、例えば「☆」「☆」「☆」が揃っている場合には、一定回数だけ識別記号が揃い易い状態、所謂大当たりや小当たりの遊技状態を設定する。」(段落【0038】)
サ.「図8に示すように、[1]左右の抽選手段2の一方と、中央部の抽選手段2に同じ識別記号(図では「☆」)が揃い、[2]残り1つの抽選手段2の識別記号が例えば「3」などのように異なる識別記号の場合には、図9に示すように、この抽選手段2の指示用回転板13を回転させて、この残り1つの識別記号を再抽選する。但し、このとき指示用回転板13とともに抽選用回転板10を回転させたり、抽選用回転板10のみを回転させてもよいが、基本的には、初回の抽選方法とは異な抽選方法により再抽選することが、表示の面白さを倍増できるので好ましい。」(段落【0039】)
シ.「上記再抽選制御の[2]では、残り1つの識別記号として例えば「3」などの他の識別記号が停止することを条件に、そのまま指示用回転板13を回転させて識別記号を再抽選したが、残り1つの識別記号が例えば「3」などの他の識別記号の場合には、再度コインを投入するとともに、スタートレバー21を操作することを条件に、指示用回転板13を回転させて識別記号を再抽選してもよい。」(段落【0042】)

引用例2には「再抽選」とあるが、記載シのように「再度コインを投入するとともに、スタートレバー21を操作することを条件に」した場合は、次回遊技の抽選と評価することができる(請求人は「引用文献3(審決注;審決の「引用例2」)の遊技機は、再抽選するとあるように、同ゲーム(1回のゲーム)中に1つの抽選手段だけ再度抽選(変動-停止)が行われるものであり、同じ識別記号が揃った2つの抽選手段の表示状態を次ゲームに持ち越すものではありません。」(審判請求書5頁18?21行)と主張するが、上記理由により採用できない。)から、引用例2には、「☆」が3つ揃うと大当たりや小当たりとなる遊技機において、「☆」が2つ揃うと、次回遊技において、2つの「☆」を残したまま、「☆」以外の識別記号(図柄と称することができる。)に対応する抽選用回転板を回転させる技術が記載されている。そして、残り1つの識別記号を再抽選(記載サ)すれば、全部抽選するよりは「☆」を揃え易いことは明らかである。
他方、本願発明及び引用発明1のような「抽選手段によりフラグが成立した特別役を、当該特別役に対応する図柄の組み合わせで入賞ラインに揃い入賞するまで次ゲームへとそのフラグ成立を持ち越すフラグ持ち越し手段」を有するスロットマシンにあっては、主として初心者の利益を考慮して、フラグが成立した特別役の入賞を促進する手段を講じることは周知技術である。例えば、特開2002-58792号公報には、ストップボタンの操作タイミングを遊技者に報知することで入賞促進をすること(段落【0144】参照)が記載されているし、特開2002-224277号公報には、当たり図柄が表示されている回転ドラムを上下に揺れるほぼ停止状態に維持(【要約】の【解決手段】欄参照)することが記載されている。
ところで、引用例2記載の遊技機は、「フラグ持ち越し手段」を有するものではないが、図柄組み合わせにより入賞かどうかが定まる遊技機の点では本願発明及び引用発明1と共通しており、次回遊技における一部抽選用回転板の再抽選との技術思想が、引用発明1における特別役の入賞促進に好都合な技術であることは明らかであるから、引用例2記載の技術を引用発明1に採用することは当業者によって想到容易である。その際、引用例2には「☆」が2つ揃った場合の再抽選が記載されているのみであるが、特別役フラグが成立すれば、該フラグ対応図柄が揃うことに遊技者は期待を寄せるとともに、多くの場合特別役対応図柄は、各リールにおいて分布頻度が小さく設定されいるため、初心者にとっては1つのリールに特別役対応図柄を停止させることもそれほど容易といえないことを考慮すれば、特別役対応図柄が1つのリールでも停止しておれば、次回遊技においてそのリールの停止状態にしたままとし(本願発明の「特別役に対応する図柄の組み合わせを形成する図柄の一部が入賞ライン上に停止している場合、上記特別役に対応する図柄の組み合わせを形成する図柄の一部を構成する回転リールに対してはこれを回転させる制御は行わない」に相当)、それ以外のリールだけを回転する(本願発明の「それ以外の回転リールに対してはこれを回転させる制御を行う」に相当)ことは設計事項というべきである。
請求人は前置審尋に対する回答書において、「引用文献1,2(審決注;引用文献1が審決の「引用例1」)のスロットマシンと引用文献3?5(審決注;引用文献3が審決の「引用例2」)の遊技機とは、全く異なる図柄停止制御を行うものであるから、引用文献3?5に記載の図柄変動態様を引用文献1,2に記載のスロットマシンの図柄変動態様に置き換える場合には、引用文献1,2のスロットマシンの抽選手段の動作などとの関係で、置き換えようとする図柄変動態様をどのような条件、タイミング、期間で発生するかなど、更なる工夫、改良を伴わなければ置き換え不可能であり、さらに上記条件、タイミング、期間などは多様なものであり一義的に決まるものでもありません。」(2頁25行?3頁3行)と主張するが、「特別役のフラグが成立しているときのゲーム」は常に特別役が抽選された状態であり、「それ以外の回転リール」に対してのみ停止制御を行えばよく、その際にはすべてのリールを回転させ、かつ「回転させる制御は行わない」リールが先に停止した場合と同じ制御を行えばよいのだから、更なる工夫、改良を必要とするものではない。
以上のとおり、引用発明1を出発点として、「特別役のフラグが成立しているときのゲームにおいて始動操作手段により回転リールの回転を開始させる操作が実行されたときに、特別役に対応する図柄の組み合わせを形成する図柄の一部が入賞ライン上に停止している場合、上記特別役に対応する図柄の組み合わせを形成する図柄の一部を構成する回転リールに対してはこれを回転させる制御は行わない一方、それ以外の回転リールに対してはこれを回転させる制御を行うとする処理を、前記特別役が入賞するゲームまで継続して行う」ことは当業者にとって想到容易であり、同処理を行うための「リール制御手段」を有することも当業者にとって想到容易である。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは、せいぜい設計事項程度であるか又は当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-28 
結審通知日 2009-01-30 
審決日 2009-02-10 
出願番号 特願2003-49089(P2003-49089)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 池谷 香次郎
川島 陵司
発明の名称 スロットマシン及びその制御方法  

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