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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1195132
審判番号 不服2006-19324  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-31 
確定日 2009-04-02 
事件の表示 特願2001-332076「作業状況管理システム、作業状況管理方法、及び作業状況管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月16日出願公開、特開2003-141239〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月30日の出願であって、平成18年4月3日付け拒絶理由通知に対し同年6月12日付けで手続補正がなされたが、同年7月26日付け(8月1日発送)で拒絶査定され、これに対し、同年8月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年10月2日付けで手続補正がなされたものである。


2.平成18年10月2日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年10月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成18年10月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
工場で作業を行う際に、交換する部品の名称を含む作業の内容や実施日時等を作業データとして入力する入力装置と、
前記作業データと共に当該工場における作業処理許容能力や作業可能である修理内容等を工場データとして格納する記憶装置と、
前記作業データ内の作業内容や実施希望日時及び作業完了までの所要時間と、前記工場データ内の作業可能な作業の内容と標準的な作業時間と実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間とを比較し、前記作業が当該工場によって処理可能であるか否かの判断処理を行う処理装置と、
前記判断結果をユーザに対して表示する表示装置とからなる作業状況管理システム。
【請求項2】
前記作業状況管理システムにおいて、
前記処理装置が前記記憶装置内の作業データを集計し、
前記表示装置が集計した作業データを一覧表として表示する請求項1に記載の作業状況管理システム。
【請求項3】
コンピュータが、
工場で作業を行う際に、交換する部品の名称を含む作業の内容や実施日時等を作業データとして入力するステップと、
前記作業データと共に当該工場における作業処理許容能力や作業可能である修理内容等を工場データとして記憶装置内に格納するステップと、
前記作業データ内の作業内容や実施希望日時及び作業完了までの所要時間と、前記工場データ内の作業可能な作業の内容と標準的な作業時間と実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間とを比較し、前記作業が当該工場によって処理可能であるか否かの判断処理を行うステップと、
前記判断結果をユーザに対して表示するステップと、を実行する作業状況管理方法。
【請求項4】
前記作業状況管理方法において、
前記処理を行うステップが前記記憶装置内の作業データを集計し、
前記作業内容を表示するステップが集計した作業データを一覧表として表示する請求項3に記載の作業状況管理方法。
【請求項5】
コンピュータに、
工場で作業を行う際に、交換する部品の名称を含む作業の内容や実施日時等を作業データとして入力するステップと、
前記作業データと共に当該工場における作業処理許容能力や作業可能である修理内容等を工場データとして記憶装置内に格納するステップと、
前記作業データ内の作業内容や実施希望日時及び作業完了までの所要時間と、前記工場データ内の作業可能な作業の内容と標準的な作業時間と実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間とを比較し、前記作業が当該工場によって処理可能であるか否かの判断処理を行うステップと、
前記判断結果をユーザに対して表示するステップと、を実行させる作業状況管理プログラム。
【請求項6】
前記作業状況管理プログラムにおいて、
前記処理を行うステップが前記記憶装置内の作業データを集計し、
前記作業内容を表示するステップが集計した作業データを一覧表として表示する請求項5に記載の作業状況管理プログラム。」
に補正された。

本件補正は、補正前の請求項1,2,4,6の「入力手段」、「格納手段」、「処理手段」、「表示手段」をそれぞれ「入力装置」、「記憶装置」、「処理装置」、「表示装置」と補正し、また、補正前の請求項1,3,5に「交換する部品の名称を含む」という限定事項を付加し、さらに補正前の請求項3,5に「記憶装置内に」という限定事項を付加したものであって、本件補正は、不明瞭な記載の釈明ないし特許請求の範囲の減縮に該当するものと認める。
そこで、以下、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たすか否か)について検討する。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特開2000-348093号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】画像を表示する表示手段と、
修理対象車両の修理見積時間を入力する見積時間入力手段と、
修理予約済データを記憶する予約データ記憶手段と、
前記予約データ記憶手段の修理予約済データに基づき、修理予約可能日時を前記表示手段に表示する予約可能日時データ表示手段と、
前記表示手段に表示された予約可能日時に予約を決定する予約決定手段と、を備えることを特徴とする工程管理システム。
【請求項2】前記見積時間入力手段により入力された修理見積時間及び予約データ記憶手段に記憶された修理予約済データに基づき、修理予約可能日時を計算する予約可能日時算出手段を備え、
前記予約可能日時データ表示手段は、前記予約可能日時算出手段により算出された予約可能日時を前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1記載の工程管理システム。
【請求項3】前記見積時間入力手段は、車両の修理箇所の諸データに基づき修理見積時間を計算する修理見積時間計算手段であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の工程管理システム。」
(イ)「【0002】
【従来の技術】
修理工場等にて損傷車両の修理を行うにあたっては、ユーザー側から修理を依頼されたときに、修理工場にて作業予定日を決定する必要がある。
【0003】
従来、修理対象車両の作業予定日を決定するには、日付の表示された予定表(紙製カレンダーや黒板等)に直接予定日を書き込んでいた。
そして、より正確に予約作業を行うために、コンピューターを利用した予約管理を行うことが考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、コンピューターを利用した修理作業の予約管理システムとしては、単純なカレンダープログラムを使用して、手書きの予約作業と同等の作業を効率的に行っているに過ぎない。
【0005】
修理工場側としては、作業担当者毎のスケジュール管理や、作業工程の進捗状況を一元管理できるシステムが求められる。
本発明は前記事項に鑑みなされたものであり、車両等の修理作業の予約を適切かつ容易に行えるシステムを提供することを技術的課題とする。」
(ウ)「【0029】予約作業を開始する旨の指示データをマウス11又はキーボード12から受け取ると、制御部27は、図2に示される制御をスタートする。
スタート後、最初のステップ101では、制御部27は、図4に示す顧客・車両情報入力画面である画面13aを表示装置13に表示する。そして、制御部27は、マウス11又はキーボード12から車両特定データが入力されたか否かをチェックする。そして、車両特定データが入力された後、処理をステップ102に移行する。
【0030】次のステップ102では、制御部27は、図5に示す損傷部位選択画面である画面13aを表示装置13に表示する。制御部27は、マウス11又はキーボード12から車両の損傷部位が入力されたか否かをチェックする。この損傷部位の入力にあたっては、図5の損傷部位選択欄51に表示された部位を選択することにより、車両画像50の当該部位の箇所のカラー表示が変更される。そして、図6の画面13aにて、選択した各部位毎に、損傷内容入力欄53にて損傷面積、損傷位置、損傷箇所数等の損傷内容を入力する。
【0031】そして、前記損傷内容データに基づき、制御部27は、作業時間の見積を行うと共に(ステップ103)、修理費の見積を行う(ステップ104)。この見積の際、図7に示す見積明細入力画面である画面13aを表示装置13に表示して、作業内容や部品の確認を行うようにしてもよい。また、見積内容の詳細な変更を行うようにしてもよい。」
(エ)「【0032】次に、制御部27は、図8に示す予約状況確認画面である画面13aを表示装置13に表示する。ここでは、1ヶ月毎の予約状況概要を表示するカレンダー欄60と、予約対象車両の見積情報を表示する見積情報欄61と、指定した特定日の詳細な予約状況を表示する特定日予約状況欄62とが表示される。前記カレンダー欄60は、日付欄60aと、各日付欄毎に設けられた予約パネル数欄60bとから構成されている。予約パネル数とは、車両の修理予定パネル数(左前部ドアパネル、ポンネットパネル等の数)を表すものである。そして、制御部27は、カレンダー欄60にて、各日が予約可能であるか否かを、前記予約パネル数欄60bのカラー表示を変更することにより表す(ステップ105)。例えば、予約可能日に対応する予約パネル数欄を青色、予約不可日に対応する予約パネル数欄を赤色等にて表示する。また、予約パネル数欄60bは、予め設定した一日の目標パネル数(例えば18パネル)をしきい値として、カラー表示を変更するようにしてもよい。
【0033】そして、予約希望日として例えば6月3日を選択したとすると(ステップ106)、制御部27は、図10に示す予約入力画面である画面13aを表示装置13に表示する。なお、図9に示す予約状況確認画面は、大破した事故車の修理予約を確認するための画面である。大損傷の事故車の場合、一般的な鈑金・塗装修理(数時間の修理で完了する小破車両の修理)とは異なり、長期間に亘っての修理作業が必要となるため、特定車両用作業カレンダー欄65にて、特定車両毎の作業予定日を一ヶ月単位で表示できるようになっている。また、図9に示す画面13aには、特殊な車両修理システム(D-1)の予約状況を表す特殊システム予約状況欄66も表示することができる。」
(オ)「【0034】図10に示す予約入力画面(13a)は、予約対象車両の個別データを表す予約入力車両データ欄74と、予約希望日の各ピット(本実施形態では3ピット)の予約状況を表すピット予約状況欄70とを備えている。
【0035】前記予約入力車両データ欄74は、予約入力対象車両の登録番号、車種、顧客名、修理パネル枚数、見積作業時間、見積金額等の各項目の表示と、見積作業時間の時間量を横方向(時間軸)の大きさで表した個別作業時間表示体72の表示がなされている。なお、前記個別作業時間表示体72は、予約入力車両用表示部74a内に表示されており、車両登録番号、車種名、顧客名を一体に表示する構成となっている。
【0036】ピット予約状況欄70は、各ピット名と、各ピット毎の一日の作業時間を横軸(時間軸)71に対応して表す作業予定表部76を備える。そして、この作業予定表部76内に、個別作業時間表示体72を入力することにより、個別作業時間表示体72が占有する当該時間内におけるピットの予約が行われる(ステップ108)。作業予定表部76内への個別作業時間表示体72の入力にあたっては、例えば、前記予約入力車両用表示部74内に表示された個別作業時間表示体72を、マウス11のドラッグ操作により、作業予定表部76の予約空欄部77に移動して行うことができる。この場合、予約空欄部77の未予約時間量が、予約入力車両用表示部74内の個別作業時間表示体72の作業時間量に満たないときには(予約入力車両用表示部74内の個別作業時間表示体72の横幅が、予約空欄部77より大きい場合には)、入力を行うことはできない。なお、予約入力車両用表示部74内の個別作業時間表示体72の入力可能な各ピットにおける時間領域(作業予定表部76)を、青色表示にし、入力不可能な時間領域を赤色表示にして、オペレーターにどの予約空欄部77に入力すればよいかを認識し易くするようにしてもよい。」
(カ)「【0037】また、ピット予約状況欄70内に入力(登録)されている各個別作業時間表示体72は、他の時間領域や他のピットへ適宜移動させることにより、予約変更を行うことかできる。さらに、制御部27が予約入力車両用表示部74内の個別作業時間表示体72の特有データ(作業時間、作業難易度、必要作業工具等)に基づき、自動的にピット予約状況欄70に入力を行うようにしてもよい。この場合、制御部27は例えば、特定のピットに高難易度の修理車両が偏らないように予約決定を行う。また、熟練した作業員が所属するピット(チーム)に高難易度の修理車両を優先的に予約するようにしてもよい。また、予約済あるいは予約待ちの個別作業時間表示体72を、各ピットの作業時間を総合的に判断して、中途半端な空き時間が発生しないように組み直すこともできる。
【0038】なお、予約入力が終了した後は、図11に示す予約状況確認画面である画面13が表示装置13に表示され、予約状況の全体的な確認をすることができる。図11に示す画面13aには、前記カレンダー欄60と、指定した特定日の詳細な予約状況を表示する特定日予約状況欄63とが表示される。」

以上、(ア)ないし(カ)の記載、図面等を総合すると、引用例には、
「1.修理工場等にて用いられる、コンピュータを利用した車両の修理作業の予約管理システムである。
2.顧客・車両情報入力画面(図4)から顧客名等の顧客情報、修理対象車両の車種や登録番号等の車両情報を入力し、また、車両の損傷位置、損傷面積、損傷箇所等の損傷内容を入力(図5,図6)し、その損傷内容データに基づき作業時間の見積および修理費の見積を行う。
3.この見積の際、見積明細入力画面(図7)を表示して作業内容や部品の名称を含む見積内容を確認し、また見積内容の詳細な変更ができるものであって、「作業・部品名称を入力してください。」という指示が表示され、作業・部品名称の欄には、作業名と部品名称が表示される。(例として「部分2コートバール塗装」という作業名と「フロントバンパ」という部品名称が表示されている。)
4.予約状況確認画面(図8)を表示すると、予約状況概要を表示するカレンダー欄60、予約対象車両の見積情報を表示する見積情報欄61、特定日予約状況欄62が表示され、カレンダー欄60は、各日付欄毎に設けられた予約パネル数(修理予定の車両のドアやボンネットのパネル数)を表示し、そして、修理見積時間と修理予約済データに基づき、カレンダー欄60に修理予約可能日を表示する。
5.予約状況確認画面(図8)で特定日を指定すると、指定した特定日の詳細な予約状況を表示する特定日予約状況欄62が表示され、また、予約可能日の中から予約希望日を選択すると、予約入力画面(図10)を表示する。
6.予約入力画面中の予約入力車両用表示部74aには、車種、車両登録番号、顧客名が一体にされ見積作業時間の時間量が横方向(時間軸)の大きさで表された個別作業時間表示体72が表示され、また、作業予定表部76には、予約希望日の予約済みの個別作業を表す個別作業時間表示体72が表示されている。
7.予約入力車両用表示部74a内の個別作業時間表示体72をマウスでドラッグして、作業予定表部76内の予約空欄部77に移動すると、当該空欄部に個別作業時間表示体72が移動し、予約が行われる。
8.この場合、予約空欄部77の未予約時間量が、個別作業時間表示体72の作業量に満たないときは、入力を行うことができない。」
の発明(以下、引用発明という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
請求項1に記載された補正発明については、不明な点が多いので、補正発明と引用発明を対比する前に、予め補正発明の構成要件を検討する。
請求項1には「交換する部品の名称を含む作業の内容や実施日時等を作業データとして入力する」、「作業データと共に当該工場における作業処理許容能力や作業可能である修理内容等を工場データとして格納する」と記載されていると共に、「前記作業データ内の作業内容や実施希望日時及び作業完了までの所要時間」と「前記工場データ内の作業可能な作業の内容と標準的な作業時間と実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間」とを比較するとも記載されている。
つまり、請求項において、一方では作業データとして「交換する部品の名称を含む作業の内容」や「実施日時」等を入力することを要件としているのに対し、他方では作業データとして「実施希望日時」や「作業完了までの所要時間」も含むように記載され、また工場データとして一方では「工場における作業処理許容能力」や「作業可能である修理内容」等を格納することを要件としているのに対し、他方では工場データとして「標準的な作業時間」と「実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間」も含むように記載されている。
そこで、本願明細書を参酌して、補正発明は、作業データとして入力手段から「実施希望日時」も入力されること、および工場データとして「標準的な作業時間」と「実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間」も格納されていること(実施例からすると「実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間」は予約データベースに格納されているように理解できるが、一応当該データが工場データとして格納されていると理解する)、さらには、作業データ内の「作業完了までの所要時間」は、入力された「作業の内容」および工場データに格納されている「(作業の内容による)標準的な作業時間」から生成されることを要件とするものと解釈する。
また、「前記作業データ内の作業内容や実施希望日時及び作業完了までの所要時間と、前記工場データ内の作業可能な作業の内容と標準的な作業時間と実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間とを比較し、前記作業が当該工場によって処理可能であるか否かの判断処理を行う」という要件について、「『作業内容』、『実施希望日時』、『作業完了までの所要時間』」と「『作業可能な作業内容』、『標準的な作業時間』、『実施希望日における当該工場の作業予定の空き時間』」のどの情報をどのように比較して、作業が当該工場によって処理可能であるか否かの判断をしているのか請求項の記載から不明であるが、本願明細書および平成18年10月2日付け手続補正書の記載ならびに技術常識を参酌して、補正発明は、「作業内容」と「作業可能な作業内容」を比較して内容の一致・不一致によって処理可能か否か判断し、また「作業完了までの所要時間」と「実施希望日における当該工場の作業予定の空き時間」とを比較して、その長短によって処理可能か否か判断するものと解釈する。
なお、工場データとして格納される「作業処理許容能力」とは、どのような内容のデータを示し、またそれが何にどのように使われるのか等、明細書を詳細に検討しても全く不明であるが、一応、作業処理の許容能力に関連する情報という程度の意味を持つものと解釈する。
また、工場データとして格納する「作業可能である修理内容」と、工場データ内の「作業可能な作業の内容」は同じものと解釈する。
以上の解釈を踏まえて、以下引用発明と補正発明を対比する。

a)引用発明は、損傷内容データに基づき、作業時間と修理費の見積を行い、見積明細入力画面(図7)に作業内容や部品の名称を含む見積内容を表示して内容の確認をさせ、また必要に応じてデータの修正ができるものであるが、実施例として、「作業・部品名称を入力してください。」という指示が表示され、作業・部品名称の欄に、「部分2コートバール塗装」という作業名と「フロントバンパ」という部品名称が表示された画面が記載されている。
つまり引用発明は、損傷内容データから決まる「作業内容」と「部品名称」が表示され、また「作業内容」や「部品名称」などは修正すなわち入力することができるものということができ、この「作業内容」と「部品名称」は、補正発明の「交換する部品の名称を含む作業の内容」に対応する。
b)引用発明は、予約状況確認画面(図8)を表示し、特定日を指定して特定日予約状況欄62を表示し、また予約希望日(例では6月3日)を選択して該予約希望日の予定入力画面(図10)を表示し、さらに予約空欄部77に個別作業時間表示体72を移動させて予約を行っている。そして、上記特定日を指定すること、予定希望日を選択すること、および予約空欄部に個別作業時間表示体72を移動させることは、特定日や予定希望日を選択し、また予約時間を選択することであるから、上記した事項は、補正発明において「実施日時」ないし「実施希望日時」を入力することに対応するといえる。
c)引用発明は、車両の損傷位置、損傷面積、損傷箇所等の損傷内容データに基づき作業時間の見積を行っている。
損傷内容から修理に必要な作業すなわち修理内容が決まり、修理内容によって標準的な作業時間が決まっているのは技術常識であるから、作業時間の見積は、損傷内容から決まる修理内容と、修理内容に対応する修理を行うのに必要な予め設定された標準的な時間、から求められることは明らかである。
そして、上記「作業時間の見積」、「損傷内容から決まる修理内容」および「修理内容に対応する修理を行うのに必要な予め設定された標準的な時間」が、それぞれ補正発明の「作業完了までの所要時間」、「作業内容」および「標準的な作業時間」に対応するといえる。
d)引用発明は(図8)、修理見積時間(作業時間の見積)と修理予約済データに基づき、カレンダー欄60に修理予約可能日を表示し、また予約可能日の中から予約希望日を選択して、予約入力画面(図10)を表示し、作業予定表部76内の予約空欄部77に個別作業時間表示体72を移動して予約を行う。
これは、修理予約済データに基づいて未予約時間量(予約の空き時間)を求め、これと修理見積時間を比較してその長短により予約可能日時を決定していることを意味しているから、引用発明において、修理見積時間と修理予約済データに基づき、カレンダー欄60に修理予約可能日を表示し、また予約希望日の予約空欄部77に個別作業時間表示体72を移動することは、補正発明の「作業完了までの所要時間と実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間を比較し、作業が当該工場によって処理可能であるか否かの判断処理を行い、判断結果を表示する」ことに対応するということができる。
e)なお、入力され、あるいは設定される前記「作業内容」や「部品名称」、「予約希望日時」、「修理見積時間」あるいは、「未予約時間量」、「修理内容に対応する修理を行うのに必要な予め設定された標準的な時間」といった情報をどのようにくくってデータ化するか(つまり「作業データ」として入力するとか、「工場データ」として格納するといったこと)は、単なる取り決めにすぎず、補正発明と引用発明の実質的な相違点にならない。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「工場で作業を行う際に、交換する部品の名称を含む作業の内容や実施日時等を作業データとして入力する入力装置と、
作業データ内の作業内容や実施希望日時及び作業完了までの所要時間と、標準的な作業時間と実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間とを比較し、前記作業が当該工場によって処理可能であるか否かの判断処理を行う処理装置と、
前記判断結果をユーザに対して表示する表示装置とからなる作業状況管理システム。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
補正発明は、「工場データとして『当該工場の作業処理許容能力』や『作業可能である修理内容』と『標準的な作業時間』と『実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間』を格納する記憶装置」を備えているのに対し、
引用例には、標準的な作業時間や実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間が記憶装置に格納されていることは記載されているといえるものの、「工場データとして『当該工場の作業処理許容能力』や『作業可能である修理内容』を格納すること」については記載がない点。
<相違点2>
補正発明は、「『作業内容』と『作業可能な作業の内容』を比較して、作業が当該工場によって処理可能であるか否かの判断処理を行う処理装置」を備えているのに対し、
引用例には、上記事項について記載がない点。

(4)判断
事案に鑑み、<相違点2>から判断する。
修理工場において、当該工場で請け負うことのできるの作業内容(作業可能な作業の内容)は、修理業者が知識として当然に持っているものであるから、客から受けた作業が処理可能か否かは修理業者の知識で判断しているのが普通であり、仮に予約を受ける者が新人であってその知識がないような場合であれば、該工場で作業可能な作業内容を一覧にした表を見て、その表内に受けた作業内容があるか否かで可否を判断するようなことは普通に行われている(社会常識ともいえる)ところである。
ところで、相違点2に係る事項は、装置(コンピュータ)に入力された「作業の内容」と装置に格納されている「作業可能な作業の内容」を比較して、内容の一致・不一致によって処理可能か否かの判断処理を装置に行わせるというものであるが、上記したように、人間が、受けた「作業の内容」と表中にある「作業可能な作業の内容」を比較して、内容の一致・不一致によって処理の可否を判断するのは普通に行われていることであるし、コンピュータ装置によりデータの比較を行い、一致・不一致の判断を行わせることは周知慣用手段にすぎない。
してみると、人が行っている「作業の内容」と「作業可能な作業の内容」の比較および一致・不一致による判断を、コンピュータ装置に行わせることに格別の困難性はないといえる。
したがって、相違点2は、周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
続いて<相違点1>を判断する。
人間によって行う情報(「作業の内容」と「作業可能な作業の内容」)の比較や判断を、コンピュータに行わせる場合、比較・判断の対象となる情報をデータ化してコンピュータに入力ないしは格納しておくことは当然であるから、工場データとして「作業可能である修理内容」を格納しておくことは適宜なし得たことである。
なお、「作業処理許容能力」とは作業処理の許容能力に関連する情報と解釈できるところ、引用例において、例えば、一日の目標パネル数の情報であるとか、一日の作業可能時間情報(何時から何時まで作業が可能かといった情報)がコンピュータに格納されており(図8や図10から明らかである)、これらの情報は作業処理の許容能力に関連する情報であるから、工場データとして「作業処理許容能力」を格納する点については、実質的に引用例に記載されているということができる。

その他、補正発明の作用効果を勘案しても、補正発明に格別の点は認められない。
以上のように、補正発明は、引用例に記載された発明、および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)本件補正についてのまとめ
上記のとおり本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年10月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成18年6月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲により特定されるとおりのものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下、本願発明という)は、次のとおりである。

「工場で作業を行う際に、作業の内容や実施日時等を作業データとして入力する入力手段と、
前記作業データと共に当該工場における作業処理許容能力や作業可能である修理内容等を工場データとして格納する格納手段と、
前記作業データ内の作業内容や実施希望日時及び作業完了までの所要時間と、前記工場データ内の作業可能な作業の内容と標準的な作業時間と実施希望日時における当該工場での作業予定の空き時間とを比較し、前記作業が当該工場によって処理可能であるか否かの判断処理を行う処理手段と、
前記判断結果をユーザに対して表示する表示手段とからなる作業状況管理システム。」

(2)引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-348093号公報(引用例)に記載された事項は、前記「2.(2)」に摘記したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、実質的に、補正発明の発明特定事項から、「交換する部品の名称を含む」という技術事項を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が、前記2.(3)ないし2.(4)に記載したとおり、引用例に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2009-02-02 
結審通知日 2009-02-03 
審決日 2009-02-16 
出願番号 特願2001-332076(P2001-332076)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 直也  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 真木 健彦
小曳 満昭
発明の名称 作業状況管理システム、作業状況管理方法、及び作業状況管理プログラム  
代理人 川口 嘉之  
代理人 和久田 純一  
代理人 松倉 秀実  
代理人 遠山 勉  

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