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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F21Q
管理番号 1195134
審判番号 不服2006-20075  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-08 
確定日 2009-04-02 
事件の表示 平成 8年特許願第240256号「指示灯」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月11日出願公開、特開平9-180517号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成8年9月11日(パリ条約による優先権主張1995年9月11日、フランス国)の出願であって、平成18年6月5日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、同年9月8日に本件審判が請求されるとともに、同年10月10日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。

第2 平成18年10月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年10月10日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1. 補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「 【請求項1】 ハウジング(10)と、ハウジング(10)内において、光を照射する複数の光源(20)と、光源(20)から照射された光を、通常の照射方向に補正する光学手段(40)(50)と、光を拡散するための光学素子よりなる半透明の前方レンズ(60)とを備え、各光源(20)が、発光ダイオードよりなり、この発光ダイオードが、発光部(22)よりも幅の広い本体(21)を備え、前記光学手段(40)(50)が、各光源の近傍に焦点を合わせ、ハウジング(10)の中央部(Z2)に、光源より照射された光を直接当てるレンズ(51)を備える、自動車用の補助停止灯のような指示灯であって、
光を補正する光学手段(40)が、一つの円筒状ミラー(40)よりなり、このミラー(40)が、前記複数の光源(20)からの光を反射し、またミラー(40)の準線が、各光源を通過する線に対し平行であり、ミラー(40)が、発光ダイオードの本体(21)からレンズの方向へ延び、光源からの光を、このレンズの方向へ、ハウジング(10)の少なくとも1つの端部で、方向を変えるようになっていることを特徴とする指示灯。」
と補正された。
上記補正は、(1)補正前の請求項1において当初明細書で用いられていなかった表現で記載された「楕円体」「ガラス」を、「ハウジング」「前方レンズ」に訂正するものであって、当初明細書で用いられていなかった表現で記載した事項を当初明細書で用いられていた用語で表現するものであるので、当該補正箇所は誤記の訂正に該当する。
さらに上記補正は、(2)補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ミラー」について、その個数を「一つの」と限定すると共に、「複数の光源(20)からの光を反射し」と、その作用を特定するものでもあって、当該補正箇所は平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2. 引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開昭63-901号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「ハウジングと、ハウジングの前面開口部を塞ぐ前面レンズと、このハウジング内に該ハウジングの長手方向に少なくとも一列に配列された多数のLEDと、同じく前記ハウジング内に配設されて前記各LEDを収納する多数の収納凹部が設けられ、かつ各収納凹部の前面側開口部内壁面が反射面を構成するLED画成部材とを備え、前記収納凹部はその隣接するもの同士がその一部において互いに重なり合うことにより前記LED画成部材の表面側において一連に連通していることを特徴とする照明装置。」(特許請求の範囲)
(イ)「本発明は車体後部に配設され後続車に対して警告等を行う通称ハイマウントストップランプと呼ばれている灯具などに実施して好適な照明装置に関する。」(第1頁左下欄第18行目?右下欄第1行目)
(ウ)「LED画成部材28は不透明なプラスチツク材料によつてすべてのLED27に対応するように左右方向に長く形成され、各LED27をそれぞれ独立に収納する多数の収納凹部39を備えている。収納凹部39はLED画成部材28の前後面に開口する貫通孔からなり、その前面側開口部内壁面は回転放物面状の反射面40を構成している。」(第3頁右上欄第5行目?第12行目)
(エ)「このような構成からなるハイマウントストップランプにおいて、各LED27から出射した光のうち前方に向う直射光はインナーレンズ25を透過し前面レンズ31を照射する。この時、インナーレンズ25の集光レンズ37によって集光されかつ拡散レンズ36によって拡散されることにより、前面レンズ31をほぼ均一な明るさでもつて照射する。一方、反射面40によつて反射した反射光は光軸とほぼ平行な平行光となつて前方に進み、同様にインナーレンズ25を透過して前面レンズ31を照射する。
ここで、収納凹部39は段差部41によって互いに連通しているので、境部が暗部となって前面レンズ31に現われず、照明効果を向上させる。」(第3頁右下欄第1行目?第11行目)
(オ)「なお、上記実施例はインナーレンズ25を設けた場合について説明したが、本発明はこれに何ら特定されるものではなく、インナーレンズ25を省略することも可能で、その場合第7図に示した従来装置のように前面レンズ31の裏面にLED画成部材28を密接配置したとしても、段差部41のため収納凹部39が互いに仕切られることがなく暗部の発生を心配する必要がないことは上記実施例と同様である。」(第3頁右下欄第19行目?第4頁左上欄第7行目)

ここで、主に上記記載事項及び図面から次のことが明らかである。
・ 記載事項(ア)の「ハウジング内に該ハウジングの長手方向に少なくとも一列に配列された多数のLED」は、記載事項(エ)に「LED27から出射した光」は「前面レンズ31を照射する」と記載されている様に光を出射するものであるので、ハウジング内において、光を出射する複数のLEDといえる。
・ 記載事項(ア)の「LED画成部材」及び記載事項(エ)の「インナーレンズ25の集光レンズ37」は、前者の「LED画成部材」が「LEDを収納する多数の収納凹部が設けられ、かつ各収納凹部の前面側開口部内壁面が反射面を構成する」ものであり、記載事項(エ)記載の様に「「反射面40によつて反射した反射光は光軸とほぼ平行な平行光となつて前方に進み、同様にインナーレンズ25を透過して前面レンズ31を照射する」ものであり、後者の「インナーレンズ25の集光レンズ37」が、同じく記載事項(エ)記載の様に「LED27から出射した光のうち前方に向う直射光はインナーレンズ25を透過し前面レンズ31を照射する。この時、インナーレンズ25の集光レンズ37によって集光されかつ拡散レンズ36によって拡散されることにより、前面レンズ31をほぼ均一な明るさでもつて照射する。一方、反射面40によつて反射した反射光は光軸とほぼ平行な平行光となつて前方に進み、同様にインナーレンズ25を透過して前面レンズ31を照射する」ものであるので、いずれもLEDから出射された光を、通常の照射方向に補正する光学手段といえる。
さらに、該光学手段を構成する「LED画成部材」は「LEDを収納する多数の収納凹部が設けられ、かつ各収納凹部の前面側開口部内壁面が反射面を構成する」ものであり、かつ、反射面が構成されている多数の収納凹部が、「収納凹部はその隣接するもの同士がその一部において互いに重なり合うことにより前記LED画成部材の表面側において一連に連通している」ものであるので、個々の収納凹部および反射面は、全体として反射面は一連に連通した一つの収納凹部および反射面を構成するものともいえ、結局、光学手段が、一つの反射面よりなるともいえる。
・ 記載事項(エ)の「インナーレンズ25の集光レンズ37」は、第1図に図示された集光レンズ37の位置を見ると、その配置位置がハウジングの中央部(すなわち、ハウジング端部に対するハウジングの中央部)といえ、また、LED27と対面するものであるので、LED27より照射された光を直接当てる集光レンズ37といえる。
・ 記載事項(ア)の「反射面」は、(1)記載事項(エ)記載の様に、LED27から出射した光の一部が「反射面40によつて反射し」「光軸とほぼ平行な平行光となつて前方に進み、同様にインナーレンズ25を透過して前面レンズ31を照射する」ものであり、かつ(2)第1,3,4図に図示された形状を見ると、反射面40が、前記複数のLED27からの光を反射し、反射面40が、LED27から前面レンズの方向へ延び、LED27からの光を、この前面レンズ31の方向へ、方向を変えるようになっているものといえる。
・ 記載事項(エ)の「インナーレンズ25」は、記載事項(オ)に記載されているように記載事項(ア)の照明装置に設けられるものといえる。
・ 記載事項(ア)の「照明装置」は、記載事項(イ)に記載されているように「ハイマウントストップランプと呼ばれている灯具などに実施して好適な」ものであるのでハイマウントストップランプといえる。

すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。
「ハウジングと、ハウジング内において、光を出射する複数のLEDと、LEDから出射された光を、通常の照射方向に補正する光学手段と、前面レンズとを備え、前記光学手段が、ハウジングの中央部に、LEDより出射された光を直接当てる集光レンズ37を備える、ハイマウントストップランプであって、
光を補正する光学手段が、一つの反射面よりなり、この反射面が、前記複数のLEDからの光を反射し、反射面が、LEDから前面レンズの方向へ延び、LEDからの光を、この前面レンズの方向へ、方向を変えるようになっているハイマウントストップランプ」

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平7-140917号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「各キャビティ302の底には、円形開口があり、かつその直径は、電気発光ダイオードまたはDEL404(ブリュースターBrewster)の発光部を形成している半円球突起体405の直径よりも少し大きい。このDELは、自動車合図灯の分野において従来使用されており、輪郭が全体的に正方形であり、軸方向断面が台形である本体を有し、中心に位置している発光部405の反対側において真っ直ぐで一直線になっている3つの接続パッド404aが、本体から突き出ている。」(【0012】)
(イ)「例えば従来どおりに球201である入射光束拡散体を透し窓200の内面に設ける(図3参照)。」(【0020】)
(ウ)「レンズ502が、類似DEL/円錐体集合体に対してきわめて正しい位置を占めることは非常に重要であり、各レンズの焦点を光源に近付け、レンズの軸を円錐体の軸と合致させなければならない。」(【0027】)
(エ)「通常は、生成される照明機能の色は、この機能に関係しているDELによって与えられる(一般的には赤色または琥珀色)。これらの条件においては、外側板体500と透し窓200は、無色の透明プラスチックで作ることができる。
【0048】応用形として、これらのエレメントを通過することを許された波長が、注目DELの発光スペクトル内に含まれていることを条件として、これらのエレメントの一方あるいは他方を着色することができることはいうまでもない。」(【0047】?【0048】)

ここで、主に上記記載事項及び図面から次のことが明らかである。
記載事項(ア)のDEL404は、図3に示されているように、その底部が「発光部を形成している半円球突起体405」よりも幅の広いものであるので、発光部よりも幅の広い本体を備えたものということができる。

(3)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である実願平1-078745号(実開平3-19206号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)には、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「基板に発光ダイオードを多設した車輛用灯具において、前記基板を収納保持する灯体を光透過性材料によって形成し、その内面で前記発光ダイオードと対向する前面部を除く部分に反射処理を施し、発光ダイオードから出た光を前方に導く反射面としたことを特徴とする車輛用灯具。」(実用新案登録請求の範囲)
(イ)「第3図の実施例は灯体21を円筒状に一体成形して、保持溝25、26に基板24をスライド挿入して取り付け、その取り付け前に円筒内面に蒸着や塗装により反射面32を形成したものである。」(明細書第6頁第15行目?第19行目)

3. 本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
・引用発明の「LED」は、本願補正発明の「光源」及び「発光ダイオード」に相当する。
・引用発明の「出射」は、本願補正発明の「照射」に相当する。
・引用発明の「反射面」は、本願補正発明の「ミラー」に相当する。
・引用発明の「前面レンズ」は、本願補正発明の「前方レンズ]に相当する。(ただし、「光を拡散するための光学素子よりなる半透明」の前方レンズである点は除く。)
・引用発明の「ハイマウントストップランプ」は、本願補正発明の「自動車用の補助停止灯のような指示灯」に相当する。

(2)両発明の一致点
「ハウジングと、ハウジング内において、光を照射する複数の光源と、光源から照射された光を、通常の照射方向に補正する光学手段と、前方レンズとを備え、前記光学手段が、ハウジングの中央部に、光源より照射された光を直接当てるレンズを備える、自動車用の補助停止灯のような指示灯であって、
光を補正する光学手段が、一つのミラーよりなり、このミラーが、前記複数の光源からの光を反射し、ミラーが、発光ダイオードの本体からレンズの方向へ延び、光源からの光を、このレンズの方向へ方向を変えるようになっている指示灯。」

(3)両発明の相違点
(ア)前方レンズが、本願補正発明は「光を拡散するための光学素子よりなる半透明の前方レンズ」であるのに対して、引用発明はレンズの特性について特定されておらず、本願補正発明の様に「光を拡散するための光学素子よりなる半透明」ものではない点。
(イ)光源、すなわち、発光ダイオードが、本願補正発明は「発光部よりも幅の広い本体を備え」たものであるのに対して、引用発明はそうではない点。
(ウ)光学手段が、本願補正発明は「各光源の近傍に焦点を合わせ、ハウジングの中央部に、光源より照射された光を直接当てるレンズを備える」のに対して、引用発明の光学手段は、「ハウジングの中央部に、LEDより照射された光を直接当てる集光レンズを備える」ものの、その焦点と光源との位置関係について特定されていない点。
(エ)光学手段が、本願補正発明は「一つの円筒状ミラー」よりなるのに対して、引用発明の光学手段は、「一つの反射面」よりなるものの、形状が円筒状と特定されていない点。
(オ)光学手段が、本願補正発明は「ミラーの準線が、各光源を通過する線に対し平行であ」るのに対して、引用発明の光学手段は、その様に特定されていない点。
(カ)光学手段が、本願補正発明は「光源からの光を、このレンズの方向へ、ハウジングの少なくとも1つの端部で、方向を変える」のに対して、引用発明の光学手段は、「LEDからの光を、この前面レンズの方向へ、方向を変える」ものであるものの「ハウジングの少なくとも1つの端部で」方向を変えると特定されていない点。

4. 容易推考性の検討
(1)相違点(ア)に関して、
引用例2には、図面と共に透し窓200が記載されており、該透し窓200は、2.(2)の記載事項(イ)の記載の様に「球201である入射光束拡散体を透し窓200の内面に設ける」ものである。また、記載事項(エ)の「エレメントの一方あるいは他方を着色する」ことは半透明とすることであるので、該着色した透し窓200は「光を拡散するための光学素子よりなる半透明」のものということができる。
そして、該透し窓200は、照明器具の光が出射する側に配された屈折部材であって、本願補正発明の前方レンズに対応するものであるので、引用発明の前面レンズ(本願補正発明の前方レンズに相当するもの)を引用例2記載の透し窓200の様に光を拡散するための光学素子よりなる半透明のものとして、本願補正発明の相違点(ア)に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(2)相違点(イ)に関して、
引用例2には、DEL404として、発光部よりも幅の広い本体を備えたものが記載されている。
そして、該DEL404は、照明器具の光源であって、本願補正発明の光源、すなわち、発光ダイオードに対応するものであるので、引用発明のLED(本願補正発明の光源、発光ダイオードに相当するもの)をDEL404のように「発光部よりも幅の広い本体を備えたもの」として、本願補正発明の相違点(イ)に係る構成とするとすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(3)相違点(ウ)に関して、
引用例2には、レンズ502の光源に対する配置として「レンズの焦点を光源に近付け」ることが記載されている。(記載事項(ウ))
そして、該レンズ502は、光源より照射された光を直接当てるレンズであって、本願補正発明の光学手段に対応するものであり、引用発明の集光レンズ37(本願補正発明の光学手段に相当するもの)をレンズ502のように「レンズの焦点を光源に近付け」たものとして、本願補正発明の相違点(ウ)に係る構成とするとすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(4)相違点(エ)に関して、
引用例3には、反射面として「円筒内面に蒸着や塗装により反射面32を形成」したものが記載されており、反射面32の形状が円筒状ということができるものである。
そして、該反射面32は、車両用灯具の発光ダイオードから出た光を前方に導くものであって、本願補正発明のミラーに対応するものであるので、引用発明の反射面(本願補正発明のミラーに相当するもの)の形状として引用例3記載の反射面32のような円筒状を採用して、本願補正発明の相違点(エ)に係る構成とするとすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(5)相違点(オ)に関して、
引用例1の反射面40は、前記2.(1)の記載事項(ウ)に記載されている様に、回転放物面状の反射面であるので準線を有すること、及び、その準線が反射光の進む方向に直交することは自明である。
そして、光源の配置手法として、引用例1の第3図に例示されている様に光源を反射光の出射方向に対して直交する方向に一列に並べる配置が周知慣用のものである以上、引用発明の光源の配置として該周知慣用のものを採用して、結果として反射面の「準線が、各光源を通過する線に対し平行であ」るものとして、本願補正発明の相違点(オ)に係る構成とするとすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。

(6)相違点(カ)に関して、
引用例1第1図記載の反射面40の出射側端部は、ハウジング24の端部を形成する前面レンズ31に対して相当離れた場所に位置しており、「ハウジングの・・端部」と言えるものではない。
しかし、前記2.(1)の記載事項(オ)に「前面レンズ31の裏面にLED画成部材28を密接配置したとしても」良い旨記載されている様に、反射面40の出射側端部とハウジング24の端部を形成する前面レンズ31との距離は、適宜選択し得るものであるので、反射面40の出射側端部を前面レンズ31近傍に配置して、結果として「ハウジングの少なくとも1つの端部で」「前面レンズの方向へ、方向を変える」ものとして、本願補正発明の相違点(カ)に係る構成とするとすることは、当業者にとって容易想到の範囲というべきである。
なお、本願補正発明の「光源からの光を、このレンズの方向へ、ハウジングの少なくとも1つの端部で、方向を変える」と言う発明特定事項は、平成17年11月16日付け手続補正書により付加されたものであるが、出願当初の明細書及び図面には「光源からの光を、このレンズの方向へ、ハウジングの少なくとも1つの端部で、方向を変える」という直接的な記載は存在しておらず、該「光源からの光を、このレンズの方向へ、ハウジングの少なくとも1つの端部で、方向を変える」でなされている発明特定は、本願明細書に添付された図1,3,4,6に記載されている構成以外のものを表していると解することは適当でない。
すなわち、ミラー(40)が光源からの光の方向を変える「ハウジング(10)の少なくとも1つの端部」を、図1,3,4,6に記載されていない、厳格な意味でのハウジング(10)の端部(例えば、外表面)と解することは適当でない。

(5)総合判断
そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、引用例2?3に記載の事項から、当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2?3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5. むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

第3 本願発明について
1. 本願発明
平成18年10月10日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-8に係る発明は、平成17年11月16日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりである。
「【請求項1】 ハウジング(10)と、楕円体内において、光を照射する複数の光源(20)と、光源(20)から照射された光を、通常の照射方向に補正する光学手段(40)(50)と、光を拡散するための光学素子よりなる半透明のガラス(60)とを備え、各光源(20)が、発光ダイオードよりなり、この発光ダイオードが、発光部(22)よりも幅の広い本体(21)を備え、前記光学手段(40)(50)が、各光源の近傍に焦点を合わせ、楕円体の中央部(Z2)に、光源より照射された光を直接当てるレンズ(51)を備える、自動車用の補助停止灯のような指示灯であって、
光を補正する光学手段(40)が、円筒状ミラー(40)よりなり、このミラー(40)の準線が、各光源を通過する線に対し平行であり、ミラー(40)が、発光ダイオードの本体(21)からレンズの方向へ延び、光源からの光を、このレンズの方向へ、楕円体の少なくとも1つの端部で、方向を変えるようになっていることを特徴とする指示灯。」

2. 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1?3とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3. 対比・判断
本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明(太い下線部分が限定を付加した部分)が、前記「第2 3.」以下に記載したとおり、引用発明、引用例2?3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を上位概念化した本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、引用例2?3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4. むすび
したがって、本願発明(請求項1に係る発明)については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-30 
結審通知日 2008-10-07 
審決日 2008-11-12 
出願番号 特願平8-240256
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21Q)
P 1 8・ 575- Z (F21Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平田 信勝小宮 寛之  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 中川 真一
佐藤 正浩
発明の名称 指示灯  
代理人 竹沢 荘一  

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