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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服200625301 | 審決 | 特許 |
不服200421574 | 審決 | 特許 |
不服20062586 | 審決 | 特許 |
不服2006876 | 審決 | 特許 |
不服200717080 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61N |
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管理番号 | 1195290 |
審判番号 | 不服2006-9825 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-05-15 |
確定日 | 2009-03-12 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第516830号「電気的移送式作用剤投与を強化するための組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成8年5月30日国際公開、WO96/15826、平成10年9月8日国内公表、特表平10-509072号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年11月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1994年11月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年2月7日付けで拒絶査定がなされたものである。これに対し、同年5月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年6月13日付けで明細書についての手続補正がなされ、そして、当審において、平成20年4月24日付けで拒絶理由の通知がされ、同年9月25日付けで明細書についての手続補正がなされるとともに意見書が提出された。 2.本願発明 本願の請求項1?9に係る発明は、平成20年9月25日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1?10にそれぞれ記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 電気的移送によって体表を通して治療剤を投与するためのデバイスであって、 作用剤及び、非イオン界面活性剤、正味電荷を有さない両性イオン界面活性剤及びこれらの混合物とから成る群から選択される少なくとも1種の電気的移送促進剤を含み、電気的移送促進剤が約3?10の範囲内の界面活性剤:作用剤のモル比を得るために有効な量で存在し、そして作用剤が t_(a)/t_(m)>0.7 [式中、 t_(a)は、作用剤含有溶液によってカラムを最初に充填するために要する時間を減じた、32℃において疎水性相互作用カラムを通って流れる有効剤含有緩衝化溶液に関してピークUV吸光度値が記録される時間であり; t_(m)は、N-アセチルトリプトファナミド含有溶液によってカラムを最初に充填するために要する時間を減じた、32℃においてカラムを通って流れるN-アセチルトリプトファナミド含有緩衝化溶液に関してピークUV吸光度値が記録される時間である] として定義される疎水性度を有するドナー溜め を含むデバイス。 【請求項2】 ta/tm>3である、請求項1記載のデバイス。 【請求項3】 作用剤がポリペプチドとタンパク質とから成る群から選択される、請求項1記載のデバイス。 【請求項4】 作用剤と促進剤とが溶液又は懸濁液の状態でドナー溜め中に存在し、この溶液又は懸濁液が、ポリペプチドとタンパク質が正味電荷を有するようなpHを有する、請求項3記載のデバイス。 【請求項5】 電気的移送促進剤がポリオキシエチレン、pH6?10におけるアルキルジメチルアミンオキシド、アルキルグルコシド、アルキルマルトシド、アルキルチオグルコシド、グルカミド、pH6?8におけるアシルカルニチン、アルキルスルホベタイン、両性イオン胆汁酸塩とその誘導体、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1記載のデバイス。 【請求項6】 電気的移送促進剤がポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートとポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテートとから成る群から選択される、請求項1記載のデバイス。 【請求項7】 作用剤と界面活性剤とが溶液又は懸濁液の状態でドナー溜め中に存在し、溶液又は懸濁液が約0.1?30重量%の非イオン界面活性剤を含む、請求項1記載のデバイス。 【請求項8】 溶液又は懸濁液が約10?20重量%の非イオン界面活性剤を含む、請求項7記載のデバイス。 【請求項9】 作用剤と界面活性剤とが溶液又は懸濁液の状態でドナー溜め中に存在し、ドナー電極中の溶液又は懸濁液が約0.1?10重量%のC_(2)-C_(10)アルカノール又はアルカンジオール又はこれらの混合物を含む、請求項1記載のデバイス。 【請求項10】 電源と電気的制御回路とをさらに含む、請求項1記載のデバイス。」 3.当審の拒絶理由 一方、当審における平成20年4月24日付けの拒絶理由の概要は、以下のとおりである。 「 本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号、同第2号に規定する要件を満たしていない。 記 本願の請求項1の記載は次のとおりである。 「電気的移送によって体表を通して治療剤を投与するためのデバイスであって、 作用剤及び、非イオン界面活性剤と、アルキルスルホベタインとその誘導体から成る群から選択される少なくとも1種の電気的移送促進剤を含み、電気的移送促進剤が約3?10の範囲内の界面活性剤:作用剤のモル比を得るために有効な量で存在し、そして作用剤が少なくともある一定の疎水性度を有するドナー溜めを含むデバイス。」 1)上記「作用剤」として、本願明細書中には、「抗生物質と抗ウイルス剤のような抗感染薬;鎮痛薬と鎮痛複合薬;麻酔薬;食欲減退薬;・・・副交感神経作用薬(parasympathomimetics)、プロスタグランジン類;タンパク質;ペプチド;精神刺激薬;鎮静薬及びトランキライザー」といった広範な薬剤が例示されているが、発明の詳細な説明において、「ある一定の疎水性度を有する」「作用剤」について具体的に効果が確認されているものは、「インスリノトロピン」(実施例1,3)、「サケカルシトニン」(実施例6)及び「モデル デカペプチド」(実施例7)といったポリペプチドのみである。 一方、請求項1記載の発明が、タンパク質、ペプチド以外の「ある一定の疎水性度を有する」「作用剤」にあっても、同様に、「非イオン界面活性剤と、アルキルスルホベタインとその誘導体から成る群から選択される少なくとも1種の電気的移送促進剤」によって、「電気的移送によって体表を通して治療剤を投与する」効率を上昇させる効果を有するか否かは、当業者が容易に予測し得ない事項であるから、当該具体例から、これ以外の「ある一定の疎水性度を有する」「作用剤」まで当該効果が拡張または一般化して認められるものとはいえない。 したがって、請求項1に係る発明、及びこれを引用する請求項2,3,6?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を越えているので、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。 2)上記「アルキルスルホベタインとその誘導体から成る群」について、発明の詳細な説明の実施例5には、「作用剤の楕円率、電気泳動移動度及びHICカラム保持時間に対する両性イオン界面活性剤の影響」と題して、作用剤としてのサケカルシトニンの水溶液と、界面活性剤としての両性イオンドデシルスルホベタインとを用いた試験結果が記載されている。 表7?9は、それぞれpH3.5,pH5.0,pH6.5の溶液で、ドデシルスルホベタインの濃度の上昇に伴い、サケカルシトニンの楕円率が減少することを示している。 これらの表のうち、表8にのみ楕円率以外に電気泳動移動度とHICカラム保持時間のデータが示されているが、表8によると、ドデシルスルホベタインの濃度の上昇に伴い、楕円率は有意に減少するものの、電気泳動移動度の減少とHIC保持時間の増大とが認められる。 電気泳動移動度の減少は、電気的移送によってサケカルシトニンが移動しにくくなったことを示し、また、HIC保持時間の増大は、サケカルシトニンの疎水度が増したことを示すものであるから、楕円率が減少するといっても、「アルキルスルホベタインとその誘導体から成る群」が「作用剤」の電気的移動を促進することは、実施例5によって裏付けられているとはいえない。また、本願の発明の詳細な説明には、他に上記事項の裏付けとなる記載を見出すことができない。 したがって、請求項1に係る発明、及びこれを引用する請求項2?9に係る発明は、電気的移送促進剤として、「アルキルスルホベタインとその誘導体から成る群」を含む点において、発明の詳細な説明に記載した範囲を越えているので、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。 3)請求項1の記載において、作用剤が有するとされる「少なくともある一定の疎水性度」の程度が不明であるので、請求項1及び、これを引用する請求項4?9に係る発明は明確ではなく、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しない。」 4.当審の判断 ・拒絶理由の上記1)について 上記拒絶理由の通知時の特許請求の範囲における「作用剤」が有する「疎水性度」に対して、本件補正により、「t_(a)/t_(m)>0.7 [式中、 t_(a)は、作用剤含有溶液によってカラムを最初に充填するために要する時間を減じた、32℃において疎水性相互作用カラムを通って流れる有効剤含有緩衝化溶液に関してピークUV吸光度値が記録される時間であり; t_(m)は、N-アセチルトリプトファナミド含有溶液によってカラムを最初に充填するために要する時間を減じた、32℃においてカラムを通って流れるN-アセチルトリプトファナミド含有緩衝化溶液に関してピークUV吸光度値が記録される時間である] として定義される」なる事項が付加された。 「作用剤」について、本願の発明の詳細な説明には、「抗生物質と抗ウイルス剤のような抗感染薬;鎮痛薬と鎮痛複合薬;麻酔薬;食欲減退薬;・・・副交感神経作用薬(parasympathomimetics)、プロスタグランジン類;タンパク質;ペプチド;精神刺激薬;鎮静薬及びトランキライザー」(明細書第13ページ第12?24行)といった広範な治療剤が例示されており、請求項1に係る発明の、本件補正により付加された上記事項によって限定された「疎水性度」を有する「作用剤」には、上記広範な治療剤が含まれるものと解される。 それに対して、発明の詳細な説明において、「作用剤」について具体的にデータ等を示して効果が明記されているものは、「インスリノトロピン」(実施例1、3、明細書第25ページ第15行?第28ページ第6行、第29ページ最終行?第31ページ第2行)、「サケカルシトニン」(実施例6、明細書第35ページ下から第10行?第40ページ第9行)及び「デカペプチド」(実施例7、第40ページ第10行?第42ページ)といったタンパク質又はペプチドのみであり、本件補正により付加された上記事項によって限定された「疎水性度」を有する「作用剤」については、発明の詳細な説明において具体的にデータ等を示して効果が明記されているものは、「デカペプチド」(実施例7)だけにすぎない。 そうすると、請求項1に係る発明において、本件補正により付加された上記事項によって限定された「疎水性度」を有する「作用剤」が、実施例で示されたデカペプチド、タンパク質、ペプチド以外であっても、実施例で示されたものと同様に、「非イオン界面活性剤、正味電荷を有さない両性イオン界面活性剤及びこれらの混合物とから成る群から選択される少なくとも1種の電気的移送促進剤」によって、「電気的移送によって体表を通して治療剤を投与する」効率を向上させる効果を奏するのか否かは、当業者が容易に予測し得ない事項であるから、上記実施例を含む発明の詳細な説明の記載からは、上記実施例で示されたもの以外の、本件補正により付加された上記事項によって限定された「疎水性度」を有する「作用剤」まで拡張又は一般化して、上記効果が認められるものとはいえない。 よって、請求項1に係る発明及び同項を引用する請求項2、5?10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を越えているので、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 5.むすび したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-10-17 |
結審通知日 | 2008-10-20 |
審決日 | 2008-10-31 |
出願番号 | 特願平8-516830 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(A61N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内藤 真徳、西山 智宏、稲村 正義 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
豊永 茂弘 八木 誠 |
発明の名称 | 電気的移送式作用剤投与を強化するための組成物 |
代理人 | 増井 忠弐 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 小磯 貴子 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 千葉 昭男 |