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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1195810 |
審判番号 | 不服2006-6640 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-07 |
確定日 | 2009-04-15 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 82035号「半導体装置を形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月27日出願公開、特開平 7-283320〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成7年3月15日(パリ条約による優先権主張1994年3月28日、米国)の出願であって、平成18年1月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、このうち、本願の請求項3に係る発明は、以下のとおりのものである。 「【請求項3】 半導体装置を形成する方法であって: 高点(1081)を含む第1絶縁層(108)を、半導体基板(100)の上に形成する段階; 第1絶縁層(108)の上に有機層(109)を形成する段階; 有機層(109)および高点(1081)を同時にエッチングする段階; 第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は: 第1絶縁層(128)の少なくとも100オングストロームをエッチングし; 前記同時にエッチングする段階の後で、かつ: 第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および 第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること; からなるグループから選ばれる段階の前に行われる段階; によって構成されることを特徴とする方法。」 第3 刊行物に記載された発明 刊行物1.特開平4-266028号公報 原審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物1(特開平4-266028号公報)には、図1、図4とともに、 「半導体集積回路の製造方法」(発明の名称)に関して、 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】半導体産業では、流動性イオンによる汚染がしばしば問題となる。アルカリ金属イオン、特にナトリウムイオンのような流動性イオンが製造中に何らかの理由で、ランナーを分離する絶縁層にしばしば侵入するのである。MOSFETデバイスでは、これらのイオンは最終的に基板に移動し、デバイス間の絶縁またはデバイスのスレッシホールド電圧に悪影響を及ぼす。 【0004】流動性イオン(特にナトリウム)による汚染の考え得る原因は多数存在し、その全てが完全にわかっているわけではない。可能性のある汚染の一つの原因は、レベル間の絶縁体を平らにするための平坦化もしくはエッチバックのプロセスである。すぐ上のレベルの金属層または絶縁層の形成に伴う問題を緩和するために、レベル間絶縁層は平坦化されるか少なくとも平滑化される。」、 「【0009】 【実施例】図1において、絶縁層11は、電界効果トランジスタのゲート、ソース、ドレインをカバーするものであり、レベル1の絶縁層と呼ばれる。その下にあるデバイスの詳細な構成は、説明を簡単にするために省略している。13、15、17は、絶縁層11の上に設けられた導電性のランナーである。ランナー13、15、17は例えばアルミニウムのような金属や、ポリシリコンのような導電物質から出来ている。ランナー13、15、17の下側には能動トランジスタ領域または他のランナーがあり、これらとランナー13、15、17とを接続するウィンドウまたはバイアスが設けられているが、図を簡単にするために省略している。 【0010】絶縁層21はランナー13、15、17をカバーし、かつそれらの間のスペースを埋めている。絶縁層21には二酸化ケイ素を使用することができる。二酸化ケイ素は絶縁体21のようなレベル間絶縁体として使用するために堆積されるが、この堆積は種々のガス源による化学蒸着(CVD)プロセスで行われる。堆積は大気圧下または低圧下で行うことができるが、プラズマで強化するようにしても良い。絶縁層21は、シランにより形成するようにしても良い。また、略語「TEOS」の四価エトキシシリコン化合物(Si(OC_(2)H_(5))_(4))・・・のような先端的有機シリコン化合物で絶縁層21を作ってもよい。他の先端的物質や他のプロセスを色々な組合せで使ってもよい。前述したように、絶縁層21は三価のリンを含んでいてもよい。 【0011】例えば「TEOS層の堆積」という表現は、当業者間では、リアクタ内でTEOSを分解することにより絶縁層を堆積するという意味に理解されている。このプロセスは、必要に応じてプラズマにより強化して行われ、その結果出来るものは「PETEOS」と呼ばれる。・・・多段階堆積及びエッチバックを行う堆積プロセスもある。 【0012】絶縁層21の上表面22は一般に平坦ではない。なぜなら、付着した絶縁体は下にある凹凸形状を写し取ったような表面22を形成する傾向にあるからである。よって、表面22はランナー13、15、17の上の部分ではやや高く、ランナーのすき間の上部分ではやや低くなっている。 【0013】金属や絶縁体などの堆積を引き続いて比較的平らな表面の上に行えるように絶縁層21の上表面22を平滑化、平坦化することがしばしば望ましい。そうやって、堆積を平滑でない表面や波うった表面に行おうとする時に起きるステップカバリッジの問題を避ける。表面22の平坦化はこの技術分野において良く知られた種々の方法により行われる。 【0014】多くの平坦化技術は流動性イオン汚染の恐れを伴う。ある平坦化方法ではレジストを使用する。レジストが表面22上に付着され、スピニングによって平坦化される。それから、レジストとその下の絶縁体両方をほぼ同じ割合で削り取るプロセスによってその両方がエッチングされる。不運なことに、多くのレジストはナトリウムの豊富な源である。結果として、レジストーエッチバック平坦化プロセスは流動性イオン汚染につながる。」、 「【0016】結果として、最も良いと思うなんらかのプロセスで絶縁層21を平坦化またはエッチバックした後に、絶縁層21の上表面22からナトリウムを取り除くのにウェットクリーニングを行う。例えば、あるウェットクリーニングでは、もしランナー13、15、17が金属で絶縁体平坦化後に表面に出ているのなら8対1の割合のエチレングリコールと緩衝フッ化水素を使い、ランナーが表面に出ていないのなら100対1の水とフッ化水素を使う。 【0017】ウェットクリーニングは、いたるところに存在するナトリウムを取り除くには望ましい一方で、ある危険を伴う。絶縁層21を形成するために使われたCVDプロセスの多くは、ランナーの隙間の部分を完全に埋めはしない。ランナー13と15のように二つのランナーが接近して配置されている場合、色々な不完全部23、25が、ランナー対13ー15、15ー17の隙間部分の絶縁層21内に現れる。これら不完全部はボイドであり、軟酸化物領域と呼ばれる。軟酸化物領域は明らかに固体酸化物領域であり、例えば前述したウェットクリーニングの間に、特にエッチングによる傷を受け易い。そのため、もし軟酸化物領域23がランナー13と15の隙間部分にあるときは、ウェットクリーニングはその軟酸化物領域23を特に狙って攻撃し、その結果絶縁層21内に溝が出来る。さらにウェットクリーニングを続けると、ランナー13と15の隙間部分で下へ向けて溝が延びていくことになる。溝は、結果として出来る上表面の滑らかな形状を損ねることになり、引続き行われる絶縁体または金属の堆積が困難となるため望ましくない。」、 「【0023】前述した平坦化ステップの後に面32の付近からナトリウムイオン汚染を取り除くためのウェットクリーニング工程は必要ない。絶縁層27の存在のおかげで、絶縁層21へのナトリウム侵入の恐れもなくウェットクリーニングステップを省くことができる。ウェットクリーニングによって作られる酸化物内の溝の問題もこれで避けられる。さらに、絶縁層21、31にサンドウィッチされている絶縁層27の位置は、下にあるシリコン基板でイメージチャージが誘導されるのを防ぐことにおいても重要である。 【0024】すなわち、絶縁層21、31の相対的厚さが重要であることがわかった。絶縁層21、27、29の厚さ合計を1.2マイクロメートルに固定しながら、絶縁層21の厚さを0.2マイクロメートル、0.5マイクロメートル、0.8マイクロメートルと変えていく一方で、絶縁層29の厚さを0.8マイクロメートル、0.5マイクロメートル、0.2マイクロメートルと変えることにより、個々のウェハーを使って一連の実験を行った。絶縁層27は厚さ0.2マイクロメートルの窒化ケイ素である。エッチバックを実行しなかったが、フォトレジストの堆積とオゾン中でのフォトレジストのアッシングによって絶縁層29の上面にナトリウムが侵入した。TVS(「三角波電圧スウィープ」)テストが、絶縁層21内の流動性イオン汚染を検出するために行われた。TVSテストは、米国特許第4,950,977号明細書に開示されている。最小量のイオン流が、絶縁層21の厚さが0.8マイクロメートルのサンプルで見つかった。絶縁層27の上表面やその付近にナトリウムイオンが存在すると、シリコン基板内と絶縁層31の上面に配置される金属ランナー内にイメージチャージが誘導されるという説がある。シリコン基板内に見られるイメージチャージの量は、絶縁層31の厚さを絶縁層の上にある金属ランナーとシリコン基板のとの間にある絶縁体の厚さの合計で割った値にほぼ比例する。基板内に誘導されたイメージチャージは、前述したデバイス間の絶縁性の問題及びスレッシホールド電圧のシフトの問題に関与する。レベル1の絶縁層11が三価のリンでドープしたガラスであったとしても、イメージチャージ現象は前述した問題を引き起こす。 【0025】下部のシリコン基板と上部の金属ランナーの間の(ナトリウムがたまる場所である絶縁層27の内部や上面のような)インターフェイスの相対位置が重要なパラメータであることがさらなる研究からわかった。所定レベルの汚染に対しては、そのインターフェイス部はシリコン基板から十分遠く、上部金属ランナーに近くなくてはならない。そうすると、ほとんどのイメージチャージはランナー内に現れ、回路の性能を落とすシリコン基板内のイメージチャージはわずかである。」、 「【0032】図4において、111は、シリコン、ドープされたシリコン、エピタキシャルシリコンなどの基板である。」、 が、記載されている。 また、例えば、【0009】段落に記載の「絶縁層11」は、図1には、「基板11」と記載されている。 また、【0017】段落には、「ウェットクリーニング」に「引続き行われる絶縁体または金属の堆積」について、記載されている。 以上の記載から、刊行物1には、以下の発明が記載されている。 「その上表面22がランナー13、15、17の上の部分ではやや高くなっている絶縁層21を基板11の上に形成する段階、レジストが前記絶縁層21の前記上表面22に付着されスピニングによって平坦化される段階、前記レジストとその下の前記絶縁層21の両方をほぼ同じ割合で削り取るプロセスによってその両方がエッチングされるレジスト-エッチバック平坦化プロセスの段階、前記レジスト-エッチバック平坦化プロセスの段階の後に前記絶縁層21の前記上表面22からナトリウムを取り除くのに8対1の割合のエチレングリコールと緩衝フッ化水素、又は100対1の水とフッ化水素を使ってウェットクリーニングを行う段階、前記ウェットクリーニングに引続き絶縁体または金属の堆積が行われる段階によって構成されることを特徴とする半導体集積回路の製造方法。」 刊行物2.特開平2-219231号公報 原審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物2(特開平2-219231号公報)には、図面とともに、 「半導体集積回路内の移動性イオン汚染を低減するための方法」(発明の名称)に関して、 「発明の要約 本発明の一例としての実施態様によると、半導体集積回路の製造において、堆積された誘電体層内の移動性イオン汚染が、この誘電体層を移動性イオン汚染源に晒す処理ステップを遂行した後に、この層の表面部分のみ、典型的には、およそ層の最も上側100nm以下のみを除去することによって低減される。 好ましい実施態様においては、表面上に複数の第一のレベルの金属部分を持つ第一の誘電体層の上に堆積された第二の誘電体層の表面から40nm以下が除去される。ここで、これら金属部分は、二つの層の間の界面の所に置かれる。この除去は、例えば、第二の誘電体層を移動性イオン汚染源に晒す処理ステップ、例えば、反応性イオン エッチングの後に、湿式エッチングによって達成される。典型的には、本発明の方法によって除去される移動性イオン汚染物質は主にナトリウム イオンである。」(第3頁右上欄第7行?同頁左下欄第4行)、 「第二の誘電層7は、典型的には、PETEOSと慣習的に呼ばれる層を製造するためにプラズマ促進TEOSプロセスによって形成される。PETEOS層7は、典型的には、かなり厚く、例えば、2500nmに形成され、次に、比較的平坦で滑らかな最終層7を得るために“エッチ バック(etched back)”されるが、これは約600nmより厚い、典型的には、公称800nmの最終的な厚さを持つ。図示されるごとく、第二の誘電層7が次にウンイドウ23を開けるようにパターン化されるが、これは、第一の金属及び第一の誘電体の選択された部分を露出する。このパターン化は、典型的には、反応性イオン エッチングあるいは別の形式のプラズマ エッチングのような異方性エッチングによって達成される。上に述べたエッチバックを含むこれらタイプのエッチング、並びに従来のフォトレジスト及びこれらプロセスを遂行するために典型的に装置内に含まれる物質は、誘電層内にかなりの量の移動イオン汚染を導入することが知られている。 周知の如く、図面1に示される基板lのようなシリコン基板を覆う誘電層内の移動イオンは、電圧及び温度の上昇によって、例えば、BPSG誘電層3とPETEOS誘電層7の間の界面に簡単に移動し、また、フィールド酸化物隔離領域15の下側に電流漏れ経路(図示無し)を誘引する。この漏れ経路は、しばしば、デバイス間電気絶縁に致命的な影響を与え、結果として、隣接するデバイス間の完全な短絡が簡単に起こる。 但し、今日に至るまで、上に説明の処理では、説明の処理ステップの結果として避けることができないかなりの量の追加の移動イオンの汚染が起こり、この追加の汚染は、この汚染を生成した処理ステップの直後においては、層7の最も上の表面部分に集中するといこうとまでは知られていなかった。 第一に、二次イオン質量顕微鏡分析及びオーガースペクトル分析の両方を通じて、上に説明のように形成された最終的な800nmのPETEOS層に対しては、移動イオン汚染の実質的に全て、つまり、約95%以上が、この汚染を生成した処理ステップの直後においては、これまで当分野における研究者によって考えられていたようにこの層の800nmの全厚さを通じて比較的均一に分散しているのではなく、この層の上側10-100nm、典型的には、上側10-15nm内に集中することが発見された。 除去されなければならない汚染物質が実質的に誘電層7の上側表面部分に集中していることが認識された結果、更に、この汚染は、実質的にこれら表面部分のみを除去するという簡単な方法にて除去できるという追加の認識に達した。但し、又、これら部分をこの高い移動性イオンのこの層全体への再分散を起こすのに十分な熱或はエネルギーを伴うその後の処理ステップが遂行される前に除去しなくてはならないことも確認された。単に、ウエーハを室温に放置しただけでは、大きな再分散は起こりそうもないが、但し、高温で行なわれる処理ステップ、或はウエーハを高電圧或は他のエネルギーに晒すようなステップ、例えば、イオン移入、反応性イオン エッチング、プラズマ ストリッピング或は様々なタイプのフォトレジスト展開ステップは、急速な再分散の原因となり得る。 汚染された誘電層、例えば、反応性イオン エッチングされた誘電層7の最も上側表面部分を除去するためには、当業者において明白なように、様々な方法の任意の一つを使用することができる。これら方法の簡単な一つの方法は、この汚染を生成したステップの直後に湿式エッチングを行なう方法である。適当と考えられるエッチングは、約100部の水及び1部のフッ化水素酸(HF)から成る従来の溶液を使用して室温にて約3分間エッチングする方法である。このエッチングは、約30-45nmのPETEOS誘電層7のみを除去し、移動インオ汚染の検出できる効果を回避するのに完全に有効であることが発見された。移動イオン汚染は、典型的には、層の上側10-15nm内にのみ集中するが、プロセス変動を考慮に入れ、これによってより完全な除去を保証するために、約40nm除去するのが好ましい。 別の方法として、誘電層の最も上側表面部分は、約8部のエチレン グリコールと1部の緩衝されたフッ化水素酸(BHF)を含む溶液内において、約1分間、約40nmを除去するために湿式エッチングすることによっても除去することができる。」(第4頁右上欄第5行?第5頁右上欄第7行)、 が、記載されている。 第4 対比 本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明3」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という。)とを対比する。 ア 刊行物1発明の「その上表面22がランナー13、15、17の上の部分ではやや高くなっている絶縁層21」の、「その上表面22がランナー13、15、17の上の部分ではやや高くなっている」部分、「絶縁層21」は、それぞれ、本願発明3の「高点(1081)」、「第1絶縁層(108)」に相当するので、刊行物1発明の「その上表面22がランナー13、15、17の上の部分ではやや高くなっている絶縁層21を基板11の上に形成する段階」は、本願発明3の「高点(1081)を含む第1絶縁層(108)を、」「基板(100)の上に形成する段階」に相当する。 イ 刊行物1発明の「レジスト」は、本願発明3の「有機層(109)」に相当するので、刊行物1発明の「レジストが前記絶縁層21の前記上表面22に付着されスピニングによって平坦化される段階」は、本願発明3の「第1絶縁層(108)の上に有機層(109)を形成する段階」に相当する。 ウ 刊行物1発明の「前記レジストとその下の前記絶縁層21の両方をほぼ同じ割合で削り取るプロセスによってその両方がエッチングされるレジスト-エッチバック平坦化プロセスの段階」は、本願発明3の「有機層(109)および高点(1081)を同時にエッチングする段階」に相当する。 エ 刊行物1発明の「フッ化水素」は、本願発明3の「フッ化物」に相当し、刊行物1発明の「8対1の割合のエチレングリコールと緩衝フッ化水素、又は100対1の水とフッ化水素」は、本願発明3の「フッ化物含有溶液」に相当し、刊行物1発明の「前記絶縁層21の前記上表面22からナトリウムを取り除くのに8対1の割合のエチレングリコールと緩衝フッ化水素、又は100対1の水とフッ化水素を使ってウェットクリーニングを行う」ことは、「前記絶縁層21の前記上表面22」の一部を「ウェットクリーニング」によりエッチングすることに他ならないから、刊行物1発明の「前記レジスト-エッチバック平坦化プロセスの段階の後に前記絶縁層21の前記上表面22からナトリウムを取り除くのに8対1の割合のエチレングリコールと緩衝フッ化水素、又は100対1の水とフッ化水素を使ってウェットクリーニングを行う段階」は、本願発明3の「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「前記同時にエッチングする段階の後」「に行われる段階」に相当する。 オ 刊行物1発明の「前記ウェットクリーニングに引続き絶縁体または金属の堆積が行われる段階」は、本願発明3の「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること」に相当する。 カ 刊行物1発明の「前記絶縁層21の前記上表面22からナトリウムを取り除くのに8対1の割合のエチレングリコールと緩衝フッ化水素、又は100対1の水とフッ化水素を使ってウェットクリーニングを行う段階」と、「前記ウェットクリーニングに引続き絶縁体または金属の堆積が行われる段階」とは、本願発明3の「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること;からなるグループから選ばれる段階の前に行われる段階」のうちの、「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること;からなるグループから選ばれ」た、本願発明3の「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること」「の前に行われる段階」に相当するので、刊行物1発明の「前記絶縁層21の前記上表面22からナトリウムを取り除くのに8対1の割合のエチレングリコールと緩衝フッ化水素、又は100対1の水とフッ化水素を使ってウェットクリーニングを行う段階」と、「前記ウェットクリーニングに引続き絶縁体または金属の堆積が行われる段階」とは、本願発明3の「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること;からなるグループから選ばれる段階の前に行われる段階」に相当するが、ちなみに、本願発明3の「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること;からなるグループから選ばれる段階の前に行われる段階」について、本願明細書の【0035】段落には、「REBの例の洗浄工程は、REB工程の後で、第1絶縁層108の上に他の層を形成する前,第1絶縁層108を含む基板をアニールする前あるいはその両方の前に一般に行われる。」と記載されている。 キ 刊行物1発明の「半導体集積回路の製造方法」は、本願発明3の「半導体装置を形成する方法」に相当する。 すると、本願発明3と刊行物1発明とは、 「半導体装置を形成する方法であって: 高点(1081)を含む第1絶縁層(108)を、基板の上に形成する段階; 第1絶縁層(108)の上に有機層(109)を形成する段階; 有機層(109)および高点(1081)を同時にエッチングする段階; 第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は: 前記同時にエッチングする段階の後で、かつ: 第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および 第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること; からなるグループから選ばれる段階の前に行われる段階; によって構成されることを特徴とする方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1 本願発明3は、「半導体基板(100)」を有するのに対して、刊行物1発明は、「基板11」を有するものの、「基板11」が、「半導体基板」であるか否か不明である点(以下、「相違点1」という。)。 相違点2 本願発明3は、「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階」において「第1絶縁層(128)の少なくとも100オングストロームをエッチング」するのに対して、刊行物1発明は、「前記絶縁層21の前記上表面22からナトリウムを取り除くのに8対1の割合のエチレングリコールと緩衝フッ化水素、又は100対1の水とフッ化水素を使ってウェットクリーニングを行う」が、「ウェットクリーニング」によりどの程度「前記絶縁層21の前記上表面22」をエッチングするのか不明である点(以下、「相違点2」という。)。 相違点3 本願発明3は、「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること;からなるグループから選ばれる段階の前に行われる段階」を有するのに対して、刊行物1発明は、「前記絶縁層21の前記上表面22からナトリウムを取り除くのに8対1の割合のエチレングリコールと緩衝フッ化水素、又は100対1の水とフッ化水素を使ってウェットクリーニングを行う段階」と、「前記ウェットクリーニングに引続き絶縁体または金属の堆積が行われる段階」とを有しているので、刊行物1発明は、本願発明3の「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること;からなるグループから選ばれる段階の前に行われる段階」のうちの、「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること;からなるグループから選ばれ」た、本願発明3の「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること」「の前に行われる段階」に相当する点で、一致しているので、特に相違はしないが、刊行物1発明は、本願発明3の「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること;からなるグループから選ばれる段階の前に行われる段階」のうちの、「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること;からなるグループから選ばれ」た、本願発明3の「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること」「の前に行われる段階」を有していない点(以下、「相違点3」という。)では、一応、相違している。 第5 当審の判断 以下で、上記相違点1ないし3について検討する。 相違点1について 例えば、刊行物1の【0023】?【0025】段落には、「シリコン基板」について記載されており、また、【0032】段落には、「図4において、111は、シリコン、ドープされたシリコン、エピタキシャルシリコンなどの基板である」と記載されており、また、刊行物2には、「図面1に示される基板lのようなシリコン基板」(第4頁左下欄第4?5行)と記載されているように、半導体装置を製造する技術分野において、基板として、シリコン基板に代表される半導体基板を用いることは、慣用技術である。 したがって、刊行物1発明においても、基板11として、当該技術分野の慣用技術である半導体基板を用いることは、当業者が適宜なし得た程度のことと認められる。 相違点2について 刊行物2には、「比較的平坦で滑らかな最終層7を得るために“エッチ バック(etched back)”されるが、」「上に述べたエッチバックを含むこれらタイプのエッチング、並びに従来のフォトレジスト及びこれらプロセスを遂行するために典型的に装置内に含まれる物質は、誘電層内にかなりの量の移動イオン汚染を導入することが知られている。」(第4頁右上欄第9行?同頁左下欄第3行)こと、「上に説明のように形成された最終的な800nmのPETEOS層に対しては、移動イオン汚染の実質的に全て、つまり、約95%以上が、この汚染を生成した処理ステップの直後においては、これまで当分野における研究者によって考えられていたようにこの層の800nmの全厚さを通じて比較的均一に分散しているのではなく、この層の上側10-100nm、典型的には、上側10-15nm内に集中することが発見された。」(第4頁左下欄第20行?同頁右下欄第9行)こと、「汚染された誘電層、例えば、反応性イオン エッチングされた誘電層7の最も上側表面部分を除去するためには、」「この汚染を生成したステップの直後に湿式エッチングを行なう方法である。適当と考えられるエッチングは、約100部の水及び1部のフッ化水素酸(HF)から成る従来の溶液を使用して室温にて約3分間エッチングする方法である。このエッチングは、約30-45nmのPETEOS誘電層7のみを除去し、移動インオ汚染の検出できる効果を回避するのに完全に有効であることが発見された。移動イオン汚染は、典型的には、層の上側10-15nm内にのみ集中するが、プロセス変動を考慮に入れ、これによってより完全な除去を保証するために、約40nm除去するのが好ましい。 別の方法として、誘電層の最も上側表面部分は、約8部のエチレン グリコールと1部の緩衝されたフッ化水素酸(BHF)を含む溶液内において、約1分間、約40nmを除去するために湿式エッチングすることによっても除去することができる。」(第5頁左上欄第6行?同頁右上欄第7行)ことが、記載されている。 そして、刊行物2の上記の記載をまとめると、「汚染された誘電層」である「誘電層7の最も上側表面部分を除去するためには、」「この汚染を生成したステップの直後に」「約100部の水及び1部のフッ化水素酸(HF)から成る従来の溶液を使用」するか、「約8部のエチレン グリコールと1部の緩衝されたフッ化水素酸(BHF)を含む溶液」を使用して「湿式エッチングを行な」い、「移動イオン汚染は、典型的には、層の上側10-15nm内にのみ集中するが、プロセス変動を考慮に入れ、これによってより完全な除去を保証するために、約40nm除去する」ことが、示されており、「約40nm除去する」ことは、「約400オングストローム除去する」ことであり、100オングストロームよりも大きいから、刊行物2の上記の記載は、本願発明3の「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階」において「第1絶縁層(128)の少なくとも100オングストロームをエッチング」することに相当する。 したがって、刊行物1発明において、刊行物2に記載の上記の技術思想を適用して、本願発明3のごとく、「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階」において「第1絶縁層(128)の少なくとも100オングストロームをエッチング」するようになすことは、当業者が適宜設定できた程度のことと認められる。 相違点3について 刊行物2には、「除去されなければならない汚染物質が実質的に誘電層7の上側表面部分に集中していることが認識された結果、更に、この汚染は、実質的にこれら表面部分のみを除去するという簡単な方法にて除去できるという追加の認識に達した。但し、又、これら部分をこの高い移動性イオンのこの層全体への再分散を起こすのに十分な熱或はエネルギーを伴うその後の処理ステップが遂行される前に除去しなくてはならないことも確認された。」(第4頁右下欄第10?18行)ことが、記載されており、この記載によると、汚染物質の除去として、上記「相違点2について」において記載した、刊行物2に示されている、『「汚染された誘電層」である「誘電層7の最も上側表面部分を除去するためには、」「この汚染を生成したステップの直後に」「約100部の水及び1部のフッ化水素酸(HF)から成る従来の溶液を使用」するか、「約8部のエチレン グリコールと1部の緩衝されたフッ化水素酸(BHF)を含む溶液」を使用して「湿式エッチングを行な」い、「移動イオン汚染は、典型的には、層の上側10-15nm内にのみ集中するが、プロセス変動を考慮に入れ、これによってより完全な除去を保証するために、約40nm除去する」』ことを、「これら部分をこの高い移動性イオンのこの層全体への再分散を起こすのに十分な熱或はエネルギーを伴うその後の処理ステップが遂行される前に」「しなくてはならない」ということである。 そして、刊行物2に記載の「十分な熱或はエネルギーを伴うその後の処理ステップ」には、半導体装置を製造する技術分野における常套手段である、基板のアニールが含まれることは明らかであるので、刊行物2には、本願発明3の「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること」「の前に行われる段階」に相当することが記載されていることになる。 したがって、刊行物1発明において、「前記絶縁層21の前記上表面22からナトリウムを取り除くのに8対1の割合のエチレングリコールと緩衝フッ化水素、又は100対1の水とフッ化水素を使ってウェットクリーニングを行う段階」と、「前記ウェットクリーニングに引続き絶縁体または金属の堆積が行われる段階」に、刊行物2に記載の「これら部分をこの高い移動性イオンのこの層全体への再分散を起こすのに十分な熱或はエネルギーを伴うその後の処理ステップが遂行される前に」汚染物質を除去「しなくてはならない」という段階を加えて、本願発明3のごとく、「第1絶縁層(108)の一部をフッ化物含有溶液でエッチングする段階であって、この段階は:」「第1絶縁層(128)の上に層を形成すること;および第1絶縁層(128)を含む基板をアニールすること;からなるグループから選ばれる段階の前に行われる段階」となすことは、当業者が適宜設計できた程度のことと認められる。 よって、本願の請求項3に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本願の他の請求項に係る発明についての検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-12 |
結審通知日 | 2008-11-18 |
審決日 | 2008-12-01 |
出願番号 | 特願平7-82035 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長谷山 健、北島 健次 |
特許庁審判長 |
河合 章 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 安田 雅彦 |
発明の名称 | 半導体装置を形成する方法 |
代理人 | 桑垣 衛 |