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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B26B |
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管理番号 | 1196067 |
審判番号 | 不服2007-8098 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-03-20 |
確定日 | 2009-04-23 |
事件の表示 | 特願2002- 31583「鋏」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月19日出願公開、特開2003-230773〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.本願発明 本願は、平成14年2月7日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成18年9月11日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、請求項1の記載は以下のとおりである。 「【請求項1】基端が交差状態で軸支された1対のブレード1、2のうち、長さL2の片方のブレード2の先端が、突き刺し易いように尖っていること、 先端が尖っている側のブレード2において、他方のブレード1の長さL1より寸法Aだけ長く突出している先端2aのブレード角をそのまま根元まで延長した形状とすることによって、該ブレード2の全長にわたってその幅を細く形成してあること、 を特徴とする鋏。」(以下、請求項1に記載の発明を「本願発明」という。) 第2.引用例 これに対して、原審の拒絶の理由において引用された引用文献1,2には、以下のとおり記載されている。 1.引用文献1:実願昭50-124085号(実開昭52-37388号)のマイクロフィルムには、「窓切用鋏」に関して、図面とともに以下の記載がある。 「下刃1の先端部3を上刃2の先端よりも長く形成するとともに、下刃1の先端部3の背嶺部を切断し、針状に形成して成ることを特徴とする窓切用鋏。」(実用新案登録請求の範囲) 「(1)、いま、所定のかなり厚い布地に必要目的の形状(例、円輪郭)の切りぬきを行う場合、該円輪郭線上の、どの部分にでも、下刃1の先端部3を突き刺し、そのまゝの状態で上刃2の先端部を相合させて切り初めればよい。 (2)、小さい形状(例、ボタン穴)のものを切りぬく場合でも、上記(1)の方法で必要目的線上の初めの位置に突き刺し切り初めればよいのであるが、本考案の鋏の上刃2の先端の方が、下刃1の先端3より少し短く形成されているために、必要目的の位置を目で見て、該位置で上刃2の先端を止め、下刃先端部3と相合させることによって、正確な位置で切り止めることができる。」(明細書第2頁第17行?第3頁第9行) 「(4)、特に、厚味のある板状物体の切りぬき用のためには、下刃1の先端部3の部分を鋏の大きさに比例して長く、大きく形成することにより、その作用、効果も大である。」(明細書第3頁第19行?第4頁第2行) 「しかして、本考案は、下刃1の先端部3の背嶺部を切断し、上刃先端嶺部と異る型の針状に形成してなるとともに、下刃1の先端3を上刃2の先端より長く形成してなる鋏であるために、窓切作業の場合一挙動作で速やかに必要目的部分を正確に切りぬき初めることができる。又、上、下刃先端部が相合する場合、深く相合しないように形成されてなるものであるから、切り止り部分に亀裂(ヒビワレ)をおこさせることなく切りぬくことができる。 更に、下刃1の先端部3より上刃1の先端が短く形成されているために、上刃先端部を目的の位置で切り止めることによって、必要目的の形に正確、確実に切りぬくことができる。極めて使用し易い鋏であるために、各種窓切裁断、その他工作用窓切として実用的効果は大きい。」(明細書第4頁第3行?第18行) 以上によれば、引用文献1には、「下刃の先端部を上刃の先端よりも長く形成するとともに、下刃の先端部の背嶺部を切断し、針状に形成して成ることを特徴とする窓切用鋏。」との発明(以下、「引用例発明1」という。)が開示されていると認められる。 2.引用文献2:実願平5-32571号(実開平6-85665号)のCD-ROMには、「ハサミ」に関して、図面とともに、以下の記載がある。 「ほぼ中央に位置するピン3を支点にして開閉自在に支持された上下のハサミ単体4,5から構成されたハサミ本体2において、上のハサミ単体4におけるピンを中心とした一方側4Aには指を挿入する環部4Bが、また、他方側4Cの上面には上に向いた刃4Dが形成され、また、下のハサミ単体5におけるピンを中心とした一方側5Aには指を挿入する環部5Bが、また、他方側5Cの下面には下に向いた刃5Dが形成され、上のハサミ単体4における他方側4Cの下面に位置するみね4Eはピン側から先端にかけて少しずつ先細の針状になるよう構成されていることを特徴とするハサミ。」(【実用新案登録請求の範囲】【請求項1】) 「【0001】 【産業上の利用分野】 本案は、例えば新聞の切り抜きなどに好適なハサミに関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来のはさみは、刃先が丸く構成され、紙、絹類を切る単機能のものとなっている。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 従来の技術で述べたものにあっては、下記のような問題点を有していた。 切り抜き(紙、絹)をする場合に、平面上の上下、左右各先端より切り口にして切り抜きをしている。 【0004】 本願は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、上述の問題を解決できるものを提供しようとするものである。 1.平面上(上下、左右)の途中から切り口として切り抜きが可能となる。 2.ハサミの背中部分を刃状にてペーパーナイフとしての機能を持たせる。」(段落【0001】?【0004】) 「【0005】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、本考案のものは下記のようになるものである。 すなわち本願のものは、ほぼ中央に位置するピン3を支点にして開閉自在に支持された上下のハサミ単体4,5から構成されたハサミ本体2において、上のハサミ単体4におけるピンを中心とした一方側4Aには指を挿入する環部4Bが、また、他方側4Cの上面には上に向いた刃4Dが形成され、また、下のハサミ単体5におけるピンを中心とした一方側5Aには指を挿入する環部5Bが、また、他方側5Cの下面には下に向いた刃5Dが形成され、上のハサミ単体4における他方側4Cの下面に位置するみね4Eはピン側から先端にかけて少しずつ先細の針状になるよう構成されているハサミである。 この場合、下のハサミ単体の他方側における刃とは反対側に位置するみね部分には、ペーパーナイフ用刃部を形成することができる。」(段落【0005】) 「【0006】 【実施例】 実施例について図面を参照して説明する。 1は本案のハサミである。 2はハサミ本体で、公知のハサミと同一の構成となっているが、ほぼ中央に位置するピン3を支点にして開閉自在に支持された上下のハサミ単体4,5とから構成され、上のハサミ単体4におけるピンを中心とした一方側4Aには指を挿入する環部4Bが、また、他方側4Cの上面には上に向いた刃4Dが形成され、また、下のハサミ単体5におけるピンを中心とした一方側5Aには指を挿入する環部5Bが、また、他方側5Cの下面には下に向いた刃5Dが形成されている。 【0007】 そこで、上のハサミ単体4における他方側4Cの下面に位置するみね4Eはピン側から先端にかけて少しずつ先細の針状になるよう構成されている。 4Fは先端の針状部である。」(段落【0006】?【0007】) 「【0010】 作用は下記の通りである。 1.ハサミ1の場合、図2を参照して、切り抜きを所望する面の縁部に、先端の針状部4Fを突き刺したのち、公知のハサミと同様に作用させ切り取って行く。 2.ハサミ11の場合、図6を参照して、ペーパーナイフ用刃部51Eを例えば封書に差し込み、公知のペーパーナイフと同様に切り込んでゆく。なお、図示では封書の右方から切り込んでゆく状態となっているが、当該ハサミを持ち替えて左方から右方へ切り込んでゆくこともできる。 【0011】 【考案の効果】 本考案は、上述の通り構成されているので次に記載する効果を奏する。 1.紙、絹類の平面の途中から切り口ができ、切り抜きが簡単にできる。 2.ナイフの機能を付加することにより、ハサミの単機能からナイフ使用へと複合機能ができる。」(段落【0010】?【0011】) そして、図1を参照すると、「上のハサミ単体4のみね4Eはピン側から先端にかけて少しずつ先細の針状になるよう構成されている」のは、上のハサミ単体4の刃4Dの全長にわたってではなく、ピン側の刃4Dの途中から先端の針状部4Fまでの、部分的であることがみてとれる。 そして、段落【0007】及び、図1によれば、この、部分的に先細の針状になるよう構成されているのは一様な角度で細くなっていることもみてとれる。 以上によれば、引用文献2には、「ほぼ中央に位置するピンを支点にして開閉自在に支持された上下のハサミ単体から構成されたハサミ本体において、上のハサミ単体における他方側の下面に位置するみねはピン側から先端にかけて、少しずつ先細の針状になるよう一様な角度で部分的に細くなっているハサミ。」(以下、「引用例発明2」という。)が記載されている。 第3.対比・判断 本願発明と引用例発明2とを比較すると、鋏である点で、両者は共通しており、さらに、後者の「上下のハサミ単体」は、前者の「1対のブレード1、2」に相当し、さらに、後者の、「上のハサミ単体における他方側の下面に位置するみねはピン側から先端にかけて、少しずつ先細の針状になるよう一様な角度で部分的に細くなっている」点は、前者の「先端2aのブレード角をそのまま延長した形状とすることによって、該ブレード2の幅を細く形成してある」点に相当する。 してみれば、両者の一致点は以下のとおりである。 <一致点> 「基端が交差状態で軸支された1対のブレード1、2のうち、片方のブレード2の先端が、突き刺し易いように尖っていて、先端2aのブレード角をそのまま延長した形状とすることによって、該ブレード2の幅を細く形成してある鋏。」 そして、以下の点で相違している。 <相違点1> 本願発明は、「先端が尖っている側の長さL2のブレード2において、他方のブレード1の長さL1より寸法Aだけ長く突出している」のに対して、引用例発明2はそうではない点。 <相違点2> 本願発明の先端2aのブレード角をそのまま延長したのは、「根元まで」であり、これにより、該ブレード2がその幅を細く形成してあるのは、「全長にわたって」であるのに対して、引用例発明2では、上のハサミ単体における他方側の下面に位置するみねはピン側から先端にかけて少しずつ先細の針状になるよう構成されてはいるが、先細なのは部分的であって、根元まで先細ではなく、これにより、上のハサミ単体は、全長にわたって幅を細く形成してはいない点。 <相違点1>について検討する。 引用例発明1において、下刃は針状に形成され、しかも、上刃より長く形成されている。 そして、引用例発明1の下刃は本願発明の長さL2の片方のブレード2に相当し、同様に、上刃は、長さL1の他方のブレード1に、相当することが明らかである。 さらに、「寸法A」についてみても、その意味するところは、他方のブレード1の長さL1より、片方のブレード2の長さL2が、Aだけ長いというにとどまり、Aという値それ自体に意味は見い出せない。 以上のとおり、相違点1に係る本願発明の構成は引用例発明1に示されているということができ、鋏を閉じた状態で使うことは引用例発明1に示され、突出した針状の先端部で突き刺し、窓を開ける作業を行う点でも、引用例発明2と引用例発明1は共通しているから、これらを組み合わせるにあたっての阻害要因があるとすることもできない。 してみれば、相違点1に係る構成の違いは、引用例発明2に引用例発明1を組み合わせたにすぎないものであり、当業者が容易に想到し得たものである。 <相違点2>について検討する。 相違点2は、刃わたり全体を先細とするか、部分的に先細とするかの違いであって、これは、鋏を開いた状態において、先細のブレード2を根元まで突き刺せるか、途中まで突き刺せるかの違いであって、鋏としての使い方であるブレードの開閉操作による切断においては、両者共、違いはない。 そして、先細部分の長さを、刃わたり全体とするか、部分的にするかは、用途や要求される仕様に応じ、ブレードの強度、使い勝手などを踏まえて適宜決定して設計すればよい事項である。 してみれば、相違点2に係る構成の違いは、設計的事項であり、当業者が容易に想到し得たものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例発明2、引用例発明1、及び設計的事項事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、結論のとおり決定する。 |
審理終結日 | 2008-04-23 |
結審通知日 | 2008-05-07 |
審決日 | 2008-05-20 |
出願番号 | 特願2002-31583(P2002-31583) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B26B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中島 成 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 尾家 英樹 |
発明の名称 | 鋏 |
代理人 | 小野 信夫 |