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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1196199
審判番号 不服2006-20266  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-12 
確定日 2009-04-23 
事件の表示 平成 8年特許願第311560号「インク噴射記録ヘッドおよびインク噴射記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月 9日出願公開、特開平10-151744〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年11月22日の特許出願であって、拒絶理由通知に応答して平成17年7月25日付けで手続補正がされたが、平成18年8月7日付けで拒絶査定がされ、これを不服として同年9月12日付けで審判請求がされるとともに、同年同月27日付けで明細書についての手続補正がされたものである。

第2 平成18年9月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年9月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容と目的
本件補正における特許請求の範囲についての補正は、補正前(平成17年7月25日付け手続補正書参照)に
「 【請求項1】
インク滴を吐出する複数個のオリフィスが形成されているオリフィスプレートの表面に10?100nmの大きさの凹凸を有し、且つ、
この表面と、この表面から3μm以内の範囲の前記オリフィスの内面と、が撥水処理されていることを特徴とするインク噴射記録ヘッド。
【請求項2】
インク滴を吐出するための複数個のオリフィスが形成されているオリフィスプレートの表面に10?100nmの大きさの凹凸を有し、且つ、この表面と、この表面から、前記オリフィスにインクを供給するためのインク通路を構成する隔壁の高さおよび前記オリフィスプレートの厚さの合計の10%以下の範囲の前記オリフィスの内面と、が撥水処理されていることを特徴とするインク噴射記録ヘッド。
【請求項3】
前記オリフィスプレートが、樹脂フィルムからなり、その表面の凹凸が、酸素ガスによるドライエッチングによって形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のインク噴射記録ヘッド。
【請求項4】
前記オリフィスプレートの撥水処理は、印刷法等の印刷方法によってその表面付近のみに撥水性被膜が形成されたものであることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のインク噴射記録ヘッド。
【請求項5】
前記オリフィスプレートの撥水処理は、フッ素系単分子膜を化学吸着させたものであることを特徴とする請求項1?4いずれかに記載のインク噴射記録ヘッド。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載のインク噴射記録ヘッドを用い、これに供給するインクを外気圧と同じ圧力とすることを特徴とするインク噴射記録装置。」
とあったものを、
「 【請求項1】
インク滴を吐出する複数個のオリフィスが形成されているオリフィスプレートの表面に10?100nmの大きさの凹凸を有し、且つ、
この表面と、この表面から1μm?3μmの範囲の前記オリフィスの内面と、が撥水処理されていることを特徴とするインク噴射記録ヘッド。
【請求項2】
前記撥水処理は、前記オリフィスプレートの表面から、前記オリフィスにインクを供給するためのインク通路を構成する隔壁の高さおよび前記オリフィスプレートの厚さの合計の10%以下の範囲の前記オリフィスの内面にされていることを特徴とする請求項1に記載のインク噴射記録ヘッド。
【請求項3】
前記オリフィスプレートが、樹脂フィルムからなり、その表面の凹凸が、酸素ガスによるドライエッチングによって形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載のインク噴射記録ヘッド。
【請求項4】
前記オリフィスプレートの撥水処理は、印刷法等の印刷方法によってその表面付近のみに撥水性被膜が形成されたものであることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のインク噴射記録ヘッド。
【請求項5】
前記オリフィスプレートの撥水処理は、フッ素系単分子膜を化学吸着させたものであることを特徴とする請求項1?4いずれかに記載のインク噴射記録ヘッド。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載のインク噴射記録ヘッドを用い、これに供給するインクを外気圧と同じ圧力とすることを特徴とするインク噴射記録装置。」
と補正するものである。

本件補正における特許請求の範囲の請求項1についての補正は、撥水処理されているオリフィス内面の範囲を、補正前には「オリフィスプレートの表面から3μm以内」であったのを、補正後には「オリフィスプレートの表面から1μm?3μm」とするものである。
これは、発明を特定するために必要な事項を限定するものであり、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか( 平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。

3.独立特許要件について
(1)本願補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
インク滴を吐出する複数個のオリフィスが形成されているオリフィスプレートの表面に10?100nmの大きさの凹凸を有し、且つ、
この表面と、この表面から1μm?3μmの範囲の前記オリフィスの内面と、が撥水処理されていることを特徴とするインク噴射記録ヘッド。」(以下、「本願補正発明」という。)

なお、本願補正発明には、表面の凹凸の大きさについての限定があるが、一般に、表面の凹凸の大きさといえば、凹凸の高さ方向の大きさを指す。
例えば、JISの表面粗さの規格のパラメータは、1994年の改正前は、中心線平均粗さRa、最大高さRmax、十点平均粗さRzであり、改正により、表面に沿った方向のパラメータである凹凸の平均間隔Sm、局部山頂の平均間隔Sが追加された。
また、本願明細書中、【0025】の「凹凸のサイズは30?60nmが最適領域であり、これより浅いと接触角θが150°より小さくなり、これより大きいと強度が弱くなって凹凸がつぶれ易くなる。」、【0026】の「数10nmという細密な凹凸を埋めることなく、その表面にのみ撥水性被膜を形成する方法として、厚さ数nmという撥水性単分子膜を化学吸着させる方法を採用した。」との記載は、凹凸が浅さに係わることを示している。
よって、本願補正発明における「表面の凹凸の大きさ」とは、凹凸の隣接する山同士の間隔ではなく、山の高さを指すと解される。

(2)引用例記載内容の認定
(2-1)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平6-122204号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の(ア)?(ウ)の記載が図示と共にある。
(ア)「【請求項1】 インクジェット記録ヘッドのノズル開口面に、
1.平均高低差が0.01μm以上0.5μm未満かつ、ピッチが15μm以下の凹凸を設け、
2.上記凹凸面に含弗素重合体を50?1500オングストロームの層厚でコーティングする、事を特徴とするインクジェット記録ヘッドの撥水処理方法。」

(イ)「【請求項7】 インクジェット記録ヘッドのノズル開口面が、
1.平均高低差が0.01μm以上0.5μm未満かつ、ピッチが15μm以下の凹凸を有し、
2.前記記凹凸上に50?1500オングストロームの層厚の含弗素重合体からなるコーティング層を有する、事を特徴とするインクジェット記録ヘッド。」

(ウ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット記録ヘッドに関し、また前記インクジェット記録ヘッドのノズル開口面への撥水処理方法に関する。」

上記記載(ア)、(ウ)から、上記記載(イ)の「コーティング層」は撥水層であり、「ノズル開口面」はコーティングにより撥水処理されている。

上記記載(ア)、(イ)には、「表面の凹凸の大きさ」のパラメータとして平均高低差とピッチがあるが、本願補正発明と同様に、凹凸の大きさを示すパラメータとして、高さ方向の大きさである平均高低差を採用する。
すると、「ノズル開口面」は、0.01μm以上0.5μm未満(つまり10?500nm)の大きさの凹凸があることになる。

インクジェット記録ヘッドのノズル開口面は、平板状の部材つまりノズルプレートに複数設けられるのが通常である。
また、引用例1の【0032】には「ノズルプレート39のノズル開口面40」との記載があり、引用例1の【0042】には、ヘッド形成部材60に組立後ノズルとなる穴63を穿孔すると記載され、引用例1の【図10】(b)からは、ノズル開口面68上のノズル穴が2個あることが看取できる。
よって、上記記載(ア)、(イ)の「インクジェット記録ヘッドのノズル開口面」は、「インク滴を吐出する複数個のノズル穴が形成されているノズルプレートの表面」といえる。

以上のことから、上記(ア)?(ウ)の記載を含む引用例1には、次の発明が記載されていると認めることができる。
「インク滴を吐出する複数個のノズルが形成されているノズルプレートの表面に10?500nmの大きさの凹凸を有し、この表面が撥水処理されているインクジェット記録ヘッド」(以下、「引用発明」という。)

(2-2)引用技術
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平7-125220号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の(あ)?(う)の記載が図示と共にある。

(あ)「【請求項1】 ノズルプレートの表面からメニスカス形成面までのノズル内空隙容積が吐出させるインク量に対して0.05乃至0.50の範囲となるよう、上記ノズルプレートの表面を被覆する撥インク性被覆層の一部を上記ノズルの内面に入り込ませたことを特徴とするインクジェットプリンタのノズルプレート。」

(い)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ノズル内面への撥インク性物質の入り込み量をある一定の範囲に抑えることにより、インク滴の安定的な吐出を実現させる新たなノズルプレートを提供することにある。」

以上のことから、上記(あ)、(い)の記載を含む引用例2には、次の技術事項が記載されていると認めることができる。
「インクジェットプリンタのノズルプレートにおいて、ノズルプレート表面と、この表面から所定の範囲のノズルの内面とを撥水処理する」(以下、「引用技術」という。)

(3)対比
引用発明の「ノズル」、「ノズルプレート」、「インクジェット記録ヘッド」は、本願補正発明の「オリフィス」、「オリフィスプレート」、「インク噴射記録ヘッド」に相当する。

してみれば、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>
「インク滴を吐出する複数個のオリフィスが形成されているオリフィスプレートの表面に凹凸を有し、且つ、この表面が撥水処理されているインク噴射記録ヘッド」

<相違点>
相違点1
本願補正発明は、オリフィスプレートの表面の凹凸の大きさが、「10?100nm」と特定されているのに対し、引用発明は該大きさが「10?500nm」であり、下限は同じでも上限が同じでないので、該特定を有しない点。

相違点2
本願補正発明は、「オリフィスプレートの表面と、この表面から1μm?3μmの範囲の前記オリフィスの内面と、が撥水処理されている」と特定されているのに対し、引用発明は、撥水処理されるのがオリフィスプレートの表面だけであってオリフィスの内面を含まないので、該特定を有しない点。

(4)判断
相違点1について
引用例1中【0009】の
「本発明のインクジェット記録ヘッドの撥水処理方法に於いては、コーティング層形成の第一工程として、ノズル開口面に対し平均高低差(以下Ra)0.01μm以上0.5μm未満かつ、該凹凸面中の任意の断面に於ける隣り合う任意の凸部山頂間の距離(ピッチと呼ぶ)が15μm以下からなる凹凸を設ける事が好ましい。凹凸を設けるとワイピングによってコーティング層が磨耗した後も凹部にコーティング層が残るので撥水性が維持され長期的に撥水性が保持されるが、Raが0.01μm未満であるとワイピングの際に凹部のコーティング層も磨耗してしまい長期的に撥水性を維持する事が出来ず、またRaが0.5μm以上あるとノズル口の形状が歪でその結果インクのメニスカスが変形しインク滴がノズルの開口方向と異なる方向へ飛行し良好な記録画像が得られない。」
との記載は、オリフィスプレートの表面の凹凸の大きさは、撥水性コーティング層の厚さ、ノズル口の形状、等にも依存することを意味するから、該大きさはこれら種々の条件を勘案して定めるべき設計事項である。

また、本願明細書の【0025】に「凹凸のサイズは30?60nmが最適領域であり」とあるが、凹凸の大きさの上限を100nmとするべき点は検証されていない。
本願明細書の【0027】には「オリフィス内面へのコーティング深さを種々の条件で検討したところ、オリフィスプレート表面への印刷厚さの10倍を越えることのないことが判明した。すなわち、100nmの厚さのコーティングに対し、オリフィス内面へのコーティング深さは1μmを越えないことが分かった。」との記載はあるものの、オリフィスプレート表面のコーティングの厚さとオリフィスプレート表面の凹凸の大きさの関係は不明であるから、この記載は、凹凸の大きさの上限を100nmに定めるものではない。
よって、本願補正発明におけるオリフィスプレートの表面の凹凸の大きさの上限値100nmに、臨界値としての技術的意義はない。

したがって、引用発明において、本願補正発明の相違点1に係る構成を備えることは、引用例1の記載及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到できたことである。

相違点2について
引用発明も引用技術も、ともにインクジェットプリンタのノズルプレートに係るものであるから、引用技術を引用発明に適用することは、当業者が容易に想到し得ることである。
ただし、引用技術では、オリフィスプレートの表面から撥水処理する範囲が数値で定められてはいない。
しかしながら、上記「(2)引用例記載内容の認定 (2-2)引用技術」の記載(い)は、引用技術における「所定の範囲」は「インク滴の安定的な吐出を実現させる」ように定めるべきことを示す。
そして、引用例2の【0026】に「そしてこの実験により、Vm/Vi、つまり、吐出させるインク滴の量Viに対するノズルプレート1の表面2からメニスカス形成面Aまでのノズル4内空隙容積Vmの比が0.04を下回ると、インク滴の飛行曲がりが急激に多くなり、またこの比が0.50を越えると、急激に吐出不良が発生することが判った。」とあるように、適する範囲は、吐出させるインク滴の量に依存するし、インクの特性(親水性か親油性か等)にも依存することは明らかである。
このように、引用技術における「所定の範囲」は「インク滴の安定的な吐出を実現させる」ように定めるべき設計事項である。

また、本願明細書の【0027】には「オリフィス内面へのコーティング深さを種々の条件で検討したところ、オリフィスプレート表面への印刷厚さの10倍を越えることのないことが判明した。すなわち、100nmの厚さのコーティングに対し、オリフィス内面へのコーティング深さは1μmを越えないことが分かった。従って、オリフィス内面へのコーティング深さを3μm以内とすることは比較的容易であり」との記載がある。
しかしながら、この記載は、オリフィスプレート表面のコーティング厚さが100nmの場合にオリフィス内面へのコーティング深さが1μmを越えなかったただ一つの実験結果を根拠に、オリフィス内面へのコーティング深さを3μm以内にすることが容易であろうと推測するだけであり、オリフィスプレートの表面から撥水処理する範囲を1μm?3μmに定めることが好適であることは検証されていない。
よって、本願補正発明における、オリフィスプレートの表面から撥水処理されている範囲の「表面から1μm?3μm」に、臨界値としての技術的意義はない。

したがって、引用発明において、本願補正発明の相違点2に係る構成を備えることは、引用技術、引用例2の記載、及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到できたことである。

まとめ
上記「相違点1について」および「相違点2について」の検討結果より、引用発明において、本願補正発明の相違点1および相違点2に係る構成を備えることは、引用例1の記載、引用技術、引用例2の記載、及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到できたことである。
また、かかる発明特定事項を採用することによる効果も、当業者が容易に予測し得る程度のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例1の記載、引用技術、引用例2の記載、及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていない。

4.本件補正についてのむすび
上記「3.独立特許要件について」に記載のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
平成18年9月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年7月25日付けで補正された特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「 【請求項1】
インク滴を吐出する複数個のオリフィスが形成されているオリフィスプレートの表面に10?100nmの大きさの凹凸を有し、且つ、
この表面と、この表面から3μm以内の範囲の前記オリフィスの内面と、が撥水処理されていることを特徴とするインク噴射記録ヘッド。」(以下、本願発明という。)

2.引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,引用例2、及びその記載事項は、上記「第2 平成18年9月27日付けの手続補正について 3.独立特許要件について (2)引用例記載内容の認定」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 平成18年9月27日付けの手続補正について 3.独立特許要件について」で検討した本願補正発明の発明特定事項から、撥水処理されているオリフィス内面の範囲を、補正前には「オリフィスプレートの表面から3μm以内」であったのを、補正後には「オリフィスプレートの表面から1μm?3μm」とすることにより、範囲の下限を定める限定を省いたものに相当する。

すると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成18年9月27日付けの手続補正について 3.独立特許要件について」に記載したとおり、引用発明、引用例1の記載、引用技術、引用例2の記載、及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用例1の記載、引用技術、引用例2の記載、及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4. むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例1の記載、引用技術、引用例2の記載、及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-18 
結審通知日 2009-02-24 
審決日 2009-03-09 
出願番号 特願平8-311560
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 572- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大仲 雅人小牧 修  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 長島 和子
佐藤 宙子
発明の名称 インク噴射記録ヘッドおよびインク噴射記録装置  
代理人 渡辺 望稔  
代理人 三和 晴子  

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