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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
管理番号 1196200
審判番号 不服2006-20885  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-20 
確定日 2009-04-23 
事件の表示 特願2000- 85024号「車載用モータの制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月 2日出願公開、特開2001-270401号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続きの経緯

本件出願は、平成12年3月24日の出願であって、平成18年8月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月20日に本件審判請求がなされるとともに、同日に手続補正(前置補正)がなされ、当審合議体による平成20年7月15日付けの当審拒絶理由通知に応答して、同年9月18日に手続補正がなされたものである。


2 本願発明

本件出願の請求項1?3に係る発明は、平成20年9月18日にした手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「【請求項1】 バッテリを電源とし、イグニッションスイッチのオンにより車載用モータの動作を制御する制御回路部を備えて成る車載用モータの制御装置において、
前記車載用モータは3相直流ブラシレスモータから成り、
前記制御回路部を備えるとともに、
前記バッテリに直接接続され、3相ブリッジの上側の3個のスイッチング素子と下側の3個のスイッチング素子とのうち、前記上側の3個のスイッチング素子をオンする際に、その駆動電圧を嵩上げするチャージポンプを有し、前記車載用モータを駆動する3相ブリッジインバータと、
前記バッテリから前記3相ブリッジインバータに至る給電路と前記チャージポンプとの間を開閉して前記チャージポンプの動作を制御するスイッチ手段とを備え、
前記制御回路部は、
前記3相ブリッジインバータの制御を通して前記車載用モータの動作を制御する制御回路と、
前記バッテリから前記3相ブリッジインバータに至る給電路にスイッチング手段を備えたAPC回路を介して接続され、前記バッテリの出力電圧を安定化して前記制御回路の電源端子に供給するレギュレータと、
前記APC回路のスイッチング手段をオン、オフして前記バッテリと前記レギュレータとの間の給電路を開閉するとともに、前記チャージポンプの動作を制御するスイッチ手段をオン、オフして前記チャージポンプを動作、停止に制御する機能を有し、前記イグニッションスイッチを介して前記バッテリに接続され、前記イグニッションスイッチのオンにより、前記イグニッションスイッチを介した小電流の切換制御信号が供給されて閉成状態に切り換わり、前記APC回路および前記スイッチ手段をオンする開閉部とを有し、
前記制御回路は前記レギュレータからの給電により保持信号を前記開閉部に出力し、前記開閉部は前記保持信号の入力により閉状態を維持する自己保持機能を有することを特徴とする車載用モータの制御装置。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)


3 引用刊行物とその記載事項

(1)刊行物1の記載内容

(1-1)刊行物1に記載された事項

当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-227329号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに次の技術的事項が記載されている。

(ア)「【0002】
【従来の技術】一般に、自動車等の車輌においては、イグニッションスイッチに連動して開閉される電源リレーを介して各電気負荷へバッテリから電源を供給するものが多く、エンジンルーム内に上記電源リレーを設置することにより、車室内のイグニッションスイッチでは比較的小さい電流を開閉するようにし、バッテリから電源リレーを経て負荷までの配線長を短縮して配線長の増大による電圧降下や発熱を抑えるようにしている。」

(イ)「【0010】図2において、符号1は、燃料噴射制御や点火時期制御等の車輌制御を行なう電子制御装置(ECU)であり、このECU1は、マイクロコンピュータ2を中核として、入力インターフェース(I/F)3、アナログ・デジタルコンバータ(ADC)4、出力インターフェース(O/F)5、駆動回路6、及び、定電圧回路7等から構成されている。」

(ウ)「【0013】上記マイクロコンピュータ2は、・・・(中略)・・・エンジン運転状態に基づいて、燃料噴射量、点火時期、アイドル回転数などの制御量を演算し、対応する信号を出力ポートから出力する。
【0014】上記O/F5は、負荷駆動能力の小さい上記マイクロコンピュータ2に対し、その出力ポートから出力される信号に基づいて上記駆動回路6への入力信号を生成処理する。上記駆動回路6は、NPN形パワートランジスタ群T1,…,Ti,…,Tn,TR、及び、PNP形パワートランジスタTSからなり、各パワートランジスタのベースが上記O/F5の出力端に接続されている。
【0015】上記NPN形パワートランジスタ群T1,…,Ti,…,Tn,TRは、各エミッタが接地され、各パワートランジスタT1,…,Ti,…,Tnのコレクタに、インジェクタ16、アイドルスピードコントロールバルブ(ISCV)17等の各アクチュエータが接続され・・・(中略)・・・ている。」

(エ)「【0016】また、上記PNP形パワートランジスタTSは、エミッタに、上記定電圧回路7からの定電圧VCが供給され、コレクタが、上記バッテリ15にイグニッションスイッチ14を介して接続される上記バッテリ15の正極に対して順方向のダイオード18と電源リレー19のリレーコイル19cとの接続点に接続され、上記マイクロコンピュータ2からの出力ポート値GSに応じ、上記イグニッションスイッチ14がOFFされた後もリレーコイル19cに電流を与えて電源リレー19をONしてECU1への電源を保持し、設定時間が経過したとき、リレーコイル19cに対する電流を遮断して電源リレー19をOFFさせ、ECU1への電源を自動的に遮断するセルフシャット機能を実現するようになっている。
【0017】一方、上記電源リレー19は、上記ECU1への電源供給用として使用されるリレー接点19aと、車載の各電気負荷への電源供給用として使用されるリレー接点19bとの2組の常開接点を有し、上記リレーコイル19cの他端が接地されている。
【0018】そして、一方のリレー接点19aを介して上記定電圧回路7が上記バッテリ15に接続され、上記バッテリ15から供給されるバッテリ電圧(例えば12V)が所定のレベルの定電圧VC(例えば5V)に安定化されて上記ECU1内の各部に供給される。さらに、他方のリレー接点19bを介して、上記インジェクタ16、ISCV17等の各アクチュエータの電源端子・・・(中略)・・・が上記バッテリ15に接続されている。」


(1-2)上記記載事項及び図面より刊行物1に記載されていることが明らかな事項

(a)上記記載事項(ア)及び(エ)の記載及び図2から、他方のリレー接点19bは上記バッテリ15に直接接続されるものであるといえ、一方のリレー接点19aはバッテリ15と定電圧回路7との間の電源を供給する配線を開閉するものであるといえる。そして、技術常識を参酌すれば、バッテリ15に接続されたイグニッションスイッチ14がオンになると、バッテリ15からイグニッションスイッチ14、ダイオード18を介して電源リレー19のリレーコイル19cに比較的小さい電流が与えられ、常開接点である一方のリレー接点19a及び他方のリレー接点19bが閉成状態となることは明かであるので、電源リレー19は、バッテリ15に接続されたイグニッションスイッチ14のオンにより、比較的小さい電流が与えられ、閉成状態に切り換わるものであるといえる。

(b)上記記載事項(イ)の記載、上記記載事項(エ)の「上記PNP形パワートランジスタTSは、エミッタに、上記定電圧回路7からの定電圧VCが供給され、コレクタが、上記バッテリ15にイグニッションスイッチ14を介して接続される上記バッテリ15の正極に対して順方向のダイオード18と電源リレー19のリレーコイル19cとの接続点に接続され、上記マイクロコンピュータ2からの出力ポート値GSに応じ、上記イグニッションスイッチ14がOFFされた後もリレーコイル19cに電流を与えて電源リレー19をONしてECU1への電源を保持し、設定時間が経過したとき、リレーコイル19cに対する電流を遮断して電源リレー19をOFFさせ、ECU1への電源を自動的に遮断するセルフシャット機能を実現するようになっている。」という記載及び図2から、電子制御装置(ECU)1及びリレー19は、負荷の動作を制御する制御回路部の一部を構成するものと認められる。


(1-3)引用発明

すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。

「バッテリ15を電源とし、イグニッションスイッチ14のオンにより車載の電気負荷の動作を制御する制御回路部を備えて成る車載の電気負荷の制御装置において、
前記制御回路部を備えるとともに、
前記バッテリ15に他方のリレー接点19bを介して接続された車載の電気負荷を駆動する、NPN形パワートランジスタ群T1,…,Ti,…,Tn,TRと、
前記制御回路部は、
前記NPN形パワートランジスタ群T1,…,Ti,…,Tn,TRの制御を通して前記車載の電気負荷の動作を制御する、入力インターフェース(I/F)3、アナログ・デジタルコンバータ(ADC)4、出力インターフェース(O/F)5及びPNP形パワートランジスタTSと、
前記バッテリ15から車載の電気負荷及びNPN形パワートランジスタ群T1,…,Ti,…,Tn,TRに至る導電路に一方のリレー接点19aを介して接続され、前記バッテリ15の出力電圧を安定化して前記入力インターフェース(I/F)3、アナログ・デジタルコンバータ(ADC)4、出力インターフェース(O/F)5及びPNP形パワートランジスタTSに供給する定電圧回路7と、
前記一方のリレー接点19aをオン、オフして前記バッテリ15と前記定電圧回路7との間の給電路を開閉するとともに、前記イグニッションスイッチ14を介して前記バッテリ15に接続され、前記イグニッションスイッチ14のオンにより、前記イグニッションスイッチ14を介した小電流が供給されて、前記一方のリレー接点19aをオンする電源リレー19とを有し、
前記入力インターフェース(I/F)3、アナログ・デジタルコンバータ(ADC)4、出力インターフェース(O/F)5及びPNP形パワートランジスタTSは前記定電圧回路7からの給電により保持電流を前記電源リレー19に出力し、前記電源リレー19は前記保持電流の入力により閉状態を維持する自己保持機能を有する車載の電気負荷の制御装置。」


(2)刊行物2の記載内容

(2-1)刊行物2に記載された事項

当審の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-163889号公報(以下「刊行物2」という。)には、次の技術的事項が記載されている。

(オ)「【0011】
【実施例】
-第1実施例-
図1に、本発明の一実施例を搭載した車両の前後輪操舵系の構成を示す。・・・(中略)・・・
【0012】後輪15,16は、後輪操舵機構11により操舵される。後輪操舵機構11は、ブラシレスモータ12の動力で動作する。・・・(中略)・・・
【0014】モータ12は、電子制御装置9からの信号により制御される。電子制御装置9は、第1前輪舵角センサ17,第2前輪舵角センサ20,磁極センサ18,後輪操舵センサ21,第1車速センサ22,第2車速センサ23,ヨーレートセンサ24の各センサ出力を受け、前輪の舵角および車両の走行状態に対応した後輪の所要舵角を算出し、該所要舵角を実現するようにモータ12を駆動する。」

(カ)「【0022】図7に、図1に示す電子制御装置9の構成を示す。電子制御装置9は車載のバッテリー59に接続されている。バッテリー59は、ヒューズおよびリレー77を介して電源端子PIGAに接続され、リレー77はリレー駆動回路79により開閉される。また、バッテリー59は、ヒューズおよびイグニッションスイッチIGSWを介して電源端子IGAに接続されている。電源端子IGAは定電圧レギュレータ55に接続されており、定電圧レギュレータ55は定電圧Vcc1を出力する。
【0023】電子制御装置9は、主制御手段であるマイクロプロセッサ1を備える。マイクロプロセッサ1は、定電圧Vcc1により作動する。」

(キ)「【0024】モータ12の各相の端子U,V,Wは電子制御装置9のモータドライバ5に接続されている。
【0025】ここで、モータドライバ5の詳細を図8を参照して説明する。モータドライバ5は、相切換信号LA11,LB11,LC11,LA21,LB21,LC21からなる相切換信号群L1とパルス幅変調(Pulse Width Modulation)信号PWM1により制御される。ハイサイド側を制御するための相切換信号LA11,LB11,LC11は、異常電流制限回路88を介してゲート駆動回路G11に入力される。異常電流制限回路88は、通常は入力信号をそのまま出力側から出力する。ゲート駆動回路G11はパワーMOSFETであるトランジスタTA11,TB11,TC11をオン/オフ駆動する。また、ゲート駆動回路G11は昇圧も行い、トランジスタTA11,TB11,TC11のゲートに昇圧した電圧を与える。同時に、ゲート駆動回路G11は昇圧電圧を昇圧電圧値RV1として出力する。トランジスタTA11,TB11,TC11は、電源端子PIGAからパターンヒューズPH,チョークコイルTCおよび抵抗Rsを介して得られる高電圧を、それぞれモータ12の3相の各端子U,V,Wに供給可能に配置されている。尚、トランジスタTA11,TB11,TC11,TA21,TB21,TC21のゲートとソース間には、ツェナーダイオードが挿入されており、パワーMOSFETの保護を行っている。これは、電源電圧が何らかの原因で20Vを越えると、パワーMOSFETのゲート/ソース間電圧が20Vを越え、パワーMOSFETが破壊されるので、これを防ぐためである。尚、この場合には、リレー77のオフとトランジスタの駆動信号をオフする処理も行い、回路の保護を行っている。
【0026】一方、ローサイド側を制御するための相切換信号LA21,LB21,LC21は、パルス幅変調信号合成回路89および異常電流制限回路88を介してゲート駆動回路G21に接続されている。パルス幅変調信号合成回路89は相切換信号LA21,LB21,LC21をそれぞれパルス幅変調信号PWM1と合成する。ゲート駆動回路G21は、MOSFETであるトランジスタTA21,TB21,TC21をオン/オフ駆動する。これらのトランジスタTA21,TB21,TC21は、モータ12の3相の各端子U,V,Wとバッテリー59のグランド間を接続可能に配置されている。」


(2-2)上記記載事項及び図面より刊行物2に記載されていることが明らかな事項

(a)上記記載事項(キ)の記載、図8から、モータドライバ5は、3相ブリッジインバータを構成するものである。

(b)上記記載事項(キ)の「ここで、モータドライバ5の詳細を図8を参照して説明する。モータドライバ5は、相切換信号LA11,LB11,LC11,LA21,LB21,LC21からなる相切換信号群L1とパルス幅変調(Pulse Width Modulation)信号PWM1により制御される。ハイサイド側を制御するための相切換信号LA11,LB11,LC11は、異常電流制限回路88を介してゲート駆動回路G11に入力される。異常電流制限回路88は、通常は入力信号をそのまま出力側から出力する。ゲート駆動回路G11はパワーMOSFETであるトランジスタTA11,TB11,TC11をオン/オフ駆動する。また、ゲート駆動回路G11は昇圧も行い、トランジスタTA11,TB11,TC11のゲートに昇圧した電圧を与える。」及び「一方、ローサイド側を制御するための相切換信号LA21,LB21,LC21は、パルス幅変調信号合成回路89および異常電流制限回路88を介してゲート駆動回路G21に接続されている。パルス幅変調信号合成回路89は相切換信号LA21,LB21,LC21をそれぞれパルス幅変調信号PWM1と合成する。ゲート駆動回路G21は、MOSFETであるトランジスタTA21,TB21,TC21をオン/オフ駆動する。」の記載より、「3相ブリッジの上側の3個のスイッチング素子と下側の3個のスイッチング素子とのうち、前記上側の3個のスイッチング素子をオンする際に、その駆動電圧を嵩上げするゲート駆動回路G11を有」することが明らかである。

(c)上記記載事項(オ)に「バッテリー59は、ヒューズおよびリレー77を介して電源端子PIGAに接続され、リレー77はリレー駆動回路79により開閉される。また、バッテリー59は、ヒューズおよびイグニッションスイッチIGSWを介して電源端子IGAに接続されている。電源端子IGAは定電圧レギュレータ55に接続されており、定電圧レギュレータ55は定電圧Vcc1を出力する。」の記載されていること及び、図8に、ゲート駆動回路G11がIGAと接続されている態様が図示されていることにより、「バッテリ59からモータドライバに至る給電路と前記ゲート駆動回路G11の間を開閉して前記ゲート駆動回路G11の動作を制御するイグニッションスイッチIGSWを備え」ることは明らかである。


(2-3)刊行物2に記載された事項のまとめ

すると、刊行物2には、次の技術的事項が記載されているということができる。

「バッテリ59を電源とし、イグニッションスイッチIGSWのオンによりモータ12の動作を制御する制御回路部を備えて成るモータ12の制御装置において、
前記モータ12はブラシレスモータから成り、
前記制御回路部を備えるとともに、
前記バッテリ59に接続され、3相ブリッジの上側の3個のスイッチング素子と下側の3個のスイッチング素子とのうち、前記上側の3個のスイッチング素子をオンする際に、その駆動電圧を嵩上げするゲート駆動回路G11を有し、前記モータ12を駆動する3相ブリッジインバータと、
前記バッテリ59から前記3相ブリッジインバータに至る給電路と前記ゲート駆動回路G11の間を開閉して前記ゲート駆動回路G11の動作を制御するイグニッションスイッチIGSWとを備え、
前記制御回路部は、
前記3相ブリッジインバータの制御を通して前記モータ12の動作を制御する制御回路有する。」


4 本願発明と引用発明との対比

(1)本願発明と引用発明との対応関係

引用発明の「バッテリ15」、「イグニッションスイッチ14」、「入力インターフェース(I/F)3、アナログ・デジタルコンバータ(ADC)4、出力インターフェース(O/F)5及びPNP形パワートランジスタTS」及び「定電圧回路7」は、それぞれ本願発明の「バッテリ」、「イグニッションスイッチ」、「制御回路」及び「レギュレータ」に相当する。
引用発明の「車載の電気負荷」と、本願発明の「車載用モータ」とは、「車載の電気負荷」である限りにおいて共通する。
引用発明の「小電流が供給されて閉成状態に切り換わる」との事項と、本願発明の「小電流の切換制御信号が供給されて閉成状態に切り換わる」との事項とは、「小電流が供給されて閉成状態に切り換わる」との事項の限りにおいて共通する。
また、引用発明の「電源リレー19」は、一方のリレー接点19a、他方のリレー接点19b及びリレーコイル19cから構成され、全体として開閉部を構成しているので、本願発明の開閉部に相当する。
さらに、引用発明の「保持電流を前記電源リレー19に出力し、」との事項と、本願発明の「保持信号を前記開閉部に出力し、」との事項は、前記したように「電源リレー19」が本願発明の開閉部に相当するものであるから「保持電流を開閉部に出力」との限りにおいて共通している。

すると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。


(2)両発明の一致点

「バッテリを電源とし、イグニッションスイッチのオンにより車載の電気負荷の動作を制御する制御回路部を備えて成る車載の電気負荷の制御装置において、
前記制御回路部を備えるとともに、
前記制御回路部は、
前記車載の電気負荷の動作を制御する、制御回路と、
前記バッテリから前記バッテリの出力電圧を安定化して前記制御回路に供給するレギュレータと、
前記バッテリと前記レギュレータとの間の給電路を開閉するとともに、前記イグニッションスイッチを介して前記バッテリに接続され、前記イグニッションスイッチのオンにより、前記イグニッションスイッチを介した小電流が供給されて閉成状態に切り換わる開閉部とを有し、
前記制御回路は前記レギュレータからの給電により保持電流を前記開閉部に出力し、前記開閉部は前記保持電流の入力により閉状態を維持する自己保持機能を有する車載の電気負荷の制御装置。」


(3)両発明の相違点

<相違点>
本願発明は、車載の電気負荷が、「車載用モータ」であって「車載用モータは3相直流ブラシレスモータから成り、」そして、当該車載用モータの制御装置に関し、「前記バッテリに直接接続され、3相ブリッジの上側の3個のスイッチング素子と下側の3個のスイッチング素子とのうち、前記上側の3個のスイッチング素子をオンする際に、その駆動電圧を嵩上げするチャージポンプを有し、前記車載用モータを駆動する3相ブリッジインバータと、前記バッテリから前記3相ブリッジインバータに至る給電路と前記チャージポンプとの間を開閉して前記チャージポンプの動作を制御するスイッチ手段とを備え、前記制御回路部は、前記3相ブリッジインバータの制御を通して前記車載用モータの動作を制御する制御回路と、前記バッテリから前記3相ブリッジインバータに至る給電路にスイッチング手段を備えたAPC回路を介して接続され、前記バッテリの出力電圧を安定化して前記制御回路の電源端子に供給するレギュレータと、前記APC回路のスイッチング手段をオン、オフして前記バッテリと前記レギュレータとの間の給電路を開閉するとともに、前記チャージポンプの動作を制御するスイッチ手段をオン、オフして前記チャージポンプを動作、停止に制御する機能を有し、前記イグニッションスイッチを介して前記バッテリに接続され、前記イグニッションスイッチのオンにより、前記イグニッションスイッチを介した小電流の切換制御信号が供給されて閉成状態に切り換わり、前記APC回路および前記スイッチ手段をオンする開閉部とを有し」を有するのに対して、引用発明は、車載の電気負荷を「車載用モータ」とは特定しておらず、車載の電気負荷の制御装置に関し、「バッテリ15に他方のリレー接点19bを介して接続された車載の電気負荷を駆動する、NPN形パワートランジスタ群T1,…,Ti,…,Tn,TR」を備えるものであるから、電気負荷を駆動するNPN形パワートランジスタ群T1,…,Ti,…,Tn,TRがバッテリに直接接続されておらず、そして、モータを制御する3相ブリッジインバータ、チャージポンプ及びチャージポンプの動作を制御するスイッチ手段については規定されておらず、上記本願発明の車載用モータの制御装置の構成を備えていない点。


5 容易推考性の検討

(1)上記<相違点>に関して

引用発明の車載の電気負荷としては、上記記載事項(ウ)に記載されているとおり、インジェクタ16、アイドルスピードコントロールバルブ(ISCV)17が例示されているが、上記記載事項(ア)の内容をからも明らかなとおり、引用発明は車載の電気負荷として、これら例示されたものに特有の技術課題に基づいて構築されているものではない。また、バッテリを電源とし、イグニッションスイッチのオンにより動作を制御するものとして、ブラシレスモータは周知である(以下「周知技術1」という。)。
よって、車載の電気負荷の制御装置に係る引用発明と、ブラシレスモータからなる車載用モータの制御装置に係る刊行物2に記載の技術を組み合わせることは、当業者にとって容易に想到し得る程度の事項にすぎない。

また、刊行物2に記載されたような、3相ブリッジインバータで駆動されるブラシレスモータを3相直流ブラシレスモータと表現することも、当業者であれば適宜なし得ることである。

また、バッテリを電源とし、イグニッションスイッチのオンにより車載用モータの動作を制御する制御回路部を備えて成る車載用モータの制御装置において、車載用モータを駆動する3相ブリッジインバータをバッテリに直接接続することは周知の技術であり(例えば、特開平8-228496号公報参照。以下「周知技術2」という。)、引用発明に刊行物2に記載の技術を適用する際、当該周知技術を考慮することは当業者であれば適宜なし得ることである。

そして、電圧を嵩上げする回路としてチャージポンプを用いることは周知であるので(以下「周知技術3」という。)、刊行物2に記載された電圧を嵩上げするゲート駆動回路G11においてチャージポンプを備えることとし、電圧を嵩上げする程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。

さらに、小電流を供給することによって閉成状体に切り替わる回路としては、当業者であれば公知のものより適宜選択し得る。すなわち、引用発明の「電源リレー19」に換えて「スイッチング手段を備えたAPC回路」とすることは、当業者であれば適宜なし得る程度の事項にすぎない。そして、本願発明のように小電流の切換制御信号が供給されて閉成状態に切り替わることとすることも、当業者であれば適宜なし得ることである。
なお、本願発明の明細書及び図面全体を参酌しても、「スイッチング手段を備えたAPC回路」がいかなる構成のものなのか、及びAPC回路を選択した根拠について開示がなされているわけでものない。

以上により、引用発明と、刊行物2に記載の技術を、上記周知技術1、2及び3を鑑みながら組み合わせ、上記相違点で示した本願発明のような構成とすることは当業者であれば容易になし得る程度の事項にすぎない。


(2)効果について

本願発明の作用効果は、引用発明、刊行物2に記載された事項並びに周知技術1、2及び3から、当業者であれば予測できた範囲のものにすぎない。


(3)総合判断

本願発明は、引用発明、刊行物2に記載された事項並びに周知技術1、2及び3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6 むすび

以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-18 
結審通知日 2009-02-24 
審決日 2009-03-10 
出願番号 特願2000-85024(P2000-85024)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 貴雄  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 中川 真一
金丸 治之
発明の名称 車載用モータの制御装置  
代理人 梁瀬 右司  
代理人 梁瀬 右司  

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