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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 B22F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22F
管理番号 1196218
審判番号 不服2007-11086  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-18 
確定日 2009-04-23 
事件の表示 平成11年特許願第316296号「粉末成形用金型およびそれを用いた圧粉成形方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年5月15日出願公開、特開2001-131606〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年11月8日の出願であって、平成19年3月16日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月18日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年5月16日付けで手続補正がされたものである。

2.平成19年5月16日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年5月16日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)手続補正の内容
平成19年5月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を、次のとおりに補正することを含むものである。

「【請求項1】内孔を有するダイスと、上下のパンチと、コアロッドから構成され、筒状の圧粉体を成形する粉末成形用金型において、
前記コアロッドが、先端方向に縮小する1/5000?1/1000のテーパを有していることを特徴とする粉末成形用金型。」

(2)当審の判断
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下、「新請求項1」という。)に記載された発明は、上記(1)のとおり「金型」に係るものであるところ、本件補正前の特許請求の範囲に記載された発明は、次のとおり、「コアロッド」及び「粉末成形方法」に係るものであって、「金型」に係る発明は存在しない。

「【請求項1】先端方向に縮小する1/5000?1/1000のテーパを有していることを特徴とする粉末成形用コアロッド。
【請求項2】TiC,TiN,Al_(2)O_(3),TiCN,HfN,CrNおよびDLCのうち、少なくとも1種以上の単層もしくは複層のコーティング層を有する請求項1に記載の粉末成形用コアロッド。
【請求項3】コアロッドと、内孔を有するダイスと、上下パンチを用いる粉末冶金法による粉末成形において、請求項1または2に記載のコアロッドを用いることを特徴とする粉末成形方法。
【請求項4】請求項3に記載の粉末成形方法において、前記コアロッドを浮動コアとして用いることを特徴とする粉末成形方法。
【請求項5】請求項3または4に記載の粉末成形方法において、前記ダイスの内孔が圧粉体抜き出し側へ拡大する1/5000?1/1000のテーパを有していることを特徴とする粉末成形方法。
【請求項6】請求項3または5の何れかに記載の粉末成形方法において、前記ダイスの内孔表面に押型潤滑剤の潤滑被膜を形成するとともに、原料粉末に質量比で0.3%以下の粉末潤滑剤を添加しておくことを特徴とする粉末成形方法。」

してみると、新請求項1は、本件補正前のいずれの請求項にも対応しないから、本件補正は、発明の対象を変更するものであり、明らかに「請求項の削除」、「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」または「明りょうでない記載の釈明」のいずれかを目的とするものともいえない。

(3)むすび
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明についての審決
(1)本願発明
上記「2.」で示したように、平成19年5月16日付け手続補正は却下されたから、本願請求項1に係る発明は、平成18年10月18日付け手続補正書により補正された原査定時の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものといえる。そうすると、請求項1に係る発明は、次のとおりの発明(以下「本願発明」という。)である。

「先端方向に縮小する1/5000?1/1000のテーパを有していることを特徴とする粉末成形用コアロッド。」

(2)原査定の理由の概要
一方、原査定の理由は、「本願の請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。



1.特開平5-320705号公報
2.特開昭57-82007号公報
3.特開平11-140505号公報

(3)刊行物とその主な記載事項
原査定の理由で引用された刊行物1には、次の事項が記載されている。

(3-1)刊行物1:特開平5-320705号公報
(1a)「【請求項1】粉末成形ダイスの内孔が、成形体抜き出し側へ拡大する1/5000?1/1000のテーパを有していることを特徴とする粉末成形ダイス。」

(1b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】成形体の密度は成形圧力により決定されるが、高強度を必要とする機械要素では高い密度が要求されるものが多く、成形圧力が高いのに対応して金型強度への配慮も必要である。また、急冷凝固法により作られた磁性合金粉末の成形のように、硬質の粉末を高い密度に成形する場合は、更に粉末成形が困難である。また、粉末成形を繰り返すうちに、粉末圧縮される部位のダイス内孔が少しずつ摩耗し、ダイス内孔がいわゆる中膨らみ状態となり、圧粉体の抜き出し抵抗が増加し、圧粉体に傷が付いたり割れを生じる虞が内在している。更に、アルミ粉末のように、金型に齧り付き易い材料の粉末成形では、高密度のものを奇麗な外観でばらつきを少なく製作するのに困難を伴う。
【0004】この発明は、このような従来の状況を基に、高い密度の圧粉体をより低い圧力で抜き出し性良く成形することを目的としてなされた。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の粉末成形ダイスにあっては、粉末成形ダイスの内孔が、成形体抜き出し側の寸法が大である1/5000?1/1000のテーパを有していることを特徴とする構成にしたことにある。この場合、粉末成形ダイス内孔の端部にテーパが無いものも含まれる。」

(4)当審の判断
(4-1)引用刊行物に記載の発明
上記刊行物1の(1a)に、「粉末成形ダイスの内孔が、成形体抜き出し側へ拡大する1/5000?1/1000のテーパを有していることを特徴とする粉末成形ダイス。」と記載されているから、刊行物1には、粉末成形ダイスの内孔が、成形体抜き出し側へ拡大する1/5000?1/1000のテーパを有している粉末成形ダイスが記載されているといえる。
してみると、刊行物1には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「粉末成形ダイスの内孔が、成形体抜き出し側へ拡大する1/5000?1/1000のテーパを有している粉末成形ダイス。」

(4-2)本願発明と引用発明との対比
本願発明に係る粉末成形用コアロッドは、対象圧粉体が筒状のものであるときに、圧粉体内径を規定する粉末成形用の工具であり、圧粉体外径に対応した内径を持つダイスと上下のパンチとともに粉末成形用金型を構成するものである(本願明細書の段落【0002】参照)。そして、本願明細書の段落【0015】の「抜き出し(先端方向)方向に縮小するテーパ」という記載によれば、圧粉体の抜き出し方向に粉末成形用のコアロッドは縮小するテーパを有しているから、圧粉体は抜き出し方向にその断面積が拡大するためのテーパ形状を有するものといえる。他方引用発明に係る粉末成形ダイスは粉末成形用コアロッドと同様粉末成形用金型を構成する粉末成形用の工具ということができ、またその内孔が成形体抜き出し側、すなわち圧粉体の抜き出し側へ拡大するテーパを有するものであるから、圧粉体はその抜き出し方向にその断面積を拡大するためのテーパ形状を有するものであるといえる。
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、

「(圧粉体の抜き出し方向に圧粉体の断面積が拡大するようテーパを設けるための、)1/5000?1/1000のテーパを有している粉末成形用の工具」という点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
粉末成形用の工具が、本願発明は、「先端方向に縮小する」テーパを有する「粉末成形用コアロッド」であるのに対して、引用発明は、「粉末成形ダイスの内孔が、成形体抜き出し側へ拡大する」テーパを有する「粉末成形ダイス」である点

(4-3)相違点についての判断
次に、この相違点について検討する。
引用発明において、「粉末成形ダイス」のテーパを「粉末成形ダイスの内孔が、成形体抜き出し側へ拡大」するようにしたのは、(1b)に「高い密度の圧粉体をより低い圧力で抜き出し性良く成形することを目的としてなされた。」と記載されているように、圧粉体をより低い圧力で抜き出し性良く成形するためといえる。
そこで、圧粉体をより低い圧力で抜き出し性良く成形するための条件を、成形された圧粉体のテーパの向きの観点からみると、引用発明の、テーパを「粉末成形ダイスの内孔が、成形体抜き出し側へ拡大」するようにした「粉末成形ダイス」を用いて成形した圧粉体は、圧粉体の抜き出し側向きにその断面積が漸増するものであり、一方、本願発明の「先端方向に縮小する」テーパを形成した「粉末成形用コアロッド」を用いて成形した圧粉体も、圧粉体の抜き出し側向きにその断面積が漸増するものである。そうすると、本願発明の「先端方向に縮小する」テーパも、引用発明の「粉末成形ダイスの内孔が、成形体抜き出し側へ拡大」するようにした、テーパも、ともに形成されるテーパの向きは、抜き出し側向きに圧粉体の断面積が漸増する向きであるという点で共通するものである。そして、形成されるテーパの向きが、抜き出し側向きに圧粉体の断面積が漸増する向きであると、圧粉体をより低い圧力で抜き出し性良く成形することができることは、当業者が容易に予測することができることといえる。
してみると、圧粉体をより低い圧力で抜き出し性良く成形するために、粉末成形用の工具としての「コアロッド」に対して、「コアロッド」を用いて成形された圧粉体の抜き出し側向きの断面積が漸増する向きである先端方向に、縮小するテーパを形成することは、当業者が容易に想到することといえる。
なお、圧粉体をより低い圧力で抜き出し性良く成形するために、「粉末成形用コアロッド」に対して、先端方向に縮小するテーパを形成することは、特開平9-164500号公報、特開平10-193193号公報等に示されるように、本出願前当業者に周知の事項といえる。

(4-4)小括
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その他の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-25 
結審通知日 2009-02-26 
審決日 2009-03-11 
出願番号 特願平11-316296
審決分類 P 1 8・ 56- Z (B22F)
P 1 8・ 121- Z (B22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 本多 仁佐藤 陽一  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 平塚 義三
守安 太郎
発明の名称 粉末成形用金型およびそれを用いた圧粉成形方法  
代理人 山本 秀樹  

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