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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01H
管理番号 1196235
審判番号 不服2007-22867  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-20 
確定日 2009-04-23 
事件の表示 特願2001- 87235「スイッチ操作用のツマミの保持構造およびオーディオ機器」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月 4日出願公開、特開2002-289071〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成13年3月26日の出願であって、原審において、平成18年10月20日付け拒絶理由通知に対して同年12月25日に手続補正がなされたが、平成19年6月29日付けで拒絶査定がなされ、これを不服として、同年8月20日に本件審判請求がなされるとともに、同年9月11日に手続補正がなされたものである。

【2】平成19年9月11日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年9月11日の手続補正(以下「本件手続補正」という。)を却下する。

[補正却下の決定の理由]
1.手続補正後の請求項1に係る発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。
「パネル板の内側に配置され、光源からの光を所定部位へ導く樹脂製の導光板との間で保持される保持部を備えたスイッチ操作用のツマミの保持構造において、
上記スイッチ操作用のツマミは、上記導光板に当接する当接部を備えた上記保持部と、上記パネル板の所定の面から操作可能な操作用部位とを備え、上記当接部を上記導光板の当接部位に平面同士で当接させた状態で、上記保持部が上記パネル板と上記導光板との間に保持されるように構成され、
上記導光板は、上記保持部との当接部位のみを他の部位よりも厚み方向において薄肉構造としたことを特徴とするスイッチ操作用のツマミの保持構造。」
(以下「本願補正発明」という。)

上記補正は、補正前の請求項1に係る発明の「上記保持部との当接部位もしくは当接部位を含むその周辺部位」を「上記保持部との当接部位のみ」に限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、上記の本願補正発明が、同法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項に規定する独立特許要件を備えているかどうかについて、以下に検討する。

2.引用例とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平9-306290号公報(以下「引用例」という。)には、「電子機器の操作釦取付構造」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(イ)「【0002】
【従来の技術】この種の操作釦の取付構造としては、従来、図5に示すような構造のものが広く採用されている。同図において、電子機器の前面化粧板(ノーズ)10に取り付けられる操作釦11には、この前面化粧板10の開口10aから前方へ突出して押圧操作される操作ノブ11aや、前面化粧板10の裏側と導光体12との間に移動不能に挟持される固定部11bや、この固定部11bと操作ノブ11aの図示上端とを連結するヒンジ部11cや、操作ノブ11aの図示下端部の裏側に形成されてスイッチ素子13のステム13aと対向する駆動部11d等が設けられており、操作者の手指等で押し込まれた操作ノブ11aを、ヒンジ部11cの撓みを利用して、同図の反時計回りの向きに若干量回転移動させることができる。したがって、操作者が操作釦11の操作ノブ11aを所定量押し込めば、該操作ノブ11aと一体的に回転移動する駆動部11dがスイッチ素子13のステム13aを所定ストローク押し込むことになって所望のスイッチングを行わせることができ、また、操作ノブ11aに対するかかる押圧操作力を除去すれば、ヒンジ部11cから撓みの反力を受ける操作ノブ11aが逆向きに回転移動するので、操作釦11を初期位置まで自動復帰させることができる。」

(ロ)「【0009】
【実施例】実施例について図面を参照して説明すると、図1は本実施例に係る操作釦の取付構造を示す説明図、図2は該操作釦の側面図、図3は該操作釦の正面図、図4は該操作釦の平面図である。
【0010】これらの図において、符号1で総括的に示す操作釦には、押圧操作される操作ノブ1aの一端部に、幅方向両端に位置する略C字形の支点部1bと、幅方向中央に位置して後方へ延出形成された弾性片1cとが設けられている。また、操作ノブ1aの他端部の幅方向中央には、円柱形状の駆動部1dが設けられている。そして、この操作釦1を車載用音響機器の前面化粧板(ノーズ)2に取り付ける際には、図1に示すように、前面化粧板2の後方からその開口2a内へ操作ノブ1aを挿入して前方へ突出させた後、この前面化粧板2の裏側にアクリル等の透光性樹脂からなる導光体3を組み付けることにより、操作釦1の前記支点部1bを、前面化粧板2の裏側で開口2aの近傍に庇状に突設されている支持突起2bと該導光体3との間に挟み込むととともに、前記弾性片1cの先端部を、前面化粧板2の裏側の適宜個所に突設されている補強壁2cに当接させる。このようにすると、操作釦1の支点部1bを前面化粧板2の支持突起2bに対して回動可能に係合させることができ、且つ、該支点部1bを支点とする図1の反時計回りの向きへの弾性片1cの回転移動を、前面化粧板2の補強壁2cによって位置規制することができる。
【0011】こうして操作釦1や導光体3を取着した前面化粧板2は、スイッチ素子4等の各種電子部品や光源(図示せず)が配設されている回路基板5と組み合わされて、操作釦1の前記駆動部1dを該スイッチ素子4のステム4aに当接させるとともに、導光体3に該光源からの光が入射されるようにする。…また、この操作釦1は照光式で、操作ノブ1a中の表示部1eが光を透過させる無塗装領域となっているので、この操作ノブ1aに導光体3からの光を照射することにより該表示部1eを発光させることができる。」

(ハ)「【0014】上述したように本実施例に係る操作釦1は、操作ノブ1aの一端部に支点部1bと弾性片1cとを設け、この弾性片1cの撓みを利用して操作時に必要なヒンジ機能を得るというものであるが、該支点部1bを前面化粧板2の開口2aの近傍に配置させることができ、且つ該弾性片1cも開口2aの近傍から後方へと向かう領域に配置させることができるため、開口2aの周囲において、該開口2aから大きく離れた個所を操作釦1の取付スペースとして利用する必要がなくなっている。それゆえ、車載用音響機器の各種操作釦として、このような取付構造の操作釦1を採用することにより、前面化粧板2の裏面に沿った面内でのスペースファクタを大幅に向上させることができて、製品の小型化が促進しやすくなるとともに、設計自由度の制約も少なくなる。」

(ニ)実施例として示された図1には、導光体3は、支点部1bと当接する部位を含む周辺部位の厚みを、光を照射する操作ノブ1a等に対応する他の部位よりも薄肉構造としていることが示されている。

(ホ)従来技術として示された図5には、前面化粧板10の裏側と導光体12との間に移動不能に挟持される操作釦11の固定部11bと導光体12とは、互いに平面同士で当接されている状態が示されている。

<引用発明>
上記記載事項から、引用例には、次の発明が開示されていると認めることができる。
「光源からの光を操作ノブ1aに照射するように導く透光性樹脂からなる導光体3とともに、前面化粧板2の裏側に配置される支点部1b、弾性片1cを備えたスイッチ素子4を操作する操作釦1の取付構造において、操作釦1は、略C字形の上記支点部1bと幅方向中央に位置して後方へ延出形成された弾性片1c及び上記操作ノブ1aとを備え、上記支点部1bは前面化粧板2の裏側で突設されている支持突起2bと導光体3との間に挟み込まれ、上記弾性片1cは先端部を前面化粧板2の裏側の適宜個所に突設されている補強壁2cに当接されて保持され、導光体3は、支点部1bと当接する部位を含む周辺部位の厚みを、光を照射する操作ノブ1a等に対応する他の部位よりも薄肉構造としている操作釦取付構造。」
(以下「引用発明」という。)

3.本願補正発明と引用発明の対比・判断
(1)本願補正発明と上記引用発明とを対比すると、引用発明における「前面化粧板2」は本願補正発明の「パネル板」に相当し、以下同様に「透光性樹脂からなる導光体3」は「樹脂製の導光板」に、「操作釦1」は「ツマミ」に、「操作ノブ1a」は「操作用部位」に相当する。
そして、引用発明における前面化粧板2の「裏側」とは、本願補正発明におけるパネル板の「内側」に相当することは、上記記載事項(ロ)や図1から明らかであり、引用発明における操作釦1は、「スイッチ素子4を操作する」のであるから、「スイッチ操作用」であることも明らかである。
また、引用発明における操作釦1の支点部1bは、「前面化粧板2の裏側で突設されている支持突起2bと導光体3との間に挟み込まれ」、弾性片1cは、「先端部を前面化粧板2の裏側の適宜個所に突設されている補強壁2cに当接されて」保持されているのであるから、引用発明における支点部1bと弾性片1cとは、少なくとも、光源からの光を所定部位へ導く樹脂製の導光板とともに「パネル板の内側に配置され」、「導光板に当接する当接部を備えた」保持部を構成している点で本願補正発明と共通しており、引用発明における「取付構造」と本願補正発明における「保持構造」とは、取付け保持する構造を意味する限りにおいて実質的に変わりはない。
以上の検討から、本願補正発明と引用発明の一致点、相違点は以下のとおりである。

<一致点>
「光源からの光を所定部位へ導く樹脂製の導光板とともに、パネル板の内側に配置される保持部を備えたスイッチ操作用のツマミの保持構造において、
上記スイッチ操作用のツマミは、上記導光板に当接する当接部を備えた上記保持部と、上記パネル板の所定の面から操作可能な操作用部位とを備え、
上記導光板は、上記保持部との当接部位を他の部位よりも厚み方向において薄肉構造としたことを特徴とするスイッチ操作用のツマミの保持構造。」

<相違点>
A.本願補正発明の保持部は、「上記パネル板と上記導光板との間に保持されるように構成され、」、その当接部は、「導光板の当接部位に平面同士で当接させた状態」であるのに対して、引用発明の弾性片1cは必ずしも前面化粧板2と導光体3との間に保持されておらず、支点部1bの当接部は、略C字形であり導光体3の当接部位と平面同士で当接させた状態ではない点。

B.本願補正発明では、「保持部との当接部位のみ」を他の部位よりも厚み方向において薄肉構造としているのに対して、引用発明では、「支点部1bと当接する部位を含む周辺部位」の厚みを他の部位よりも薄肉構造としている点。

(2)そこで、上記各相違点について以下に検討する。
<相違点Aについて>
上記記載事項(イ)、(ホ)に示されるように、パネル板の内側に配置される保持部が、「パネル板と導光板との間に保持されるように構成され、」、その当接部が、「導光板の当接部位に平面同士で当接させた状態」であるスイッチ操作用ツマミは周知のものである[さらに、特開昭9-320394号公報:図5,実願平4-71398号(実開平6-28882号)のCD-ROM:図1,図3等参照]。
そうすると、引用発明に上記周知の技術を適用し、上記相違点Aに係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点Bについて>
組立の際の位置決めのために、一方の当接部が嵌合する凹所を他方に設けることは例示するまでもない慣用手段であるから、引用発明に上記周知の技術を適用するにあたって、導光体3に支点部1bの当接部が嵌合する凹所を設けて、上記相違点Bに係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願補正発明が奏する作用効果も、上記引用発明及び上記周知の技術並びに慣用手段から予測される程度以上のものでもない。

したがって、本願補正発明は、上記引用発明及び上記周知の技術並びに慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件手続補正による補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願発明について
1.本願発明
本件手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成18年12月25日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は次のとおりである。
「パネル板の内側に配置され、光源からの光を所定部位へ導く樹脂製の導光板との間で保持される保持部を備えたスイッチ操作用のツマミの保持構造において、
上記スイッチ操作用のツマミは、上記導光板に当接する当接部を備えた上記保持部と、上記パネル板の所定の面から操作可能な操作用部位とを備え、上記当接部を上記導光板の当接部位に平面同士で当接させた状態で、上記保持部が上記パネル板と上記導光板との間に保持されるように構成され、
上記導光板は、上記保持部との当接部位もしくは当接部位を含むその周辺部位が、他の部位よりも厚み方向において薄肉構造とされたことを特徴とするスイッチ操作用ツマミの保持構造。」
(以下「本願発明」という。)

2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記【2】2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した本願補正発明から、その構成事項の一部である「上記保持部との当接部位のみ」に限定する構成を削除し、「上記保持部との当接部位もしくは当接部位を含むその周辺部位」とするものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、更に構成を限定している本願補正発明が、上記【2】3.に記載したとおり、上記引用発明及び上記周知の技術並びに慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記引用発明及び上記周知の技術並びに慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、上記引用発明及び上記周知の技術並びに慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-19 
結審通知日 2009-02-24 
審決日 2009-03-10 
出願番号 特願2001-87235(P2001-87235)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01H)
P 1 8・ 121- Z (H01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森本 哲也井上 茂夫  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 金丸 治之
柴沼 雅樹
発明の名称 スイッチ操作用のツマミの保持構造およびオーディオ機器  
代理人 アイアット国際特許業務法人  

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