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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16H
管理番号 1196236
審判番号 不服2007-24274  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-04 
確定日 2009-04-23 
事件の表示 特願2000-347889「トルクコンバータ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月22日出願公開、特開2002-147563〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月15日の出願であって、平成19年7月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年9月4日に審判請求がなされ、その後、当審において平成20年11月25日付けで拒絶理由が通知されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、平成16年2月24日付け手続補正、平成16年3月1日付け手続補正、平成16年3月30日付け手続補正、平成18年10月26日付け手続補正、及び平成21年1月29日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものである。なお、平成19年6月21日付け手続補正(平成19年7月10日付け手続補正で補正されている)は、原審において平成19年7月30日付けで決定をもって却下されており、平成19年9月18日付け手続補正は、当審において平成20年11月25日付けで決定をもって却下されている。
「【請求項1】
エンジンのクランクシャフトの動力をトランスミッション側シャフトに伝達するトルクコンバータであって、
インペラー、タービン、及びステータからなるトーラス形状の流体作動部を備え、
前記ステータは、ステータキャリアとステータブレードとを有し、
前記タービンは、タービンシェルと、前記タービンシェルの外周側部分に設けられたタービンブレードとを有し、
前記インペラーは、インペラーハブと、前記インペラーハブに接続されたインペラーシェルと、前記インペラーシェルに取り付けられたインペラーブレードとを有し、
前記インペラーシェルは、内周側端部のトランスミッション側の側面が前記ステータキャリアの最も軸方向トランスミッション側に位置している部分よりもエンジン側に位置しており、
前記ステータの最も軸方向前記トランスミッション側に位置している部分は、前記インペラーハブの軸方向エンジン側端部よりも軸方向トランスミッション側に位置し、
前記タービンブレードの外周端と内周端とは軸方向において略同じ位置に位置している、トルクコンバータ。
【請求項2】
前記ステータは前記ステータキャリアの外周側にステータコアをさらに有し、
前記流体作動部の軸方向中心であるトーラスの軸方向中心位置は前記ステータコアの軸方向中心位置よりもエンジン側に位置している、請求項1に記載のトルクコンバータ。
【請求項3】
前記フロントカバーと前記タービンとの間に配置され両者を機械的に連結するための装置であり、捩じり振動を吸収・減衰するためのトーションスプリングを備えたロックアップ装置とを備え、
前記トーションスプリングの外周縁は前記流体作動部の内周縁より内周側に位置している、請求項1又は2に記載のトルクコンバータ。
【請求項4】
前記ステータキャリアは軸方向エンジン側の面が凹んだ形状になっており、
前記タービンシェルの内周側部分は少なくとも一部が前記凹んだ形状内に配置されている、請求項1から3のいずれかに記載のトルクコンバータ。
【請求項5】
前記タービンブレードの出口側の端縁は外周側から内周側にかけて軸方向トランスミッション側により近づくように傾斜している、請求項1から4のいずれかに記載のトルクコンバータ。」

3.本願発明1について
(1)本願発明1
本願発明1は上記のとおりである。
(2)引用例
(2-1)引用例1
特開平9-159004号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(あ)「【0028】図1は、本発明の第1実施形態に係るワンウェイクラッチ機構を備えたトルクコンバータTC1の概要を示す縦断面図である。
【0029】このトルクコンバータTC1は、流体流を生じさせるポンプインペラ12と、その流体流によって回転させられるタービンランナ14と、固定軸(具体的にはハブ部材)16と、ポンプインペラ12とタービンランナ14との間に配置され、流体流から回転力を受けるステータ18とを備える。
【0030】前記ポンプインペラ12は、図示せぬエンジンと連結されたフロントカバー20と一体化され、エンジンによって回転される。
【0031】前記タービンランナ14は、タービンハブ22を介してトルクコンバータTC1の出力軸24に取り付けられる。
【0032】前記固定軸16は、図示せぬ固定部材(トランスミッションハウジング)と一体化されている。
【0033】前記ステータ18は内周側にステータハブ18aを備えると共に、該ステータハブ18aの外周に羽18bを備える。
【0034】又、前記フロントカバー20内部には、フロントカバー20の内面に対向してロックアップピストン26が設けられ、フロントカバー20とロックアップピストン26の間にピストン室28が形成されている。」
(い)「【0061】図5は、本発明の第3実施形態に係わるワンウェイクラッチ機構を備えたトルクコンバータTC3の概要を示す縦断面図である。
【0062】第3実施形態は、第1実施形態におけるワンウェイクラッチ機構OW1を両側に摩擦材(ディスク)を貼ったタイプのワンウェイクラッチ機構OW3としたものである。
【0063】即ち、本実施形態のワンウェイクラッチ機構OW3は、ステータ218と一体化されたステータ側部材219と、これを挟んでその両側に設けられた2つのサイドクラッチ部材246と、更にその外側に設けられた固定軸側部材236とから構成されている。固定軸側部材236は固定軸216に一体的に固定されている。」
(う)「【0081】図8は、本発明の第4実施形態に係るワンウェイクラッチ機構を備えたトルクコンバータTC4の概要を示す縦断面図である。
【0082】本実施形態のワンウェイクラッチ機構OW4は、今までの実施形態と同様、ステータ側部材319、サイドクラッチ部材346、固定軸側部材336a、336bから主に構成される。ワンウェイクラッチ機構OW4の構成を説明するために図8のIX-IX線に沿った断面図を図9に示す。」
当業者の技術常識を参酌して引用例1の図8をみると、「タービンランナ314」は「タービンシェル」と「タービンシェルの外周側部分に設けられたタービンブレード」とを有するものと認められ、同じく、「ポンプインペラー312」は、「インペラーハブ」と、「インペラーハブに接続されたインペラーシェル」と、「インペラーシェルに取り付けられたインペラーブレード」とを有するものと認められ、また、図8に示された「ポンプインペラ312」、「タービンランナ314」、「ステータ318」からなる流体作動部は、「トーラス形状」をなしていると認められる。同じく、「ポンプインペラ312」の「インペラーシェル」の内周側端部のトランスミッション側の側面が「ステータハブ318a」及び「ステータ側部材319」の最も軸方向トランスミッション側に位置している部分よりもエンジン側に位置しており、「ステータ318」及び「ステータ側部材319」の最も軸方向トランスミッション側に位置している部分は、「ポンプインペラ312」の「インペラーハブ」の軸方向エンジン側端部よりも軸方向トランスミッション側に位置しているという事項を看取することができる。
以上の記載事項からみて、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「エンジンのクランクシャフトの動力をトランスミッション側シャフトに伝達するトルクコンバータTC4であって、
ポンプインペラー312、タービンランナ314、及びステータ318からなるトーラス形状の流体作動部を備え、
前記ステータ318は、ステータハブ318aと羽318bとを有し、ステータハブ318aはワンウェイクラッチ機構OW4のステータ側部材319と一体化されており、
タービンランナ314は、タービンシェルと、前記タービンシェルの外周側部分に設けられたタービンブレードとを有し、
ポンプインペラー312は、インペラーハブと、前記インペラーハブに接続されたインペラーシェルと、前記インペラーシェルに取り付けられたインペラーブレードとを有し、
前記ポンプインペラー312のインペラーシェルは、内周側端部のトランスミッション側の側面が前記ステータハブ318a及びステータ側部材319の最も軸方向トランスミッション側に位置している部分よりもエンジン側に位置しており、
前記ステータ318及びステータ側部材319の最も軸方向前記トランスミッション側に位置している部分は、前記ポンプインペラー312のインペラーハブの軸方向エンジン側端部よりも軸方向トランスミッション側に位置している、トルクコンバータ。」
(3)対比
本願発明1と引用例1発明とを比較すると、実質的に、後者の「ポンプインペラー312」は前者の「インペラー」に相当し、以下、同様に、「タービンランナ314」は「タービン」に、「ステータ318」及び「ステータ側部材319」は「ステータ」に、「ステータハブ318a」及び「ステータ側部材319」は「ステータキャリア」に、「羽318b」は「ステータブレード」に、それぞれ相当する。
以上より、本願発明1の用語に倣って整理すると、両者は、
「エンジンのクランクシャフトの動力をトランスミッション側シャフトに伝達するトルクコンバータであって、
インペラー、タービン、及びステータからなるトーラス形状の流体作動部を備え、
前記ステータは、ステータキャリアとステータブレードとを有し、
前記タービンは、タービンシェルと、前記タービンシェルの外周側部分に設けられたタービンブレードとを有し、
前記インペラーは、インペラーハブと、前記インペラーハブに接続されたインペラーシェルと、前記インペラーシェルに取り付けられたインペラーブレードとを有し、
前記インペラーシェルは、内周側端部のトランスミッション側の側面が前記ステータキャリアの最も軸方向トランスミッション側に位置している部分よりもエンジン側に位置しており、
前記ステータの最も軸方向前記トランスミッション側に位置している部分は、前記インペラーハブの軸方向エンジン側端部よりも軸方向トランスミッション側に位置している、トルクコンバータ。」
である点で実質的に一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願発明1は「前記タービンブレードの外周端と内周端とは軸方向において略同じ位置に位置している」のに対し、引用例1発明はそのような事項を具備しているかどうか、明らかではない点。
(4)判断
[相違点1]について
トルクコンバータの各要素の形状やタービンの流体流出口とステータの流体流入口の間の隙間や相対的配置形状をどのように設定するかは容量・効率等の所要性能その他を考慮して適宜設計する事項にすぎない(例えば、実願昭63-86334号(実開平2-6847号)のマイクロフィルムの請求の範囲、明細書第2頁第1?9行)。引用例1発明のタービンブレードの流体出口部分をステータの流体入口部分に近づけて、両者間の隙間を小さくすることは、上記の適宜の設計として当業者が容易に想到し得たものと認められる。そして、本願の図1と引用例1の図8とを比較対照するとともに、本願明細書等を参酌しても「略同じ位置」の意味する構成が相当程度に不明確であることを勘案すると、このようにしたものは実質的に「前記タービンブレードの外周端と内周端とは軸方向において略同じ位置に位置している」という事項を具備していると認められる。
そして、本願発明1の作用効果は、引用例1に記載された事項に基づいて当業者が予測し得る程度のものである。

なお、平成21年1月29日付け意見書において、
「タービンブレードについて、請求項1において以下の補正を行いました。
(1)タービンブレードの外周端と内周端とは軸方向において略同じ位置に位置する。

以上の補正は、図1及び図2に示された内容から自明のことであります。」と主張している。しかし、まず、この(1)の補正事項と本願発明1の課題・効果との関連が必ずしも明確でなく、その技術的意義が不明確である。そして、「略同じ位置」の意味する事項が相当程度に不明確であること、及び、そのようにすることは当業者が容易に想到し得たものと認められることは上述のとおりである。

(5)むすび
したがって、本願発明1は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明1が特許を受けることができないものである以上、本願発明2?5について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-18 
結審通知日 2009-02-24 
審決日 2009-03-09 
出願番号 特願2000-347889(P2000-347889)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F16H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谿花 正由輝  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 岩谷 一臣
常盤 務
発明の名称 トルクコンバータ  
代理人 小野 由己男  

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