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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1196567
審判番号 不服2007-22194  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-09 
確定日 2009-04-14 
事件の表示 平成 8年特許願第517525号「ディジタル移動無線通信システムにおけるアップリンク・マクロダイバシティの方法と装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 6月13日国際公開、WO96/18277、平成10年10月 6日国内公表、特表平10-510404〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1995年11月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1994年12月8日、スウェーデン)を国際出願日とする出願であって、平成18年8月29日付けで拒絶理由通知がなされ、同年11月2日付けで手続補正がなされたが、平成19年5月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項7に係る発明は、平成18年11月2日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「情報ブロックを送信する移動局と、前記送信された情報ブロックに対応する情報ブロックを各基地局で受信する一組の基地局を備える、ディジタルセルラ移動無線通信システムにおけるアップリンク・マクロダイバシティ装置であって、
前記アップリンク・マクロダイバシティ装置は、
前記組の各基地局(BS1、BS2)においてそれぞれ受信された情報ブロック(BL1、BL2)の信頼性を表す質の測度(Q1、Q2)を各基地局(BS1、BS2)から受信する手段と、
受信された質の測度のうち最良となる質の測度を決定し、決定した最良となる質の測度に対応する基地局にだけ、移動局から受信した情報ブロック(BL1、BL2)を基地局の前記組(BS1、BS2)の共通の出力情報ブロックとして出力するよう命令する手段(DEC)と、
を含むことを特徴とする、アップリンク・マクロダイバシティ装置。」

3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-334636号公報(以下、「引用例1」という。)、及び特開平3-242049号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例1)
A.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一般に無線通信によるデータ通信に関し、詳細にはマルチパス・フェージングの問題に関する。具体的には、アンテナ・ダイバーシチ手法の組み合わせを基地局と移動局の両方で動的に使用して、データ通信処理におけるマルチパス・フェージングの影響を軽減する。」

B.「【0010】
【課題を解決するための手段】移動または室内セル式無線通信環境において、基地局などの静止ユニットと移動局の両方でアンテナ・ダイバーシチ手法を協働的に使用する。複数のアンテナ/トランシーバ・ブランチが使用可能であり検出後の選択が行える基地局で、選択アンテナ・ダイバーシチ実施態様を使用する。選択アンテナ・ダイバーシチ実施態様は、ミクロ・ダイバーシチにもマクロ・ダイバーシチにも使用できる。・・・(後略)・・・」

C.「【0011】
【実施例】以下の記述では、静止ユニットと基地局は同義に使用する。本発明は、移動セル式無線通信システムにおいて、基地局アンテナ・ダイバーシチと移動局アンテナ・ダイバーシチの両方を協働的に使用する方法を記述する。2種類のアンテナ・ダイバーシチ手法を考慮する。第1の種類のアンテナ・ダイバーシチ手法は、選択アンテナ・ダイバーシチである。「選択アンテナ・ダイバーシチ」とは、局に、少なくとも「フェージング・コヒーレンス距離」だけ離れた別々のアンテナに接続された複数の別々の無線通信トランシーバがあることを意味する。「選択」は、パケット受信時に復調およびパケット緩衝の後で実行される。これは、多数のアンテナを有する局が、あらゆるパケットの複数のコピーを受け取り、悪いパケットの代わりに良いパケットを選ぶことができることを意味する。以下では、基地局は、選択アンテナ・ダイバーシチだけを使用するものと仮定する。」

D.「【0013】アンテナ・ダイバーシチには2つの応用例がある。すなわち、アンテナが互いに近くにあるミクロ・ダイバーシチと、アンテナが互いに遠く離れているマクロ・ダイバーシチである。ミクロ・ダイバーシチはマルチパス・フェージングに対処し、マクロ・ダイバーシチはマルチパス・フェージングとシャドーイング(障害物のために良好なパスが存在しない状況)に対処するという2つの役割を有する。基地局におけるアンテナと無線通信トランシーバの組合せは単一のユニットとして扱うことができ、そのユニットをミクロ・ダイバーシチまたはマクロ・ダイバーシチの目的で配置することができる。一方、移動局では、ミクロ・ダイバーシチ方式だけを使用する。」

E.「【0038】図2では、2つのアンテナ10と11、2つの無線通信トランシーバ12と13、2つのバッファ14と15、セクタ(審決注:この記載は「セレクタ」の誤記であると認められる。)17、および制御装置16が示されている。これは、独立して受信されたパケットが正しいかどうか検査し、データ通信システムの他の部分に送信するために制御装置によって正しいパケットだけが選択される、「選択ダイバーシチ」手法を例示したものである。受信パケットは、それぞれバッファ14と15に丸ごと緩衝される。トランシーバ12と13は、各パケット受信の完了時に制御装置16に信号を送る。この信号は、トランシーバ12と13のどちらがパケットを首尾よく受信したかを示す。制御装置16は正しいパケットをデータ通信システムに供給するためバッファ14と15を切り換える。」

上記Dの記載に「アンテナ・ダイバーシチには2つの応用例がある。すなわち、アンテナが互いに近くにあるミクロ・ダイバーシチと、アンテナが互いに遠く離れているマクロ・ダイバーシチである。」とあり、また、上記Bの記載に「選択アンテナ・ダイバーシチ実施態様は、ミクロ・ダイバーシチにもマクロ・ダイバーシチにも使用できる。」とある。
よって、上記Eの記載及び図2に「選択ダイバーシチ」手法として例示されている手法は、アンテナが互いに遠く離れている「マクロ・ダイバーシチ」にも使用できる手法であるということができる。
そして、上記Eに記載されている「独立して受信されたパケットが正しいかどうか検査し、データ通信システムの他の部分に送信する」という動作を行う場合に、図2の「制御装置16」は、移動局から送られてきたデータ・パケットを無線通信トランシーバ経由でデータ通信システムの他の部分に送信するための制御を行うものであり、それは、「アップリンク」の制御を行うものであるということができる。
してみれば、アンテナが互いに遠く離れている「マクロ・ダイバーシチ」に使用する選択ダイバーシチ手法において「アップリンク」の制御を行う場合の「制御装置16」は、「アップリンク・マクロダイバーシチ制御装置」と称することができる。

よって、上記A?Eの記載及び図2を参照すると、引用例1には、実質的に、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の第1発明」という。)
「データ・パケットを送信する移動局と、前記送信されたデータ・パケットに対応するデータ・パケットを各無線通信トランシーバで受信する一組の無線通信トランシーバを備える、移動セル式無線通信システムにおけるアップリンク・マクロダイバシチ制御装置であって、
前記アップリンク・マクロダイバシチ制御装置は、
前記組の各無線通信トランシーバにおいてそれぞれ受信されたデータ・パケットに関する信号を各無線通信トランシーバから受信する手段と、
前記受信されたデータ・パケットに関する信号に基づいて、正しいデータ・パケットを送信する無線通信トランシーバの出力をセレクタで選択させる手段と、
を含む、アップリンク・マクロダイバシチ制御装置。」

引用例1には、次の記載もなされている。
F.「【0018】1.移動局が基地局にデータ・パケットを送信するとき、基地局はパケットを受信する際にその2つのアンテナのどちらがより成功したかを記録する。ここで、「より成功」とは、より高い受信信号エネルギーを有するデータ・パケットの受信が成功することを意味する。どちらの受信も成功しない場合は、優先アンテナの変更は行われない。両方とも成功した場合は、より高い受信信号エネルギーを有する方のアンテナが優先アンテナになる。一方のアンテナだけが成功した場合は、そのアンテナが優先アンテナになる。」

上記Fの記載を参照すると、引用例1には、次の発明も記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の第2発明」という。)
「移動局が基地局にデータ・パケットを送信するとき、基地局がパケットを受信する際に2つのアンテナのどちらがより成功したかを記録し、両方とも成功した場合は、より高い受信信号エネルギーを有する方のアンテナを優先アンテナとすること。」

さらに、引用例1には、次の記載もなされている。
G.「【0041】図3には、それぞれ基地局トランシーバ13または12のどちらが移動局に送信するかを選択するための線20および21上の信号、それぞれバッファ14または15のどちらをデータ通信システムの他の部分への送信に使用するかを選択するための線24と25上の信号、およびそれぞれパケット受信の成功を示す基地局のトランシーバ12および13からの信号22および23を提供する、基地局制御装置16が示されている。また、基地局16の記憶装置内にあって、特定の移動局への送信にどちらのトランシーバが好ましいかを記録する、優先トランシーバ・テーブル30も示されている。テーブル30は、たとえば、移動局21に送信するための好ましいトランシーバがトランシーバ12であることを示す。
【0042】パケットが受信されると、基地局制御装置16は、線22または線23あるいはその両方上で信号を受け取る。これらの信号に応答して、基地局制御装置16は線24または25のどちらかを活動化する。線22と23が共に活動状態にある場合は、基地局制御装置16は線24または25のどちらかを活動化する。一般に、両方の線を活動化することはない。」

上記Gの段落【0041】に「それぞれバッファ14または15のどちらをデータ通信システムの他の部分への送信に使用するかを選択するための線24と25上の信号」と記載されていることから、引用例1の図3の記載において、線24と25の上側にある「バッファ14を使用」との記載のどちらかは「バッファ15を使用」の誤記であるものと認められる。
また、上記Gの段落【0042】の「・・・基地局制御装置16は線24または25のどちらかを活動化する。一般に、両方の線を活動化することはない。」との記載は、「線24または25のどちらか」にバッファ14または15を選択するための信号を供給し、該選択するための信号が与えられた方のバッファだけが出力を行うことを意味するものと解される。
よって、上記Gの記載及び図3を参照すると、引用例1には、次の発明も記載されているものと認められる。(以下、「引用例1記載の第3発明」という。)
「複数存在する構成のうち、どちらか一つを使用することを選択するために、どちらか一つの構成に対して信号を供給してその構成だけの出力を行わせること。」

(引用例2)
H.「(課題を解決するための手段)
本発明の移動通信システムにおける無線通信方式は、サービスエリアに複数の無線基地局を配置した移動通信システムにおける無線基地局と移動端末との間の無線通信方式であって、移動端末から送信される信号を周辺無線基地局で受信し、その受信結果に応じて前記周辺無線基地局の中で前記受信レベルの大きい方から複数の無線基地局を選択し、前記移動端末と前記選択された複数の無線基地局との間で情報の送受信を行なうことを特徴とする。
(作用)
シャドウイングによる受信レベル低下を軽減するためには、遮蔽効果の異なる複数の無線基地局と移動端末との間でダイバーシチ通信を行なえば良い。この場合、移動端末の周辺にある無線基地局の中から適当に複数の無線基地局を選択するよりも、通信状態の良好な複数の無線基地局を常に選択すれば、ダイバーシチ効果は更に向上する。
本発明では、通話を開始しようとする移動端末が送信する信号を周辺の無線基地局において受信してその受信レベルを測定し、その受信レベルに基づいて複数の無線基地局を移動端末の通信相手として選択する。そして選択された複数の無線基地局に対して同一の通話チャネルを割当て、これらの無線基地局と移動端末との間でダイバーシチ通信を行なう。通話中に移動端末が移動した場合には、周辺無線基地局における移動端末から送信される信号の受信レベルに基づいて通信相手となる複数の無線基地局を随時更新していく。
上り回線における具体的なダイバーシチ通信は、移動端末が送信する信号を選択された複数の無線基地局のそれぞれの受信機で受信し、これらの信号を一箇所へ集めて選択・合成して行なう。」(第2頁左下欄第1行?右下欄第14行)

4.対比
本願発明と引用例1記載の第1発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例1記載の第1発明における「データ・パケット」は、本願発明における「情報ブロック」に相当する。

(い)本願発明において、移動局が送信する情報ブロックは、基地局内の何らかの無線通信手段によって受信されるものと解される。一方、引用例1記載の第1発明における「無線通信トランシーバ」は、移動局が送信するデータ・パケット(情報ブロック)を受信する無線通信手段であるということができる。
よって、本願発明と引用例1記載の第1発明とは、ともに、「送信された情報ブロックに対応する情報ブロックを各無線通信手段で受信する一組の無線通信手段」を備えるものであるということができる。

(う)引用例1記載の第1発明において扱われるデータは、ディジタルデータであると解されるから、引用例1記載の第1発明における「移動セル式無線通信システム」は、本願発明における「ディジタルセルラ移動無線通信システム」に相当するということができる。

(え)引用例1記載の第1発明における「アップリンク・マクロダイバシチ制御装置」は、本願発明における「アップリンク・マクロダイバシティ装置」に相当する。

(お)引用例1記載の第1発明における各無線通信トランシーバにおいてそれぞれ受信された「データ・パケットに関する信号」は、それに基づいて、正しいデータ・パケットであるか否かが判断されるものであるから、実質的に、本願発明における「情報ブロックの信頼性を表す質の測度」に相当する信号である。

(か)本願発明において、「受信された質の測度のうち最良となる質の測度を決定し、決定した最良となる質の測度に対応する基地局にだけ、移動局から受信した情報ブロック(BL1、BL2)を基地局の前記組(BS1、BS2)の共通の出力情報ブロックとして出力するよう命令する手段(DEC)」が存在することにより、結局、「最良となる質の測度に対応する基地局」が「移動局から受信した情報ブロック」を「基地局の組の共通の出力情報ブロックとして」出力することになる。
よって、上記「・・・命令する手段(DEC)」は、「受信された質の測度のうち最良となる質の測度を決定し、決定した最良となる質の測度に対応する基地局が、移動局から受信した情報ブロックを、基地局の組の共通の出力情報ブロックとして出力するようにさせる手段」であるということができる。
一方、引用例1記載のものにおいて、「受信されたデータ・パケットに関する信号」に基づいて、どの「データ・パケット」が正しいかを判断するという事項は、「受信された質の測度のうち良好な質の測度を決定」する事項に該当すると解され、また、「正しいデータ・パケットを送信する無線通信トランシーバの出力をセレクタで選択」することにより、結局、「正しいデータ・パケットを送信する無線通信トランシーバ」が「移動局から受信したデータ・パケット」を出力することになり、それは、一組の無線通信トランシーバの共通の出力データ・パケットになるということができるから、引用例1記載の発明における「受信されたデータ・パケットに関する信号に基づいて、正しいデータ・パケットを送信する無線通信トランシーバの出力をセレクタで選択させる手段」は、実質的に、「受信された質の測度のうち良好な質の測度を決定し、決定した良好な質の測度に対応する無線通信トランシーバが、移動局から受信したデータ・パケットを、無線通信トランシーバの共通の出力データ・パケットとして出力するようにさせる手段」であるということができる。
そして、本願発明において、「最良となる質の測度」は、「良好な質の測度」であることには変わりない。
以上のことから、本願発明と引用例1記載の第1発明とは、ともに、「受信された質の測度のうち良好な質の測度を決定し、決定した良好な質の測度に対応する無線通信手段が、移動局から受信した情報ブロックを、無線通信手段の組の共通の出力情報ブロックとして出力するようにさせる手段」を有する点で共通するということができる。

上記(あ)?(か)の事項を踏まえると、本願発明と引用例1記載の第1発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例1記載の第1発明とは、ともに、
「情報ブロックを送信する移動局と、前記送信された情報ブロックに対応する情報ブロックを各無線通信手段で受信する一組の無線通信手段を備える、ディジタルセルラ移動無線通信システムにおけるアップリンク・マクロダイバシティ装置であって、
前記アップリンク・マクロダイバシティ装置は、
前記組の各無線通信手段においてそれぞれ受信された情報ブロックの信頼性を表す質の測度を各無線通信手段から受信する手段と、
受信された質の測度のうち良好な質の測度を決定し、決定した良好な質の測度に対応する無線通信手段が、移動局から受信した情報ブロックを、無線通信手段の前記組の共通の出力情報ブロックとして出力するようにさせる手段と、
を含む、アップリンク・マクロダイバシティ装置。」
である点。

(相違点)
相違点1:「無線通信手段」が、本願発明においては「基地局」であるのに対し、引用例1記載の第1発明においては「無線通信トランシーバ」である点。

相違点2:「受信された質の測度のうち良好な質の測度を決定し、決定した良好な質の測度に対応する無線通信手段が、移動局から受信した情報ブロックを、無線通信手段の前記組の共通の出力情報ブロックとして出力するようにさせる手段」が、本願発明においては「受信された質の測度のうち最良となる質の測度を決定し、決定した最良となる質の測度に対応する基地局にだけ、移動局から受信した情報ブロックを基地局の前記組の共通の出力情報ブロックとして出力するよう命令する手段」であるのに対し、引用例1記載の第1発明においては「受信されたデータ・パケットに関する信号に基づいて、正しいデータ・パケットを送信する無線通信トランシーバの出力をセレクタで選択させる手段」である点。

5.当審の判断
そこで、上記相違点1,2について検討する。

(相違点1について)
上記引用例2の記載に見られるように、「複数の無線基地局と移動端末との間でダイバーシチ通信を行うこと」は、周知技術にすぎない。
よって、引用例1記載の第1発明において、上記周知技術を参酌して、「無線通信手段」を「基地局」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(相違点2について)
まず、「受信された質の測度のうち最良となる質の測度を決定」することについて検討すると、上記引用例1記載の第2発明は、「移動局が基地局にデータ・パケットを送信するとき」についてのものであり、かつ「アンテナ」の選択のときに行う動作であるが、「基地局がパケットを受信する際に2つのアンテナのどちらがより成功したかを記録し、両方とも成功した場合は、より高い受信信号エネルギーを有する方のアンテナを優先アンテナとすること」を行っている。ここで、「両方とも成功した場合は、より高い受信信号エネルギーを有する方のアンテナを優先アンテナとすること」は、「最良となる」受信信号エネルギーを有するアンテナを選択することに他ならない。
そして、引用例1記載の第1発明における「無線通信トランシーバ」の選択と引用例1記載の第2発明における「アンテナ」の選択は、ともにダイバシチ通信を行うために行う動作である点で共通するものであるから、引用例1記載の第1発明に対して第2発明を適用し、「受信された質の測度のうち最良となる質の測度を決定」するような構成として、「最良」の「無線通信トランシーバ」を選択するようなものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
次に、引用例1記載の第1発明においては、無線通信トランシーバの出力の選択を「セレクタ」で行わせるようにしているが、上記引用例1記載の第3発明では、使用する構成そのものに対して信号を供給してその構成だけの出力を行わせるようにしており、このような第3発明を第1発明に対して適用することにより、「セレクタ」で2つの無線通信トランシーバの出力のうち1つを選択させるのではなく、どちらか一つの無線通信トランシーバに対してのみ信号を供給して、その信号が供給された無線通信トランシーバだけの出力を行わせるように命令する構成とすることは、当業者が適宜になし得ることである。
そして、上記相違点1で検討したように、引用例1記載の第1発明において、「無線通信手段」を「基地局」とすることは、当業者が容易に想到し得ることであることを踏まえると、結局、引用例1記載の第1発明において、「受信された質の測度のうち良好な質の測度を決定し、決定した良好な質の測度に対応する無線通信手段が、移動局から受信した情報ブロックを、無線通信手段の前記組の共通の出力情報ブロックとして出力するようにさせる手段」を、「受信された質の測度のうち最良となる質の測度を決定し、決定した最良となる質の測度に対応する基地局にだけ、移動局から受信した情報ブロックを基地局の前記組の共通の出力情報ブロックとして出力するよう命令する手段」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

また、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1記載の第1乃至第3発明及び上記周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の第1乃至第3発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-17 
結審通知日 2008-11-21 
審決日 2008-12-02 
出願番号 特願平8-517525
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山中 実原田 聖子  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 伏本 正典
飯田 清司
発明の名称 ディジタル移動無線通信システムにおけるアップリンク・マクロダイバシティの方法と装置  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  
代理人 高柳 司郎  
代理人 下山 治  

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