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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1196666
審判番号 不服2007-20669  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-26 
確定日 2009-04-30 
事件の表示 特願2002-193533「電子写真用トナー」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月 5日出願公開、特開2004- 37738〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年7月2日の出願であって、平成19年6月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月26日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同年8月24日付けで手続補正がされ、当審の審尋に対し、平成21年1月15日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成19年8月24日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年8月24日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする事項を含む。

<補正前>
「結着樹脂を含有する電子写真用トナーにおいて、
前記結着樹脂は、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドとを主成分とする樹脂を含有し、前記非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドは、テレフタル酸とフマル酸の両者を含むモノマーを同時に縮重合させて得られる縮重合体を含有し、前記結着樹脂全体に対する前記テレフタル酸と前記フマル酸の両者を含むモノマーとして縮重合させた縮重合体の含有率は、50%以下であることを特徴とする電子写真用トナー。」

<補正後>
「結着樹脂を含有する電子写真用トナーにおいて、
前記結着樹脂は、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドとを主成分とする樹脂を含有し、前記非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドは、テレフタル酸とフマル酸の両者を含むモノマーを同時に縮重合させて得られる縮重合体を含有し、前記結着樹脂全体に対する前記テレフタル酸と前記フマル酸の両者を含むモノマーとして縮重合させた縮重合体の含有率は、50%以下であり、前記結着樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるクロマトグラムにおいて、数平均分子量(Mn)が6000?20000であり、重量平均分子量(Mw)が6000?100000であることを特徴とする電子写真用トナー。」

上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「結着樹脂」について「前記結着樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるクロマトグラムにおいて、数平均分子量(Mn)が6000?20000であり、重量平均分子量(Mw)が6000?100000である」との限定事項を付加するものである。

(2)本願明細書の記載事項
本願明細書を参照すると、上記の限定事項のうち、「結着樹脂の数平均分子量(Mn)」の値について何らかの記載があるのは下記の箇所である。(下線は当審にて付与した。)

「【0006】
本発明の電子写真用トナーは、上記結着樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分が、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるクロマトグラムにおいて、数平均分子量(Mn)が1500?20000であり、重量平均分子量(Mw)が6000?100000である。」
「【0042】
本発明に用いられる結着樹脂は、数平均分子量(Mn)が好ましくは1,500?20,000、より好ましくは2,000?15,000、重量平均分子量(Mw)が好ましくは6,000?100,000、より好ましくは8,000?80,000であり、Mw/Mnが好ましくは3?10であることが良い。
【0043】
結着樹脂の数平均分子量(Mn)が20,000を超える場合又は重量平均分子量(Mw)が100,000を超える場合には、いずれも、耐オフセット性に優れるものの、定着設定温度を高くせざるを得ず、消費エネルギー量も多くなる。
また、カーボンブラックの分散性が悪くなり、使用中の濃度変動が大きくなる傾向が見られる。
【0044】
また、結着樹脂の数平均分子量(Mn)が1,500を超えない場合又は重量平均分子量(Mw)が6,000を超えない場合には、ホットオフセット性が悪くなり、さらに、トナーの保存性、現像槽内の凝集が起こり易いなどの不具合を生じる。」

また、上記各箇所の他に、段落【0068】、【0069】には、実施例として作成した製造例1及び製造例2の結晶性ポリエステルの数平均分子量の値が、それぞれ4100、2800であることが記載されているものの、結着樹脂として併用する非晶質ポリエステルの数平均分子量は全く記載されておらず、最終的な「結着樹脂」として数平均分子量が幾らのものを得たのかも記載されていない。
さらに、段落【0021】には結晶性ポリエステルの数平均分子量の好ましい範囲が、【0062】には結着樹脂の分子量の測定方法が記載されてはいるものの、いずれも本願発明の「結着樹脂の数平均分子量(Mn)」の好ましい範囲の具体的な下限値を示すものではない。

そうしてみると、上記の本件補正に係る事項のうち、結着樹脂の数平均分子量(Mn)の下限を「6000」という具体的な値に設定することについては、本願明細書に全く記載されておらず、またその根拠となる事項を見出すこともできないから、本件補正は明細書に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

(3)むすび
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成19年8月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年1月25日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「結着樹脂を含有する電子写真用トナーにおいて、
前記結着樹脂は、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドとを主成分とする樹脂を含有し、前記非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドは、テレフタル酸とフマル酸の両者を含むモノマーを同時に縮重合させて得られる縮重合体を含有し、前記結着樹脂全体に対する前記テレフタル酸と前記フマル酸の両者を含むモノマーとして縮重合させた縮重合体の含有率は、50%以下であることを特徴とする電子写真用トナー。」

(2)刊行物に記載の事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-222138号公報(以下、「刊行物」という。)には、下記の事項が記載されている。(下線は当審にて付与した。)

(1a)「【請求項1】 結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドとを主成分とする結着樹脂を含有してなる電子写真用トナーであって、前記結晶性ポリエステルが炭素数2?6のジオールを80モル%以上含有したアルコール成分とフマル酸を80モル%以上含有したカルボン酸成分とを縮重合させて得られる、軟化点が85?150℃の樹脂であり、前記非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドが芳香族化合物を50重量%以上含有した単量体を縮重合させて得られる樹脂であり、前記非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドに対する前記結晶性ポリエステルの重量比〔結晶性ポリエステル/(非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミド)〕が1/99?50/50である電子写真用トナー。」

(1b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、低温定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性及び粉砕性のいずれにも優れ、かつ感光体汚染を生じることなく、長期にわたって優れた帯電量を維持することができる電子写真用トナーを提供することを目的とする。」

(1c)実施例として、【表1】、【表2】にそれぞれ示す原料から得られる結晶性ポリエステルA?K及び非晶質ポリエステルa?kを、【表3】の配合量で含有する樹脂を結着樹脂とするトナーを用いて試験を行った結果が、【表4】に記載されている。(【0041】?【0058】)
そして、【表3】中に示される実施例1?12、及び実施例17、18で使用される樹脂d、e、jは、【表2】によれば、テレフタル酸とフマル酸とをモノマー成分として得られた樹脂である。

【表1】



【表2】



【表3】



【表4】



これらの事項によれば、刊行物には、
「結着樹脂を含有する電子写真用トナーにおいて、
前記結着樹脂は、結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドとを主成分とし、前記非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドはテレフタル酸とフマル酸の両者を含むモノマーを同時に縮重合させて得られる樹脂d、e、jを含有し、前記結着樹脂全体に対して前記テレフタル酸と前記フマル酸の両者を含むモノマーを同時に縮重合させた樹脂d、e、jの含有量は、結着樹脂100重量部のうち15?35重量部である電子写真用トナー。」
の発明(以下「刊行物発明」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比・判断
そこで、本願発明と刊行物発明とを比較すると、刊行物発明の「結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドとを主成分とし」、「テレフタル酸とフマル酸の両者を含むモノマーを同時に縮重合させて得られる樹脂d、e、j」、「含有量は、結着樹脂100重量部のうち15?35重量部」は、本願発明の「結晶性ポリエステルと非晶質ポリエステル及び/又は非晶質ポリエステルポリアミドとを主成分とする樹脂を含有し」、「テレフタル酸とフマル酸の両者を含むモノマーを同時に縮重合させて得られる縮重合体」、「含有率は、50%以下」にそれぞれ相当するから、両者は、その構成において差異がない。

(4)むすび
したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-10 
結審通知日 2009-02-17 
審決日 2009-03-18 
出願番号 特願2002-193533(P2002-193533)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G03G)
P 1 8・ 561- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 雅雄  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 淺野 美奈
伏見 隆夫
発明の名称 電子写真用トナー  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

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