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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1196868
審判番号 不服2007-31870  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-26 
確定日 2009-05-08 
事件の表示 平成11年特許願第279720号「合成樹脂製チューブ容器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月10日出願公開,特開2001- 97410〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成11年9月30日の出願であって,平成19年10月12日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月26日に拒絶査定不服審判請求がなされたものであるところ,当審において,平成20年12月2日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,平成21年2月9日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1および請求項2に係る発明は,平成21年2月9日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1および請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。
「弾性圧搾可能な胴部上端から,幅狭の肩部を介して雄ねじ筒状の口頸部を起立すると共に,該口頸部の下端を大径部とした合成樹脂製のチューブ容器本体と,上記口頸部外面へ,口頸部上端開口面を密閉するノズル付きの第1頂壁外周部から垂設した第1周壁を螺合させたキャップ本体と,上記ノズル上端開口面を閉塞する第2頂壁外周から,上記第1頂壁の外周部上面へ載置させて第2周壁を垂下し,該第2周壁の下端後部と第1頂壁の後部とを肉薄ヒンジで連結した補助蓋とからなり,上記キャップ本体と補助蓋とを合成樹脂材で一体成形するとともに,上記口頸部の口径を,胴部を圧搾しても内容物が注出されなくなった時点における口頸部より下方の容器本体上端部内に残留した内容物が少なくともヘラないし指等で取り出せる程度の大きさの広口としたことを特徴とする合成樹脂製チューブ容器。」

3.引用例
3-1.当審の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3003130号公報(以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。
a.(実用新案登録請求の範囲)
「【請求項1】 筒体に天蓋を弾性反転ヒンジを介して開閉自在としたキャップをチューブ上端に設けたチューブ容器であって、筒体上面に注出筒を突設するとともに該注出筒に外嵌して閉止する筒状栓体を天蓋内面に設け、キャップ前面において筒体途中から天蓋にかけて天蓋上端を残して指当て凹部を設けたことを特徴とするチューブ容器。
【請求項2】 注出筒中心とキャップ中心を一致させてなる請求項1記載のチューブ容器。」
b.(4頁【0008】段落)
「・・・本考案の請求項1のチューブ容器は、練り歯磨き等の内容物を充填して使用する場合、チューブを手で持った状態で親指をキャップの指当て凹部に位置させながら、親指で指当て片を上方に持ち上げると、筒体の注出筒と天蓋の筒状栓体の嵌合が解かれ、更に弾性反転ヒンジにより天蓋が後方に回動して開放され、チューブに圧力を加えることにより注出筒の口部から練り歯磨き等の内容物を絞り出すことができる。」
c.(4頁【0010】段落)
「請求項2のチューブ容器によれば、注出筒中心とをキャップ中心を一致させているので、金型を用いた樹脂成形が容易となる。」
d.(5頁【0015】段落)
「チューブ容器Aは、図1及び図2に示すように筒体1に天蓋2を弾性反転ヒンジ3を介して開閉自在とした合成樹脂製のキャップ4をチューブ5上端に設けたものであり、内部には練り歯磨き、ゼリー状の洗顔クリーム等のさまざまな内容物を充填して用いることができるものである。」
e.(5頁【0016】段落)
「更に、図例のキャップ4では、図2中長さLにて示すように、注出筒6中心をキャップ半径(長さR)の1/3?2/3の長さだけ、キャップ4中心より前面側に偏心させ、しかも注出筒6を筒体1上面から6?11mmだけ突出させている。このように、キャップ4において、注出筒6中心をキャップ半径(長さR)の1/3?2/3の長さだけ、キャップ4中心より前面側に偏心させることにより、筒体1上面に付着することなく練り歯磨き等の内容物の取り出しが容易になり、また、注出筒6の高さを余りに長くすると、天蓋2を深くする必要があるので、天蓋2の開閉が行いにくくなるのに対して、注出筒6を筒体1上面から6?11mmだけ突出させることにより、天蓋2の開閉を容易に行うことができ、しかもキャップ4全体もコンパクトな形状となり、デザイン的にも優れたものとなる。 尚、図示したキャップ4では、内容物の取り出し易さ等を考慮して注出筒6中心をキャップ中心より前面側に位置させているが、注出筒中心とキャップ中心を一致させてもよく、その場合には金型を用いた樹脂成形が容易となる。」
f.(6頁【0018】段落)
「また、キャップ4の筒体1は、図3に示すように内筒1aと外筒1bの二重構造とし、内筒1a内面に止め用突条11を設け、チューブ5の口部5a外面に設けた無理越え突条を無理嵌めすることにより、チューブ5にキャップ4を取り付けるようにしたものである。尚、チューブ5とキャップ4を取り付けを、螺合を利用して行うことも可能である。」
g.(図1?5)
上記a?fの記載及び図1?5を参照すると,引用例1には,(1)チューブ容器本体が弾性圧搾可能であり,口部とチューブとの間に幅狭の肩部を有し,該口部の下端を大径部としたこと,(2)キャップが注出筒付きの第1頂壁外周部から垂設した第1周壁を有すること,及び(3)天蓋が抽出筒上端開口面を閉塞する第2頂壁と当該第2頂壁から垂下した第2周壁を有することが示唆されている。すなわち,引用例1には,実質的に本願発明の「肩部」「第1頂壁」「第1周壁」「第2頂壁」「第2周壁」に相当するものが記載されている。
これらの記載事項及び図示内容を総合し,本願発明の記載ぶりに則って整理すると,引用例1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。
「弾性圧搾可能なチューブ上端から,幅狭の肩部を介して雄ねじ筒状の口部を起立すると共に,該口部の下端を大径部とした合成樹脂製のチューブ容器と,上記口部外面へ,口部上端開口面を密閉する抽出筒付きの第1頂壁外周部から垂設した第1周壁を螺合させたキャップと,上記抽出筒上端開口面を閉塞する第2頂壁外周から,上記第1頂壁の外周部上面へ載置させて第2周壁を垂下し,該第2周壁の下端後部と第1頂壁の後部とを弾性反転ヒンジで連結した天蓋とからなる合成樹脂製チューブ容器。」

3-2.当審の拒絶の理由に引用された実願昭52-46008号(実開昭53-142147号公報)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。
h.(1頁12行?2頁末行)
「本案はチューブ容器に係る。チューブ容器は,一般に円筒状の胴部を有し,その下端は両側方から圧接して板状にシールし,又その上端には口頸部付きの肩部材の肩部周縁を接合させて本体とし,その口頸部にキャップを螺合させたものが使用されている。そしてその胴部内に充填された収納物を胴部押圧によって口部から適量づつ押出して使用している。ところで,一般にその充填物は約18%前後を残したまま廃棄され無駄となっているが,その内訳をみると約15%は胴上端部と口頸部との間に残ることが判明した。これは肩部の肉厚を厚くするため該肩部分での押圧が困難となるためである。・・・本考案は上記のような充填物の残存を少なくするためのものであり,・・・胴部材内の充填物がなくなったとき,これを取外してその裏面および胴上端部内の充填物を使用可能とするものである。」
i.(4頁4行?同14行)
「・・・胴部内の充填物を使い尽くした後,肩部材Bを胴部材Aから取外してその第1嵌合部内に残る充填物を例えば歯ブラシDで使用すればよい。本考案は上記のように,容器本体を胴部材Aとこれに対して着脱が可能な肩部材Bとからなるものとしたから,最後にその肩部材を外すことによってその内部に残った充填物を使用することが出来,よって従来のように多くの充填物を取出せぬまゝ廃棄することがなく,有効に使用することが出来る。」

4.対比判断
4-1.対比
本願発明と引用発明とを対比すると,両者は,「合成樹脂製チューブ容器」に関するものである点で同じである。そして,その構造または機能からみて,「チューブ」は本願発明の「胴部」に相当し,以下同様に,「口部」は「口頸部」に,「チューブ容器」は「チューブ容器本体」に,「抽出筒」は「ノズル」に,「キャップ」は「キャップ本体」に,「弾性反転ヒンジ」は「肉薄ヒンジ」に,「天蓋」は「補助蓋」に,それぞれ相当する。
そこで,本願発明の用語を用いて表現すると,両者は次の点で一致する。
(一致点)
「弾性圧搾可能な胴部上端から,幅狭の肩部を介して雄ねじ筒状の口頸部を起立すると共に,該口頸部の下端を大径部とした合成樹脂製のチューブ容器本体と,上記口頸部外面へ,口頸部上端開口面を密閉するノズル付きの第1頂壁外周部から垂設した第1周壁を螺合させたキャップ本体と,上記ノズル上端開口面を閉塞する第2頂壁外周から,上記第1頂壁の外周部上面へ載置させて第2周壁を垂下し,該第2周壁の下端後部と第1頂壁の後部とを肉薄ヒンジで連結した補助蓋とからなる合成樹脂製チューブ容器。」

そして,両者は次の点で相違する(対応する引用例1記載の用語を括弧内に示す)。
(相違点1)
本願発明は,キャップ本体(キャップ)と補助蓋(天蓋)とを合成樹脂材で一体成形するのに対し,引用発明は,キャップ本体(キャップ)は合成樹脂材であるものの,当該キャップ本体(キャップ)と補助蓋(天蓋)とを合成樹脂材で一体成形するかどうか明らかでない点。
(相違点2)
本願発明は,口頸部(口部)の口径を,胴部(チューブ)を圧搾しても内容物が注出されなくなった時点における口部(口頸部)より下方の容器本体上端部内に残留した内容物が少なくともヘラないし指等で取り出せる程度の大きさの広口としたのに対し,引用発明は,残留した内容物の取り出しについての明示がない点。

4-2.判断
上記相違点について判断する。
(相違点1について)
一般に,チューブ容器において,キャップ本体と補助蓋とを合成樹脂材で一体成形することは,本願出願前周知の技術手段にすぎない(例えば,特開平8-26309号公報(3頁左欄【0007】段落等),特開平9-315449号公報(3頁左欄【0016】段落等)参照)。
そうすると,引用発明に周知の技術手段を適用して,相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得た事項である。

(相違点2について)
上記3-2の記載より,引用例2には,充填物の残存を少なくすることを目的として,胴部材(胴部)に肩部材(キャップ本体)を螺合しさらに肩部材にキャップ(補助蓋)を取り付ける構成のチューブ容器と,上記胴部材上端部(口頸部)の口径が歯ブラシを使用できる大きさであることが開示されている。
そこで,歯ブラシと指とは概略同じ大きさであることを考慮すれば,この開示された事項は,胴部を圧搾しても内容物が注出されなくなった時点における容器本体上端部の内容物が少なくともヘラないし指等で取り出せる程度の大きさの広口とした,ともいえる。
そうすると,引用発明に引用例2に記載された技術手段を適用して,相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得た事項である。

そして,本願発明の作用効果も,格別のものでなく,引用発明及び引用例2に記載された技術手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された技術手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ,本願出願は,特許請求の範囲の請求項2に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-10 
結審通知日 2009-03-11 
審決日 2009-03-24 
出願番号 特願平11-279720
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邊 真柳田 利夫  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 村上 聡
熊倉 強
発明の名称 合成樹脂製チューブ容器  
代理人 今岡 憲  

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