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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1196875
審判番号 不服2007-3890  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-08 
確定日 2009-05-07 
事件の表示 平成 8年特許願第274591号「貯留価値貸出システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月12日出願公開、特開平10-118322〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成8年10月17日の出願であって、平成18年12月13日付けで拒絶の査定がされた(この過程において、平成17年12月2日付け、平成18年3月9日付け、同年8月25日付け及び同年11月24日付けで明細書についての手続補正がされた(以下、順に「第1補正」?「第4補正」という。)が、第4補正は拒絶査定と同日付けで却下された。)ため、これを不服として平成19年2月8日付けで本件審判請求がされるとともに、同年3月9日付けで明細書についての手続補正(以下「第5補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年3月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
第5補正は特許請求の範囲の補正を含んでおり、補正後の【請求項1】の記載は次のとおりである。
「貯玉カードの各種情報をその貯玉カードに対応して記憶するカードファイルを管理する情報管理装置と、貯玉カードを介して貯玉の預け入れ引き出しを行う端末装置と、を備え、
遊技者が獲得した遊技玉を貯玉として遊技店に預け入れ、該貯玉から貸玉を受けたり景品に交換したりすることができる遊技店の貯留価値貸出システムにおいて、
前記カードファイルは、
前記貯玉カードを特定する貯玉カード番号と、
前記貯玉カードの所有者を確認するための暗証番号と、
前記貯玉カード番号により特定される貯玉数のうち、認証を経て引出可能となる第1の貯玉数と、
前記貯玉カード番号により特定される貯玉数のうち、認証無しに引出可能な第2の貯玉数と、を少なくとも備え、
前記情報管理装置は、
前記カードファイルを記憶する記憶手段と、
前記端末装置から送られてきた貯玉カード番号および暗証番号と、前記カードファイルに対応して記録された貯玉カード番号および暗証番号との照合により認証を行う認証手段と、
前記認証を経た後、前記端末装置で入力されて送られてきた認証無しに引出可能とする前記第2の貯玉数の申請を受け付ける申請受付手段と、
前記貯玉カード番号により特定される第1の貯玉数の範囲内で、前記申請された第2の貯玉数に基づく貯玉数の移動を前記第1の貯玉数から前記貯玉カードに行う貯玉移動手段と、
前記端末装置に移動された第2の貯玉数の範囲内での貯玉引出要求があったとき認証無しにその貯玉引出を許可させる許可手段と、
前記カードファイルの第1の貯玉数及び第2の貯玉数についての更新を行う更新手段と、
を備え、
前記更新手段は、
前記カードファイルの第1の貯玉数について当該第1の貯玉数に前記貯玉引出結果による第2の貯玉数の残貯玉数を加算し更新する一方、
前記カードファイルの第2の貯玉数について当該第2の貯玉数の記録を前記貯玉カードへ移動される第2の貯玉数に変更し更新する、
ことを特徴とする貯留価値貸出システム。」

2.補正目的の検討
「情報管理装置」が備える「更新手段」は、第5補正前(第4補正は原審において却下されたから、第3補正後である。)には、「前記端末装置から前記第2の貯玉数の範囲内での貯玉引出要求があったとき認証無しにその貯玉引出を許可するとともに、前記カードファイルの第2の貯玉数について該貯玉引出結果の更新を行う更新手段」と記載されていた。
すなわち、「第2の貯玉数について」の更新が、「該貯玉引出結果の更新」から「当該第2の貯玉数の記録を前記貯玉カードへ移動される第2の貯玉数に変更し更新」に変更されているほか、「前記端末装置から前記第2の貯玉数の範囲内での貯玉引出要求があったとき」との条件が削除されており、この補正は、請求項削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明の何れにも該当しない。
すなわち、平成14年法律24号による改正前の特許法17条の2第4項の規定に違反する補正がされている。

3.新規事項追加
「情報管理装置」が備える「許可手段」及び「更新手段」について検討する。
(1)「許可手段」について
上記のとおり、「情報管理装置」が備える「許可手段」は、「前記端末装置に移動された第2の貯玉数の範囲内での貯玉引出要求があったとき認証無しにその貯玉引出を許可させる」手段とされている。
願書に最初に添付した明細書(以下、添付図面を含めて「当初明細書」という。)の特許請求の範囲は5つの請求項からなり、「情報管理装置」との文言記載はなく(当初明細書全体を見ても存在しない。)、請求項4,5記載の「情報処理装置」がこれに該当するものと認める。
当初明細書の請求項4には、「貯留価値貸出システム」が「情報処理装置」、「貯留価値付加装置」、「貯留価値貸出装置」及びこれら3つの装置を「電気的に連絡する連絡手段」を含む旨記載されており、「情報処理装置」が備える手段としては「媒体情報送信手段から受信した情報に基づき情報媒体の真偽を判定し、その判定結果を貯留価値付加装置へ送信する判定情報送信手段」、「前記貯留価値申請手段から受信した申請情報に基づき、情報媒体に関連して記録している情報媒体情報より申請のあった貯留価値分の付与が可能か否かを判定する申請価値付与判定手段」及び「前記申請価値付与判定手段により付与可能と判定された場合に申請許可情報を前記貯留価値付加装置へ送信するとともに当該申請のあった貯留価値分を当該情報媒体に関連して記録している情報媒体情報から減算し、その情報媒体情報を更新する申請価値付与手段」が列記されているだけである。
「貯玉引出を許可させる」とは、貯玉引出を実行する装置(上記「貯留価値貸出装置」がこれに該当する。)に対して、許可信号を送信することであり、「電気的に連絡する連絡手段」を含む以上、「貯留価値貸出装置」に何らかの信号を送信することはあり得るものの、許可信号を送信することは記載されていない。
「貯留価値貸出装置」に関しては、「情報媒体の装着に基づき、付与されている貯留価値の範囲内で遊技価値を貸出す遊技価値貸出手段」を備えるとあるだけで、許可信号を「情報処理装置」から受けることは記載されていない。
次に当初明細書の請求項5を見るに、「情報処理装置」について
「前記残貯留価値情報送信手段から受信した残貯留価値情報に基づき、情報媒体に関連して記録している情報媒体情報に残貯留価値情報分を加え記録する残貯留価値精算手段」及び「前記残貯留価値精算手段により精算結果を前記貯留価値付加装置へ送信する精算結果情報送信手段」を備える旨の記載があるが、「残貯留価値情報送信手段」は「貯留価値付加装置」の手段であるから、「情報処理装置」と「貯留価値貸出装置」の関係についての記載ではない。
以上によれば、当初明細書の特許請求の範囲に、「情報管理装置」が備える「許可手段」が記載されていないことは明らかである。
そこで、「情報管理装置」が備える「許可手段」が発明の詳細な説明又は添付図面に記載されているかどうか検討する。
発明の詳細な説明には、「この情報処理システムでは、情報処理装置9を中心として情報の送受信が行われる。すなわち、情報処理装置9は、ネットワーク回線4を介して、各島設備3、玉計数装置5、景品交換装置6、貯玉数申請精算装置7、およびカード発行装置8に対して情報を送信し、また逆にこれらの各島設備3や各装置5,6,7,8からの情報を受信する。」(段落【0010】)及び「上記の島設備3は、貯玉貸出機能付玉貸装置(以下、「玉貸装置」という)1を併設したパチンコ機2を複数対並べて構成したものであり、遊技店内に複数、列設される。これらの島設備3…は、島設備3毎に配置した中継装置3a…を介してそれぞれネットワーク回線4に接続されている。」(段落【0011】)等の記載があり、これら記載における「貯玉数申請精算装置7」及び「貯玉貸出機能付玉貸装置(以下、「玉貸装置」という)1」が、「貯留価値付加装置」及び「貯留価値貸出装置」にそれぞれ該当することは明らかである。
貯玉引出(貯玉貸出)については、段落【0106】?【0126】にその説明があり、段落【0106】に「図18および図19は玉貸装置による貯玉に基づく玉貸制御のメインルーチンを示すフローチャートである。」とあるとおり、【図18】及び【図19】がそのフローチャートである。
そして、「情報処理装置」との関係では「通信制御装置17を経由しての情報処理装置9との間での回線テスト」(段落【0107】、【図18】のS92)、「情報処理装置9から開店指令」(段落【0108】、【図18】のS93)、「異常情報を情報処理装置9に送信」(段落【0113】、【図18】のS99)及び「貯玉からの玉貸を終了することを示す終了情報と、カード情報とを情報処理装置9に送信」(段落【0116】、【図18】のS101)との記載があるにとどまり、「許可手段」を想起させる記載は一切ない。
この点請求人は「「許可手段」については、段落番号[0065][0097]?[0100]の記載が根拠であり、情報管理装置が「貯玉カード」に記録された申請貯玉数から認証を経ない玉貸しを、端末装置の一つである「玉貸装置」に許可していることが明示されている。」(平成19年3月9日付け手続補正書(方式)3頁13?16行)と主張するが、システム全体として、申請貯玉数から認証を経ない玉貸しを、端末装置の一つである「玉貸装置」に許可することが当初明細書に記載されていることは認めるが、それは第5補正後【請求項1】記載の「前記貯玉カード番号により特定される第1の貯玉数の範囲内で、前記申請された第2の貯玉数に基づく貯玉数の移動を前記第1の貯玉数から前記貯玉カードに行う貯玉移動手段」(「前記カードファイルの第2の貯玉数について当該第2の貯玉数の記録を前記貯玉カードへ移動される第2の貯玉数に変更し更新」は、同手段による移動結果をカードファイルに反映させることである。)によって実現されており、「貯玉移動手段」とは別の「許可手段」が存在するわけではないから、請求人の主張を採用することはできない。
したがって、「情報管理装置」が備える「許可手段」は当初明細書に記載されていない。

(2)「更新手段」について
第5補正後の「更新手段」について、「当該第1の貯玉数に・・・第2の貯玉数の残貯玉数を加算し更新」に該当するものが、当初明細書に「情報処理装置9では、後述するように、「精算」情報と残貯玉数情報とを受信し、残貯玉数が当日申請され付加されたものであるかどうかの判定を行い、当日のものであれば、カードCに対応する、貯玉カードファイルFの中の該当貯玉数にその残貯玉数を加算」(段落【0070】)として記載されていること、及び「第2の貯玉数について当該第2の貯玉数の記録を前記貯玉カードへ移動される第2の貯玉数に変更し更新」に該当するものが当初明細書に「カードCに対応する、貯玉カードファイルFの中の該当貯玉数情報から申請分を減算してその貯玉数情報を更新」(段落【0090】)として記載されていることは認める。
しかし、前者については「精算」が前提であり、後者については「申請」が前提であり、どちらも「貯留価値付加装置」(実施例における「貯玉数申請精算装置」)から情報を受信した際の更新であるが、そのようなことは第5補正後の請求項1には記載されておらず、「精算」や「申請」を前提とせずに、情報管理装置がカードファイルを更新することなど、当初明細書には記載からは窺い知ることができないから、第5補正後【請求項1】において「情報管理装置」が備える「更新手段」は当初明細書に記載されていない。

(3)小括
以上2つの理由により、第5補正は、当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するといわざるを得ないから、平成14年法律24号による改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上述べたとおりであるから、第5補正は特許法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.特許請求の範囲の記載
第4補正は原審において、第5補正は当審においてそれぞれ却下されたから、特許請求の範囲の記載は第3補正により補正された次のとおりのものである。
「【請求項1】 貯玉カードの各種情報をその貯玉カードに対応して記憶するカードファイルを管理する情報管理装置と、貯玉カードを介して貯玉の預け入れ引き出しを行う端末装置と、を備え、
遊技者が獲得した遊技玉を貯玉として遊技店に預け入れ、該貯玉から貸玉を受けたり景品に交換したりすることができる遊技店の貯留価値貸出システムにおいて、
前記カードファイルは、
前記貯玉カードを特定する貯玉カード番号と、
前記貯玉カードの所有者を確認するための暗証番号と、
前記貯玉カード番号により特定される貯玉数のうち、認証を経て引出可能となる第1の貯玉数と、
前記貯玉カード番号により特定される貯玉数のうち、認証無しに引出可能な第2の貯玉数と、を少なくとも備え、
前記情報管理装置は、
前記カードファイルを記憶する記憶手段と、
前記端末装置から送られてきた貯玉カード番号および暗証番号と、前記カードファイルに対応して記録された貯玉カード番号および暗証番号との照合により認証を行う認証手段と、
前記認証を経た後、前記端末装置で入力されて送られてきた前記第2の貯玉数の申請を受け付ける申請受付手段と、
前記貯玉カード番号により特定される第1の貯玉数の範囲内で、前記申請された第2の貯玉数に基づく貯玉数の移動を前記第1の貯玉数から行う貯玉移動手段と、
前記端末装置から前記第2の貯玉数の範囲内での貯玉引出要求があったとき認証無しにその貯玉引出を許可するとともに、前記カードファイルの第2の貯玉数について該貯玉引出結果の更新を行う更新手段と、
を備えることを特徴とする貯留価値貸出システム。」

2.原査定の理由
原査定の拒絶の理由の1つは、第3補正後の「前記端末装置から前記第2の貯玉数の範囲内での貯玉引出要求があったとき認証無しにその貯玉引出を許可するとともに、前記カードファイルの第2の貯玉数について該貯玉引出結果の更新を行う更新手段」が新規事項追加に当たるというものである。

3.当審の判断
上記記載における「更新手段」は「情報管理装置」に備わっている。当初明細書の記載内容は「第2[理由]3」で述べたとおりであり、上記記載に「前記端末装置から前記第2の貯玉数の範囲内での貯玉引出要求があったとき」とあることから、その「端末装置」が、当初明細書記載の「貯留価値貸出装置」(実施例における「玉貸装置」)であることは明らかである。
そして、「第2[理由](2)」で述べたとおり、「情報管理装置」(当初明細書記載の「情報処理装置」)と「貯留価値貸出装置」との関係としては、「通信制御装置17を経由しての情報処理装置9との間での回線テスト」(段落【0107】、【図18】のS92)、「情報処理装置9から開店指令」(段落【0108】、【図18】のS93)、「異常情報を情報処理装置9に送信」(段落【0113】、【図18】のS99)及び「貯玉からの玉貸を終了することを示す終了情報と、カード情報とを情報処理装置9に送信」(段落【0116】、【図18】のS101)との記載があるにとどまり、「情報管理装置」が「貯玉引出要求があったとき認証無しにその貯玉引出を許可する」ことや、「貯玉引出要求があったとき・・・前記カードファイルの第2の貯玉数について該貯玉引出結果の更新を行う」ことなど一切記載されていない。
当初明細書には、貯玉引出(貯玉貸出)につき「ステップS106では、メモリの貯玉数情報から、今回払い出した単位分を減算して更新」(段落【0121】)との記載があるが、ここでいう「メモリ」が玉貸装置のメモリであり、カードファイルでないことは明らかである。
また、当初明細書の段落【0116】には上記記載に続けて、「情報処理装置9では、これらの情報を受信し、例えばカード番号からカードC使用の端末装置を特定し、来歴管理を行っている。」との記載があるから、カードC使用の端末装置を特定するために、カード番号を玉貸装置から情報管理装置に送信することは記載されていると認めることができるが、貯玉引出結果を情報管理装置に送信することは記載されておらず、貯玉引出結果を送信しなければ、情報管理装置は貯玉引出結果を認識できないから、貯玉引出結果の更新を行うこともできない。そうである以上、「前記端末装置から前記第2の貯玉数の範囲内での貯玉引出要求があったとき認証無しにその貯玉引出を許可するとともに、前記カードファイルの第2の貯玉数について該貯玉引出結果の更新を行う更新手段」が当初明細書に記載されていないことは明らかである。
以上のとおり、第3補正は、当初明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するといわざるを得ない。
すなわち、平成14年法律24号による改正前の特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされている。

第4 むすび
以上によれば、第5補正は却下されなければならず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされているから、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-05 
結審通知日 2009-03-10 
審決日 2009-03-24 
出願番号 特願平8-274591
審決分類 P 1 8・ 55- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 57- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之一宮 誠  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
森 雅之
発明の名称 貯留価値貸出システム  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 伸一  

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