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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1196905
審判番号 不服2007-21866  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-08 
確定日 2009-05-07 
事件の表示 特願2000-117810「リソグラフィ投影装置およびそれを用いたデバイス製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月30日出願公開、特開2000-330294〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成12年4月19日(パリ条約による優先権主張1999年4月21日、ヨーロッパ特許庁)の出願であって、平成18年10月30日付け拒絶理由通知がなされ、これに対し、平成19年4月9日に手続補正がされたが、同年5月8日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して、平成19年8月8日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年9月3日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成19年9月3日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年9月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

1.本件補正前及び本件補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲についてなされたものであり、
本件補正前の、
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 放射線の投影ビームを供給する放射系と、
マスクを保持するためのマスクホルダを備えたマスクテーブルと、
基板を保持するための基板ホルダを備えた基板テーブルと、
基板の標的部分上にマスクの照射された部分を写像するための投影系と、
基板の初期整合を実行するための予整合装置と、
基板を前記予整合装置から前記基板テーブルに移送するための基板ハンドリング装置と
を有するリソグラフィ投影装置において、
前記予整合装置が前記基板テーブルから機械的に分離されており、
前記基板ハンドリング装置を既知の相対的位置で前記基板テーブルと選択的に結合するためのカップリング装置を有し、
前記基板ハンドリング装置は、絶対位置および速度を許容される位置および速度と比較して修正しながら前記基板テーブルに移送可能に構成されており、
前記カップリング装置は、前記既知の相対的位置において前記基板テーブルに初期接触すると、自動的に所定の物理的関係となるように前記基板ハンドリング装置を前記基板テーブルと結合することを特徴とするリソグラフィ投影装置。
【請求項2】 カップリング装置が、既知の相対的位置で前記予整合装置と選択的に結合するためにさらに配置されている請求項1に記載された装置。
【請求項3】 前記カップリング装置が、前記基板ハンドリング装置に非固定状態に取り付けられた部材と、該部材を前記予整合装置および前記基板テーブルに選択的に結合するために配置されたドッキング装置とを有する請求項1または請求項2に記載された装置。
【請求項4】 前記部材を前記基板ハンドリング装置の所定位置に向かって偏倚するため配置された偏倚装置をさらに有する請求項3に記載された装置。
【請求項5】 前記カップリング装置が、前記基板ハンドリング装置上に設けられた第1部分と、該第1部分と結合するため前記予整合装置および前記基板テーブルのそれぞれに設けられた2つの第2部分とを有する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された装置。
【請求項6】 前記第1部分がローラー軸受を有し、前記第2部分のそれぞれが内部に溝を有するドッキングプレートを有し、前記ローラー軸受が前記溝と密接に係合するようになっている請求項5に記載された装置。
【請求項7】 前記ローラー軸受と前記溝との係合が、前記予整合装置または基板テーブルに保持されたときの前記基板の平面と実質的に平行な第1の方向における、前記基板ハンドリング装置と前記予整合装置または前記基板テーブルとの相対的位置を画定する請求項6に記載された装置。
【請求項8】 前記第1部分が第2のローラー軸受をさらに有し、且つ前記ドッキングプレートが軸受表面をさらに画定しており、前記基板ハンドリング装置と前記予整合装置または前記基板テーブルとの相対的位置を、前記予整合装置または前記基板テーブルに保持されたときの前記基板の平面と実質的に平行であり且つ前記第1の方向に対して実質的に垂直な第2の方向において画定するために、前記第2軸受が前記軸受表面に対して押圧されるようになっている請求項7に記載された装置。
【請求項9】 放射線の投影ビームを供給する放射系と、
マスクを保持するためのマスクホルダを備えたマスクテーブルと、
基板を保持するための基板ホルダを備えた基板テーブルと、
基板の標的部分上にマスクの照射された部分を写像するための投影系と、
基板の初期整合を実行するための予整合装置とを有するリソグラフィ投影装置を用いてデバイスを製造する方法であって、
前記マスクテーブルにパターンを備えたマスクを供給する段階と、
前記予整合装置に放射線感光層を有する基板を供給し、且つ露光のため前記基板を準備する段階と、
基板ハンドリング装置を使用して前記基板を前記予整合装置から前記基板テーブルに移送する段階と、
マスクの照射された部分を基板の標的部分上に写像する段階とを含むデバイス製造方法において、
前記基板を前記予整合装置から移送する段階が、前記基板を前記予整合装置からピックアップする段階、
前記基板ハンドリング装置を絶対位置および速度を許容される位置および速度と比較して修正しながら前記基板テーブルに移送する段階、
前記既知の相対的位置において前記基板テーブルに初期接触すると、自動的に所定の物理的関係となるように前記基板ハンドリング装置を前記基板テーブルと結合する段階、および
前記基板を前記基板テーブルの前記基板ホルダに設置する段階の各副段階を含むことを特徴とするデバイス製造方法。」

「特許請求の範囲】
【請求項1】 放射線の投影ビームを供給する放射系と、
マスクを保持するためのマスクホルダを備えたマスクテーブルと、
基板を保持するための基板ホルダを備えた基板テーブルと、
基板の標的部分上にマスクの照射された部分を写像するための投影系と、
基板の初期整合を実行するための予整合装置と、
基板を前記予整合装置から前記基板テーブルに移送するための基板ハンドリング装置と
を有するリソグラフィ投影装置において、
前記予整合装置が前記基板テーブルから機械的に分離されており、
前記基板ハンドリング装置を既知の相対的位置で前記予整合装置および前記基板テーブルと選択的に結合するためのカップリング装置を有し、
前記基板ハンドリング装置は、絶対位置および速度を許容される位置および速度と比較して修正しながら前記予備整合装置および前記基板テーブルに移送可能に構成されており、
前記カップリング装置は、前記既知の相対的位置において前記予備整合装置および前記基板テーブルに初期接触すると、自動的に所定の物理的関係となるように前記基板ハンドリング装置を前記予備整合装置および前記基板テーブルと結合することを特徴とするリソグラフィ投影装置。
【請求項2】 前記カップリング装置が、前記基板ハンドリング装置に非固定状態に取り付けられた部材と、該部材を前記予整合装置および前記基板テーブルに選択的に結合するために配置されたドッキング装置とを有する請求項1に記載された装置。
【請求項3】 前記部材を前記基板ハンドリング装置の所定位置に向かって偏倚するため配置された偏倚装置をさらに有する請求項2に記載された装置。
【請求項4】 前記カップリング装置が、前記基板ハンドリング装置上に設けられた第1部分と、該第1部分と結合するため前記予整合装置および前記基板テーブルのそれぞれに設けられた2つの第2部分とを有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された装置。
【請求項5】 前記第1部分がローラー軸受を有し、前記第2部分のそれぞれが内部に溝を有するドッキングプレートを有し、前記ローラー軸受が前記溝と密接に係合するようになっている請求項4に記載された装置。
【請求項6】 前記ローラー軸受と前記溝との係合が、前記予整合装置または基板テーブルに保持されたときの前記基板の平面と実質的に平行な第1の方向における、前記基板ハンドリング装置と前記予整合装置または前記基板テーブルとの相対的位置を画定する請求項5に記載された装置。
【請求項7】 前記第1部分が第2のローラー軸受をさらに有し、且つ前記ドッキングプレートが軸受表面をさらに画定しており、前記基板ハンドリング装置と前記予整合装置または前記基板テーブルとの相対的位置を、前記予整合装置または前記基板テーブルに保持されたときの前記基板の平面と実質的に平行であり且つ前記第1の方向に対して実質的に垂直な第2の方向において画定するために、前記第2軸受が前記軸受表面に対して押圧されるようになっている請求項6に記載された装置。
【請求項8】 放射線の投影ビームを供給する放射系と、
マスクを保持するためのマスクホルダを備えたマスクテーブルと、
基板を保持するための基板ホルダを備えた基板テーブルと、
基板の標的部分上にマスクの照射された部分を写像するための投影系と、
基板の初期整合を実行するための予整合装置とを有するリソグラフィ投影装置を用いてデバイスを製造する方法であって、
前記マスクテーブルにパターンを備えたマスクを供給する段階と、
前記基板テーブルと機械的に分離された基板ハンドリング装置を使用して基板を前記予整合装置に移送する段階と、
前記予整合装置に放射線感光層を有する前記基板を供給し、且つ露光のため前記基板を準備する段階と、
前記基板ハンドリング装置を使用して前記基板を前記予整合装置から前記基板テーブルに移送する段階と、
マスクの照射された部分を基板の標的部分上に写像する段階とを含むデバイス製造方法において、
前記基板を前記予整合装置に移送する段階が、
前記基板をウェーハキャリヤまたはプロセストラックからピックアップする段階、
前記基板ハンドリング装置を絶対位置および速度を許容される位置および速度と比較して修正しながら前記予整合装置に移送する段階、および
前記既知の相対的位置において前記予整合装置に初期接触すると、自動的に所定の物理的関係となるように前記基板ハンドリング装置を前記予整合装置と結合する段階を含み、
前記基板を前記予整合装置から移送する段階が、
前記基板を前記予整合装置からピックアップする段階、
前記基板ハンドリング装置を絶対位置および速度を許容される位置および速度と比較して修正しながら前記基板テーブルに移送する段階、
前記既知の相対的位置において前記基板テーブルに初期接触すると、自動的に所定の物理的関係となるように前記基板ハンドリング装置を前記基板テーブルと結合する段階、および
前記基板を前記基板テーブルの前記基板ホルダに設置する段階の各副段階を含むことを特徴とするデバイス製造方法。」と補正するものである。

2.本件補正の適否について

本件補正の請求項8についての補正は、「前記予整合装置に放射線感光層を有する前記基板を供給」する段階を、「前記基板テーブルと機械的に分離された基板ハンドリング装置を使用して基板を前記予整合装置に移送する」段階を含むものに限定されている。
しかしながら、予整合装置に基板を供給する段階として、当該「基板テーブルと機械的に分離された基板ハンドリング装置を使用」する点については、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面には記載されておらず、また、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面の記載から自明な事項であるとは言えないので、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものとは言えず、新規事項の追加に該当する。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

平成19年9月3日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項1乃至9に係る発明は、本願の当初明細書及び図面の記載からみて、平成19年4月9日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1乃至9に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】 放射線の投影ビームを供給する放射系と、
マスクを保持するためのマスクホルダを備えたマスクテーブルと、
基板を保持するための基板ホルダを備えた基板テーブルと、
基板の標的部分上にマスクの照射された部分を写像するための投影系と、
基板の初期整合を実行するための予整合装置と、
基板を前記予整合装置から前記基板テーブルに移送するための基板ハンドリング装置と
を有するリソグラフィ投影装置において、
前記予整合装置が前記基板テーブルから機械的に分離されており、
前記基板ハンドリング装置を既知の相対的位置で前記基板テーブルと選択的に結合するためのカップリング装置を有し、
前記基板ハンドリング装置は、絶対位置および速度を許容される位置および速度と比較して修正しながら前記基板テーブルに移送可能に構成されており、
前記カップリング装置は、前記既知の相対的位置において前記基板テーブルに初期接触すると、自動的に所定の物理的関係となるように前記基板ハンドリング装置を前記基板テーブルと結合することを特徴とするリソグラフィ投影装置。」

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-279456号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(以下、下線は当審で付加したものである。)

記載事項ア
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は、半導体素子の製造に用いられる露光装置、特に、露光されるウエハ等の基板のプリアライメントおよび供給・回収を行う基板供給装置を備えた露光装置に関するものである。」

記載事項イ
「【0007】また、これらの動作はスループット向上のため高速度で同時進行的に行われる。したがって、基板供給装置F上のウエハ搬送、プリアライメント動作等による振動が支持台113を経て台盤101に伝わり、ステッパ本体Sにおけるアライメントおよび露光の精度や動作時間に悪影響を与えることが問題になっている。これらの振動伝達を防止するためにさまざまな工夫がなされている。」

記載事項ウ
「【0010】本発明の目的は、これら従来技術の有する課題に鑑み、半導体露光装置において、プリアライメント精度を維持しつつ、基板供給装置の振動がステッパ本体の台盤に伝わるのを防止し、もってスループットの低下を最小限に抑制することができる安価な手段を提供することにある。」

記載事項エ
「【0018】
【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0019】図1は、本発明の一実施例に係る露光装置を示す摸式立面図である。この露光装置は、台盤1と、台盤1に支持され駆動手段である公知の6軸駆動テーブル機構によって移動されるXYステージ2と、XYステージ2上に載置されたトップステージ3と、その上方に配置された縮小投影レンズ系4と、照明系5と、レチクル6を支持する不図示のレチクル支持装置とを備えたステッパ本体Sを有し、縮小投影レンズ系4はレンズ支持体4aを介して台盤1に支持され、また、照明系5は照明系支持体5a、レンズ支持体4aを介して台盤1に支持されている。台盤1と床7あるいは床7上の不図示の固定盤の間には弾性支持手段である複数のエアマウント8が設けられ、台盤1は、各エアマウント8によって弾力的に支持され、これによって床7の振動が直接ステッパ本体Sに伝達するのを防止するとともに、ステッパ本体Sの自己振動による共振を防止し、かつ外部振動を吸収する。
【0020】照明系5から発せられた照明光はレチクル6および縮小投影レンズ系4を経てトップステージ3上に吸着された不図示のウエハに照射され、ウエハ表面のレジストを露光する。
【0021】ステッパ本体Sの傍にはウエハを自動的に供給・回収するための基板供給装置Fが隣接して設けられる。図2は、図1の露光装置を上から見た図である。基板供給装置Fは図2に示すようにウエハを集積するウエハカセット9と、ウエハカセット9から順次取り出されたウエハのプリアライメントを行うプリアライメント装置10と、プリアライメントを終えたウエハをステッパ本体Sに搬入する搬入ハンド11と、露光の終了したウエハをステッパ本体Sから回収し、ウエハカセット9に収納するとともに未露光ウエハをウエハカセット9から取り出してプリアライメント装置10へ供給するロボット12を有する。これらのうちプリアライメント装置10と搬入ハンド11はプリアライメントベース(以下、PAベースという)13上に支持され、それ以外は支持台14上に支持される。また、支持台14はPAベース13を支持・位置決めするための位置決め部材(後述)と、PAベース13を授受するための駆動部材(後述)とを有し、ステッパ本体Sの台盤1との間に所定値以上の間隙を設けて直接床7あるいは床7上の固定盤に固定されている。また、台盤1はPAベース13を支持・位置決めするためのステー15を有する。【0022】PAベース13は通常、支持台14上に支持されており、台盤1上のXYステージが露光済みウエハをロボット12へ引き渡すために回収位置へ移動すると同時に支持台14の拘束を離れ、ステー15へ支持・位置決めされる。そしてXYステージ2が供給位置へ移動したところでPAベース13上の搬入ハンド11はプリアライメント済みのウエハをトップステージ3へ渡し、XYステージ2がアライメント位置へ移動するのと同時にPAベース13はステー15の拘束を離れて再び支持台14へ支持・位置決めされる。
【0023】PAベース13を支持・位置決めするための部材は、図3に示すように、支持台14上には、PAベース13を支持するための支持部材16と、6自由度方向を拘束するためのガイドとしてのテーパ穴16a、V溝(不図示)、ストッパピン16bを有し、また各支持部材とPAベース13を挟んで向かい合う位置にPAベース13を押し上げて拘束するためのエアシリンダ17を有する。同様にステー15上にもテーパ穴15a、V溝(不図示)、ストッパピン15bを有し、またPAベース13上には支持台14上のテーパ穴16aおよびV溝ならびにステー15上のテーパ穴15aおよびV溝に向かい合う位置にテーパピン13aを有する。これによりPAベース13、エアシリンダ17のシャフト17aが上昇したときには支持台14に、また下降したときにはステー15に支持・位置決めするようになっている。支持部材16とステー15にはPAベース13を突き当てたときの衝撃を吸収するための不図示のアブソーバが取り付けられている。
【0024】なお、同様の原理で搬入ハンド11のみをステッパ本体と基板供給装置に対して着脱可能な構成にしても良い。」

上記、記載事項エに記載された実施例(段落【0020】?【0024】)から、

(1)プリアライメント装置10及び搬入ハンド11(及びこれらを搭載するプリアライメント(PA)ベース13)が、XYステージ2を搭載するステッパ(露光部)本体の台盤1のステー15に接合・分離すること、及び、該接合は、台盤1のステー15上のテーパ穴15a、V溝(及びストッパピン15b)とPAベース13上のテーパピン13aを、PAベース13の上げ下げを行うエアシリンダ17の動作制御によって、係合・拘束がなされること、が開示されている。

(2)また、この別態様として、段落【0024】には、基板供給装置からステッパ本体へのウエハの移送は、搬入ハンド11のみのステッパ(露光部)本体との着脱で行うこと、及び、この着脱の原理は、プリアライメント(PA)ベース13の着脱と同じものとする点、開示されている。
この態様によれば、プリアライメント装置10及びプリアライメント(PA)ベース13自体は、ステッパ本体のステー15への着脱が不要となることは自明であるから、プリアライメント装置10は、当然にステッパ本体(及びそれに属するXYテーブル2)から、機械的に分離されたままの配置となる。
また、搬入ハンド11が、上記と同様の原理で、ステー15への着脱するためには、テーパピン13aが搬入ハンド11に存在し、エアシリンダ17による上げ下げは、搬入ハンド11にのみ作用することも、自明の範囲内である。
(このような構成を開示する周知例として、本願出願前に頒布された刊行物である特開平2-309624号公報の第4頁右上欄第3行目乃至第7行目までの記載、第8頁右上欄第6行目乃至第10頁右上欄第3行目までの記載、及び第6図、第7図を参照のこと。基板搬送部からの露光本体部への振動伝達の低下のための構造として、ロボットハンド8が、XYステージ5を有する露光本体部のベース定盤6に取り付けられた支持部25に対して着脱可能とする構成として、支持部25側のテーパーピン26、ロボットハンド側のテーパー穴39、及び上下駆動するアクチュエータ37を用いたものが開示されている。
(「[実施例4]
第6図及び第7図は本発明の第4の実施例を示す。・・・また、これらの図は、ウエハ搬送部の一部を本体側である露光部に取付け、上記一部具外の物は上記露光部より分離したステッパを示すものである。
これらの図において、20はウエハ、25は露光本体側の構造体であるベース定盤6に取り付けられた本体側の支持部、26は支持部25に取付られている位置合わせ用の一対のテーパービン、31はウエハ搬送部を支持しているベースで、露光本体側の構造体とは直接固定していない。32はベース31を床から支えているマウントで、露光本体側の構造体を支持しているエアマウント7とは床によってのみつながっている。
・・・37は位置合せ板33を上下動させるためのアクチュエーターであるところのエアシリンダー、38はロボットハンド8を駆動するためのアクチュエーター等を含むハンド駆動ユニット、39はハンド駆動ユニット38の位置合せをおこなうためにテーパーピン26及びテーパービン34に対向する位置に配置されているテーパー穴、41はプリアライメントステージ9を駆動するためのアクチュエーター等を含む駆動ユニットである。・・・
次に、上記構成におけるウエハ搬送の流れを述べる。ウエハカセット21からロボット22によって取り出されたウエハは、プリアライメントステージ9に供給され、プリアライメントステージ9は、前述の実施例と同様に、ロボットハンド8に対するウエハの位置とオリフラの角度を合せる。
第6図はプリアライメントステージ9ヘウエハ20が受け渡された状態である。ここで、位置合せ板33は、エアシリンダー37により所定位置までZ方向に上昇しており、テーパーピン34がテーパー穴39に合致している。テーパービン34が位置合せ板33)は、ガイドシャフト35及びガイドベアリング36によって、ベース31に対して平面方向(XY方向)に正確な位置を保っているから、この時、ロボットハンド8及び駆動ユニット38は、プリアライメントステージ9及び駆動ユニット41に対して所定の正確な位置関係を保っている。また、この時には、装置本体側と、ベース31で支持されているウエハ搬送部が、振動等により相対的に移動し合っても、エアシリンダー37によってハンド駆動ユニット38が持ち上げられているため、本体側の支持部25に取付けられているテーパービン26は、対向するテーパー穴39に対して接触しない十分なクリアランスを持っている。
次に、ハンド駆動ユニット38によりロボットハンド8が駆動され、プリアライメントステージ9に載置されているウエハ20を、露光本体側のウエハ受渡し地点の上方の所定の待機位置へ移動し、受渡しの指令がくるまで待機する。・・・次に、本体側からウエハ搬送部に対してウエハ供給の指令がくると、エアシリンダー36により位置合わせ板33が2方向に下降動作をはじめ、ハンド駆動ユニット38が下降し、デーパ-ピン26が対向するテーパー穴39に対して接触を始める。同時に、テーパービン34は対向するテーパー穴39に対して離れはじめ、ついには接触しない状態まで完全に分離し、駆動ユニット38は、テーパービン26及びテーパー穴39によって、支持部25に対して所定の正確な位置関係を保つようになる。 そして、ハンド駆動ユニット38によりロボットハンド8が駆動され、ウエハ20を本体側にあるトップステージ4に受渡すための動作に入り、終了後速やかにハンド8は本体側より回避し、エアシリンダー36により位置合わせ板33が上昇動作を始め、ハンド駆動ユニット38がテーパーピン34及びテーパー穴39によって支持され、当初の正確な位置関係を保つようになる。なお、露光終了後のウエハ回収及びウエハの連続的な処理については、上に述べたハンド駆動ユニット38に関する位置合せ等を除けば、第2の実施例と同様である。以上がウエハ搬送の流れである。
本実施例では、ウエハをウエハカセット21から取り出してからトップステージ4に供給のための待機状態までの動作と、トップステージ4からの回収からウニハカセット21への収納までの動作というウエハ搬送のほとんどの工程が、振動等に関して1本体側である露光装置部に一切の影響を与えないことになる。・・・」))

以上の(1)、(2)をまとめると、記載事項エには、
「プリアライメント装置10は、XYテーブル2から機械的に分離されており、
搬入ハンド11を、XYテーブル2を有するステッパ本体の台盤1のステー15と着脱するための、ステー15上のテーパ穴15a、V溝(及びストッパピン15b)と、搬入ハンド11側のテーパピンを有し、エアシリンダ17の上下駆動によって、該テーパ穴15aとテーパピンとを接合し拘束するか、又は、該接合を解除する、露光装置」が記載されていると言える。

以上、記載事項ア?エから、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「照明系5と、
レチクル6を支持するレチクル支持装置と、
ウエハを吸着するトップステージ3を載置した、台盤1に支持され駆動手段である公知の6軸駆動テーブル機構によって移動されるXYステージ2と、
XYステージ2と台盤1を介して一体化されたステー15と、
レチクル6を経た照射光をトップステージ3上に吸着されたウエハに照射する縮小投影レンズ系4と、
ウエハのプリアライメントを行うプリアライメント装置10と、
プリアライメント済みのウエハをトップステージ3へ渡す搬入ハンド11と、
を有する露光装置において、
プリアライメント装置10は、XYテーブル2から機械的に分離されており、
搬入ハンド11を、ステー15と着脱するための、ステー15上のテーパ穴15a、V溝(及びストッパピン15b)と、搬入ハンド11側のテーパピンを有し、エアシリンダ17の上下駆動によって、該テーパ穴15aと該テーパピンを接合し拘束するか、又は、該接合を解除する、露光装置」

3.対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「照明系5」は、本願発明の「放射線の投影ビームを供給する放射系」に相当する。

(2)引用発明の「レチクル6」は、本願発明の「マスク」に相当するので、引用発明の「レチクル6を支持するレチクル支持装置」は、本願発明の「マスクを保持するためのマスクホルダを備えたマスクテーブル」に相当する。

(3)引用発明の「ウエハ」及び「トップステージ3」は、それぞれ本願発明の「基板」及び「基板ホルダ」に相当する。また、引用発明の「XYステージ2」、「台盤1」、及び「ステー15」は、互いに既知の相対的位置で一体化されたものであり、かつ、これらの一体化部材が、基板を搭載するものであることは、記載事項エ及び引用例1の【図3】から明らかであるから、これらは全体として、本願発明の「基板テーブル」に相当すると言える。
したがって、引用発明の「ウエハを吸着するトップステージ3を載置した、台盤1に支持され駆動手段である公知の6軸駆動テーブル機構によって移動されるXYステージ2と、
XYステージ2と台盤1を介して一体化されたステー15」は、本願発明の「基板を保持するための基板ホルダを備えた基板テーブル」に相当する。

(4)引用発明の「レクチル6」及び「縮小投影レンズ系4」は、それぞれ本願発明の「マスク」及び「投影系」に相当し、また、引用発明の「縮小投影レンズ系4」は、照明光により、レチクル6上のパターンをウエハ上に投影写像することは、明らかであるから、引用発明の「レチクル6を経た照射光をトップステージ3上に吸着されたウエハに照射する縮小投影レンズ系4」は、本願発明の「基板の標的部分上にマスクの照射された部分を写像するための投影系」に相当する。

(5)引用発明の「ウエハ」、「プリアライメント」、及び「プリアライメント装置10」は、それぞれ本願発明の「基板」、「初期整合」、及び「予整合装置」に相当するので、引用発明の「ウエハのプリアライメントを行うプリアライメント装置10」は、本願発明の「基板の初期整合を実行するための予整合装置」に相当する。

(6)引用発明の「ウエハ」及び「搬入ハンド11」は、それぞれ本願発明の「ウエハ」及び「基板ハンドリング装置」に相当し、また、引用発明の「トップステージ3」は「XYテーブル2」(本願発明の「基板テーブル」に相当)に載置されたものであるので、引用発明の「プリアライメント済みのウエハをトップステージ3へ渡す搬入ハンド11」は、本願発明の「基板を前記予整合装置から前記基板テーブルに移送するための基板ハンドリング装置」に相当する。

(7)引用発明の「露光装置」は、本願発明の「リソグラフィ投影装置」に相当する。

(8)引用発明の「プリアライメント装置10は、XYテーブル2から機械的に分離されており、搬入ハンド11を、XYテーブル2を有するステッパ本体の台盤1のステー15と着脱するための、ステー15上のテーパ穴15a、V溝(及びストッパピン15b)と、搬入ハンド11側のテーパピンを有し、エアシリンダ17の上下駆動によって、該テーパ穴15aと該テーパピンを接合し拘束するか、又は、該接合を解除する、露光装置」と、
本願発明の「前記予整合装置が前記基板テーブルから機械的に分離されており、
前記基板ハンドリング装置を既知の相対的位置で前記基板テーブルと選択的に結合するためのカップリング装置を有し」、「前記カップリング装置は、前記既知の相対的位置において前記基板テーブルに初期接触すると、自動的に所定の物理的関係となるように前記基板ハンドリング装置を前記基板テーブルと結合することを特徴とするリソグラフィ投影装置」とを比較すると、

ア 引用発明の「XYテーブル2を有するステッパ本体の台盤1のステー15」は、上記3.(3)の考察から、本願発明の「基板テーブル」(の一部)に相当する。

イ また、引用発明の「プリアライメント装置10」、「搬入ハンド11」、「着脱」、及び「ステー15上のテーパ穴15a、V溝(及びストッパピン15b)と、搬入ハンド11側のテーパピン」は、それぞれ本願発明の「予整合装置」、「基板ハンドリング装置」、「選択的に結合」、及び「カップリング装置」に、それぞれ相当する。

ウ 引用発明の「搬入ハンド11」と「XYテーブル2」との結合の物理的な配置関係は、記載事項エに記載された動作手順によれば、該接合の初期の接触後、エアシリンダ17の下降に伴い、「テーパピン」が、「テーパ穴15a、V溝」の傾斜面に従って、最終的に所定の物理的な位置関係に嵌り込んで、結合固定されることは、自明であるから、引用発明の「エアシリンダ17の上下駆動によって、該テーパ穴15aと該テーパピンを接合し拘束する」は、本願発明の「前記カップリング装置は、前記既知の相対的位置において前記基板テーブルに初期接触すると、自動的に所定の物理的関係となるように前記基板ハンドリング装置を前記基板テーブルと結合する」に相当するものと言える。

以上 ア?ウから、両者は相当関係にあると言える。

したがって、上記(1)?(8)の対比考察から、本願発明と引用発明とは、
「放射線の投影ビームを供給する放射系と、
マスクを保持するためのマスクホルダを備えたマスクテーブルと、
基板を保持するための基板ホルダを備えた基板テーブルと、
基板の標的部分上にマスクの照射された部分を写像するための投影系と、
基板の初期整合を実行するための予整合装置と、
基板を前記予整合装置から前記基板テーブルに移送するための基板ハンドリング装置と
を有するリソグラフィ投影装置において、
前記予整合装置が前記基板テーブルから機械的に分離されており、
前記基板ハンドリング装置を既知の相対的位置で前記基板テーブルと選択的に結合するためのカップリング装置を有し、
前記カップリング装置は、前記既知の相対的位置において前記基板テーブルに初期接触すると、自動的に所定の物理的関係となるように前記基板ハンドリング装置を前記基板テーブルと結合することを特徴とするリソグラフィ投影装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1

基板ハンドリング装置の動作制御として、本願発明では、「絶対位置および速度を許容される位置および速度と比較して修正しながら基板テーブルに移送可能に構成されて」いるのに対し、引用発明にはそのような制御に関しての明示がない点。

4.当審の判断

前記相違点1について検討する。

相違点1について

基板の搬送手段(ハンドリング装置)を動作する際に、該搬送手段の位置及び速度を一定範囲内に収まるように制御することは、半導体露光装置の分野では、従来周知の手段である。
(例えば、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-107125号公報の記載
「【請求項1】 被処理体を搬送するための搬送手段を駆動する駆動ユニットと,
前記駆動ユニットの動作を制御する制御ユニットと,
前記搬送手段の搬送状態を監視し,搬送状態が規定値を超えると前記駆動ユニットを停止させる停止手段とを備え,
前記規定値が,前記搬送手段の位置的調整を行うティーチングモードと前記搬送手段を実運転させる実運転モードとに選択的に切り替え可能に構成されていることを特徴とする搬送装置のインターロック機構。
【請求項2】 前記駆動ユニットは,搬送手段を駆動するサーボモータと,このサーボモータを電気的に駆動するドライバとにより構成され,
前記停止手段は,前記搬送手段の搬送速度と搬送手段の位置のずれを監視し,これらの内少なくとも1つが個々の規定値を超えると前記駆動ユニットを停止させるか,または前記駆動ユニットが一定以上のトルクを発生させないようにさせることを特徴とする請求項1の搬送装置のインターロック機構。・・・
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,LCD基板や半導体ウェハなどの基板を搬送するための搬送装置のインターロック機構に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば,LCD基板や半導体ウェハなどの製造においては,LCD基板や半導体ウェハの上面にレジストパターンを形成させるために,いわゆるリソグラフィ処理が行われる。このリソグラフィ処理は,基板の洗浄,基板の表面へのレジストの塗布,そのレジストの露光,現像など,種々の処理工程を含んでいる。」や、
特開平11-340297号公報の記載
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置用ガラス基板、半導体基板およびプラズマディスプレイ用基板などの基板を第1基板位置から第2基板位置に搬送する基板搬送装置および方法に関するものである。・・・
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記基板処理装置に用いられている基板搬送装置は、互いに異なる基板位置(例えば、カセットと処理部、あるいは互いに異なる処理部)の間で基板を搬送するものであり、基板を保持可能なハンドを一方の基板位置に移動させて基板を受取り、この基板を保持したままで当該ハンドを別の基板位置に移動させて基板搬送を行っている。また、この基板搬送装置では、基板搬送を行っている際にハンドから基板が脱落しない範囲内で、基板搬送に要する時間を短縮して基板処理装置の高スループット化を図るべく、移動可能なハンドの移動速度を定めている。・・・
【0051】また、上記実施形態では、基板にレジスト塗布前の洗浄処理からレジスト塗布・露光・現像までを連続して順次行う基板処理装置に本発明を適用しているが、これとは異なる装置にも本発明にかかる基板搬送装置を適用することができる。例えば、処理部の間で基板搬送装置によって基板を搬送する場合にも、当該装置に本発明を適用することができる。」等を参照のこと。)
したがって、引用発明の「搬入ハンド11」の動作制御において、上記従来周知の位置・速度制御手段を採用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到する程度の事項である。

また、上記相違点1に関して、本願発明によってもたらされる効果は引用例1に記載された発明、及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明は、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1に記載された発明、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-02 
結審通知日 2008-12-03 
審決日 2008-12-17 
出願番号 特願2000-117810(P2000-117810)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
P 1 8・ 561- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 越河 勉
村田 尚英
発明の名称 リソグラフィ投影装置およびそれを用いたデバイス製造方法  
代理人 大賀 眞司  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  

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