• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する E06B
審判 訂正 発明同一 訂正する E06B
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する E06B
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する E06B
管理番号 1197403
審判番号 訂正2009-390028  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2009-03-03 
確定日 2009-04-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4017615号に関する訂正審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第4017615号に係る特許請求の範囲及び明細書を本件審判請求書に添付された特許請求の範囲及び明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯
平成16年 7月 9日 本件出願(特願2004-202656号)
平成18年 1月26日 出願公開(特開2006-22584号)
平成19年 9月28日 設定登録(特許第4017615号,
請求項の数:2)
平成21年 3月 3日 本件審判請求

2.請求の要旨
本件審判請求の要旨は,特許第4017615号の特許請求の範囲及び明細書を,本件審判請求書に添付した特許請求の範囲及び明細書のとおりに訂正することを認める,との審決を求めるものであって,本件審判請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の訂正事項は,次のとおりである。(下線は,訂正箇所を示す。)

(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に,
「建物の固定部に取付自在な枠体と、この枠体に開閉自在に支承されるドアと、機能設備が装備され、かつ、前記ドアに隣接する状態で前記枠体に支持されるパネル材とから成り、
前記パネル材をその側方端部に設けた支点周りで揺動可能に前記枠体に支承して、前記パネル材を、閉じ状態にある前記ドアと平行な姿勢とすべく閉じ揺動された作用姿勢と、前記パネル材の背面を露呈すべく開き揺動されたメンテナンス姿勢とに切換自在に構成されており、
前記パネル材を前記作用姿勢に係止維持するロック機構が装備され、
前記支点が、前記パネル材の左右一側端部のうちの前記ドアから遠い側の端部に設定され、
前記ロック機構は、前記枠体における前記ドアと前記パネル材との間に配置される中間縦枠部と、前記パネル材とを相対固定するボルトを設けて構成され、前記ボルトは、中空状の断面形状を有する前記中間縦枠部におけるパネル材側の側壁部分と前記パネル材とに亘る状態で螺装されるとともに、前記ドアを閉じ姿勢に維持するドアロック装置における出退シリンダ挿入用として前記中間縦枠部におけるドア側の側壁部分に形成された開口部を通して前記中間縦枠部内に挿入自在に構成されている袖パネル付ドア。」とあったものを,

「建物の固定部に取付自在な枠体と、この枠体に開閉自在に支承されるドアと、機能設備が装備され、かつ、前記ドアに隣接する状態で前記枠体に支持されるパネル材とから成り、
前記パネル材をその側方端部に設けた支点周りで揺動可能に前記枠体に支承して、前記パネル材を、閉じ状態にある前記ドアと平行な姿勢とすべく閉じ揺動された作用姿勢と、前記パネル材の背面を露呈すべく開き揺動されたメンテナンス姿勢とに切換自在に構成されており、
前記パネル材を前記作用姿勢に付勢維持する機構と前記作用姿勢に係止維持するロック機構が装備され、
前記支点が、前記パネル材の左右一側端部のうちの前記ドアから遠い側の端部に設定され、
前記ロック機構は、前記枠体における前記ドアと前記パネル材との間に配置される中間縦枠部と、前記パネル材とを相対固定するボルトを設けて構成され、前記ボルトは、中空状の断面形状を有する前記中間縦枠部におけるパネル材側の側壁部分と前記パネル材とに亘る状態で螺装されるとともに、前記ドアを閉じ姿勢に維持するドアロック装置における出退シリンダ挿入用として前記中間縦枠部におけるドア側の側壁部分に形成された開口部を通して前記中間縦枠部内に挿入自在に構成されている袖パネル付ドア。」と訂正する。

(2)訂正事項b
明細書の段落【0007】に,
「請求項1に係る発明は、袖パネル付ドアにおいて、建物の固定部17に取付自在な枠体1と、この枠体1に開閉自在に支承されるドア2と、機能設備8,10が装備され、かつ、前記ドア2に隣接する状態で前記枠体1に支持されるパネル材4とから成り、
前記パネル材4をその側方端部に設けた支点Q周りで揺動可能に前記枠体1に支承して、前記パネル材4を、閉じ状態にある前記ドア2と平行な姿勢とすべく閉じ揺動された作用姿勢と、前記パネル材4の背面4Hを露呈すべく開き揺動されたメンテナンス姿勢とに切換自在に構成されており、
前記パネル材4を前記作用姿勢に係止維持するロック機構33が装備され、
前記支点Qが、前記パネル材4の左右一側端部のうちの前記ドア2から遠い側の端部に設定され、
前記ロック機構33は、前記枠体1における前記ドア2と前記パネル材4との間に配置される中間縦枠部16と、前記パネル材4とを相対固定するボルト34を設けて構成され、前記ボルト34は、中空状の断面形状を有する前記中間縦枠部16におけるパネル材側の側壁部分16dと前記パネル材4とに亘る状態で螺装されるとともに、前記ドア2を閉じ姿勢に維持するドアロック装置5における出退シリンダ5s挿入用として前記中間縦枠部16におけるドア側の側壁部分16bに形成された開口部22を通して前記中間縦枠部16内に挿入自在に構成されていることを特徴とする。」とあったものを,

「請求項1に係る発明は、袖パネル付ドアにおいて、建物の固定部17に取付自在な枠体1と、この枠体1に開閉自在に支承されるドア2と、機能設備8,10が装備され、かつ、前記ドア2に隣接する状態で前記枠体1に支持されるパネル材4とから成り、
前記パネル材4をその側方端部に設けた支点Q周りで揺動可能に前記枠体1に支承して、前記パネル材4を、閉じ状態にある前記ドア2と平行な姿勢とすべく閉じ揺動された作用姿勢と、前記パネル材4の背面4Hを露呈すべく開き揺動されたメンテナンス姿勢とに切換自在に構成されており、
前記パネル材4を前記作用姿勢に付勢維持する機構32と前記作用姿勢に係止維持するロック機構33が装備され、
前記支点Qが、前記パネル材4の左右一側端部のうちの前記ドア2から遠い側の端部に設定され、
前記ロック機構33は、前記枠体1における前記ドア2と前記パネル材4との間に配置される中間縦枠部16と、前記パネル材4とを相対固定するボルト34を設けて構成され、前記ボルト34は、中空状の断面形状を有する前記中間縦枠部16におけるパネル材側の側壁部分16dと前記パネル材4とに亘る状態で螺装されるとともに、前記ドア2を閉じ姿勢に維持するドアロック装置5における出退シリンダ5s挿入用として前記中間縦枠部16におけるドア側の側壁部分16bに形成された開口部22を通して前記中間縦枠部16内に挿入自在に構成されていることを特徴とする。」と訂正する。

(3)訂正事項c
明細書の段落【0010】に,
「パネル材を作用姿勢に係止維持するロック機構を設けてあるので、袖パネルを不測の開き揺動なく作用姿勢に良好に維持でき、便利であるとともに信頼性も向上する。」とあったものを,

「パネル材を作用姿勢に係止維持するロック機構を設けてあるので、袖パネルを不測の開き揺動なく作用姿勢に良好に維持でき、便利であるとともに信頼性も向上する。
また、パネル材を作用姿勢に付勢維持する機構を設けてあるので、工事途中で他所に行く等の一旦パネル材を閉じる必要の有る場合には、直ぐに開けるようパネル材を簡単に作用姿勢に付勢維持できて便利である。」と訂正する。

3.訂正の目的
(1)訂正事項aについて
訂正事項aは,袖パネル付ドアが,「(パネル材を)作用姿勢に係止維持するロック機構」に加え,「(パネル材を)作用姿勢に付勢維持する機構」も備えたことを限定するものであって,両機構は,どちらも「パネル材を作用姿勢に維持する機構」である点で共通するものである。すると,訂正事項aは,「パネル材を作用姿勢に維持する機構」について,「(パネル材を)作用姿勢に付勢維持する機構」を有するものに限定するものであるから,特許請求の範囲の限縮を目的とするものである。
また,本件出願の願書に添付した明細書の段落【0028】には「袖パネル3を枠体1に対して閉じた状態、即ち作用姿勢に付勢維持する機構であるマグネットキャッチ32が装備されている。」と記載されているから,訂正事項aは,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに,訂正事項aは,請求項1におけるパネル材を作用姿勢に維持する機構を限定したものであるから,特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

(2)訂正事項bについて
訂正事項bは,上記訂正事項aの訂正に伴い,明細書の記載を,特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また,上記訂正事項aと同じ理由により,訂正事項bは,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり,かつ,特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

(3)訂正事項cについて
訂正事項cは,上記訂正事項a及びbの訂正に伴い,明脚書中の記載を整合させるためのものであるから,明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また,本件出願の願書に添付した明細書の段落【0031】には「袖パネル3を作用姿勢に付勢維持するマグネットキャッチ32を設けてあるので、工事途中で他所に行く等の一旦袖パネル3を閉じる必要の有る場合には、直ぐに開けるよう袖パネル3を簡単に作用姿勢に付勢維持できて便利である。」と記載されているから,訂正事項cは,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに,補正事項cは,特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

(4)まとめ
したがって,上記訂正事項aないしcを含む本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的としたものであり,また,同条第3項及び第4項の規定に適合したものである。

4.独立特許要件
上記「3.訂正の目的」で検討したとおり,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正を含むから,訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明が,特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかどうか,すなわち,特許法第126条第5項の要件に適合するかどうかについて検討を行う。

(1)本件訂正発明
訂正後の請求項1及び2に係る発明(以下「訂正発明1」等という。)は,本件審判請求書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された,次のとおりのものである。
「【請求項1】
建物の固定部に取付自在な枠体と、この枠体に開閉自在に支承されるドアと、機能設備が装備され、かつ、前記ドアに隣接する状態で前記枠体に支持されるパネル材とから成り、
前記パネル材をその側方端部に設けた支点周りで揺動可能に前記枠体に支承して、前記パネル材を、閉じ状態にある前記ドアと平行な姿勢とすべく閉じ揺動された作用姿勢と、前記パネル材の背面を露呈すべく開き揺動されたメンテナンス姿勢とに切換自在に構成されており、
前記パネル材を前記作用姿勢に付勢維持する機構と前記作用姿勢に係止維持するロック機構が装備され、
前記支点が、前記パネル材の左右一側端部のうちの前記ドアから遠い側の端部に設定され、
前記ロック機構は、前記枠体における前記ドアと前記パネル材との間に配置される中間縦枠部と、前記パネル材とを相対固定するボルトを設けて構成され、前記ボルトは、中空状の断面形状を有する前記中間縦枠部におけるパネル材側の側壁部分と前記パネル材とに亘る状態で螺装されるとともに、前記ドアを閉じ姿勢に維持するドアロック装置における出退シリンダ挿入用として前記中間縦枠部におけるドア側の側壁部分に形成された開口部を通して前記中間縦枠部内に挿入自在に構成されている袖パネル付ドア。
【請求項2】
前記支点が上下向きのものに設定されている請求項1に記載の袖パネル付ドア。」

(2)特許法第29条の2についての判断
(2-1)先願明細書の記載事項
本件審判請求人が提出した,本件出願の出願日前の出願であって,本件出願の出願日後に公開された特願2003-182110号(特開2005-16142号)の明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には,「可動式袖パネルを備えた扉装置」について,次の事項が記載されている。
(a)「【請求項1】
左右の竪枠と該左右の竪枠間に設けた中竪枠とを有する枠体に設けられる扉装置であって、該扉装置は扉体と袖パネルを有しており、該扉体は一方の竪枠を戸尻側、該中竪枠を戸先側として該一方の竪枠に対して回動可能に装着されており、該袖パネルは他方の竪枠を戸尻側、該中竪枠を戸先側として該他方の竪枠に対して回動可能に装着されており、該中竪枠は該袖パネル及び該扉体の戸先側竪枠を兼用しており、常時は、該袖パネルの戸先側は該中竪枠に着脱自在に固定されていることを特徴とする可動式袖パネルを備えた扉装置。」
(b)「【請求項2】
請求項1において、該中竪枠は中空部材であると共に、該扉体の戸先側端面に対向する扉体側壁面と、該袖パネルの戸先側端面に対向するパネル側壁面を有し、該扉体側壁面には切欠部が形成されていると共に該切欠部にはストライクが着脱自在に装着されており、該パネル側壁面には該切欠部に対応する部位に螺子孔が形成されており、常時は、該袖パネルの戸先側端面は該中竪枠の中空部側から螺挿する螺子によって該パネル側壁面に着脱可能に装着されており、該螺子の頭部は該ストライクによって被覆されており、該ストライクを取り外して該螺子の頭部を露出させ、該螺子を取り外すことで、該袖パネルは回動可能となることを特徴とする可動式袖パネルを備えた扉装置。」
(c)「【0005】・・・本発明の他の目的は、袖部にインターフォンを設けた場合に、インターフォンのメンテナンスを良好に行うことができる扉装置を提供することにある。・・・」
(d)「【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、袖パネル付き扉体の正面図、図2は扉体及び袖パネルの縦断面図、図3は袖パネル付き扉体の横断面図である。建物躯体に設けた上枠1、下枠2、左右の竪枠3,4からなる四周状の枠体には扉体5および袖パネル6が装着されている。袖パネル6は枠体とは
別部材で構成されており、後述するように、枠体に対して回動自在であると共に、枠体から取り外し可能に構成されている。」
(e)「【0012】
四周枠には左右の竪枠3,4と平行して垂直方向に延出する中竪枠7が設けてあり、中竪枠7を境に左右の一方が建物開口部、他方が躯体側となっている。建物開口部は、上枠1、下枠2、右側の竪枠4、中竪枠7から構成されており、扉体5によって該建物開口部を開閉するように構成されている。扉体5は、戸尻側に竪枠4、戸先側に中竪枠7が位置するようになっている。」
(f)「【0013】
扉体5は、正面視長方形状であり、一方の側部が丁番8を介して竪枠4に連結してあり、竪枠4を戸尻側として建物開口部を開閉する。・・・扉体5に設けられる取手の種類や錠前装置はプッシュプル錠に限定されるものではなく、扉体5の戸先側端面からラッチおよび/あるいはデッドボルトが突出して、突出したラッチおよび/あるいはデッドボルトが中竪枠7に設けたストライクに係止するものであれば、他のいかなる取手・錠前装置でもよい。」
(g)「【0017】
袖パネル6の前面部60には、上から、室名札66、インターフォンパネル67、上部ガ
イド(新聞受)68、下部ガイド69が設けられる。・・・」
(h)「【0019】
中竪枠7の扉体5に面する側壁70には、扉体5の錠前装置のラッチおよび/あるいはデッドボルトが突出する位置に合わせて切欠部74が形成されており、切欠部74には螺子を介してストライク10が着脱可能に装着されている。・・・」
(i)「【0020】
中竪枠7の袖パネル6の戸先側端面62に面する側壁71には、対向する他の側壁70の切欠部74に対応する位置に螺子孔が貫設されており、ストライク10を取り外した状態では、切欠部74を介して該螺子孔が露出することになる。一方、袖パネル6の戸先側端面62にも側壁71の該螺子孔に対応する位置に螺子孔が形成されている。戸先側端面62が互いに密着する2つの板材から構成されている場合には、双方の板材に螺子孔が形成されている。中竪枠7の中空部側から側壁71の該螺子孔に螺子11を螺挿させることで、螺子11によって、側壁71と袖パネル6の戸先側端面62とを螺着するようになっている。」
(j)「【0021】
袖パネル6の戸尻側は、竪枠3に対して隠し丁番12を介して回動可能に装着されている。隠し丁番12は袖パネル6の内部に設けてあり、丁番12が外部に露出することがない。・・・」
(k)図1には,袖パネル6が扉体5に隣接する状態で枠体に支持されること,及び,隠し丁板12が袖パネル6の左右一側端部のうちの扉体5から遠い側の端部である他方の竪枠3に設けられていること,が示されている。
(l)図3には,螺子11が枠体における扉体5と袖パネル6との間に配置される中竪枠7と袖パネル6とを相対固定するものであること,及び,螺子11が袖パネル6の戸先側端面に対向するパネル側壁面71と袖パネル6とに亘る状態で螺装されること,が示されている。
(m)図4には,螺子11が中竪枠7の扉体側壁面70に形成された切欠部74を通して中竪枠7内に挿入自在であること,が示されている。
上記記載事項(a)ないし(m)に記載された内容及び図面の記載並びに技術常識を総合すると,先願明細書には,次の発明(以下,「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
(先願発明)
「建物躯体に設けた四周状の枠体には扉体5および袖パネル6が装着されており,扉体5に隣接する状態で枠体に支持される袖パネル6の前面部60にはインターフォンパネル67が設けられており,
枠体は中竪枠7を有しており,袖パネル6は他方の竪枠3を戸尻側,中竪枠7を戸先側として,他方の竪枠3に対して隠し丁板12を介して回動可能に装着されており,袖パネル6の戸先側が中竪枠7に固定された閉じ姿勢と,固定解除された開き姿勢とに切換自在であり,
袖パネル6を閉じ姿勢に固定する螺子11を備え,
隠し丁板12は,袖パネル6の左右一側端部のうちの扉体5から遠い側の端部である他方の竪枠3に設けられており,
螺子11は,枠体における扉体5と袖パネル6との間に配置される中竪枠7と,袖パネル6とを相対固定するものであり,
中空部材である中竪枠7は袖パネル6の戸先側端面に対向するパネル側壁面71を備え,螺子11は前記パネル側壁面71と,袖パネル6とに亘る状態で螺装されるとともに,
中竪枠7の扉体側壁面70には,扉体5を閉じ姿勢に維持する錠前装置が突出する位置に合わせて切欠部74が形成されており,螺子11は,前記切欠部74を通して中竪枠7内に挿入自在である,可動式袖パネルを備えた扉装置。」

(2-2)訂正発明1について
訂正発明1と先願発明を対比すると,先願発明の「扉体5」は訂正発明1の「ドア」に,以下同様に,「袖パネル6」は「パネル材」に,「インターフォンパネル67」は「機能設備」に,「中竪枠7」は「中間竪枠部」に,「隠し丁板12」は「支点」に,「閉じ姿勢」は「作用姿勢」に,「開き姿勢」は「メンテナンス姿勢」に,「螺子11」は「ロック機構/ボルト」に,「(中竪枠7の)袖パネル6の戸先側端面に対向するパネル側壁面71」は「中間縦枠部におけるパネル材側の側壁部分」に,「中竪枠7の扉体側壁面70」は「中間縦枠部におけるドア側の側壁部分」に,「錠前装置」は「ドアロック装置」に,「切欠部74」は「開口部」に,それぞれ相当する。
そうすると,両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
「建物の固定部に取付自在な枠体と,この枠体に開閉自在に支承されるドアと,機能設備が装備され,かつ,前記ドアに隣接する状態で前記枠体に支持されるパネル材とから成り,
前記パネル材をその側方端部に設けた支点周りで揺動可能に前記枠体に支承して,前記パネル材を,閉じ状態にある前記ドアと平行な姿勢とすべく閉じ揺動された作用姿勢と,前記パネル材の背面を露呈すべく開き揺動されたメンテナンス姿勢とに切換自在に構成されており,
前記パネル材を前記作用姿勢に係止維持するロック機構が装備され,
前記支点が,前記パネル材の左右一側端部のうちの前記ドアから遠い側の端部に設定され,
前記ロック機構は,前記枠体における前記ドアと前記パネル材との間に配置される中間縦枠部と,前記パネル材とを相対固定するボルトを設けて構成され,前記ボルトは,中空状の断面形状を有する前記中間縦枠部におけるパネル材側の側壁部分と前記パネル材とに亘る状態で螺装されるとともに,前記ドアを閉じ姿勢に維持するドアロック装置における出退シリンダ挿入用として前記中間縦枠部におけるドア側の側壁部分に形成された開口部を通して前記中間縦枠部内に挿入自在に構成されている袖パネル付ドア。」

<相違点>
訂正発明1は「パネル材を作用姿勢に付勢維持する機構」を備えるのに対し,先願発明は,パネル材を作用姿勢に係止維持するロック機構を備えるものの,付勢維持する機構は備えていない点。

上記相違点について検討する。先願発明はパネル材を作用姿勢に付勢維持する機能を有しておらず,先願明細書全体を参酌しても,パネル材を作用姿勢に付勢維持する機構を設けることを示唆する記載は見あたらない。
したがって,訂正発明1は先願発明と同一ではない。

(2-3)訂正発明2について
訂正発明2は,訂正発明1の構成を更に限定したものであり,訂正発明1の構成をすべて含むものであるから,上記「(2-2)訂正発明1について」で示した理由と同じ理由により,先願発明と同一ではない。

(3)まとめ
上述のとおり,訂正発明1及び2は,先願発明と同一ではない。
また,他に,訂正発明1及び2が,特許を受けることができるものではないとする理由を発見しない。
よって,訂正後の訂正発明1及び2は,出願の際に独立して特許を受けることができるものである。

5.むすび
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第3項ないし第5項の規定に適合するものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
袖パネル付ドア
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンション等の玄関ドアに隣接させて配置される袖パネル付ドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
袖パネルは、インターホン等の電気設備や新聞受けといった機能設備が装備されており、主にマンションや分譲住宅の玄関ドアの横に隣接して配設されるのが一般的であり、例えば特許文献1において開示されている。即ち、図6に示すように、従来の袖パネル43は、玄関ドア42の横に若干の距離を空けて建物の壁Wに着脱可能に外装配備されたやや縦長形状のものであり、玄関灯48、ルームナンバー板45、ネーム板46、インターホン47、新聞や郵便物を受ける外部ポスト49等の各種機能設備Eをパネル材44に装備することで構成されている。
【0003】
ところで、袖パネルの取付け施工業者と、袖パネルの電気設備に関する工事業者とは異なるのが通常であり、その作業状況は次のようである。即ち、袖パネルが専門の施工業者によってドア横といった建物へ取付け設定された後に、電気工事業者が来て、取付けられている袖パネルを一旦壁から外し、電気設備を建物側の配線と結線する等の所定の電気工事を行い、その後その電気工事が完了された状態の袖パネルを壁に再取付けする、というものである。つまり、建物の建設期間においては、施工工程上から袖パネルが着脱自在な状態であることが必要である。また、建物の建設完了後においても、修理、部品交換等の電気設備のメンテナンスが行えるようにしておく必要もあるため、袖パネルは着脱自在に建物に装備させなければならない。
【0004】
そのため、従来では、特許文献2に開示されるように、ガイドレール等の上下の係合手段を壁側に装備しておき、袖パネルを一旦上に持上げてから下げるような移動処理を行うことで嵌め込む「後吊り式」と呼ばれる構造により、袖パネルを取外し可能に壁に取付ける構成が採られている。
【特許文献1】特開2001-77895号公報
【特許文献2】特開平11-50750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、着脱自在な袖パネルでは次のような問題が指摘されてきた。つまり、袖パネルの電気工事をするには、壁から取り外した袖パネルをその背面を作業者に向けた状態で壁に立て掛けるか、或いは床や地面に横倒しに寝かせた姿勢にして作業を行うことになるので、その際に引きずって壁や袖パネル自身に傷を付けてしまうとか、立て掛けてある袖パネルを誤って倒して変形させたり、それによって結線した配線が引き千切れるといったおそれが高いのである。また、外された袖パネルを傷付けないよう、床等との間に介装するクッション材を用意しなければならないという面倒さもある。そのため、袖パネルの電気工事には必要以上の慎重さが要求される煩わしさがあるとともに、結線された状態の袖パネルを持上げて嵌め込む着脱操作が行い難い面もあり、袖パネルの取付け構造にはさらなる改善の余地が残されていた。尚、上記の不都合は電気設備の設置やメンテナンスを行う場合に限られるものではなく、ネーム板や外部ポストの修理、部品交換といった機能設備のメンテナンス等を行う場合も同様に生じる。
【0006】
このような実情に鑑みることにより、本発明の目的は、袖パネルの電気工事等の機能設備の工事やメンテナンスを行う際に、誤って壁等の外装部分や袖パネル自身を傷付けたり変形させたりするおそれが解消されるとともに、袖パネルが建物に正規に装備される作用姿勢と、機能設備に関する各種工事を行うべく袖パネルの背面が露出されるメンテナンス姿勢との切換作業も簡単便利に行えるよう、袖パネルの取付構造を工夫する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、袖パネル付ドアにおいて、建物の固定部17に取付自在な枠体1と、この枠体1に開閉自在に支承されるドア2と、機能設備8,10が装備され、かつ、前記ドア2に隣接する状態で前記枠体1に支持されるパネル材4とから成り、
前記パネル材4をその側方端部に設けた支点Q周りで揺動可能に前記枠体1に支承して、前記パネル材4を、閉じ状態にある前記ドア2と平行な姿勢とすべく閉じ揺動された作用姿勢と、前記パネル材4の背面4Hを露呈すべく開き揺動されたメンテナンス姿勢とに切換自在に構成されており、
前記パネル材4を前記作用姿勢に付勢維持する機構32と前記作用姿勢に係止維持するロック機構33が装備され、
前記支点Qが、前記パネル材4の左右一側端部のうちの前記ドア2から遠い側の端部に設定され、
前記ロック機構33は、前記枠体1における前記ドア2と前記パネル材4との間に配置される中間縦枠部16と、前記パネル材4とを相対固定するボルト34を設けて構成され、前記ボルト34は、中空状の断面形状を有する前記中間縦枠部16におけるパネル材側の側壁部分16dと前記パネル材4とに亘る状態で螺装されるとともに、前記ドア2を閉じ姿勢に維持するドアロック装置5における出退シリンダ5s挿入用として前記中間縦枠部16におけるドア側の側壁部分16bに形成された開口部22を通して前記中間縦枠部16内に挿入自在に構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の袖パネル付ドアにおいて、前記支点Qが上下向きのものに設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、袖パネルを揺動開閉自在に建物の固定部に支承する構造としたので、例えば電気工事やメンテナンスを行うべく袖パネルの背面を露出させるには、パネル材を開き揺動してメンテナンス姿勢にするだけで良く、誤って建物外壁や袖パネル自身を傷付けたり、袖パネルを倒して変形させるといった不都合のおそれが無いとともに、袖パネルを支える必要も無くなる。その結果、良好にドア近傍に外装配備される状態としながらも、パネル材の背面を露呈させての電気工事等の機能設備に関する諸作業が容易、便利で快適に行えるよう改善された袖パネル付ドアを提供することができる。
【0010】
パネル材を作用姿勢に係止維持するロック機構を設けてあるので、袖パネルを不測の開き揺動なく作用姿勢に良好に維持でき、便利であるとともに信頼性も向上する。
また、パネル材を作用姿勢に付勢維持する機構を設けてあるので、工事途中で他所に行く等の一旦パネル材を閉じる必要の有る場合には、直ぐに開けるようパネル材を簡単に作用姿勢に付勢維持できて便利である。
【0011】
支点が、パネル材の左右一側端部のうちのドアから遠い側の端部に設定されているので、袖パネルを開いてメンテナンス姿勢にすれば、パネル背面はドア側に向くことになり、ドア開閉用として必ず存在する空間部分を機能設備に関する作業用空間として確保することができる利点がある。例えば、袖パネルのドア存在側と反対側の直ぐ横に壁が有るような場合では、ドア側に支点で袖パネルを開いても、その開かれた袖パネルと壁との間に作業者が入り込むだけの十分なスペースが取れないが、本請求項1の構成によれば、そのような状況でも十分な作業スペースが得られる。また、作業スペースに関する上述の効果により、ロック機構を、支点と反対側であるドア側部分の袖パネルに設けることが容易であるとともに、支点と反対側に設けることから、開き揺動を阻止するための力が小さくて済み、ピンやボルトといったロック機構の構成部材のコンパクト化も可能になる。
【0012】
また、ロック機構を、中間縦枠部とパネル材とを相対固定するボルトを設けるだけの構造簡単で廉価なものにできる利点があるとともに、そのボルトを、ドアのロック用として中間縦枠部に元々形成されている開口部を利用して装備させる構造であるから、ボルト挿通用孔といった専用のボルト装着手段が不要になるとともに、ボルトを外から見えないように隠すことができ、コスト面で有利であり、かつ、良好な外観を維持できる利点もある。
【0013】
請求項2のように、支点を上下向きのものに設定して、パネル材を横開き構造として建物に固定される枠体に支承すれば、閉じ及び開きの何れの揺動操作も軽く行え、かつ、開き角度の如何に拘わらずに袖パネルを維持可能であるとともに、枠体を含めたモジュール化(ASSY化)が行える利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明による袖パネル付ドアの実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は袖パネル付玄関ドアの略正面図、図2は袖パネルの支持構造を示す玄関ドア及び袖パネルの横断面図、図3は袖パネルの揺動支持構造を示す縦断面図、図4はロック機構と受止め機構とを示す拡大の横断面図、図5は受止め機構の構造を示す分解斜視図である。
【実施例1】
【0015】
図1はマンション用の袖パネル付玄関ドアAを示している。この袖パネル付玄関ドアAは、建物の躯体17に取付自在なドア用の枠体(固定部の一例)1と、枠体1に開閉自在に支承される玄関ドア2と、各種機能設備Eが装備され、かつ、玄関ドア2の向って左側に隣接する状態で枠体1に支持されるパネル材4から成る袖パネル3とから構成されている。玄関ドア2は、向って右側の端部に設定される上下向きのドア支点P周りで揺動開閉自在に枠体1に支承されるとともに、上下二箇所の鍵(ドアロック装置の一例)5と、取っ手(把手)6と、デザイン部7とを有して構成されている。
【0016】
袖パネル3は、パネル材4をその向って左側の端部に設けた上下向きのパネル支点Q周りで揺動可能に枠体1に支承して成り、パネル材4を閉じ状態にある玄関ドア2と平行な姿勢とすべく閉じ揺動された作用姿勢(図1に実線で示す姿勢)と、パネル材4の背面4Hを露呈すべく開き揺動されたメンテナンス姿勢(図1に仮想線で示す姿勢)とに切換自在に構成されている。パネル材4には、上から玄関灯8、ネーム札9、インターホン10、新聞や郵便物等を収容するための外部ポスト11等から成る種々の機能設備Eが装備されている。
【0017】
枠体1は、図1、図2に示すように、中空断面形状を有する左右の縦枠材12,13、上下の横枠部材14,15、中空断面形状を有する中間縦枠材(中間縦枠部)16等から構成されており、例えば、躯体であり固定部でもある金属製等の強度部材17にボルト止め固定されている。これら枠材12?16は、例えば下側の横枠部材15をステンレス材から形成し、その他の枠材12?14,16はアルミ合金等から形成するが、鋼板材を用いる等、これには限定されない。右縦枠材13と中間縦枠材16は、これらの間に通過用空間Sを形成するとともに、ゴムによるシール材18,19を支持する部分にも相当する前後方向に若干の幅を有した内壁面13a,16aが形成されている。
【0018】
玄関ドア2は、図1、図2に示すように、上下の横枠材14,15夫々との間に亘る状態の支軸20を介してドア支点Pを中心に揺動開閉自在に支承されており、横断面が半円形状を呈する曲面のドア支点側端面2aを有する押出し材製の端面材2Aを有するとともに、内部にはグラスウール等の防音断熱材21が充填されている。また、向って左端には、中間縦枠材16の前面における略右側半分を覆って隠す薄板部2bが形成されている。
【0019】
中間縦枠材16には、玄関ドア2に装備される鍵5の出退シリンダ5sを挿脱自在な受止め機構Uが構成されている。受止め機構Uは、図2,4,5に示すように、中間縦枠材16の右前側壁(ドア側の側壁部分の一例)16bに形成される縦長の開口部22と、この開口部22に挿入自在な箱状カバー(トロカバー)23と、箱状カバー23の外側から中間縦枠材16にボルト止めされる下地板24と、下地板24を覆う外装品である薄箱状の化粧カバー25とから構成されている。中間縦枠材16における開口部22の上及び下で奥側(屋内側)に寄った箇所には、計2箇所のナット部16nが形成されている。
【0020】
箱状カバー23は、出退シリンダ5sの挿入及び離脱が自在な右側面開放の箱部23Aと、その上下において折り返された上下一対の取付板部23aとを有したバネ板等の弾性を有した板材で形成されており、箱部23Aが中間縦枠材16の開口部22に丁度嵌り込むように寸法設定されている。下地板24は、出退シリンダ5sの挿通が自在な開口部24aが形成された支持板部24Aと、箱状カバー側に寄った状態に位置する上下一対の取付板部24bとを備えた板金材で形成されている。支持板部24Aの上下夫々にはナット部24nが形成され、各取付板部24bにはボルト挿通用孔24hが形成されている。
【0021】
化粧カバー25は、出退シリンダ5sの挿入及び離脱が自在な開口部25kを有した頂壁25aと、略台形を呈する左右の(玄関ドアに向って前後の)側壁25bと、上下の傾斜壁25cとを有した箱状のものに構成されている。頂壁25aの上下にはボルト挿通用の貫通孔25hが形成されている。
【0022】
箱状カバー23、下地板24、化粧カバー25の三者は、図4及び5に示すように、先ず、下地板24を、これと中間縦枠材16の右前側壁16bとの間に上下の取付板部23aを挟み込んだ状態としてから、一対の内ボルト(ナベビス)26を挿通用孔24hを通してナット部16nに螺着することにより、箱状カバー23と共に中間縦枠材16に固定する。つまり、箱状カバー23は、その上下一対の取付板部23aが弾性変形されることによる押圧力によって付勢支持されている。それから、一対の装着ボルト(皿ビス)27を貫通孔25hを通してナット部24nに螺着することにより、箱状カバー23及び下地板24を覆う状態に化粧カバー25を下地板24に、即ち中間縦枠材16に取付ける。
【0023】
玄関ドア2が閉じられた状態で鍵5が施錠操作されると、出退シリンダ5sが、開口部25k及び開口部24aを通って箱状カバー23の箱部23Aに入り込み(図4参照)、玄関ドア2が閉じ状態から開かないようにロックされる。玄関ドア2が開かれて、中間縦枠材16が露出されても、その開口部22は化粧カバー25で見栄え良く覆われており、受止め機構Uとしての外観向上を果たしている。
【0024】
次に、袖パネル3について説明する。袖パネル3は、図2?図4に示すように、中空箱状のパネル材4の向って左端部における前端部の上下に、パネル支点Qを中心とする上下の支軸28,29を設けてあり、上支軸28は上横枠材14に、かつ、下横枠材15に支持される下支軸29はパネル材4に夫々枢支されている。下支軸29は、下横枠材15に圧入支持される下軸部29Aと、パネル材4に溶着固定される長角ブロック40の支持穴40aに挿入自在な上軸部29bと、これら両軸部29a,29bの間のフランジ部29cとから成り、ワッシャ30を介して下横枠材15に固定されている。
【0025】
上支軸28は、上横枠材14に溶着された角ブロック36の穴36aに挿入されて枢支状態となる突出作用位置と、下方にスライド移動して上横枠材14と高さ方向で干渉しない下降退出位置(図3の仮想線の位置参照)とに切換自在であり、かつ、自由状態では突出作用位置に維持されるように上支軸28を上昇付勢する機構31が装備されている。尚、図3等において、Fは床(マンションの廊下)であり、Wは外壁である。また、パネル材4には、中間縦枠材16の前面の略左側半分を覆って隠す薄板部4bが形成されている。
【0026】
上昇付勢機構31は、パネル材4に固定される支持金具37と、この支持金具37に対して上支軸28を上方に突出付勢する巻きバネ38とから構成されている。支持金具37は、上支軸28の上下部分を回動自在及び上下スライド移動自在に支持する断面C字形状の軸受部37aと、これら上下の軸受部37aを一体連結する状態でパネル材4の内壁面に溶着固定される断面略L字形状の本体部37Aとから成る板金部材で構成されている。上支軸28の下端部には、手指による上げ下げ操作用の操作片28aが側方突出支持され、その直上位置には上支軸28の上昇移動を規制するためのC字型スナップリング39が外装されている。そして、上支軸28の上部には巻きバネ38の上端受けとなる突起28bが一体形成されており、このような構造により、通常の状態である自由状態では、上支軸28の上端部が角ブロック36に挿入される突出作用位置に付勢維持されている。そして、操作片28aの手指操作により、巻きバネ38の付勢力に抗して上支軸28を下降退出位置に下降スライド移動させることができる。
【0027】
しかして、袖パネル3を枠体1に装着するには、袖パネル3を枠体1に対して開いた姿勢とした状態で、パネル材4の下部を下横枠材15に植設支持されている下支軸29に嵌め入れてから、上支軸28を巻きバネ31の付勢力に抗して手指で押し下げた状態としてパネル材4の上部を上横枠材14の下方位置に移動し、その状態で手指の押し下げを開放して上支軸28を角ブロック36の穴36aに挿入し、上横枠材14に支承させる、という操作手順になる。外す場合は上述の逆の操作(袖パネル3を開いた状態で上支軸28を下げて上横枠材14から外し、次いで、パネル材4を持上げて下支軸29から抜き出す)を行えば良い。
【0028】
また、袖パネル3を枠体1に対して閉じた状態、即ち作用姿勢に付勢維持する機構であるマグネットキャッチ32が装備されている。マグネットキャッチ32は、図2及び図4に示すように、パネル材4の右端部の上下中間位置において内装されたマグネット32aと、鋼板製の中間縦枠材16の左張出し部16cの前面に磁着自在な状態でパネル材4に外装される金属板材製のキャッチ32bとで成り、マグネット32aの磁力を受けるキャッチ32bが中間縦枠材16に磁力吸引されることで袖パネル3の作用姿勢を付勢維持できるようになっている。
【0029】
マグネットキャッチ32の磁着力では、袖パネル3を強く引張れば開くことができるが、袖パネル3の開き揺動を不能として作用姿勢に係止維持するためのロック機構33も装備されている。ロック機構33は、図2及び図4に示すように、中間縦枠16の左前側壁(パネル材側の側壁部分の一例)16dとパネル材4の右側壁4aとに亘って螺装される係止ボルト34で構成されている。係止ボルト34は、図4,5に示すように、鍵5の出退シリンダ5sを受止めるための開口部22から中間縦枠材16内に出し入れ自在とされており、受止め機構Uが装備された状態では、係止ボルト34の操作が不可になることは勿論、外から見えないようにカバーされている。つまり、ロック機構33は、受止め機構Uの存在を利用して係止ボルト(固定具の一例)34の装脱が行える構造とされているので、中間縦枠材16には専用のボルト挿通孔が不要となる利点がある。
【0030】
以上のような構成による袖パネル付玄関ドアAの取付け施工、及び袖パネル3の電気工事は次のように行う。先ず、袖パネル付玄関ドアAのマンションへの取付け施工業者が、既に建物に一体的に取付けられている枠体1に対して、玄関ドア2及び袖パネル3を取付ける。袖パネル3の取付け方法は上記の通りである。尚、玄関ドア2の取付け方法の説明は割愛する。その後に現場に来た電気工事業者は、先ず、受止め機構Uを分解して係止ボルト34を外してから、袖パネル3を開いてその背面4H側が露出するメンテナンス姿勢(図1の仮想線参照)に切換え、既にパネル材4に組付けられている機能設備である電気設備8,10、即ち玄関灯8及びインターホン10夫々のリード線(図示省略)を、建物側のリード線35(図2参照)に結線する。結線作業が終わると、メンテナンス姿勢にある袖パネル3を閉じ揺動して作用姿勢に切換え、それから係止ボルト34を開口部22から操作して袖パネル3を作用姿勢にロック(係止維持)し、最後に受止め機構Uを再組付けするのである。
【0031】
つまり、袖パネル3を揺動開閉自在に枠体1に支承する構造としたので、電気工事等を行うべく袖パネル背面4Hを露出させる際に、誤って建物外壁や袖パネル3自身を傷付けたり、袖パネル3を変形させるおそれが無いとともに、従来のように袖パネル3を支える必要も無いので、電気工事等の諸作業を便利で快適に行えるようになっている。袖パネル3を作用姿勢に付勢維持するマグネットキャッチ32を設けてあるので、工事途中で他所に行く等の一旦袖パネル3を閉じる必要の有る場合には、直ぐに開けるよう袖パネル3を簡単に作用姿勢に付勢維持できて便利である。そして、袖パネル3を閉じた作用姿勢に係止維持させるロック機構33を設けてあるので、不用意に袖パネル3が開いて他物に当たるとか、悪戯されるといったおそれ無く、作用姿勢を良好に維持できる効果がある。
【0032】
また、ロック機構33を構成する係止ボルト34は、玄関ドア2の鍵5の一部として元々中間縦枠材16に形成されている受止め機構U、即ち開口部22を利用して組付ける構造としてあるので、新たに専用の孔等の取付手段が不要であり、コスト及び外観上で有利となる利点もある。この利点は、袖パネル3のパネル支点Qを玄関ドア2から遠い側となる左端部に設定することで可能となるものであり、それには玄関ドア2のドア支点Pが袖パネル3から遠い側となる右端部に設定されていることが前提条件である。
〔別実施形態〕
【0033】
参考に記す。袖パネル3のパネル支点Qが、袖パネル3の右端部に設定される構造でも良く、その場合にはロック機構33は袖パネル3の左側部分に作用する状態で設けるのが望ましいが、開口部22からロックボルト(図示省略)を用いて袖パネル3を作用姿勢に係止維持させる構成を採ることも可能である。袖パネル3の形状が比較的上下寸法が短い場合には、パネル支点Qを袖パネル3の上端部又は下端部において左右向きのものとして設定することが可能である。また、玄関ドア2と袖パネル3とが、中間縦枠材16やそれに取付けられる外装部材等の外観部材を介して左右方向で並ぶ構造のものにも本発明を適用可能である。
【0034】
尚、実施例1では枠体1が建物の固定部に相当するが、例えば、建物(ログハウス等)の構造によっては、玄関ドア2や袖パネル3が枠体1を介さずに直接建物に取付けられる場合も考えられ、そのような場合には躯体を兼ねる壁(図3の壁Wに相当)自体が固定部になる。また、ドアとしては玄関ドアの他、ビル内における会社の出入口ドア、建物内における部屋のドア等、種々のドアに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】袖パネル付玄関ドアの略正面図(実施例1)
【図2】袖パネルの支持構造を示す横断面図
【図3】袖パネルの揺動支持構造を示す縦断面図
【図4】ロック機構及び受止め機構の構造を示す拡大の横断面図
【図5】受止め機構の構成を示す分解斜視図
【図6】従来の袖パネル付玄関ドアの略正面図
【符号の説明】
【0036】
1 建物の固定部、枠体
2 ドア
3 袖パネル
4 パネル材
4H 背面
5 ドアロック装置
5s 出退シリンダ
8 玄関灯(電気設備)
10 インターホン(電気設備)
16 中間縦枠部
16b ドア側の側壁部分
16d パネル材側の側壁部分
17 建物の躯体(固定部)
22 開口部
33 ロック機構
34 固定具(ボルト)
A 袖パネル付玄関ドア
E 機能設備
P ドア支点
Q パネル支点
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の固定部に取付自在な枠体と、この枠体に開閉自在に支承されるドアと、機能設備が装備され、かつ、前記ドアに隣接する状態で前記枠体に支持されるパネル材とから成り、
前記パネル材をその側方端部に設けた支点周りで揺動可能に前記枠体に支承して、前記パネル材を、閉じ状態にある前記ドアと平行な姿勢とすべく閉じ揺動された作用姿勢と、前記パネル材の背面を露呈すべく開き揺動されたメンテナンス姿勢とに切換自在に構成されており、
前記パネル材を前記作用姿勢に付勢維持する機構と前記作用姿勢に係止維持するロック機構が装備され、
前記支点が、前記パネル材の左右一側端部のうちの前記ドアから遠い側の端部に設定され、
前記ロック機構は、前記枠体における前記ドアと前記パネル材との間に配置される中間縦枠部と、前記パネル材とを相対固定するボルトを設けて構成され、前記ボルトは、中空状の断面形状を有する前記中間縦枠部におけるパネル材側の側壁部分と前記パネル材とに亘る状態で螺装されるとともに、前記ドアを閉じ姿勢に維持するドアロック装置における出退シリンダ挿入用として前記中間縦枠部におけるドア側の側壁部分に形成された開口部を通して前記中間縦枠部内に挿入自在に構成されている袖パネル付ドア。
【請求項2】
前記支点が上下向きのものに設定されている請求項1に記載の袖パネル付ドア。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2009-04-16 
出願番号 特願2004-202656(P2004-202656)
審決分類 P 1 41・ 856- Y (E06B)
P 1 41・ 853- Y (E06B)
P 1 41・ 161- Y (E06B)
P 1 41・ 851- Y (E06B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 江成 克己  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
関根 裕
登録日 2007-09-28 
登録番号 特許第4017615号(P4017615)
発明の名称 袖パネル付ドア  
代理人 木村 俊之  
代理人 木村 俊之  
代理人 鈴江 正二  
代理人 鈴江 正二  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ