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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1197462
審判番号 不服2006-11566  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-07 
確定日 2009-05-13 
事件の表示 特願2002-352937「情報処理装置及びシステムの制御方法及び印刷装置とその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月 8日出願公開、特開2003-224561〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成14年12月4日(パリ条約による優先権主張2001年12月5日、米国)の出願であって、平成17年9月2日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月8日付けで手続補正がなされたものの、平成18年4月27日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年6月7日に審判請求がなされるとともに同年7月7日付けで手続補正がなされ、平成19年3月1日付けで審査官より前置報告がなされ、平成20年9月9日付けで当審より前置報告を用いた審尋がなされ、同年11月10日付けで回答書が提出されたものである。

II.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成18年7月7日付け手続補正により補正された以下のとおりのものである。

印刷装置と該印刷装置と通信する情報処理装置を含むシステムにおける制御方法であって、
前記情報処理装置が前記印刷装置から公開鍵を取得する取得工程と、
前記印刷装置において前記公開鍵の証明情報を印刷する印刷工程と、
前記情報処理装置の入力装置から前記印刷工程において印刷された証明情報を入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された前記証明情報を用いて、前記取得工程で取得した前記公開鍵が改変されているか否かを判定する判定工程と、
を有することを特徴とする制御方法。

III.引用文献
1.特開平6-244832号公報

引用文献1は、原査定の拒絶の理由に引用された文献である。引用文献1には、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審において付加した)。

A.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電話やファクシミリやモデムなどの通信装置において、送信するデータを暗号化して第三者によってデータが解読されないようにするための秘密情報通信方法に関する。」

B.「【0019】又、本発明によれば、データを秘密鍵暗号で暗号化して伝送し、秘密鍵暗号の暗号鍵を公開鍵暗号で暗号化して伝送する秘密情報通信装置において、少なくとも、公開鍵暗号の公開鍵を受信する受信手段と、受信した公開鍵のハッシュ値を計算する計算手段と、予め通信相手から送られているハッシュ値と前記計算ステップで計算された公開鍵のハッシュ値とを比較する比較手段と、この比較手段において両ハッシュ値が一致しない時、通信を終了する通信終了手段とを含むことを特徴とする秘密情報通信装置が得られる。」

C.「【0023】
【実施例】図1は本発明にもとづく秘密情報通信方法を実行する秘密情報通信装置の基本構成を示す機能ブロック図である。図において、秘密鍵暗号装置201、公開鍵暗号装置402、乱数発生器401、メモリ406は、図4の従来の公開鍵暗号にもとづく秘密情報通信装置と同様な処理を実行する。ただし、メモリ406から出力される公開鍵は、図4の出力端子405に出力されるのではなく、伝送システム102に供給される。また、公開鍵暗号装置402は、図4の入力端子404から公開鍵を供給されるのではなく、伝送システム102から公開鍵を供給される。そして、伝送システム102は、図4の伝送システム403が行っていた処理に加えて、一方の通信装置のメモリ406が出力する公開鍵を、もう一方の通信装置の公開鍵暗号装置402に供給する。伝送システム102から供給される公開鍵とメモリ406から供給される公開鍵は、セレクタ101にも供給されており、入力端子103に供給される制御信号に応じて、どちらか一方をハッシュ計算回路104に供給する。ハッシュ計算回路104は、セレクタ101から供給された公開鍵のハッシュ値を生成し、ハッシュ値を出力端子105と比較器108に供給する。比較器108はハッシュ計算回路104から供給されるハッシュ値と入力端子106から供給されるハッシュ値とを比較し、もし、両者が一致していなかったら警報信号を出力端子107から出力する。なお、通信装置の使用者は、予め、入力端子103の制御信号を操作してセレクタ101の出力としてメモリ406の出力を選択させ、メモリ406に記録された公開鍵のハッシュ値を出力端子105から得ておき、通信相手にそのハッシュ値を教えておく。そして、通信を行う際には、セレクタ101の出力として伝送システム102の供給する公開鍵を選択させ、入力端子106に通信相手から教えられたハッシュ値を入力する。もし、伝送システム102を介して接続している通信相手のメモリ406に記録されている公開鍵のハッシュ値と、所望の通信相手のメモリ406に記録されている公開鍵のハッシュ値とが異なっていれば、比較器107は警報信号を発生する。出力端子107から出力される警報信号は、秘密情報通信装置の搭載されている通信装置によっても異なるが、多くの用途では、伝送システム102に供給され、警報信号が発生したならば伝送システム102は通信を終了する。」

D.「【0024】ただし、電話のように使用者自身がデータすなわち音声を発する通信装置では、出力端子107から出力される警報信号をブザーや発光ダイオードなどの表示装置に接続して、使用者に警報信号の有無を知らせ、通信を終了するか否かの判断を使用者に行わせることも可能である。また、電話のような通信装置では、比較器108を使わずに、ハッシュ計算回路104の出力を表示装置に表示して、ハッシュ計算回路の出力と通信相手のハッシュ値が一致するか否かの比較を使用者に行わせることも可能である。また、通信相手のハッシュ値を入力端子106から比較器108に直接供給せずに、通信相手のハッシュ値をメモリに記録しておき、メモリから比較器108に供給しても構わない。例えば、ファクシミリや電話などの通信装置では、予め使用者が通信相手の電話番号に続けて#コードで区切ってハッシュ値の十進数表示を通信装置に入力して、通信装置はその数値をメモリに登録しておき、自動ダイヤルが実行された場合には、通信装置は#コードに続いた数値を比較器108に供給することが考えられる。このようにすれば、通信を行うごとにハッシュ値を指定する必要が無くなるし、ハッシュ値が拡張された電話番号と見なせるので、秘密情報通信装置の搭載されていない電話やファクシミリを使っていたのとほぼ同様にして、秘密情報通信装置の搭載された電話やファクシミリを使える。」

E.「【0026】
【発明の効果】本発明の秘密通信方法及び装置では、以上で述べたように、通信装置に桁数の短いハッシュ値を指定するだけで、第三者に通信内容が解読されることなく通信できる。ハッシュ値は秘密にしておく必要が無いので、名刺などに印刷して公開したり電話を介して口頭で教えることも可能である。」

(a)上記Aの「本発明は、電話やファクシミリやモデムなどの通信装置において、送信するデータを暗号化して第三者によってデータが解読されないようにするための秘密情報通信方法に関する。」、上記Dの「秘密情報通信装置の搭載されていない電話やファクシミリを使っていたのとほぼ同様にして、秘密情報通信装置の搭載された電話やファクシミリを使える。」、上記Bの「又、本発明によれば、データを秘密鍵暗号で暗号化して伝送し、秘密鍵暗号の暗号鍵を公開鍵暗号で暗号化して伝送する秘密情報通信装置において」との記載からみて、ファクシミリが文書データを送受信することを考慮すれば、引用文献1には、送信側のファクシミリに搭載された送信側の秘密情報通信装置が、文書データを秘密鍵暗号で暗号化すると共に当該秘密鍵暗号の暗号鍵を公開鍵暗号で暗号化して、受信側のファクシミリに搭載された受信側の秘密情報通信装置に伝送する、秘密情報通信方法の発明が記載されている。

(b)公開鍵暗号方式においては、受信側の公開鍵を送信側が暗号化に使用すること、及び、上記Cの「図1は本発明にもとづく秘密情報通信方法を実行する秘密情報通信装置の基本構成を示す機能ブロック図である。図において、秘密鍵暗号装置201、公開鍵暗号装置402、乱数発生器401、メモリ406は、図4の従来の公開鍵暗号にもとづく秘密情報通信装置と同様な処理を実行する。」との記載を考慮すれば、上記Cの「ただし、メモリ406から出力される公開鍵は、図4の出力端子405に出力されるのではなく、伝送システム102に供給される。また、公開鍵暗号装置402は、図4の入力端子404から公開鍵を供給されるのではなく、伝送システム102から公開鍵を供給される。そして、伝送システム102は、図4の伝送システム403が行っていた処理に加えて、一方の通信装置のメモリ406が出力する公開鍵を、もう一方の通信装置の公開鍵暗号装置402に供給する。」との記載からみて、受信側の秘密情報通信装置の公開鍵暗号装置が、メモリから出力される公開鍵を伝送システムに供給し、前記伝送システムが、前記公開鍵を、送信側の秘密情報通信装置の公開鍵暗号装置に供給する。

(c)上記(b)にて述べたように、公開鍵暗号方式においては、受信側の公開鍵を送信側が暗号化に使用することを考慮すれば、上記Dの「伝送システム102から供給される公開鍵とメモリ406から供給される公開鍵は、セレクタ101にも供給されており、入力端子103に供給される制御信号に応じて、どちらか一方をハッシュ計算回路104に供給する。ハッシュ計算回路104は、セレクタ101から供給された公開鍵のハッシュ値を生成し、ハッシュ値を出力端子105と比較器108に供給する。・・・(中略)・・・なお、通信装置の使用者は、予め、入力端子103の制御信号を操作してセレクタ101の出力としてメモリ406の出力を選択させ、メモリ406に記録された公開鍵のハッシュ値を出力端子105から得ておき、通信相手にそのハッシュ値を教えておく。そして、通信を行う際には、セレクタ101の出力として伝送システム102の供給する公開鍵を選択させ、入力端子106に通信相手から教えられたハッシュ値を入力する。」との記載、及び、上記Fの「ハッシュ値は秘密にしておく必要が無いので、名刺などに印刷して公開したり電話を介して口頭で教えることも可能である。」との記載からみて、受信側において、秘密情報通信装置がメモリから出力される公開鍵のハッシュ値を生成して出力端子から出力し、出力したハッシュ値を印刷して公開することで、送信側の通信相手に教えるものである。

(d)上記Dの「例えば、ファクシミリや電話などの通信装置では、予め使用者が通信相手の電話番号に続けて#コードで区切ってハッシュ値の十進数表示を通信装置に入力して、通信装置はその数値をメモリに登録しておき、自動ダイヤルが実行された場合には、通信装置は#コードに続いた数値を比較器108に供給することが考えられる。」との記載からみて、送信側において、受信側の通信相手から教えられた、公開鍵のハッシュ値を、送信側の秘密情報通信装置に、十進数表示で入力することで供給する。

(e)上記Cの「伝送システム102から供給される公開鍵とメモリ406から供給される公開鍵は、セレクタ101にも供給されており、入力端子103に供給される制御信号に応じて、どちらか一方をハッシュ計算回路104に供給する。ハッシュ計算回路104は、セレクタ101から供給された公開鍵のハッシュ値を生成し、ハッシュ値を出力端子105と比較器108に供給する。」との記載からみて、伝送システムから公開鍵を供給された、送信側の秘密情報通信装置は、ハッシュ計算回路により前記公開鍵のハッシュ値を生成し、生成したハッシュ値を比較器に供給する。
上記Cの「比較器108はハッシュ計算回路104から供給されるハッシュ値と入力端子106から供給されるハッシュ値とを比較し、もし、両者が一致していなかったら警報信号を出力端子107から出力する。」との記載、上記Dの「また、通信相手のハッシュ値を入力端子106から比較器108に直接供給せずに、通信相手のハッシュ値をメモリに記録しておき、メモリから比較器108に供給しても構わない。例えば、ファクシミリや電話などの通信装置では、予め使用者が通信相手の電話番号に続けて#コードで区切ってハッシュ値の十進数表示を通信装置に入力して、通信装置はその数値をメモリに登録しておき、自動ダイヤルが実行された場合には、通信装置は#コードに続いた数値を比較器108に供給することが考えられる。」との記載からみて、比較器は、ハッシュ計算回路から供給されるハッシュ値と十進数表示で入力することで供給されるハッシュ値とを比較し、両者が一致していなかったら警報信号を出力する。
上記Cの「出力端子107から出力される警報信号は、秘密情報通信装置の搭載されている通信装置によっても異なるが、多くの用途では、伝送システム102に供給され、警報信号が発生したならば伝送システム102は通信を終了する。」との記載からみて、警報信号が出力されると、伝送システムは通信を終了する。

以上で検討したことから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

送信側のファクシミリに搭載された送信側の秘密情報通信装置が、文書データを秘密鍵暗号で暗号化すると共に当該秘密鍵暗号の暗号鍵を公開鍵暗号で暗号化して、受信側のファクシミリに搭載された受信側の秘密情報通信装置に伝送する、秘密情報通信方法において、
受信側の秘密情報通信装置の公開鍵暗号装置が、メモリから出力される公開鍵を伝送システムに供給し、前記伝送システムが、前記公開鍵を、送信側の秘密情報通信装置の公開鍵暗号装置に供給し、
受信側において、秘密情報通信装置が前記メモリから出力される公開鍵のハッシュ値を生成して出力端子から出力し、出力したハッシュ値を印刷して公開することで、送信側の通信相手に教え、
送信側において、受信側の通信相手から教えられた、公開鍵のハッシュ値を、送信側の秘密情報通信装置に、十進数表示で入力することで供給し、
前記伝送システムから前記公開鍵を供給された、送信側の秘密情報通信装置は、ハッシュ計算回路により前記公開鍵のハッシュ値を生成し、生成したハッシュ値を比較器に供給し、前記比較器は、前記ハッシュ計算回路から供給されるハッシュ値と前記十進数表示で入力することで供給されるハッシュ値とを比較し、両者が一致していなかったら警報信号を出力し、
前記警報信号が出力されると、前記伝送システムは、通信を終了する、
秘密情報通信方法。

IV.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

受信側のファクシミリは、受信した文書データを印刷する装置であるから、引用発明の「受信側のファクシミリ」は、本願発明の「印刷装置」に相当する。引用発明の「送信側のファクシミリ」は、印刷装置(受信側のファクシミリ)と文書データの送受信を行う装置であって、文書をデータ化して送受信するに伴う情報処理をする装置でもあるから、本願発明の「該印刷装置と通信する情報処理装置」に相当する。
そして、引用発明の「送信側のファクシミリ」及び「受信側のファクシミリ」は、それらを含むシステムを構成するといえ、そのシステムにおいて秘密情報通信装置を制御することで秘密通信が行われるから、引用発明の「秘密情報通信方法」は、システムにおける制御方法であるともいえる。そうすると、本願発明と引用発明とは、「印刷装置と該印刷装置と通信する情報処理装置を含むシステムにおける制御方法」の発明である点で、一致する。

引用発明の「メモリから出力される公開鍵」は、本願発明の「公開鍵」に相当し、引用発明において「受信側の秘密情報通信装置の公開鍵暗号装置が、メモリから出力される公開鍵を伝送システムに供給し、前記伝送システムが、前記公開鍵を、送信側の秘密情報通信装置の公開鍵暗号装置に供給」することは、送信側の秘密情報通信装置を搭載する情報処理装置(送信側のファクシミリ)が、受信側の秘密情報通信装置を搭載する印刷装置(受信側のファクシミリ)から、公開鍵を取得することであるので、本願発明における「前記情報処理装置が前記印刷装置から公開鍵を取得する取得工程」に相当する。

引用発明の「公開鍵のハッシュ値」は、公開鍵が改変されていないことを証明する情報であるから、本願発明の「公開鍵の証明情報」に相当する。引用発明の、受信側において「出力したハッシュ値を印刷して公開する」ことと、印刷は印刷装置にて行うものであることから、本願発明と引用発明とは、「印刷装置において前記公開鍵の証明情報を印刷する印刷工程」を有する点で、一致する。

引用発明において「送信側において、受信側の通信相手から教えられた、公開鍵のハッシュ値を、送信側の秘密情報通信装置に、十進数表示で入力することで供給」することは、十進数表示でハッシュ値を入力するに当たり、情報処理装置に設けられた数字キー等の入力手段を用いると解されるから、本願発明における「前記情報処理装置の入力装置から前記印刷工程において印刷された証明情報を入力する入力工程」に相当する。

引用発明の「前記十進数表示で入力することで供給されるハッシュ値」、及び、「前記伝送システムから前記公開鍵を供給された」の「前記公開鍵」は、それぞれ、本願発明の「前記入力工程で入力された前記証明情報」、及び、「前記取得工程で取得した前記公開鍵」に相当する。引用発明において「前記伝送システムから前記公開鍵を供給された、送信側の秘密情報通信装置は、ハッシュ計算回路により前記公開鍵のハッシュ値を生成し、生成したハッシュ値を比較器に供給し、前記比較器は、前記ハッシュ計算回路から供給されるハッシュ値と前記十進数表示で入力することで供給されるハッシュ値とを比較し、両者が一致していなかったら警報信号を出力」することは、入力工程で入力されたハッシュ値を比較に用いることで、取得工程で取得した公開鍵が改変されているか否かを判定する工程であるから、本願発明の「前記入力工程で入力された前記証明情報を用いて、前記取得工程で取得した前記公開鍵が改変されているか否かを判定する判定工程」に相当する。

以上で検討したことから、本願発明と引用発明とは、以下に挙げる一致点で一致し、相違点で相違する。

(一致点)
印刷装置と該印刷装置と通信する情報処理装置を含むシステムにおける制御方法であって、
前記情報処理装置が前記印刷装置から公開鍵を取得する取得工程と、
印刷装置において前記公開鍵の証明情報を印刷する印刷工程と、
前記情報処理装置の入力装置から前記印刷工程において印刷された証明情報を入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された前記証明情報を用いて、前記取得工程で取得した前記公開鍵が改変されているか否かを判定する判定工程と、
を有することを特徴とする制御方法。

(相違点)
印刷工程において公開鍵の証明情報を印刷する印刷装置が、本願発明においては「前記印刷装置」すなわち、情報処理装置と通信する印刷装置であって、前記情報処理装置が公開鍵を取得する印刷装置であるのに対して、引用発明においては、情報処理装置と通信し、前記情報処理装置が公開鍵を取得する印刷装置であるとは、直ちにはいえない点。

V.判断
上記相違点について検討する。
引用発明において、公開鍵の証明情報は、印刷装置に搭載された秘密情報通信装置にて生成される。そして、その印刷装置は、当然に印刷の機能を有する。
これらの点を考慮すれば、引用発明において、印刷装置が、自らが搭載する秘密情報通信装置が生成し出力端子から出力する証明情報を、自らが有する印刷機能を用いて印刷するように構成して、印刷工程を行う印刷装置を「前記印刷装置」すなわち、情報処理装置と通信する印刷装置であって、前記情報処理装置が公開鍵を取得する印刷装置とすることは、当業者にとって容易である。
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明から当業者であれば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

VI.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。

(付記)
平成20年11月10日付け回答書において審判請求人は、請求項1を以下の通り補正する用意がある旨を述べている。

印刷装置と該印刷装置と通信する情報処理装置を含むシステムにおける制御方法であって、
前記情報処理装置が前記印刷装置から公開鍵を取得する取得工程と、
前記印刷装置に対するユーザの指示に応じて、前記印刷装置において前記公開鍵の証明情報を印刷する印刷工程と、
前記情報処理装置の入力装置から前記印刷工程において印刷された証明情報を入力する入力工程と、
前記入力工程で入力された前記証明情報を用いて、前記取得工程で取得した前記公開鍵が改変されているか否かを判定する判定工程と、
を有することを特徴とする制御方法。

上記請求項1の発明について検討するに、印刷装置が、当該印刷装置に対するユーザの指示に応じて印刷をすることは、印刷装置における技術常識であるから、引用発明においても、公開鍵のハッシュ値の印刷は、印刷装置に対するユーザの指示に応じてなされると解される。
そうすると、上記請求項1の発明と、引用発明との相違点は、上記IV.に記載した相違点と変わることがなく、その相違点についての判断も、上記V.に記載した判断と変わることがない。
してみれば、上記請求項1の発明も、引用発明から当業者が容易に想到し得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、請求項1を上記請求項1に補正する機会を設ける必要性は認められない。
 
審理終結日 2009-03-17 
結審通知日 2009-03-19 
審決日 2009-03-31 
出願番号 特願2002-352937(P2002-352937)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 信行  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 鈴木 匡明
中里 裕正
発明の名称 情報処理装置及びシステムの制御方法及び印刷装置とその制御方法  
代理人 木村 秀二  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  

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