• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1197551
審判番号 不服2006-21741  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-28 
確定日 2009-05-14 
事件の表示 平成 7年特許願第335718号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月17日出願公開、特開平 9-155035〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。  
理由
第1 手続の経緯

本願の経緯概要は下記のとおりである。

特許出願 平成7年12月1日
審査請求 平成14年3月22日
拒絶理由 平成17年10月18日
手続補正 平成17年12月26日
拒絶理由 平成18年5月15日
手続補正 平成18年7月21日
拒絶査定及び補正却下 平成18年8月21日
審判請求 平成18年9月28日
手続補正 平成18年10月25日
拒絶理由及び補正却下 平成20年12月16日
手続補正 平成21年2月19日

第2 本願発明についての判断

1.本願発明

本願発明は、平成21年2月19日付の手続補正における特許請求の範囲の記載における以下のとおりのものである。

「【請求項1】 賞球を係入する球受部を複数周設した回転球受体と、前記回転球受体を回転するためのパルスモータと、を有し、前記回転球受体の回転により球受部に受け入れた賞球を球送りして1球ずつ排出する球排出装置と、前記球排出装置の作動制御を行う球排出装置制御手段と、前記球排出装置から排出される賞球の球排出経路において払出し経路と球抜き経路との間で切り換える球排出経路切換部材と、
を備え、
前記球排出装置は、前記回転球受体が賞球を1球毎に排出する前記回転球受体の賞球排出位置の回転を検出することによって賞球排出を間接的に検出する賞球排出検出手段を備え、
前記球排出装置制御手段は、球詰り判別手段と、パルスモータ振動手段と、球排出再動作手段と、繰り返し動作手段とからなる球詰り解消手段を備え、
前記パルスモータ振動手段は、前記球詰り判別手段が球詰りと判別した場合、前記パルスモータを、所定時間の間、振動駆動させるものであり、
前記球排出再動作手段は、前記パルスモータ振動手段がパルスモータを振動駆動させた後に、前記パルスモータを回転駆動させて球排出動作を所定時間の間行わせるものであり、
前記繰り返し動作手段は、前記球排出再動作手段の動作によって、前記賞球排出検出手段を介して前記賞球排出位置の回転が検出された場合に、通常の球排出動作に復帰する一方、前記賞球排出位置の回転が検出されなかった場合に、前記パルスモータ振動手段及び前記球排出再動作手段による動作を繰り返し行わせるものであり、
前記球排出装置制御手段は、前記球排出装置を駆動すると共に前記賞球排出検出手段の検出信号に応じて計数して設定された払出個数のパチンコ球を払い出す、パチンコ機において、
前記球詰り判別手段は、前記球排出装置が賞球の払出しに関して前記パルスモータを駆動したにもかかわらず、前記回転球受体の回転動作が行われず、前記賞球排出検出手段による前記賞球排出位置の回転が監視時間に亘って検出されなかった場合に、球詰りと判別するものであり、
前記球排出装置制御手段は、前記球詰り判別手段が球詰りと判別した場合、前記パルスモータ振動手段による振動駆動を実行する前に、前記球排出経路切換部材を作動させて前記球排出経路において前記球抜き経路を開路させると共に前記払出し経路を閉路させ、前記通常の球排出動作に復帰する場合には、前記球排出再動作手段による球排出動作が完了してから所定時間経過後に、前記排出経路切換部材を作動させて前記球排出経路において前記球抜き経路を閉路させると共に前記払出し経路を開路させる手段を有する、
ことを特徴とするパチンコ機。」

2.当審拒絶理由

当審において平成20年12月16日付で通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、特開平5-237252号公報(以下「引用文献1」という。)、特開平2-295584号公報(以下「引用文献2」という。)、特開平6-79045号公報(以下「引用文献3」という。)、特開平4-114679号公報(以下「引用文献4」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例

平成20年12月16日付の当審拒絶理由通知において引用された引用文献1には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。(なお、以下では丸数字は(#)の形で表記している(#が数字)。)

・図2には、パチンコ遊技機10の球の排出部を具えた裏機構の一実施例を示す。図2において、200は賞球および貸し球を排出する球排出装置、600は球排出制御装置である。この球排出制御装置600は、排出制御手段として機能し、後述の役物制御装置(賞球数を表す信号を排出制御装置に送信する賞球制御手段,遊技状態を判別する遊技状態判別手段として機能する)700からの、入賞を示す信号に基づいて前記球排出装置200を制御して所定数の賞球又は貸し球を排出させる。尚、本実施例では、該球排出制御装置のマイクロコンピュータ1000が後述の制御プログラムを実行することによって、賞球の排出が行われたときの遊技状態に応じて賞球の排出速度を変更させる回転速度変更部、更には今回排出された球が、一連の排出動作の最後に排出されるべき球であるか否かを判別する球判定部として機能するようになっている。(段落【0015】)
・前記球排出装置200の下方には、排出された球を遊技機前面の前記供給皿12の流出口12aへ誘導する内部通路を有する排出樋813と、供給皿12からオーバーフローした球を下方の受皿17へ誘導するオーバーフロー樋814が連続して設けられている。そして、そのオーバーフロー樋814の上流部には、オーバーフロースイッチ818が設置されている。また、前記球排出樋813の途中から分岐した内部通路を有する球抜き樋815が前記オーバーフロー樋814と並行して配設され、この球抜き樋815と排出樋813との分岐部に、通路切換装置として、球抜きソレノイド820により作動される流路切換え弁821が設置されている。(段落【0016】)
・図17は球排出制御装置600の内部構成を示すブロック図である。この球排出制御装置600は、マイクロコンピュータ1000を具え、マイクロコンピュータ1000は発振器1010により作られる基準時間に基づいて作動するようになっている。このマイクロコンピュータ1000の入力側には、入力フィルタ1020を介して、カウントセンサI(263A)、カウントセンサII(263B)、球有りセンサI(262A)、球有りセンサII(262B)、外部からの球抜き操作を検出する球抜センサ(図示省略)、オーバーフロースイッチ818、セーフセンサ831が接続される他、役物制御装置700からの役物データ信号(例えば、排出規定数(後述)を表わす信号等)、球貸し機20からの購入払い出し信号等が各々の出力部から入力されるようになっている。(段落【0053】)
・図18には、上記マイクロコンピュータ1000によって行われる球排出のメイン制御処理の手順を示す。このメイン制御処理が開始されると、先ず、ステップS2で今回ループが電源投入直後のループであるか否かが判定され、電源投入直後の1回めのループ(このときステップS2の判別結果が“Yes”)だけはステップS4で初期設定(例えばタスク1をセットする処理等)を行って本ループを終了し、次のループに進む。一方、それ以外のときにはステップS6に進んで、今回ループでタスク1?7のいずれの処理を実行するかを決定するタスクコントロール処理を行なう。即ち、このタスクコントロール処理では後述の各制御プログラムで設定される“タスク1?タスク7”の何れがセットされているかに応じて、ステップS10の通信処理(タスク1がセットされているとき),ステップS12の賞球排出処理(タスク2がセットされているとき),ステップS14のセーフ球処理(タスク3がセットされているとき),ステップS16の球詰り処理(タスク4がセットされているとき),ステップS18の球抜き処理(タスク5がセットされているとき),ステップS20のステップモータ位置決め処理(タスク6がセットされているとき),及びステップS22の購入払出処理(タスク7がセットされているとき)の何れの処理を行なうかを決定するものである。この処理結果に基づいて、ステップS6の後、実際に、ステップS10?S22の何れかのタスク処理が行われ、それらの処理が終了すると次のループに移行して再度ステップS2より処理を行なうようになっている。(段落【0061】)
・図19には、上記マイクロコンピュータ1000によって行われる割込み処理の制御処理手順を示す。この割込み処理は上記メイン処理(図18)の合間に、割込み信号に基づいて行われるもので、この処理が開始されると、ステップS30,S32,S34,S36の順で、即ち入力フィルタ1020(図17)への入力処理、ドライバ1030の出力処理、タイマ処理、監視処理が行われ、これらの割込み処理終了後、再びメイン処理に戻る。(段落【0062】)
・図20には、上記割込み処理(図19)のステップS36で行われる監視処理(サブルーチン処理)の手順を示す。この監視処理は球排出装置200の球流路259a,259b及び排出制御部250内の球の貯留状態を検知し、その旨を記憶しておくための処理で、検知される貯留の態様としては、
(1)球排出装置200のウォームの最下端部252(図5)にて球が貯留され且つ制御部250の上流側に球が補給されている状態(正常時)、
(2)球排出装置200内に全く球がない状態、
(3)球排出装置200の先端部200Dに球は存在するものの該制御部250の上流側に球が補給されていない状態、
(4)排出制御部250の上流側には補給された球があるものの、球排出装置の先端部200Dに球が存在していない状態、
の4つの状態がある。本監視処理は、球排出装置200が上記(1)?(4)の何れの状態であるかを判別するための処理であり、この処理が開始されると、先ず、ステップS40で球有りセンサI(262A),II(262B)の双方が球有り状態を検出しているか否か、即ち球排出装置200の制御部250の上流に球が補給されているか否かが判定される。(段落【0063】)
・この判別結果が“Yes”のときには更にステップS42にて、カウントセンサI,カウントセンサIIの一方が球を検出しているか否かが判別され、一方、“No”のときにはステップS44にて同様に、カウントセンサI,IIの一方が球を検出しているか否かが判別される。(段落【0064】)
・一方、前記ステップS40の判別結果が“Yes”、ステップS42の判別結果が“No”のとき、即ち、球有センサI,II取付位置には球が存在する(補給はされている)ものの、球排出装置200の先端部200Dに球がない場合((4)の状態)には、フラグBをセットし、他のフラグ(フラグB,フラグC)をクリアして(ステップS54)、本ルーチンを終了する。このようにフラグBがセットされると、メインルーチン側で賞球排出制御処理(タスク2)が実行されている場合に、該メインルーチン側の処理が賞球排出制御処理から一旦球崩し処理(タスク4)に移り、(4)の球詰り状態が解消されるようになっている。(段落【0067】)
・次にタスク2がセットされているとき実行される球排出処理について、図22に示すフローチャートに従って説明する。この球排出処理は、前述の通信処理(タスク1)によって賞球データがあると判別されたとき、又は、当該球排出処理中に球詰りが発生しその後、所定回数の球崩し(後述の球崩し処理(図24)参照)が行われたときに、開始される処理である(このときタスク2がセットされる)。(段落【0076】)
・この排出処理が一旦開始されると、所定数(当該ルーチンの実行によって排出されるべき球数;該球数はルーチン開始時に読み込まれている賞球データに基いて決定される)の球の排出が完了するまで、当該ルーチンは継続される。そして、この一連の排出動作では、球排出装置200のウォーム251が所定角度(180度)回転する毎に一定数宛(本実施例では1個宛)球の排出が行われる。実際に球の排出が行われるときには、詳細は後述するように、ウォームの回転動作が開始される直前に、カウントセンサI,IIからの信号に基いてその先端部200Dに球が存在しているか否かが判別される。そしてカウントセンサI,IIの何れもが球を検出していないときには、当該カウントセンサI,IIが球を検知するまで、ウォームの空回しが行われるようになっている。(段落【0077】)
・この判別結果が“Yes”のときには、球排出装置200が(4)の状態(球詰り状態)であると判断して、ステップS148にスキップして、後述の再排出フラグをセットし、ステップモータを停止させ、次のステップS150にて、タスク4をセットし、タスク2をクリアして、本ルーチンを終了する。即ち、球排出処理が開始された直後に(その実質的な排出動作が開始される前に)、球有りセンサI,II(262A,262B)からの入力信号、及びカウントセンサI,IIからの入力信号を監視し、球有りセンサI,IIの双方より球有り状態が検出され、且つ、カウントセンサI,IIの双方が球無し状態を検出したならば((4)の状態)、前述の監視処理(図20)の実行によって、フラグBがセットされるので、上記ステップS82の判別が“Yes”となる。この場合には上述のようにステップS150でタスク4がセットされるので、次回以降の処理で球詰り処理(図24)が行われる。この球詰り処理は、後述のように球崩しソレノイド280をオン(ON)・オフ(OFF)させて球排出装置200の球流路259a,259bを振動させ、さらに、このときステップモータの所定角度の逆回転/正回転動作を繰り返し行うことによってなされる。そして、その後カウントセンサI,II(263A,263B)の何れか一方により球有り状態が検出された時点で、これらの球崩し制御が完了するようになっている。(段落【0079】)
・以上のように本ルーチン開始時に、球排出装置200が(2)?(4)状態となっているときには、先ず、球崩し処理(図24)が行われ、その後、本処理が実行される。(段落【0080】)
・次のステップS90では、賞球の排出処理が実行されている旨を、遊技者らに報知すべく、賞球ランプの点灯(ON)が行われ、次いでステップS92にて、再排出フラグが立っているか否かが判別される。この再排出フラグは、球排出装置が(2)?(4)の状態となっている時に行われる前述のステップS148にてセットされ、球詰り処理終了後の最初の1個の賞球排出が行われたとき(後述のステップS99)、クリアされるるものである。従って、この判別結果が“Yes”のときには、今回ループが、該球詰りや球不足の発生により後述の球詰り処理が終了した直後の賞球の排出であると判断して、ステップS94にて最初の1個を排出するためのステップモータの低速排出速度を更に低速にして(モータ遅延速度データ1をセット)、最初の賞球の排出を確実に行なうようにする。(段落【0082】)
・次のステップS98では、カウントセンサI又はIIの何れか一方の入力信号が立下がったか否かが判別される。前述したように、カウントセンサI,IIは、その検出部(球排出装置の先端部200D)に球が存在しているときにハイレベルの信号を出力するものである。従って、今回ループでカウントセンサI又はIIからの入力信号が立下がったときには、当該球排出装置200より1個の球の排出があったと判断して、この時点で上記再排出フラグが立っていればそれをクリアし(ステップS99)、次いで、ステップS100でステップモータの1回の回動が終了したか否か(180度回転したか否か)が判別され、この判別結果が“Yes”に転じた後、ステップS106以降に進む。(段落【0083】)
・その後、180度の回転が終了するまでの間に、正常動作時であれば、賞球が排出されステップS98の判別結果が“Yes”に転じるので、ステップS99以降の処理が行われる。一方、前記ステップS102の判別結果が“Yes”、即ち180度の回転が完了したにも拘らず球の排出が行われなかったときには、当該球排出装置200が、前述の(2)?(4)状態であると判断して、前記ステップS148に進み、再排出フラグがセットされ(且つモータ停止)、ステップS150にてタスク4がセットされる(タスク2はクリア)。これにより、次回ループで(2)?(4)状態に応じた制御(球詰り処理)が開始される。(段落【0085】)
・尚、賞球の排出処理中に、球詰りが発生し、一旦当該ルーチンを中断して、球崩し処理が行われる場合には、前述のように、その時点でのステップモータの回転角度に基づいて、次回の賞球排出処理(再開されたときの排出処理)にて排出すべき賞球数(回動回数N)が算出,記憶され、詳細は後述するように、球崩し処理終了時に、記憶したデータを基に当該賞球排出処理(タスク2)が再開始されるようになっている。(段落【0098】)
・次にメインルーチン(図18)のステップS16にて行われる球詰り処理(タスク4)について図24のフローチャートに従って説明する。この球詰り処理は、タスク4がセットされているとき、即ち、賞球排出処理(図22)実行中に球詰りが発生したとき(ステップS150でセットされる)、或いは、後述の球抜き処理(図25)実行中に球詰りが発生したとき(図25のステップS230でセットされる)に、その直後のループで行われるものである。(段落【0101】)
・本ルーチンが開始されると、先ず、ステップS180で、球排出装置200に設けられた球崩しソレノイド280(図6)が所定時間に亘って一定間隔毎にその励磁(ON)/消磁(OFF)が繰返され、これにより当該球排出装置200の球流路259a,259bが振動される。上記ON/OFF制御の後、次のステップS182では、ステップモータが所定回数、排出時とは逆回転に回動され、次いでステップS184で同じ回転数だけ正回転される。このような球流路の振動/モータ逆回転/正回転と云う一連の動作(球詰り解除動作)は、所定回(n回)継続される。即ち、次のステップS186では、上記一連の動作が所定回(n回)行われたか否かが判別され、判別結果が“No”のときには、未だ球詰り解除動作が終了していない旨を示す球詰り信号を管理装置の球詰り信号処理部(図示省略)に送信して(ステップS188)、動作が上記所定回(n回)に達するまで、ステップS180?S188を繰返し実行する。尚、上記球詰り中を表わす球詰り信号を受けた管理装置は、当該信号を受けている間、警告手段たる球詰り警告ランプ(図示省略)を点灯させたり、スピーカ(図示省略)による警告音の発生などを行うようになっている。(段落【0102】)
・一連の球詰り解除動作が上記所定回行われて前記ステップS186の判別結果が“Yes”に転じると、ステップS190に進んでフラグDが立っているか否かが判別される。このフラグDは、球詰りが、前述の賞球の排出処理(タスク2)中に発生したかものか、後述の球抜き処理(タスク5)中に発生したものか、換言すれば本ルーチンの開始直前のループで賞球の排出処理と球抜き処理の何れが行われていたかを判別するためのものである。しかして、このフラグDは、後述の球抜き処理(タスク5)のステップS230にてセットされるものである。(段落【0103】)
・従ってこのステップS190の判別結果が“No”のときには、上記一連の球詰り処理が完了したときに次のループで再び賞球の排出処理が行われるように、ステップS192にてタスク2をセットし(タスク4をクリア)、ステップS196にて球詰り処理が終了したことを示すべく、管理装置への球詰り信号の送信を停止して、本ルーチンを終了する。(段落【0104】)
・尚、上記ステップS180?S188の処理を所定回(n回)行っても、実際に球詰りが解消されていないときにも、一旦当該ルーチンは終了され、賞球排出処理又は球抜き処理に移行されるが、この場合、これらの制御中に再び球詰りが検知され、本ルーチンに戻って再び球詰り処理が最初からやり直される。(段落【0104】)
・(第2実施例)次に、本発明の球排出装置の第2実施例について、図27?図34を参照して説明する。この第2実施例の球排出装置1200は、ステップモータの回転角度を制御することによって、所定数の球の排出制御を行なう(ステップモータの所定回転毎に1個の球が排出される)と云う点において、上述した第1実施例の球排出装置200とその制御手法が同一であるが、上述の第1実施例では当該ステップモータの回転軸と同軸の回転軸を有するウォーム251の溝部がそのまま球の収納部を形成しウォーム251の回転によって球の排出が行われるようになっているが、本第2実施例では、ステップモータ1254と同軸のウォーム1253に、ウォームギア1252を嵌合させ、一方で、このウォームギアと同軸の一対のスプロケット1251A,1251Bにて球の収納部を形成しておき、スプロケットをステップモータにて間接的に回転させて球の排出を行なうようにしており、この点が上述の第1実施例と異なる。(段落【0116】)
・そして、このスプロケット1251A,1251Bの夫々に形成された6つのギア山1251a1?1251a6,1251b1?1251b6の間に形成された空間(溝部1251c1?1251c6,1251d1?1251d6)が球収納部となり(図29,図30)、該収納部に球が1個宛収納される。この場合、スプロケット1251Aのギア山と、スプロケット1251Bのギア山とはその位相が互いに30度ずれてその回転軸に形成されており、これによって当該回転軸が30度回転する毎に2つのスプロケット1251A,1251Bの何れか一方から球が1個宛排出されることとなる。(段落【0122】)
・2つのスプロケット1251A,1251Bが設置された上記回転軸は、その中央に形成されたウォームギア1252が、前述のウォーム1253が一定角度(例えば180度)回動したときに、30度回転するようにそのギア比が決定されている。従って、このウォーム1253の回転角度、即ち、ステップモータ1254の回転角度を制御することによって、スプロケット1251A,1251Bの回転角度を決定して、球の排出タイミングを制御することができる。尚、このようにウォーム1253を180度回転させる毎に2つのスプロケット1251A,1251Bの一方から1個の球が排出されるようになっているので、当該第2実施例の球排出装置1200による球の排出制御を行うに当たっても、上述した球排出制御装置600(図17)にて行われる球排出の制御プログラム(図18?図26)がそのまま適用可能である。(段落【0123】)
・一方、前記取付基板1255に設置される球崩しソレノイド1280は、図31に示すように、2つの作動ロッド1281a,1281bが、本体枠1210の流路形成凹部を形成する内壁面1214B,1214Cを振動させるようにその位置決めがなされる。そして、ソレノイド1280は通常時(消磁されているとき)には、復帰ばね1282の作用によって、一方の作動ロッド(1281a)が一方の内壁面(1214C)に当接されており、この状態で当該ソレノイド1280が励磁(ON)されたときに、他方の作動ロッド(1281b)が他方の内壁面(1214B)に衝突されるまで変位される。そしてこの状態から再びソレノイド1280が消磁されると前記復帰ばね1282の作用によって反対側の作動ロッド(1281a)が他方の内壁面(1214C)に衝突するようになる。従って、ソレノイドのON/OFFを繰り返し行うことによってその回数だけ壁面が振動され、球排出装置1200内にて球詰りが生じていた場合には、その球詰りが解消されることとなる。(段落【0124】)
・又、前記流路形成床板1240の流路形成部(床面形成部)1240B,1240Cの所定位置には、図27,図28に示すように、球有センサ取付開口1241a,1241b及びカウントセンサ取付開口1242a,1242bが形成されている。そして、球有センサ1262A,1262Bが設置された2つの球有センサ取付基板1243a,1243bが、そのセンサ部が上記開口1241a,1241bより夫々突出するように、流路形成床板1240にビス等によって止着され、一方、カウントセンサ1263A,1263Bが設置された2つのカウントセンサ取付基板1244a,1244bが、そのセンサ部が上記開口1242a,1242bより夫々突出するように、流路形成床板1240にビス等によって止着されている。(段落【0125】)
・このうちカウントセンサ取付開口1242a,1242bは、前記カウントセンサ1263A,1263Bが、スプロケット1251のギア山にてその流下が阻止される最下端の球(図28中B1’に示す)を検知し得るように、形成位置が決定される。従って、実際の球排出動作では、スプロケットが互いの位相が30度ずれているので、一方のカウントセンサが球を検出しているときには、反対側のカウントセンサからの入力信号がロウレベルとなる。(段落【0126】)
・上記構成の第2実施例の球排出装置1200においても、カウントセンサI,IIからの信号に基いて、所定個数の球が排出された旨が賞球排出制御装置600によって検知された時点で、ステップモータ1254が停止され、球の排出が停止される。また、前述のように、ステップモータの回転角度とスプロケットの回転角度との関係が一定となっているので(ステップモータが180度回転したときにスプロケットが30度回転するように、ウォームとウォームギアのギア比が決定されている)、ステップモータの回転角度を常時監視して、その回転角度が排出すべき球数に対応した値となったときに、その回転を停止させることで所望の球数の排出が精度良く行える。かかるステップモータの作動による球排出制御は前述した第1実施例の制御フロー(図18?図26)に従って、同様に制御される。(段落【0131】)
・又、上記球排出装置1200は、球排出装置による所定数の球の排出が開始される前に球有りセンサI,IIとカウントセンサI,IIからの入力信号に基いて球排出動作開始前の球詰りが検出されるようになり、球詰りの場合には直ちに球詰り処理(図24)が実行される。又、球詰りがないとして、球の排出が開始された後、スプロケットが所定角度(30度)回転したにもかかわらず、カウントセンサI,IIのいづれの入力信号もハイレベルからロウレベルに立ち下がらないときにも、マイクロコンピュータは球詰りが発生したと判断して、上記球詰り処理を行うようになる。(段落【0133】)
・尚、この制御では、ステップモータ1254の回転速度が遊技の態様に応じて調整されているので、排出の態様が種々変化され興趣が高められる。又、第2実施例の球排出装置による球排出制御においても、球詰りは、球有りセンサ1262A,1262BとカウントセンサI,IIからの検出信号に基づいて判断され、その判断がなされると、前記球排出制御装置からの指令で前記球崩しソレノイド1280をオン(ON)・オフ(OFF)作動させ、更には、ステップモータの逆回転回動/正回転回動等の制御が行われて、その球詰りが解除される。(段落【0134】)

引用文献1は「球排出装置1200においても、カウントセンサ1263からの信号に基いて、所定個数の球が排出された旨が賞球排出制御装置600によって検知された時点で、ステップモータ1254が停止され」(段落【0131】)とあり、ここで「カウントセンサ1263からの信号に基いて、所定個数の球が排出された旨が…検知」とあるから、カウントセンサ1263からの信号に「応じて計数」を行っていることは明らかである。
また、引用文献1における第2実施例は「本第2実施例では、ステップモータ1254と同軸のウォーム1253に、ウォームギア1252を嵌合させ、一方で、このウォームギアと同軸の一対のスプロケット1251A,1251Bにて球の収納部を形成しておき、スプロケットをステップモータにて間接的に回転させて球の排出を行なうようにしており、この点が上述の第1実施例と異なる。」(段落【0116】)のであり、また「かかるステップモータの作動による球排出制御は前述した第1実施例の制御フロー(図18?図26)に従って、同様に制御される。」(段落【0131】)のであるから、第2実施例である段落【0116】-【0135】以外の説明も第2実施例に適用できると解釈できるから、上記引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案し、そして必要に応じて符号を第2実施例に基づくものに修正すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「複数のギア山の間に複数の球収納部を形成したスプロケット1251と、スプロケット1251を回転させるステップモータ1254と、を有し、前記スプロケット1251の回転により球収納部に収納された球を1個ずつ排出する球排出装置1200と、球排出装置1200による球の排出制御を行う球排出制御装置600と、前記球排出装置1200の下方に設けられた排出樋813と、前記球排出樋813の途中から分岐した球抜き樋815が配設され、球抜き樋815と排出樋813との分岐部に設置される通路切換装置としての流路切換え弁821と、
を備え、
前記球排出装置1200は球の排出を検知するカウントセンサ1263を備え、
球排出制御装置600は、マイクロコンピュータ1000を備え、マイクロコンピュータ1000は球排出のメイン制御処理を行い、メイン制御処理では、タスクの何れがセットされているかに応じて、賞球排出処理(タスク2がセットされているとき)又は球詰り処理(タスク4がセットされているとき)のタスク処理を行ない、それらの処理が終了すると次のループに移行して再度処理を行なうようになっており、また上記メイン処理の合間に、割込み信号に基づいて割込み処理を行い、これらの割込み処理は終了後再びメイン処理に戻るものであり、割込み処理では監視処理が行われ、監視処理は球詰り状態と判別したときにはフラグBをセットするものであり、
賞球排出処理(タスク2)においては、フラグBが立っていると判別されたときには、球排出装置200が球詰り状態であると判断して、再排出フラグをセットし、ステップモータを停止させ、タスク4をセットし、タスク2をクリアして、当該ルーチンを一旦中断し、次回以降の処理で先ず球詰り処理が行われ、その後球詰り処理終了時に、当該賞球排出処理(タスク2)が再開されるようになっており、
球詰り処理(タスク4)においては、球排出装置1200に設けられた球崩しソレノイド1280が所定時間に亘って一定間隔毎にその励磁(ON)/消磁(OFF)が繰返され、これにより当該球排出装置1200の球流路1259が振動され、上記ON/OFF制御の後、ステップモータ1254が所定回数、排出時とは逆回転に回動され、次いで同じ回転数だけ正回転され、このような球流路の振動/モータ逆回転/正回転と云う一連の動作(球詰り解除動作)は所定回(n回)に達するまで繰返し実行し、上記一連の球詰り処理が完了したときに次のループで再び賞球の排出処理が行われるように、タスク2をセットし(タスク4をクリア)、本ルーチンを終了し、所定回(n回)行っても、実際に球詰りが解消されていないときにも、一旦当該ルーチンは終了され、賞球排出処理に移行されるが、この場合、これらの制御中に再び球詰りが検知され、本ルーチンに戻って再び球詰り処理が最初からやり直されるものであり、
また、賞球排出処理(タスク2)においては、再排出フラグが立っているか否かを判別することにより、今回ループが、球詰り処理が終了した直後の賞球の排出であると判断した場合は、最初の1個を排出するためのステップモータ1254の低速排出速度を更に低速にして(モータ遅延速度データ1をセット)、ステップモータ1254を180度回転させ、
180度の回転が終了するまでの間に、カウントセンサ1263からの入力信号が立下がったときには、当該球排出装置1200より1個の球の排出があったと判断して、この時点で上記再排出フラグが立っていればそれをクリアし、本ルーチンを終了し、180度の回転が完了したにも拘らず球の排出が行われなかったときには、当該球排出装置200が、球詰まり状態であると判断して、再排出フラグをセットし(且つモータ停止)、球詰り処理(タスク4)が開始されるものであり、
前記球排出装置制御装置600は、前記球排出装置1200を排出制御すると共に前記カウントセンサ1263からの信号に応じて計数して所定個数の球を排出するパチンコ遊技機において、
上記球排出装置1200は、球の排出が開始された後スプロケット1251が所定角度(30度)回転したにもかかわらずカウントセンサ1263の入力信号がハイレベルからロウレベルに立ち下がらないときに、マイクロコンピュータ1000は球詰りが発生したと判断して、上記球詰り処理を行う
パチンコ遊技機」

4.対比

ここで、本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明における「パチンコ遊技機」は本願発明の「パチンコ機」に相当し、以下同様に、「球」は「パチンコ球」に、「球収納部」は「球受部」に、「スプロケット1251」は「回転球受体」に、「ステップモータ1254」は「パルスモータ」に、「1個宛」は「1球ずつ」に、「球排出装置1200」は「球排出装置」に、「球排出制御装置600」は「球排出装置制御手段」に、「球抜き樋815」は「球抜き経路」に、「流路切換え弁821」は「球排出経路切換部材」に、「検知」は「検出」に、「カウントセンサ1263」は「賞球排出検出手段」に、「所定個数」は「設定された払出個数」に、「排出する」は「払い出す」に、それぞれ相当する。
また、引用発明において賞球排出処理における「球」は、本願発明における「賞球」に相当し、引用発明における「球収納部に収納された球」における「収納」は、本願発明における「賞球を係入する球受部」における「係入」、及び「球受部に受け入れた賞球」における「受け入れ」に相当し、引用発明における「排出制御」は、本願発明における「球排出装置の作動制御」における「作動制御」、及び「球排出装置を駆動」における「駆動」に相当し、引用発明における「排出樋813」は、機能的に本願発明における「球排出経路」及び「払い出し経路」の両者を兼ねているから、両者に相当すると判断でき、引用発明におけるカウントセンサ1263(から)の「(入力)信号」は、本願発明における賞球排出検出手段の「検出信号」に相当する。

また、引用発明に関して、次のことも云える。
・引用発明のスプロケット1251は、ギア山の間に球収納部を形成しているから、球収納部が「周設」されていることは明らかである。
・引用発明は「スプロケットの回転により球収納部に収納された球を1個ずつ排出」しているから、「球送り」を行っていることは明らかである。
・流路切換え弁821は「通路切換装置」であるから、通路(流路)を「切り換える」ことは明らかである。

さらに、引用発明から次のことも云える。
引用発明は、球排出制御装置600に備えられたマイクロコンピュータ1000が、メイン制御処理としての賞球排出処理(タスク2)と球詰り処理(タスク4)を行うと共に、割込み処理としての監視処理を行っている。
そして、監視処理は「球詰り状態と判別したときにはフラグBをセットする」ものであり、その手段も当然備えていると判断できるから、引用発明も本願発明の「球詰り判別手段」に相当する構成を備えている。
そして、球詰り処理(タスク4)においては、「球詰り解除動作」として「球排出装置1200に設けられた球崩しソレノイド1280が所定時間に亘って一定間隔毎にその励磁(ON)/消磁(OFF)が繰返され、これにより当該球排出装置1200の球流路1259が振動され、上記ON/OFF制御の後、ステップモータ1254が所定回数、排出時とは逆回転に回動され、次いで同じ回転数だけ正回転され、このような球流路の振動/モータ逆回転/正回転と云う一連の動作(球詰り解除動作)は所定回(n回)に達するまで繰返し実行」されるものであるから、「球詰り解除動作」は所定時間振動を与える点で本願発明における「パルスモータ振動手段」による動作に機能的に相当するものであるから、引用発明と本願発明は「振動手段」を備えている点で共通している。そして引用発明における「球崩しソレノイド1280」は、本願発明の「パルスモータ」に機能的に相当し、両者は「振動物」である点で共通している。
そして、賞球排出処理(タスク2)においては、「球詰り処理が終了した直後」について「最初の1個を排出するためのステップモータの低速排出速度を更に低速にして(モータ遅延速度データ1をセット)、ステップモータを180度回転させ」ており、モータ遅延速度データ1とは所定の速度と認められるから、所定の速度で所定の回転(180度)を行う以上、結果として「所定時間の間」回転動作を行っていると認めることができ、とすれば上記処理は本願発明における「球排出再動作手段」による動作に相当する。
そして、球排出再動作手段を行った結果、引用発明において「180度の回転が終了するまでの間に…球排出装置1200より1個の球の排出があった」場合は「本ルーチンを終了」する一方、「180度の回転が完了したにも拘らず球の排出が行われなかったときには…球詰まり状態であると判断して…球詰り処理(タスク4)が開始」されるものであって、球詰り処理に移行すればその終了後再び「振動手段」そして「球排出再動作手段」による動作を行うのであるから、引用発明と本願発明は「賞球排出が検出された場合に、通常の排出動作に復帰する」一方、「賞球排出が検出されなかった場合に、前記振動手段及び前記球排出再動作手段による動作を繰り返し行わせる」点で共通するから、引用発明における上記処理は本願発明における「繰り返し動作手段」による動作に機能的に相当する。

よって、両者は、
「賞球を係入する球受部を複数周設した回転球受体と、前記回転球受体を回転するためのパルスモータと、を有し、前記回転球受体の回転により球受部に受け入れた賞球を球送りして1球ずつ排出する球排出装置と、前記球排出装置の作動制御を行う球排出装置制御手段と、前記球排出装置から排出される賞球の球排出経路において払出し経路と球抜き経路との間で切り換える球排出経路切換部材と、
を備え、
前記球排出装置は、賞球排出を検出する賞球排出検出手段を備え、
前記球排出装置制御手段は、球詰り判別手段と、振動手段と、球排出再動作手段と、繰り返し動作手段とからなる球詰り解消手段を備え、
前記振動手段は、前記球詰り判別手段が球詰りと判別した場合、振動物を、所定時間の間、振動駆動させるものであり、
前記球排出再動作手段は、前記振動手段が振動物を振動駆動させた後に、前記パルスモータを回転駆動させて球排出動作を所定時間の間行わせるものであり、
前記繰り返し動作手段は、前記球排出再動作手段の動作によって、前記賞球排出検出手段を介して前記賞球排出が検出された場合に、通常の球排出動作に復帰する一方、前記賞球排出が検出されなかった場合に、前記振動手段及び前記球排出再動作手段による動作を繰り返し行わせるものであり、
前記球排出装置制御手段は、前記球排出装置を駆動すると共に前記賞球排出検出手段の検出信号に応じて計数して設定された払出個数のパチンコ球を払い出す
パチンコ機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「振動手段」に関して、本願発明においては「振動物」は「パルスモータ」であって、パルスモータを「振動駆動」させているのに対して、引用発明においては「振動物」は「球崩しソレノイド1280」であって、「ステップモータ1254」も回動(逆回転/正回転)しているものの「振動」を与えているかどうか定かではない点。

[相違点2]
本願発明は、賞球排出検出手段は「回転球受体の賞球排出位置の回転を検出する」ことによって「賞球排出を(間接的に)検出」しているのに対して、引用発明においては、カウントセンサ1242によって球を検知している点。

[相違点3]
本願発明は、球詰まりの判別を「前記球排出装置が賞球の払出しに関して前記パルスモータを駆動したにもかかわらず、前記回転球受体の回転動作が行われず、前記賞球排出検出手段による前記賞球排出位置の回転が監視時間に亘って検出されなかった場合に、球詰りと判別する」ことによって行っているのに対して、引用発明では、球排出装置1200は、球の排出が開始された後スプロケットが所定角度(30度)回転したにもかかわらずカウントセンサ1263の入力信号がハイレベルからロウレベルに立ち下がらないときに、球詰りが発生したと判断している点。

[相違点4]
本願発明は、「前記球排出装置制御手段は、前記球詰り判別手段が球詰りと判別した場合、前記パルスモータ振動手段による振動駆動を実行する前に、前記球排出経路切換部材を作動させて前記球排出経路において前記球抜き経路を開路させると共に前記払出し経路を閉路させ、前記通常の球排出動作に復帰する場合には、前記球排出再動作手段による球排出動作が完了してから所定時間経過後に、前記排出経路切換部材を作動させて前記球排出経路において前記球抜き経路を閉路させると共に前記払出し経路を開路させる手段を有する」のに対して、引用発明にはかかる構成がない点。

5.当審の判断

上記相違点について検討する。

[相違点1について]

当審拒絶理由通知で引用された引用文献3には、玉ガミが発生したと判断した場合に、パルスモータ750を正逆回動を反復させ、スプロケット712が正逆回動を繰り返す点が記載されており(段落【0068】-【0071】)、そして「玉ガミが発生した場合に、切欠円盤を逆転させ切欠円盤停止部材と切欠円盤の歯車との嵌合を解除する動作を繰り返し行うことで案内通路内のパチンコ玉に振動を与える」(段落【0006】)とあるから、このパルスモータ750の正逆回動は「振動駆動」に相当すると判断することができる(以下「引用文献3記載の技術」という。)。
とすれば、引用発明に引用文献3記載の技術を適用し、引用発明におけるステップモータ1254の回動(逆回転/正回転)についても、引用文献3と同様に「振動駆動」させ、相違点1にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。
よって、相違点1にかかる構成は、引用発明及び引用文献3記載の技術から、当業者が容易に想到できたものである。

[相違点2について]

当審拒絶理由通知で引用された引用文献4は、ステッピングモータ50によって玉切り円盤41,42を回転させるものであって、また「玉切り円盤41,42が回転して、その切欠Paに嵌まったパチンコ玉を1個、放出樋26に放出すると、玉切り円盤42のスプロケット44に設けられた透過型光検出器55が、第8図(A)に示すように、一つのパルス(以下、ホトインターラプト信号と呼ぶ)を出力する。このホトインターラプト信号を検出するまで待機し(第7図ステップ330)、この光検出器55からのホトインターラプト信号を検出したとき、パチンコ玉の送り出し個数を計数するカウンタCに値1を設定する(ステップ340)。…従って、玉切り円盤41,42は交互にパチンコ玉を送り出し、これに応じて光検出器55からホトインターラプト信号が次々と出力される。このホトインターラプト信号が入力される毎に(ステップ360)、カウンタCを値1だけインクリメントし(ステップ370)」という記載があり(公報6頁右下欄?7頁左上欄)、ここで「玉切り円盤41,42」、「パチンコ玉」は本願発明における「回転球受体」、「賞球」に相当するから、よって、「賞球排出位置の回転を検出する」ことによって「賞球排出を(間接的に)検出」する点は、引用文献4に開示されている(以下「引用文献4記載の技術」という。)。
引用発明は、カウントセンサ1263で玉の排出を検知しているが、これに代えて引用文献4記載の技術を適用して、スプロケット1251の回転を検出することによって球の排出を間接的に検出するようにすることも、当業者にとって容易に想到できたことである。
よって、相違点2にかかる構成は、引用発明及び引用文献4記載の技術から、当業者が容易に想到できたものである。

[相違点3について]

相違点3にかかる本願発明の構成において「前記パルスモータを駆動したにもかかわらず、前記回転球受体の回転動作が行われず」とあるが、この点の補正の根拠として請求人は平成21年2月19日付意見書において段落【0090】-【0092】、【0096】を指摘している。
しかし、発明の詳細な説明の段落【0090】には「球排出装置3において球詰りが発生した場合には、回転球受体5a及び回転球受体5bの回転動作が球詰り状態の賞球によって阻害され、パルスモータM1のモータ軸26が強制的に回転停止されることから、パルスモータM1に正転回転データをいくら出力してもパルスモータM1が正常に回転動作しないこととなる。従って、位置検出板24の回転動作も同時に停止されることとなり、位置検出板24の周縁の切欠凹部29が賞球排出検出スイッチSW1によって検出されることがない。」と記載されているから、球詰り時においては「パルスモータM1」も「強制的に回転停止」されるのであって、一方「パルスモータM1に正転回転データをいくら出力しても…位置検出板24の回転動作も同時に停止され」とあるから、本願発明における「パルスモータを駆動したにもかかわらず」における「パルスモータを駆動」とは実際の「パルスモータの回転」を意味するのではなく、「パルスモータに回転データを出力」することを意味すると解される(なお、仮に実際の回転を意味するのであれば新規事項である。)。
そして、モータに駆動信号を出したものの、所定時間の間実際に回転が行われていない場合に「回転が行われていない異常状態」であると判別することは、そもそも例を挙げるまでもなく機械技術一般の慣用手段に過ぎない。そして上記[相違点2について]で検討したように、回転球受体の回転を検出することによって球の排出を検出することは引用文献4記載の技術であって、とすれば、モータに駆動信号を出したにもかかわらず回転球受体の回転を検出できなかった場合に、「球の排出を検出できない異常状態」であると判別することは引用文献4記載の技術及び慣用手段から容易に想到できたことであり、そして「球の排出を検出できない異常状態」とは「球詰り」に他ならない。
よって、引用発明、引用文献4記載の技術及び慣用手段に基づいて、相違点3にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点4について]

当審拒絶理由通知で引用された引用文献2には、「なお、前記払出景品玉検出器61に関し異常が発生した場合や不正排出玉が検出された場合に、景品玉排出流路を切換えて、景品玉が遊技者に払出されないように制御してもよい。」という記載がある(公報14頁左下欄)。
また引用文献2には「1秒の間、払出景品玉検出器がONの状態を持続した場合には…払出景品玉検出器の断線,ショートや玉詰まりが発生した旨の報知を行なうためのアラームフラグCがセットされ、景品玉払出モータがOFFに制御されてサブルーチンプログラムが終了する。つまり、景品玉払出装置59から排出通路83(第4A図,第4B図参照)側に送り出されたパチンコ玉は払出景品玉検出器61によって瞬間的に検出されるのみであり、払出景品玉検出器61が1秒間もONになり続けることは通常はあり得ない。ゆえに、払出景品玉検出器が1秒間もONになり続けるということは払出景品玉検出器の断線、ショートや玉詰まりが想定されるため、その旨を報知するとともに景品玉の払出しを停止させんとしているのである。」という記載があり(公報13頁左下欄)、「払出景品玉検出器61」が1秒間もONとなる場合として、玉詰まりも想定されている。
とすれば、「払出景品玉検出器61に関し異常が発生した場合」には玉詰まりも想定されているのであるから、球詰まりの時において景品玉排出流路を切換える点は引用文献2に開示されている範囲のものである(以下「引用文献2記載の技術」という。)。
また、玉詰まり状態、すなわち一種の異常状態が解消し通常状態に戻る際に、景品玉排出流路についても通常状態に戻すことは、一般的な技術思想に基づけば、当然行うことができることである。
よって、引用発明における球詰りにおいて引用文献2記載の技術及び上記一般技術思想を適用すれば、引用発明における球詰り解除動作の前(すなわち振動駆動の前)に流路切換え弁821を切換えることは当然想到できることであり、また引用発明においても、球詰り処理が終了した直後の賞球の排出において、球の排出があったと判断した場合に通常の球排出動作に復帰し、球の排出が行われなかったときには球詰り処理に戻るものであるから、球詰り処理が終了した直後の賞球の排出が行われるまでは球詰りが実際に解消したかを確認する段階と判断でき、またその結果(球の排出が確認できない場合)によっては再び球詰り処理に戻る場合もあることから、球詰り処理が終了した後に実際に1個の球の排出があったと判断した場合まで、すなわち通常状態となったと確認できるまでは、流路切換え弁821を戻さないように制御することも、当業者にとって適宜設計できる範囲のことである。
また、流路切り換え時においては、球の排出動作が行われたとしても遊技者への球の払い出しとしてのカウントから除外することは当然のことであり、そのように設計することも当業者にとって格別の困難があるとは判断できない。
したがって、引用発明、引用文献2記載の技術及び一般技術思想に基づいて、相違点4にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

[当審の判断についてのむすび]

そうすると、相違点1?4にかかる本願発明の構成は、引用発明、引用文献2記載の技術、引用文献3記載の技術、引用文献4記載の技術、慣用手段及び一般技術思想から当業者が容易に想到できた範囲のものというべきである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術、引用文献3記載の技術、引用文献4記載の技術、慣用手段及び一般技術思想から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-16 
結審通知日 2009-03-17 
審決日 2009-03-30 
出願番号 特願平7-335718
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之一宮 誠  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 森 雅之
池谷 香次郎
発明の名称 パチンコ機  
代理人 魚住 高博  
代理人 湯田 浩一  
代理人 竹本 松司  
代理人 杉山 秀雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ