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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1197892
審判番号 不服2006-8074  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-27 
確定日 2009-05-20 
事件の表示 特願2003- 33063「半導体製造装置用ウェハ保持体およびそれを搭載した半導体製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 2日出願公開、特開2004-247365〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年2月12日の出願であって、平成18年3月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月26日付けで手続補正がなされ、その後、当審において、平成20年7月4日付けで審尋がなされ、回答書の提出がなかったものである。

第2 平成18年5月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年5月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明を補正するものであり、特許請求の範囲の補正については、補正前の請求項1ないし3を、補正後の請求項1及び2と補正しているが、そのうち、補正後の請求項1については、以下のとおりである。
補正事項a
補正前の請求項1を、補正後の請求項1の「【請求項1】 12インチウェハを搭載するウェハ搭載面を有するウェハ保持体において、該ウェハ保持体が少なくとも抵抗発熱体を有し、前記ウェハ搭載面の平面度が0.5mm以下であり、前記ウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合されており、前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下であることを特徴とする半導体製造装置用ウェハ保持体。」と補正したこと。

2 本件補正についての検討
2-1 補正事項の整理
補正事項aについての補正は、補正前の請求項1の「ウェハ搭載面」を、補正後の請求項1の「12インチウェハを搭載するウェハ搭載面」(以下、「補正事項a-1」という。)と補正し、補正前の請求項1の「ウェハ保持体において、前記ウェハ保持体を支持するシャフト」を、補正後の請求項1の「ウェハ保持体において、該ウェハ保持体が少なくとも抵抗発熱体を有し、前記ウェハ搭載面の平面度が0.5mm以下であり、前記ウェハ保持体を支持するシャフト」(以下、「補正事項a-2」という。)と補正し、補正前の請求項1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の20%以下である」を、補正後の請求項1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下である」(以下、「補正事項a-3」という。)と補正したものである。

2-2 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についての検討
補正事項aについての補正は、補正事項a-1ないし補正事項a-3からなるが、そのうちの補正事項a-2について検討する。
補正事項a-2についての補正は、補正前の請求項1の「ウェハ保持体において、」と「前記ウェハ保持体を支持するシャフト」の間に、「該ウェハ保持体が少なくとも抵抗発熱体を有し、」(以下、「補正事項a-2-1」という。)と、「前記ウェハ搭載面の平面度が0.5mm以下であり、」(以下、「補正事項a-2-2」という。)を加える補正であるので、順次、検討する。
補正事項a-2-1について
補正事項a-2-1についての補正は、補正前の請求項2に記載の「前記ウェハ保持体が、少なくとも抵抗発熱体を有する」という事項を、補正後の請求項1に加えた補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
補正事項a-2-2について
補正事項a-2-2についての補正は、補正後の請求項1の「前記ウェハ搭載面の平面度が0.5mm以下であり、」という発明を特定するための事項を追加したものであり、「ウェハ搭載面の平面度」について、補正前の請求項1に記載されていないので、発明を特定するための事項の限定とはいえない。
すると、補正事項a-2-2についての補正は、限定的減縮とはなっていないので、補正事項a-2-2についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。また、補正事項a-2-2についての補正は、請求項の削除、誤記の訂正、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。

2-3 補正の目的の適否及び新規事項の追加の有無についてのむすび
補正事項a-2-2についての補正を含む本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反する。

3 本件補正の独立特許要件についての検討
次に、仮に、補正事項a-2-2についての補正が、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものとして、本件補正の独立特許要件についての検討をする。

本願の補正後の請求項1ないし2に係る発明のうち、本願の補正後の請求項1に係る発明は、「第2 1」に掲げた補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】 12インチウェハを搭載するウェハ搭載面を有するウェハ保持体において、該ウェハ保持体が少なくとも抵抗発熱体を有し、前記ウェハ搭載面の平面度が0.5mm以下であり、前記ウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合されており、前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下であることを特徴とする半導体製造装置用ウェハ保持体。」

3-1 引用刊行物に記載された発明
刊行物1.特開2000-114355号公報
原審の拒絶理由通知に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物1(特開2000-114355号公報)には、図5ないし図7とともに、「板状セラミック体と筒状セラミック体との接合構造体及びこの接合構造体を用いた加熱装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0031】図5は本発明の接合構造体を加熱装置に応用した例を示す斜視図、図6は図5の加熱装置を成膜装置やエッチング装置の真空処理室に設置した概略を示す断面図、図7は図5の加熱装置を分解した斜視図である。なお、図1乃至図3と同一部分については同一符号で示す。
【0032】この加熱装置は、円盤状をしたセラミックヒータ1と外向きのフランジ部8を有する筒状セラミック体7とをセラミック結合層9を介して焼結一体化された縦断面形状が略T字形をしたものである。セラミックヒータ1は円盤状をした板状セラミック体2からなり、その上面を半導体ウエハWの載置面4とし、上記板状セラミック体2の内部にヒータ電極3を埋設したもので、ヒータ電極3は板状セラミック体2の下面に接合された給電端子5と電気的に接続されている。
【0033】また、加熱装置を構成する板状セラミック体2と筒状セラミック体7とは、図7に示すように筒状セラミック体7のフランジ部8が包囲する部分の面積をA、上記フランジ部8のみが占める面積をBとした時、面積比B/Aが0.11?0.6となるように構成してある。」
イ 「【0036】この加熱装置によれば、セラミックヒータ1、筒状セラミック体7、及びセラミック結合層9がいずれも耐蝕性、耐プラズマ性、耐熱性等に優れたセラミックスからなるため、ハロゲンガスやプラズマに曝されたとしても殆ど摩耗せず、また、高温に加熱されたとしても破損することがない。
【0037】また、セラミックヒータ1とセラミック結合層9及びセラミック結合層9と筒状セラミック体7は共に焼結一体化されているとともに、板状セラミック体2と筒状セラミック体7とは最適な面積比で接合されていることから、ハロゲンガスやプラズマに曝されたり、高温に加熱されたとしても接合部にクラックが発生したり、破断することがないため、長期間にわたって気密性を維持することができる。」
ウ 「【0038】なお、加熱装置を構成するセラミックヒータ1、筒状セラミック体7、及びセラミック結合層9の材質としては、前述したアルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化硼素等を主成分とするセラミックスを用いることができ、これらの中でも窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスは、他のセラミックスと比較して熱伝導率が高く、また、耐プラズマ性や塩素系ガスに対する耐蝕性を有するため、半導体製造用の加熱装置を構成する材質として好適である。
【0039】また、上記セラミックヒータ1、セラミック結合層9、及び筒状セラミック体7は同一の主成分からなるセラミックスにより形成することが良く、さらに好ましくは同一組成のセラミックスにより形成することが良い。」
エ 「【0044】
【実施例】(実施例1)ここで、面積比B/Aを異ならせた図5の加熱装置を試作し、接合部の気密性と接合度合いについて調べる実験を行った。
【0045】本実験では、加熱装置を構成するセラミックヒータ1及び筒状セラミック体7を窒化アルミニウムの含有量が99.8%の高純度窒化アルミニウムセラミックスにより形成し、外径180mm、厚み11?13mmの円盤状をしたセラミックヒータと、外径230mm、厚み15?18mmの円盤状をしたセラミックヒータを用意し、各セラミックヒータ1にフランジ部8を有するさまざまな径の筒状セラミック体7を焼結により一体的に接合した。」
オ 「【0048】面積比B/A及びその結果は表1に示す通りである。
【0049】
【表1】 省略」
カ 表1には、試験結果の良好な試料について、次のことが記載されている。
試料 面積(A) 面積(B) 面積比
No (cm^(2)) (cm^(2)) (B/A)
3 27 3 0.11
4 30 6 0.20
5 38 14 0.37
6 42 18 0.43
7 50 26 0.52
8 50 36 0.60
9 29 3 0.10
10 50 25 0.50

以上の記載から、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「半導体ウエハWの載置面4を有する円盤状をしたセラミックヒータ1において、前記セラミックヒータ1がヒータ電極3を有し、外向きのフランジ部8を有する筒状セラミック体7が前記セラミックヒータ1に接合されており、前記筒状セラミック体7のフランジ部8が包囲する部分の面積をA、前記フランジ部8のみが占める面積をBとした時、面積比B/Aが0.11?0.6となるように構成してあり、前記セラミックヒータ1の外径は230mmであることを特徴とするセラミックヒータ。」

刊行物2.特開平11-339939号公報
原審の拒絶理由通知に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物2(特開平11-339939号公報)には、図5とともに、「セラミックヒーター」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0004】こうした問題点を解決するために、耐食性に優れた緻密なセラミック体中に抵抗発熱体を埋設してなるセラミックヒータが提案されている。」
イ 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】・・・上記セラミックヒータ11を発熱させると、筒状支持体16を介して反応処理室へ熱が逃げる熱引けが起こるため、筒状支持体16が位置するセラミックヒータ11の中央における熱容量が周縁より小さくなり、載置面13の均熱性が阻害されるといった課題があった。その為、成膜毎に膜質や膜厚みが異なり、一定品質の薄膜を安定して成膜することができなかった。」

刊行物3.特開2002-373837号公報
新たに引用する、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物3(特開2002-373837号公報)には、図1ないし図3、図6とともに、「サセプターの支持構造」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0002】
【従来の技術】半導体製造用途等においては、例えば図6に示すように、セラミックヒーター2をチャンバー10の内側壁面へと取り付ける必要がある。このため、セラミックス板製の筒状の支持部材21の一端21aをセラミックヒーター2の接合面(背面)2bへと取り付け、この支持部材21の他端21cをチャンバー10の内側壁面10dへと取り付けることが行われている。支持部材21は、アルミナ、窒化アルミニウム等の耐熱性のセラミックスによって形成されている。支持部材21の内側空間6とチャンバー10の開口10aとを連通させる。支持部材21とチャンバー10との間はOリング20によって気密に封止する。これによって、支持部材21の内側空間6とチャンバー10の内部空間5との間を気密に封止し、チャンバー10の内部空間5内のガスがチャンバー10の外部へと漏れないようにする。セラミックサセプター2内には、例えば抵抗発熱体4が埋設されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】セラミックサセプター2の半導体ウエハー1の設置面(加熱面)2aの温度は、例えば400℃以上、時には600℃以上にも達する。」
イ 「【0005】支持部材のサセプターに対する接合強度を向上させるためには、およびガス穴や、端子および熱電対を通すための貫通孔を支持部材21の壁面の内部に設けるためには、支持部材21を肉厚にし、支持部材のサセプターに対する接合面積を増大させる必要がある。しかし、支持部材を肉厚にすると、前述のように支持部材に温度勾配があることから、支持部材を伝搬する熱伝導量が大きくなる。この結果、支持部材の接合部分21aの近辺からの熱伝導の増大によって、加熱面2aにコールドスポットが生ずる。このため、支持部材の本体部分は肉薄にし、支持部材のサセプター側端部に肉厚の拡張部分(フランジ部分)を設けることが有用である。」
ウ 「【0013】 図1-図3の実施形態を参照しつつ、本発明を更に説明する。
【0014】筒状の支持部材7の一端には拡径部7aが設けられており、他端にも拡径部7cが設けられている。拡径部7aの接合面(端面)7eがサセプター2の接合面(背面)2bへと接合されている。」
エ 「【0033】セラミックサセプターは何らかの加熱源によって加熱されるが、その加熱源は限定されず、外部の熱源(例えば赤外線ランプ)によって加熱されるサセプターと、内部の熱源(例えばサセプター内に埋設されたヒーター)によって加熱されるサセプターとの双方を含む。サセプター中には、抵抗発熱体、静電チャック用電極、プラズマ発生用電極などの機能性部品を埋設することができる。」
オ 「【0035】
【実施例】(本発明例1-5)図1-図3を参照しつつ説明した本発明の取付構造を作製した。サセプター2としては、直径330mm、厚さ15mmの窒化アルミニウム焼結体製の円盤を使用した。支持部材7は、緻密質の窒化アルミニウム焼結体によって成形した。支持部材7とサセプター2とを、特開平8-73280号公報に記載のようにして固相接合した。支持部材7とチャンバー10との間は、ネジによって締めつけ固定した。Oリング12はフッ素ゴムからなる。
【0036】支持部材7の全長は180mmとした。支持部材7の内径は38mmとし、本体部分7bの厚さは8mmとし、拡径部7aの厚さは8mmとした。アール部分17の曲率半径REは3mmとし、段差aは2mmとし、真直部分16の長さbは5mmとした。アール部分13の曲率半径Rは表1に示す。
【0037】この状態で、サセプター2の設置面2aの温度を約600°に加熱したものという設定で、シュミレーションを行った。この状態で、支持部材7の内部応力をその全体にわたって計算し、最大応力を求めた。また、支持部材7のチャンバー側の端部7cの温度を求めた。」

刊行物4.特開2000-21957号公報
新たに引用する、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物4(特開2000-21957号公報)には、図1ないし図7とともに、「試料加熱装置」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
ア 「【0003】例えば、図7に従来の試料加熱装置を真空処理室内に取り付けた状態を示すように、20はプロセスガスを供給するためのガス供給孔21と真空引きするための排気孔22を備えた真空処理室で、該真空処理室20内にはセラミックヒータ32とセラミック筒状支持体42とからなる試料加熱装置31が設置されている。この種のセラミックヒータ32は、円盤状をなし上下面が平滑かつ平坦に形成された板状セラミック体33からなり、該板状セラミック体33中には抵抗発熱体34を埋設するとともに、一方の主面をウエハWの載置面35とし、他方の主面には上記抵抗発熱体34と電気的に接続された給電端子36が接合されている。また、上記板状セラミック体33の他方の主面には、前記給電端子36を包囲するようにセラミック筒状支持体42がガラス接合でもって接合一体化され、給電端子36へ接続されるリード線37を真空処理室20外へ取り出すようになっていた(特開平4-78138号公報参照)。」
イ 「【0012】図1は本発明の試料加熱装置を真空処理室に取り付けた状態を示す断面図、図2は試料加熱装置のみを示す斜視図、図3は試料加熱装置の分解図である。
【0013】図1において、20はプロセスガスを供給するためのガス供給孔21と真空引きするための排気孔22を備えた真空処理室で、該真空処理室20内にはセラミックヒータ2とセラミック筒状支持体12とからなる試料加熱装置1を設置してある。このセラミックヒータ2は、図2に示すように円盤状をなし上下面が平滑な板状セラミック体3からなり、その大きさとしてはウエハWのサイズにもよるが外径150?350mm、厚み8?25mm程度のものを用いることができる。また、板状セラミック体3中にはタングステンやモリブデンあるいは白金等の金属からなる抵抗発熱体4を埋設してあり、一方の主面をウエハWの載置面5とするとともに、他方の主面には上記抵抗発熱体4と電気的に接続される給電端子6を接合してある。なお、本発明において主面とは、板状セラミック体3のうち最も広い表面のことであり、他方の主面とは、一方の主面と反対側の表面のことを言う。」
ウ 「【0015】そして、上記板状セラミック体3の他方の主面には、給電端子6及び温度検出手段8のリード線9を包囲するように円筒状をしたセラミック筒状支持体12が焼結によって気密に接合一体化してあり、給電端子6及び温度検出手段8へ接続されるリード線7,9を真空処理室20外へ取り出すようになっている。
【0016】ここで、セラミックヒータ2を構成する板状セラミック体3及びセラミック筒状支持体12としては、緻密で耐熱性、耐蝕性、さらには耐プラズマ性に優れたセラミックスにより形成することが必要であり、このようなセラミックスとしては窒化珪素、サイアロン、窒化アルミニウム、窒化硼素を主成分とする窒化物系セラミックスを用いることができる。これらの中でも特に窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスは、他のセラミックスと比較して高い熱伝導率を有することから、急速昇温が可能であるとともに、腐食性の高いハロゲン系ガスやプラズマに対して優れていることから好適である。
【0017】また、板状セラミック体3とセラミック筒状支持体12とは、焼結によって接合一体化する観点から同種(主成分が同じ)のセラミックスにより形成することが必要であり、好ましくは同一組成のセラミックスにより形成することが良い。これにより両者の熱膨張差を極めて小さくすることができるため、接合界面に発生する熱応力を大幅に低減することができ、接合部10にクラックが発生するのを抑えることができる。」
エ 「【0034】(実施例1)ここで、セラミック筒状支持体12との接合部10の外周縁及び/又は内周縁に沿って環状溝2aを設けることによる効果を確認するために、環状溝2aを持たない従来の試料加熱装置31を真空処理室20に設置し、セラミックヒータ32の平均温度が800℃となるまで加熱したあと、赤外線放射温度計にて載置面35の温度を10点測定して温度分布を測定し、この温度分布をもとに有限要素法を用いたシミュレーション解析を行うことにより、セラミック筒状支持体12との接合部10の外周縁に沿って環状溝2aを設けた試料加熱装置1、セラミック筒状支持体12との接合部10の内周縁に沿って環状溝2aを設けた試料加熱装置1、セラミック筒状支持体12との接合部10の内周縁及び外周縁に沿って環状溝2aをそれぞれ設けた試料加熱装置1、及び環状溝2aを持たない従来の試料加熱装置31について、板状セラミック体3,33とセラミック筒状支持体12,42との接合部10,40に発生する熱応力を各々解析した。
【0035】なお、モデルの寸法は、板状セラミック体3,33が外径300mm、厚み15mm、セラミック筒状支持体12,42が外径50mm、肉厚8mmとし、板状セラミック体3,33及びセラミック筒状支持体12,42はいずれも25℃における熱伝導率が64W/mk、800℃における熱伝導率が32W/mkである窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスを想定して実験を行った。」
オ 「セラミックヒータ2を構成する板状セラミック体3」(例えば、【0016】段落)という記載から、「セラミックヒータ2」と「板状セラミック体3」とは、同等の構成である。

以上の記載から、刊行物4には、以下の発明が記載されている。
「ウエハWの載置面5を有するセラミックヒータ2において、前記セラミックヒータ2が抵抗発熱体4を有し、セラミック筒状支持体12が前記セラミックヒータ2に接合されており、前記セラミックヒータ2を構成する板状セラミック体3の外径は300mmであり、前記セラミック筒状支持体12の外径は50mm、肉厚は8mmであることを特徴とするセラミックヒータ。」

3-2 対比・判断
3-2-1 補正後の請求項1に係る発明について
3-2-1-1 刊行物1を主たる引用例とする場合
3-2-1-1-1 対比
本願の補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正後発明1」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という。)とを対比する。
(a)刊行物1発明の「半導体ウエハWの載置面4」、「円盤状をしたセラミックヒータ1」は、それぞれ、本願補正後発明1の「ウェハ搭載面」、「ウェハ保持体」に相当するので、刊行物1発明の「半導体ウエハWの載置面4を有する円盤状をしたセラミックヒータ1」は、本願補正後発明1の「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体」に相当する。
(b)刊行物1発明の「ヒータ電極3」は、本願補正後発明1の「発熱体」に相当する。
(c)刊行物1発明の「外向きのフランジ部8を有する筒状セラミック体7」は、本願補正後発明1の「ウェハ保持体を支持するシャフト」に相当するので、刊行物1発明の「外向きのフランジ部8を有する筒状セラミック体7が前記セラミックヒータ1に接合されて」いることは、本願補正後発明1の「ウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合されて」いることに相当する。
(d)刊行物1発明の「セラミックヒータ」は、「半導体ウエハWの載置面4を有」しており、半導体製造装置に用いられることは明らかであるので、刊行物1発明の「セラミックヒータ」は、本願補正後発明1の「半導体製造装置用ウェハ保持体」に相当する。
すると、本願補正後発明1と刊行物1発明とは、
「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体において、該ウェハ保持体が少なくとも発熱体を有し、前記ウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合されていることを特徴とする半導体製造装置用ウェハ保持体。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
本願補正後発明1は、「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体」が、「12インチウェハを搭載する」のに対して、刊行物1発明は、本願補正後発明1の「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体」に相当する刊行物1発明の「半導体ウエハWの載置面4を有する円盤状をしたセラミックヒータ1」が、どのようなサイズの「半導体ウエハW」を搭載するか記載されていない点。
相違点2
本願補正後発明1は、「抵抗発熱体」を有するのに対して、刊行物1発明は、「ヒータ電極3」を有する点。
相違点3
本願補正後発明1は、「前記ウェハ搭載面の平面度が0.5mm以下であ」るのに対して、刊行物1発明は、「ウェハ搭載面の平面度」についての記載がない点。
相違点4
本願補正後発明1は、「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下である」のに対して、刊行物1発明は、「前記筒状セラミック体7のフランジ部8が包囲する部分の面積をA、前記フランジ部8のみが占める面積をBとした時、面積比B/Aが0.11?0.6となるように構成してあ」るものの、本願補正後発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下である」ことについての記載がない点。

3-2-1-1-2 判断
以下において、相違点1ないし4について検討する。
相違点1について
(a)刊行物1発明の「セラミックヒータ1の外径は230mmである」ことから、刊行物1発明では、8インチウェハを搭載することを前提としているものと認められる。
(b)しかしながら、刊行物3の摘記事項オには、「サセプター2としては、直径330mm、厚さ15mmの窒化アルミニウム焼結体製の円盤」(【0035】段落)が記載されており、刊行物4の摘記事項エには、「モデルの寸法は、板状セラミック体3,33が外径300mm、厚み15mm」(【0035】段落)であることが記載されている。
(c)そして、刊行物3に記載の「サセプター2」と、刊行物4に記載の「板状セラミック体3,33」は、いずれも、本願補正後発明1の「ウェハ保持体」に相当しており、刊行物3に記載の「直径330mm」の「サセプター2」と刊行物4に記載の「外径300mm」の「板状セラミック体3,33」は、いずれも、周知の12インチウェハを搭載するものであると認められる。
(d)すると、刊行物1発明の「セラミックヒータ1の外径は230mmである」ものに代えて、刊行物3に記載の「直径330mm」の「サセプター2」、又は、刊行物4に記載の「外径300mm」の「板状セラミック体3,33」を採用して、本願補正後発明1のごとく、「12インチウェハを搭載する」ようになすことは、当業者が適宜なし得た程度のことと認められる。
相違点2について
(a)例えば、刊行物2の摘記事項ア、刊行物3摘記事項ア、エ、刊行物4の摘記事項イに記載されているように、「抵抗発熱体」は、周知技術である。
(b)したがって、刊行物1発明の「ヒータ電極3」として、周知技術である「抵抗発熱体」を用いることは、当業者が適宜なし得た程度のことと認められる。
相違点3について
熱伝導を良好にするために、ウェハ保持体のウェハ搭載面の平面度を高めることは、自明の課題であり、かつ、ウェハ保持体のウェハ搭載面の平面度が0.5mm以下であることにも、臨界的な意義が認められないので、本願補正後発明1の「ウェハ搭載面の平面度が0.5mm以下であ」ることは、当業者が適宜なし得た程度のことと認められる。
相違点4について
(a)刊行物1発明の「セラミックヒータ1の外径は230mmである」ことから、刊行物1発明では、8インチウェハ、すなわち、直径20cmのウェハを搭載することを前提としているものと認められる。
(b)すると、刊行物1の摘記事項カの表1の記載に、本願補正後発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の」「%」に相当する、「(筒状セラミック体7のフランジ部8のみが占める面積である)面積(B)(cm^(2))÷8インチウェハの面積(314cm^(2))(%)」の計算値を加えて、次の表(以下、「表1a」という。)が得られる。
試料 面積(A) 面積(B) 面積比 面積(B)(cm^(2))÷
No (cm^(2)) (cm^(2)) (B/A) 8インチウェハの面積(%)
3 27 3 0.11 0.96
4 30 6 0.20 1.91
5 38 14 0.37 4.45
6 42 18 0.43 5.73
7 50 26 0.52 8.28
8 50 36 0.60 11.46
9 29 3 0.10 0.96
10 50 25 0.50 7.96
(c)刊行物2の摘記事項イには、「上記セラミックヒータ11を発熱させると、筒状支持体16を介して反応処理室へ熱が逃げる熱引けが起こるため、筒状支持体16が位置するセラミックヒータ11の中央における熱容量が周縁より小さくなり、載置面13の均熱性が阻害されるといった課題があった。」(【0006】段落)という課題が記載されており、この課題を考慮すると、本願補正後発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積」を小さくして、「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積」と「搭載するウェハの面積」の比を小さくすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(d)そして、本願補正後発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積」と「搭載するウェハの面積」の比に相当する、刊行物1の「面積(B)(cm^(2))÷8インチウェハの面積(314cm^(2))(%)」は、8インチウェハの面積との比ではあるが、上記の表1aに記載のとおり、試料No8の11.46%を除いて、試料No3ないし7、9、10で10%よりも小さいものとなっており、刊行物1には、本願補正後発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下であること」に相当することが示されていることになる。
(e)刊行物3の摘記事項オには、「サセプター2としては、直径330mm、厚さ15mmの窒化アルミニウム焼結体製の円盤」(【0035】段落)、「支持部材7の内径は38mmとし、本体部分7bの厚さは8mmとし、拡径部7aの厚さは8mmとした。アール部分17の曲率半径REは3mmとし、段差aは2mmとし、真直部分16の長さbは5mmとした。アール部分13の曲率半径Rは表1に示す。」(【0036】段落)が記載されており、また、刊行物4の摘記事項エには、「モデルの寸法は、板状セラミック体3,33が外径300mm、厚み15mm、セラミック筒状支持体12,42が外径50mm、肉厚8mm」(【0035】段落)であることが記載されている。
なお、上記の刊行物4の摘記事項エの「板状セラミック体3」は、「セラミックヒータ2を構成する」(例えば、【0016】段落)ものである。
(f)そして、刊行物3に記載の「サセプター2」と、刊行物4に記載の「板状セラミック体3,33」は、いずれも、本願補正後発明1の「ウェハ保持体」に相当しており、刊行物3に記載の「直径330mm」の「サセプター2」と刊行物4に記載の「外径300mm」の「板状セラミック体3,33」は、いずれも、周知の12インチウェハを搭載するものであると認められる。
また、刊行物3に記載の「支持部材7」と刊行物4に記載の「セラミック筒状支持体12,42」は、いずれも、本願補正後発明1の「シャフト」に相当する。
(g)そこで、刊行物3に記載の「支持部材7の内径は38mmとし、」「拡径部7aの厚さは8mmとした」ことから、支持部材7のサセプター2との接合部分の面積を計算すると、約527.5mm^(2)となるので、12インチウェハの面積70650mm^(2)との比は、約0.75%となり、刊行物3には、本願補正後発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下であること」に相当することが示されていることになり、かつ、この「10%」と比較すると、1/10以下である。
(h)刊行物4に記載の「セラミック筒状支持体12,42が外径50mm、肉厚8mm」の数値から、セラミック筒状支持体12,42の断面積を計算すると、約577.8mm^(2)となるので、12インチウェハの面積70650mm^(2)との比は、約0.82%となる。
また、刊行物4に記載の「セラミック筒状支持体12,42」が、図1、図3ないし図7に記載のように、フランジ部を有することを考慮しても、セラミック筒状支持体12,42の板状セラミック体3,33との接合部分の面積が、セラミック筒状支持体12,42の断面積の、高々数倍になるだけであるから、フランジ部を有することを考慮した場合でも、刊行物4には、本願補正後発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下であること」に相当することが示されていることになる。
(i)したがって、上記の(c)に記載の課題を考慮し、かつ、上記の(d)に記載の刊行物1に示されている事項、上記の(g)に記載の刊行物3に示されている事項、上記の(h)に記載の刊行物4に示されている事項を適用して、本願補正後発明1のごとく、「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下」とすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。

したがって、本願の補正後の請求項1に係る発明は、刊行物1ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-2-1-2 刊行物4を主たる引用例とする場合
3-2-1-2-1 対比
本願補正後発明1と刊行物4に記載された発明(以下、「刊行物4発明」という。)とを対比する。
(a)刊行物4発明の「ウエハWの載置面5」、「セラミックヒータ2」は、それぞれ、本願補正後発明1の「ウェハ搭載面」、「ウェハ保持体」に相当するので、刊行物4発明の「ウエハWの載置面5を有するセラミックヒータ2」は、本願補正後発明1の「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体」に相当する。
(b)刊行物4発明の「抵抗発熱体4」は、本願補正後発明1の「抵抗発熱体」に相当する。
(c)刊行物4発明の「セラミック筒状支持体12」は、本願補正後発明1の「ウェハ保持体を支持するシャフト」に相当するので、刊行物4発明の「セラミック筒状支持体12が前記セラミックヒータ2に接合されて」いることは、本願補正後発明1の「ウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合されて」いることに相当する。
(d)刊行物4発明の「セラミックヒータ」は、「ウエハWの載置面5を有」しており、半導体製造装置に用いられることは明らかであるので、刊行物4発明の「セラミックヒータ」は、本願補正後発明1の「半導体製造装置用ウェハ保持体」に相当する。
すると、本願補正後発明1と刊行物4発明とは、
「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体において、該ウェハ保持体が少なくとも抵抗発熱体を有し、前記ウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合されていることを特徴とする半導体製造装置用ウェハ保持体。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点5
本願補正後発明1は、「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体」が、「12インチウェハを搭載する」のに対して、刊行物4発明は、本願補正後発明1の「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体」に相当する刊行物4発明の「ウエハWの載置面5を有するセラミックヒータ2」が、どのようなサイズの「半導体ウエハW」を搭載するか記載されていない点。
相違点6
本願補正後発明1は、「前記ウェハ搭載面の平面度が0.5mm以下であ」るのに対して、刊行物4発明は、「ウェハ搭載面の平面度」についての記載がない点。
相違点7
本願補正後発明1は、「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下である」のに対して、刊行物4発明は、「前記セラミックヒータ2を構成する板状セラミック体3の外径は300mmであり、前記セラミック筒状支持体12の外径は50mm、肉厚は8mmである」ものの、本願補正後発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下である」ことについての記載がない点。

3-2-1-2-2 判断
以下において、相違点5ないし7について検討する。
相違点5について
(a)刊行物4発明の「前記セラミックヒータ2を構成する板状セラミック体3の外径は300mmであ」る。
(b)刊行物3の摘記事項オには、「サセプター2としては、直径330mm、厚さ15mmの窒化アルミニウム焼結体製の円盤」(【0035】段落)が記載されている。
(b)そして、刊行物3に記載の「サセプター2」と、刊行物4発明の「セラミックヒータ2を構成する板状セラミック体3」は、いずれも、本願補正後発明1の「ウェハ保持体」に相当しており、刊行物3に記載の「直径330mm」の「サセプター2」と刊行物4発明の「外径300mm」の「セラミックヒータ2を構成する板状セラミック体3」は、いずれも、周知の12インチウェハを搭載できるものであると認められる。
(c)したがって、刊行物3に記載の「サセプター2」、又は、刊行物4発明の「セラミックヒータ2を構成する板状セラミック体3」に搭載するウェハとして、周知の12インチウェハを選択して、本願補正後発明1のごとく、「12インチウェハを搭載するウェハ搭載面を有するウェハ保持体」とすることは、当業者が適宜なし得た程度のことと認められる。
相違点6について
熱伝導を良好にするために、ウェハ保持体のウェハ搭載面の平面度を高めることは、自明の課題であり、かつ、ウェハ保持体のウェハ搭載面の平面度が0.5mm以下であることにも、臨界的な意義が認められないので、本願補正後発明1の「ウェハ搭載面の平面度が0.5mm以下であ」ることは、当業者が適宜なし得た程度のことと認められる。
相違点7について
(a)刊行物4発明の「前記セラミックヒータ2を構成する板状セラミック体3の外径は300mmであり、前記セラミック筒状支持体12の外径は50mm、肉厚は8mm」である。
そして、刊行物4発明の「セラミックヒータ2を構成する板状セラミック体3」は、本願補正後発明1の「ウェハ保持体」に相当しており、刊行物4発明の「外径300mm」の「セラミックヒータ2を構成する板状セラミック体3」は、周知の12インチウェハを搭載できるものであると認められる。
(b)刊行物2の摘記事項イには、「上記セラミックヒータ11を発熱させると、筒状支持体16を介して反応処理室へ熱が逃げる熱引けが起こるため、筒状支持体16が位置するセラミックヒータ11の中央における熱容量が周縁より小さくなり、載置面13の均熱性が阻害されるといった課題があった。」(【0006】段落)という課題が記載されており、この課題を考慮すると、本願補正後発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積」を小さくして、「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積」と「搭載するウェハの面積」の比を小さくすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(c)すると、刊行物4発明の「前記セラミック筒状支持体12の外径は50mm、肉厚は8mm」の数値から、「セラミック筒状支持体12」の断面積を計算すると、約577.8mm^(2)となるので、12インチウェハの面積70650mm^(2)との比は、約0.82%となる。
また、刊行物4発明の「セラミック筒状支持体12」が、図1、図3ないし図7に記載のように、フランジ部を有することを考慮しても、セラミック筒状支持体12のセラミックヒータ2との接合部分の面積は、「セラミック筒状支持体12」の断面積の、高々数倍になるだけであるから、フランジ部を有することを考慮した場合でも、刊行物4には、本願補正後発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下であること」に相当することが示されていることになる。
(d)したがって、上記の(b)に記載の課題を考慮し、かつ、刊行物4に示されている事項を適用して、本願補正後発明1のごとく、「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の10%以下」とすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。

したがって、本願の補正後の請求項1に係る発明は、刊行物2ないし4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-3 独立特許要件についてのむすび
以上のとおり、補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないので、補正後の他の請求項に係る発明についての検討をするまでもなく、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものである。

4 まとめ
よって、本件補正は、上記「2-3」、及び上記「3-3」に記載のとおり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するとともに、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成18年5月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、本願の請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 ウェハ搭載面を有するウェハ保持体において、前記ウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合されており、前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の20%以下であることを特徴とする半導体製造装置用ウェハ保持体。」

第4 引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び刊行物2に記載された事項は、上記の「第2 3-1」に記載したとおりである。
また、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。
「半導体ウエハWの載置面4を有する円盤状をしたセラミックヒータ1において、外向きのフランジ部8を有する筒状セラミック体7が前記セラミックヒータ1に接合されており、前記筒状セラミック体7のフランジ部8が包囲する部分の面積をA、前記フランジ部8のみが占める面積をBとした時、面積比B/Aが0.11?0.6となるように構成してあり、前記セラミックヒータ1の外径は230mmであることを特徴とするセラミックヒータ。」

第5 対比
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と刊行物発明とを対比する。
(a)刊行物発明の「半導体ウエハWの載置面4」、「円盤状をしたセラミックヒータ1」は、それぞれ、本願発明1の「ウェハ搭載面」、「ウェハ保持体」に相当するので、刊行物発明の「半導体ウエハWの載置面4を有する円盤状をしたセラミックヒータ1」は、本願発明1の「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体」に相当する。
(b)刊行物発明の「外向きのフランジ部8を有する筒状セラミック体7」は、本願発明1の「ウェハ保持体を支持するシャフト」に相当するので、刊行物1発明の「外向きのフランジ部8を有する筒状セラミック体7が前記セラミックヒータ1に接合されて」いることは、本願発明1の「ウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合されて」いることに相当する。
(c)刊行物発明の「セラミックヒータ」は、「半導体ウエハWの載置面4を有」しており、半導体製造装置に用いられることは明らかであるので、刊行物発明の「セラミックヒータ」は、本願発明1の「半導体製造装置用ウェハ保持体」に相当する。
すると、本願発明1と刊行物発明とは、
「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体において、前記ウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合されていることを特徴とする半導体製造装置用ウェハ保持体。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点8
本願発明1は、「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の20%以下である」のに対して、刊行物発明は、「前記筒状セラミック体7のフランジ部8が包囲する部分の面積をA、前記フランジ部8のみが占める面積をBとした時、面積比B/Aが0.11?0.6となるように構成してあ」るものの、本願発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の20%以下である」ことについての記載がない点。

第6 当審の判断
相違点8について
(a)刊行物発明の「セラミックヒータ1の外径は230mmである」ことから、刊行物発明では、8インチウェハ、すなわち、直径20cmのウェハを搭載することを前提としているものと認められる。
(b)すると、刊行物1の摘記事項カの表1の記載に、本願発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の」「%」に相当する、「(筒状セラミック体7のフランジ部8のみが占める面積である)面積(B)(cm^(2))÷8インチウェハの面積(314cm^(2))(%)」の計算値を加えて、次の表(以下、「表1a」という。)が得られる。
試料 面積(A) 面積(B) 面積比 面積(B)(cm^(2))÷
No (cm^(2)) (cm^(2)) (B/A) 8インチウェハの面積(%)
3 27 3 0.11 0.96
4 30 6 0.20 1.91
5 38 14 0.37 4.45
6 42 18 0.43 5.73
7 50 26 0.52 8.28
8 50 36 0.60 11.46
9 29 3 0.10 0.96
10 50 25 0.50 7.96
(c)刊行物2の摘記事項イには、「上記セラミックヒータ11を発熱させると、筒状支持体16を介して反応処理室へ熱が逃げる熱引けが起こるため、筒状支持体16が位置するセラミックヒータ11の中央における熱容量が周縁より小さくなり、載置面13の均熱性が阻害されるといった課題があった。」(【0006】段落)という課題が記載されており、この課題を考慮すると、本願発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積」を小さくして、「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積」と「搭載するウェハの面積」の比を小さくすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(d)そして、本願発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積」と「搭載するウェハの面積」の比に相当する、刊行物1の「面積(B)(cm^(2))÷8インチウェハの面積(314cm^(2))(%)」は、上記の表1aに記載のとおり、試料No3ないし10のすべてで20%よりも小さいものとなっており、刊行物1には、本願発明1の「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の20%以下であること」に相当することが示されていることになる。
(e)したがって、上記の(c)に記載の課題を考慮し、刊行物発明に、上記の(d)に記載の刊行物1に示されている事項を適用して、刊行物発明が、本願発明1のごとく、「前記シャフトのウェハ保持体との接合面の面積が、搭載するウェハの面積の20%以下」であるとの構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。

したがって、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願の他の請求項に係る発明についての検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-10 
結審通知日 2009-03-17 
審決日 2009-03-30 
出願番号 特願2003-33063(P2003-33063)
審決分類 P 1 8・ 574- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 571- Z (H01L)
P 1 8・ 573- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 雅彦  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 棚田 一也
橋本 武
発明の名称 半導体製造装置用ウェハ保持体およびそれを搭載した半導体製造装置  
代理人 山口 幹雄  
代理人 中野 稔  
代理人 二島 英明  

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