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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28D
管理番号 1198229
審判番号 不服2007-29396  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-30 
確定日 2009-06-02 
事件の表示 特願2004- 31667「微小部品シート構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月16日出願公開、特開2004-257726〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1995年6月23日(パリ条約による優先権主張:外国庁受理1994年7月29日、米国)を国際出願日とする特願平8-506487号の一部を平成16年 2月 9日に新たな特許出願としたものであって、平成19年 7月27日付けで拒絶査定がなされた(発送日:平成19年8月2日)ところ、平成19年10月30日に拒絶査定不服審判が請求され、同年11月29日付けで手続補正がなされたものである。

2. 平成19年11月29日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年11月29日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
(1)補正後の請求項12に記載された発明
平成19年11月29日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項12は、次のとおり補正された。

「微小部品熱組立体において、
(イ)複数個のランド部及び流れ経路を備えた少なくとも1つの微小部品を有する材料シートからなる第1の積層体と;
(ロ)上記第1の積層体と組み合わされ、複数個のランド部及び流れ経路を備えた少なくとも1つの微小部品を有する材料シートからなる第2の積層体と;
から成り、
(ハ)前記微小部品は少なくとも1つの単位作動を遂行し、
(ニ)上記第1及び第2の積層体のうちの一方が熱リジェクタとして使用され、当該第1及び第2の積層体のうち他方が熱レシーバとして使用され、凝縮可能な流体が上記第1及び第2の積層体内を流れることを特徴とする微小部品熱組立体。」

本件補正は、補正前の請求項12に記載した発明を特定するために必要な事項である「微小部品」について、「少なくとも1つの単位作動を遂行」するとの限定を付加するものであるから、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当該事項は、本願の願書に最初に添付した明細書(以下「出願当初明細書」という。)の段落【0011】に記載された事項に基づくものであるから、出願当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。

そこで、本件補正後の請求項12に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。
(2) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、米国特許第4516632号明細書(以下「引用例」という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。
ア「The invention disclosed herein is generally related to heat exchangers. More particularly, the present invention is directed to a heat exchanger suitable for use in a Stirling engine having a liquid as the working fluid. In a Stirling engine there is a working fluid, typically a gas, which is passed through a cyclical sequence of steps in the course of converting heat to work. In one step of the Stirling cycle, the gas is compressed and passed through a heat exchanger to be cooled. In another step of the cycle the gas is expanded and passed through a second heat exchanger to be heated.
The applicants have sought to develop a Stirling engine in which the working fluid is a liquid. In such an engine the compression and expansion stages of the Stirling cycle involve much higher pressure changes and much smaller volume changes than occur in a gas based engine.」(第1欄11?27行)、
(本発明は、総じて、熱交換器に関する。より詳細には、本発明は、液体を作業流体とするスターリングエンジン用熱交換器に関する。
スターリングエンジンの作業流体は典型的には気体であって、熱を仕事に変換する過程において周期的なシーケンスで流通される。スターリング・サイクルのある段階では、気体は圧縮され、熱交換器を通して冷却される。サイクルの他の段階では気体は膨張され、熱交換器を通して加熱される。
本件出願人は、液体を作業流体とするスターリングエンジンの開発に努めてきた。このようなエンジンにおいては、気体ベースのエンジンの場合と比べてスターリング・サイクルの圧縮と膨張の過程が遙かに高い圧力変化と遙かに小さな体積変化を伴っている。なお、 翻訳は、当審による。以下同。)
イ「FIGS.1 through 4 illustrate a first preferred embodiment of the heat exchanger of the present invention. FIG. 5 shows the initial step in the assembly of the preferred embodiment, as further described below.
Referring first to FIG. 5, the heat exchanger is formed from a stack 10 of 600 square stainless steel sheets. There are three types of sheets, designated 12, 14 and 16, which are arranged in a repeating sequence as shown in FIGS. 3 and 5. Sheets 12 are unslotted and comprise every other sheet in the stack, for a total of 300 unslotted sheets 12. The sheets 14 and 16 are privided with multiple parallel slots 14a and 16a, respectively. All of the slots 14a and of sheets 14 extend in one direction, and all of the slots 16a are oriented orthogonally to the slots 14a.
There is a total of 150 each of the slotted sheets 14 and 16. As shown in FIG. 5, there is a slotted sheet between each part of unslotted sheets 12, and the slotted sheets 14 and 16 are ordered in a regular alternating sequence throughout the heat exchanger. Additionally, there is a solid end plate 17 of relatively greater thickness at the bottom of the stack, and a similar end plate at the top of the stack(not shown).
The thickness of the three types of sheets 12, 14 and 16 are 0.005, 0.008 and 0.002 inch, respectively. The slots 14a in sheets 14 are 0.016 inch wide and 0.016 inch apart. The slots 16a in sheets 16 are preferably formed by appropriate masking and chemical milling of unperforated stain- less steel sheets. 」(第3欄16?45行)、(図1?図4は、本発明の熱交換器の第1実施例を示す。図5は以下に述べる実施例の部品組立段階を示す。
図5によると、熱交換器は600枚の正方形ステンレス鋼板シートの積層体からなる。12,14及び16の3種類のシートが、図3及び図5に示すような繰り返し順序で積層される。シート12はスロットなしであり、積層スタック中に1シートおきに全300枚配置される。シート14及び16にはそれぞれ多数並列スロット14a及び16aが形成される。シート14の全スロット14aは1方向に指向し、全スロット16aはスロット14aと直角に指向する。
シート14及び16は各150枚あり、図5に示すように、スロットなしシート12の間にスロットシート14及び16が熱交換器全体に亘って規則的な順序で積層される。さらに、積層スタックの底部に端板17が、頂部に同様の端板が設けられる。
3種類のシート12,14及び16の厚さは、それぞれ0.005、0.008及び0.002インチです。シート14のスロット14aは幅0.016インチ、隣間距離0.016インチであり、シート16のスロット16aは幅0.020インチ、隣間距離0.010インチである。スロットは無孔のステンレス鋼シートに対してマスキングとケミカルミリングにより形成される。)

ウ「The brazed stack of sheets is milled on all four sides to form opposing pairs of rectangular manifold recesses 18 and 18', and 20 and 20', shown in FIGS. 1, 2 and 4. The recesses 18 and 18' open onto the exposed opposite ends of the slots 14a, and the recesses 20 and 20' open onto the ends of slots 16a. Electrical discharge milling is employed in the final stages of milling to prevent formation of burrs around the slot openings. The milled recesses form manifolds by which fluids can be admitted to and received from the channels formed by the slots 14a and 16a. Threaded bores 22 are formed in the brazed stack around the manifold recesses to permit attachment of suitable flanges to seal the fluid.」(第4欄1?13行)、(図1、2および4で示すように、シートが溶着された積層スタックは、対向する対の長方形の分岐用凹部18,18’、及び、20,20’を形成するために、4側面すべてが削られる。凹部18,18’は、それぞれスロット14aの両方の終端に面して開口し、凹部20,20’はそれぞれスロット16aの両方の終端に面して開口している。スロット開口周囲のバリ(まくれ)の形成を防ぐため、研削の最終段階では放電研削が採用される。研削された凹部は、スロット14a及び16aによる溝(チャネル)へ流体を送る、あるいは、溝から流体を受け取ることができる分岐部を形成する。通孔22は、流体をシールするための適切なフランジの取付けを可能にするために、溶着された積層スタックの分岐用凹部の周囲に形成される。)

エ「It will be seen, particularly in FIGS.3 and 4, that the heat exchanger is exceptionally compact. The illustrated heat exchanger is designed for use with water flowing through the 0.020x0.002" channels(slots 16a) at 100 cm3/sec, at pressures up to 2000 psi. The viscous power dissipation under such conditions is estimated to be approximately 1.0 watt for both the propylene and the water.」(第4欄24?32行)、
(図3及び4から分かるように、熱交換器は非常にコンパクトである。熱交換器は、水流が通路0.008×0.005”チャンネル(スロット14a)を200cm3/secで、プロピレン液流が通路0.020×0.002”チャンネル(スロット16a)を100cm3/secで、圧力2000psiとなるように設計されている。)

オ「Although the invention is disclosed as having particular application as a heat exchanger for a liquid based Stirling engine, the invention is in no way limited to such application and may be utilized in any application for which it is found useful.」(第6欄5?9行)、(液体をベースとしたスターリングエンジン用熱交換器を適用例として本発明は説明されているが、本発明はかかる適用例に限定されないし、有用と認められるあらゆる適用に利用される。)

(3) 引用例に記載された発明
ところで、記載事項ア?オ及び図1?図5の記載から、次の事項が認められる。

カ 前記ア?エ及び図1?図5の記載からみて、シート12とシート14の積層部分においてシート14の各スロット14aを隔てるシート部はランド部を、スロット14aは流れ経路を構成するから、シート12とシート14の積層部分は、ランド部及び流れ経路を備えた少なくとも1つの微小部品を有する材料シートからなる第1の積層体であって、熱交換器の熱リジェクタと熱レシーバのうち何れか一方として使用されること。

キ 前記ア?エ及び図1?図5の記載からみて、シート12とシート16の積層部分においてシート16の各スロット16aを隔てるシート部はランド部を、スロット16aは流れ経路を構成するから、シート12とシート16の積層部分は、ランド部及び流れ経路を備えた少なくとも1つの微小部品を有する材料シートからなる第2の積層体であって、熱交換器の熱リジェクタと熱レシーバのうち何れか他方として使用されること。

ク 前記スロット14aや16aからなる流れ経路を備えたそれぞれの微小部品は、熱交換に伴い、それら流れ経路の通過流体それぞれの温度等を変化させるから、該通過流体の状態を変化させる作動(本願の発明の詳細な説明中、段落【0022】参照。)を行うこと、即ち少なくとも1つの単位作動を行うこと。

そうすると、前記ア?オ及び図1?図5の記載から、引用例には次の発明が把握できる。

「液体を作業流体とするスターリングエンジン用熱交換器において、
(イ)複数個のランド部及び流れ経路を備えた少なくとも1つの微小部品を有する材料シートからなる第1の積層体と;
(ロ)上記第1の積層体と組み合わされ、複数個のランド部及び流れ経路を備えた少なくとも1つの微小部品を有する材料シートからなる第2の積層体と;
から成り、
(ハ)前記微小部品は少なくとも1つの単位作動を遂行し、
(ニ)上記第1及び第2の積層体のうちの一方が熱リジェクタとして使用され、当該第1及び第2の積層体のうち他方が熱レシーバとして使用され、水やプロピレン液等の液体が上記第1及び第2の積層体内を流れる、液体を作動流体とするスターリングエンジン用熱交換器。」(以下「引用発明」という。)

(4) 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

前記イ、ウからみて、引用発明の「液体を作業流体とするスターリングエンジン用熱交換器」は、本件補正発明の「微小部品熱組立体」に相当する。
また、引用発明の「液体」と本件補正発明の「凝縮可能な流体」は「流体」として共通である。

したがって、両発明は、次の点で一致し、相違点で相違する。

[一致点]
「微小部品熱組立体において、
(イ)複数個のランド部及び流れ経路を備えた少なくとも1つの微小部品を有する材料シートからなる第1の積層体と;
(ロ)上記第1の積層体と組み合わされ、複数個のランド部及び流れ経路を備えた少なくとも1つの微小部品を有する材料シートからなる第2の積層体と;
から成り、
(ハ)前記微小部品は少なくとも1つの単位作動を遂行し、
(ニ)上記第1及び第2の積層体のうちの一方が熱リジェクタとして使用され、当該第1及び第2の積層体のうち他方が熱レシーバとして使用され、流体が上記第1及び第2の積層体内を流れる微小部品熱組立体。」


[相違点]
第1及び第2の積層体内を流れる流体につき、本件補正発明では、凝縮可能な流体であるのに対して、引用発明では、水やプロピレン液等の液体である点。

(5) 判断
相違点について検討する。
引用発明における水や、プロピレンも、凝縮可能な冷媒である。
しかし、引用発明では、熱交換の過程において、凝縮するかは、必ずしも明らかでないので、念の為、この点につき、検討する。

当該技術分野において、熱交換器に用いる流体を、凝縮可能な流体とし、熱交換の過程において該流体が凝縮することは、本件の優先権主張日前、周知の技術である(例えば、特開平5-164494号公報、特開昭57-190375号公報参照。)。

そうすると、引用発明において、流体を、本件補正発明のように、凝縮可能な流体とした点は、必要に応じ、当業者であれば、容易に想到し得たことである。

また、本件補正発明の効果については、引用発明及び周知技術から、当業者が予測し得る程度であって、格別のものではない。

してみると、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(6) むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1?34に係る発明は、平成18年8月11日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?34に記載されたとおりのものであるところ、その請求項12に係る発明は、特許請求の範囲の請求項12に記載された、次の事項により特定されるものである(以下「本願発明」という。)。

「【請求項12】
微小部品熱組立体において、
(イ)複数個のランド部及び流れ経路を備えた少なくとも1つの微小部品を有する材料シートからなる第1の積層体と;
(ロ)上記第1の積層体と組み合わされ、複数個のランド部及び流れ経路を備えた少なくとも1つの微小部品を有する材料シートからなる第2の積層体と;
から成り、
(ハ)上記第1及び第2の積層体のうちの一方が熱リジェクタとして使用され、当該第1及び第2の積層体のうち他方が熱レシーバとして使用され、凝縮可能な流体が上記第1及び第2の積層体内を流れることを特徴とする微小部品熱組立体。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本件補正発明から、「微小部品」の限定事項である「少なくとも1つの単位作動を遂行」するとの発明特定事項を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定した本件補正発明について、前記したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-07 
結審通知日 2009-01-08 
審決日 2009-01-21 
出願番号 特願2004-31667(P2004-31667)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F28D)
P 1 8・ 575- Z (F28D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田々井 正吾  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 渋谷 知子
佐野 遵
発明の名称 微小部品シート構造体  
代理人 社本 一夫  
代理人 富田 博行  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  

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