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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H05K
管理番号 1199223
審判番号 訂正2009-390046  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2009-04-06 
確定日 2009-05-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4270140号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4270140号に係る明細書、特許請求の範囲及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第4270140号(平成17年2月17日特許出願、平成21年3月6日設定登録)の特許請求の範囲を審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、即ち、下記のとおり訂正することを求めるものである(下線部は、訂正箇所を意味する。)。

<訂正事項>
特許権の設定登録時の特許請求の範囲(以下、「訂正前特許請求の範囲」という。また、以下、訂正前の特許権の設定登録時の明細書のことを「訂正前明細書」といい、訂正前の特許権の設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面のことをまとめて「訂正前明細書等」という。)の請求項1の「前記窒化珪素基板、前記回路パターン形成用金属板、前記放熱用金属板の各々のヤング率(E)、線膨張率(α)、板厚(t)に基づき、Σ(E×α×t)/Σ(E×t)の式にて算出される前記窒化珪素基板の見掛けの熱膨張係数が、8ppm/k以上、14ppm/k以下である」を、「前記窒化珪素基板、前記回路パターン形成用金属板、前記放熱用金属板の各々のヤング率(E)、線膨張率(α)、板厚(t)に基づき、Σ(E×α×t)/Σ(E×t)の式にて算出される前記窒化珪素回路基板の見掛けの熱膨張係数が、8ppm/k以上、14ppm/k以下である」と訂正する。

2.当審の判断
そこで、上記訂正事項について検討する。

まず、訂正前明細書等には、上記「見掛けの熱膨張係数」に関して、以下の記載がある。

〔本a〕「そこで、本発明者は、セラミックス回路基板の熱的挙動の把握は、セラミックス回路基板を構成する異種材料の個々の構成要素を考慮した熱膨張係数として把握することが好ましいと発想した。かかる異種材料の接合構造であるセラミックス回路基板の熱膨張係数は実測することはできないが、個々の異種材料の構成要件は十分に前もって知ることができる筈で、かかる構成要件から、セラミックス回路基板全体としての計算上の、すなわち見掛けの熱膨張係数を算出することができるのではないかと発想した。・・・
かかる異種材料の接合構造を有するセラミックス回路基板の見掛けの熱膨張係数を算出できれば、逆に、例えば、放熱ベースのCu材の熱膨張係数に近づけるように異種材料の構成条件を制御することで、冷熱サイクルに対しての高い耐性を有し、且つ放熱特性の優れたセラミックス回路基板を提供できる筈であるとも考えた。」(【0019】?【0020】)

〔本b〕「本発明はセラミックス基板の一方の面に回路パターン形成用金属板が設けられ、前記セラミックス基板の他方の面に放熱用金属板が設けられたセラミックス回路基板であって、前記回路パターン形成用金属板は、CuまたはCu合金で形成され、前記放熱用金属板は、CuまたはCu合金で形成され、前記セラミックス基板、前記回路パターン形成用金属板、前記放熱用金属板の各々のヤング率、線膨張率、板厚に基づき算出される前記セラミックス回路基板の見掛けの熱膨張係数が、8ppm/k以上、14ppm/k以下であることを特徴とする。」(【0026】)

〔本c〕「上記いずれかの構成で、前記セラミックス基板は、窒化珪素板であることを特徴とする。セラミックス基板に窒化珪素板を使用すれば、接合構造におけるセラミックス基板の割合を、セラミックス回路基板の強度を確保しつつ少なくすることができる。そのため、セラミックス回路基板の見掛けの熱膨張係数をより放熱ベースの熱膨張係数に近づけることができる。」(【0032】)

〔本d〕「かかる構成のセラミックス回路基板10では、その見掛けの熱膨張係数が放熱ベース(図3参照)として使用されるCu板の熱膨張係数に近い値に設定されていることとなる。すなわち、見掛けの熱膨張係数は、8ppm/k以上、14ppm/k以下に設定されている。」(【0052】)

〔本e〕「図2の右欄には、図1に示すセラミックス回路基板10において、セラミックス基板11の板厚t1=0.3mm、回路パターン形成用金属板12の板厚t2=0.6mm、放熱用金属板13の板厚t3=0.5mmに設定した場合の見掛けの熱膨張係数を示した。ここで、見掛けの熱膨張係数は、セラミックス基板(図中、基板と表示)11、回路パターン形成用金属板(図中、回路板と表示)12、放熱用金属板(図中、放熱板と表示)13の各々のヤング率(E)、熱膨張係数(σ)、板厚(t)を基に算出される。すなわち、回路板、基板、放熱板の各々の部材のE・σ・tの積の総和を一体化セラミックス回路基板と見なし、Σ(E×σ×t)/Σ(E×t)の値を求めて見掛けの熱膨張係数(平均熱膨張係数)を算出している。かかる算出結果から分かるように、図1に示すセラミックス回路基板の見掛けの熱膨張係数は11.12ppm/kに設定されている。
・・・
図2に例示するように、本発明に係るセラミックス回路基板10では、その見掛けの熱膨張係数が、Cuの熱膨張係数に類似の値をとるように制御されているため、例えば、図3に示す半導体モジュール100に構成した際の放熱ベース20にCu板20aを用いた場合には、はんだを介して接合したセラミックス回路基板10と放熱ベース20とは、冷熱サイクル試験では、略似た熱的挙動を示すこととなり、両者の熱膨張係数の差に起因する大きな残留応力に基づく剥離現象が発生しない。」(【0053】?【0054】)

上記摘記事項〔本a〕?〔本e〕の記載によれば、訂正前明細書には、セラミックス基板(窒化珪素基板)と、回路板、放熱板の各々の部材のヤング率(E)、熱膨張係数(σ)及び板厚(t)の積の総和を一体化セラミックス回路基板(窒化珪素回路基板)と見なし、Σ(E×σ×t)/Σ(E×t)の値を求めて見掛けの熱膨張係数(平均熱膨張係数)を算出すること、即ち、セラミックス基板(窒化珪素基板)、回路板及び放熱板の異種材料の接合構造であるセラミックス回路基板(窒化珪素回路基板)全体の見掛けの熱膨張係数を算出することが、一貫して記載されている。

一方、訂正前特許請求の範囲の請求項1には、「前記窒化珪素基板、前記回路パターン形成用金属板、前記放熱用金属板の各々のヤング率(E)、線膨張率(α)、板厚(t)に基づき、Σ(E×α×t)/Σ(E×t)の式にて算出される前記窒化珪素基板の見掛けの熱膨張係数」と記載されており、この記載からは、Σ(E×α×t)/Σ(E×t)の式にて算出されるのが、窒化珪素基板のみの見掛けの熱膨張係数であるかのように解されるが、上記窒化珪素基板のみならず上記回路パターン形成用金属板や上記放熱用金属板のヤング率等も加味した上で算出された値が、「窒化珪素基板のみの見掛けの熱膨張係数」に相当するとは認めがたいことからすると、上記訂正前特許請求の範囲の請求項1の記載は、それ自体意味の不明りょうな記載であるといわざるをえない。
また、上述のように、訂正前明細書には、セラミックス回路基板(窒化珪素回路基板)全体の見掛けの熱膨張係数を算出することが一貫して記載されていることからすると、上記訂正前特許請求の範囲の請求項1の記載は、訂正前明細書の記載との関係でも不合理を生じており、そのために不明りょうになっている記載であるといわざるをえない。

そして、上記訂正事項は、上記のように不明りょうな記載である訂正前特許請求の範囲の請求項1の記載を、見掛けの熱膨張係数を算出する対象物が窒化珪素回路基板であるという、訂正前明細書に記載されていた範囲内のものに訂正するものであるから、訂正前明細書等に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにするものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

さらに、上記訂正事項は、訂正前明細書等に記載された事項に基づいて行われているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.むすび
したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第3項ないし第5項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化珪素基板の一方の面に回路パターン形成用金属板が設けられ、前記窒化珪素基板の他方の面に放熱用金属板が設けられた窒化珪素回路基板であって、
前記回路パターン形成用金属板は、CuまたはCu合金で形成され、
前記放熱用金属板は、CuまたはCu合金で形成され、
前記窒化珪素基板、前記回路パターン形成用金属板、前記放熱用金属板の各々のヤング率(E)、線膨張率(α)、板厚(t)に基づき、Σ(E×α×t)/Σ(E×t)の式にて算出される前記窒化珪素回路基板の見掛けの熱膨張係数が、8ppm/k以上、14ppm/k以下であることを特徴とする窒化珪素回路基板。
【請求項2】
請求項1記載の窒化珪素回路基板において、
前記窒化珪素基板は、板厚t1が0.2mm以上、1mm以下であり、
前記回路パターン形成用金属板は、板厚t2が0.3mm以上、4mm以下であり、
前記放熱用金属板は、板厚t3が0.3mm以上、4mm以下であり、
(前記回路パターン形成用金属板と前記放熱用金属板との総和板厚)/前記窒化珪素基板の板厚とで示される板厚比(t2+t3)/t1が、2以上、30未満であることを特徴とする窒化珪素回路基板。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の窒化珪素回路基板と、
前記窒化珪素回路基板の前記回路パターン形成用金属板の素子搭載部に搭載された半導体素子と、
前記窒化珪素回路基板が、はんだを介して接合されるCuまたはCu合金で形成される放熱ベースと、
を有することを特徴とする半導体モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体モジュールにおいて、
前記はんだには、粒径が20μm以上、300μm以下のNi、Cu、Mo、Wのいずれかの粉末が1質量%以上、30質量%以下の範囲で含まれている
ことを特徴とする半導体モジュール。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2009-04-28 
結審通知日 2009-05-01 
審決日 2009-05-12 
出願番号 特願2005-40920(P2005-40920)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大光 太朗  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 粟野 正明
加藤 浩一
登録日 2009-03-06 
登録番号 特許第4270140号(P4270140)
発明の名称 窒化珪素回路基板およびそれを用いた半導体モジュール  
代理人 筒井 大和  
代理人 小塚 善高  
代理人 筒井 大和  
代理人 小塚 善高  

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