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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する G01N
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する G01N
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する G01N
管理番号 1199229
審判番号 訂正2009-390045  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2009-04-06 
確定日 2009-06-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3411112号に関する訂正審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第3411112号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 請求の趣旨
本件審判の請求の趣旨は,特許第3411112号(平成6年11月4日特許出願,平成15年3月20日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり,すなわち,下記訂正事項aおよびbのとおり訂正することを求めるものである。

1 訂正事項a
特許請求の範囲において「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタグラムを作成」とあるのを,「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成」と訂正する。

2 訂正事項b
明細書の段落番号【0011】および【0018】の「2次元スキャッタグラム」を,「2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラム」と訂正する。

第2 当審の判断
1 訂正の目的等について
(1)訂正事項a
訂正事項aは,明細書の特許請求の範囲に記載された「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタグラムを作成」を,「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成」と限定しようとするものである。
そして,明細書の段落【0047】には「次に、円相当径と円形度の2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データを求める(ステップS11)。この場合にも、まず高倍率撮像と低倍率撮像のそれぞれに対して2次元頻度データを求める。・・・・・」と記載され,また,同段落【0050】には「以上のようにして求められた頻度データおよび解析結果から、図7、図8に示すような粒度ヒストグラム、円相当径と円形度の2次元スキャッタグラム、および平均粒径や50%径等の解析結果を表示する(ステップS13)。図7では、横軸をLOG変換した円相当径、縦軸を頻度%と累積%の2つの意味に割当て、累積粒度分布曲線の表示も同時に表示している。図8に示すスキャッタグラム表示では、横軸をLOG変換した円相当径、縦軸を円形度としており、各分割点(ドット)の色を2次元頻度値に応じて変えるようにしている。」(下線は,当審にて付与する。)と記載されており,「円相当径と円形度の2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データ(2次元頻度データ)」,すなわち,「円相当径と円形度の2つのパラメータによる2次元座標上の各分割部分における頻度データ」に基づいて(用いて)2次元スキャッタグラムを作成することが実施例として明記されていることは明らかであり,訂正事項aは,これらの記載に基づくものであるといえる。
また,訂正前の「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタグラムを作成」は,円相当径,円形度を横軸,縦軸とする「通常の2次元スキャッタグラム」と上記実施例の「円相当径と円形度の2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データ(2次元頻度データ)に基づく2次元スキャッタグラム」との両者を作成することを包含していたところ,本件補正により,後者のものを作成することに限定されることになるといえる。
そうすると,訂正事項aは,特許法第126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,訂正事項aは,特許法第126条第3項および第4項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項b
訂正事項bは,訂正事項aの訂正に伴い,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合をとるためのものであり,特許明細書の段落【0047】および【0050】の上記記載を根拠とするものであるから,この訂正は,特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり,また,同法第126条第3項および第4項の規定に適合するものである。

2 独立特許要件
(1)訂正後の発明
本件訂正により訂正された本件特許の請求項1に係る発明は,次のとおりのものである。
「【請求項1】粒子懸濁液の流れをシース液で取り囲んだ流れに変換するシースフローセルと、変換された懸濁液流に対して光を照射する光照射手段と、照射された粒子を撮像する撮像手段と、撮像された粒子像を解析する画像解析手段と、表示手段とを備え、画像解析手段は、撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し、その粒子データから粒子の粒径と円形度を算出する算出手段と、粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段と、撮像された各粒子像を格納する記憶手段と、記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段とからなることを特徴とする粒子画像分析装置。」

(2)記載要件(36条6項)について
上申人 株式会社セイシン企業は平成21年5月15日付け上申書において,「2次元スキャッタ頻度データ」の意味が不明りょうであり,訂正後の特許請求の範囲は不明りょう,すなわち,明確でない旨主張している(上申書3頁下から5行?同書4頁11行)ので,まず,この点について検討する。
前述したように,明細書の段落【0047】には「次に、円相当径と円形度の2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データを求める(ステップS11)。この場合にも、まず高倍率撮像と低倍率撮像のそれぞれに対して2次元頻度データを求める。・・・・・」と記載され,また,同段落【0050】には「以上のようにして求められた頻度データおよび解析結果から、図7、図8に示すような粒度ヒストグラム、円相当径と円形度の2次元スキャッタグラム、および平均粒径や50%径等の解析結果を表示する(ステップS13)。図7では、横軸をLOG変換した円相当径、縦軸を頻度%と累積%の2つの意味に割当て、累積粒度分布曲線の表示も同時に表示している。図8に示すスキャッタグラム表示では、横軸をLOG変換した円相当径、縦軸を円形度としており、各分割点(ドット)の色を2次元頻度値に応じて変えるようにしている。」と記載されている。(下線は,当審にて付与する。)
これらの記載からみて,明細書には「円相当径と円形度の2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データ(2次元頻度データ)」,すなわち,「円相当径と円形度の2つのパラメータによる2次元座標上の各分割部分における頻度データ」に基づいて(用いて)2次元スキャッタグラムを作成することが実施例として明記されていることは明らかであり,この実施例に対応して本件特許の請求項1に係る発明においては「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成」と特定されていることとなる。
なお,「図8に示すスキャッタグラム表示では、・・・・・各分割点(ドット)の色を2次元頻度値に応じて変える」(下線は,当審にて付与する。)の記載からみて,本件特許の請求項1に係る発明の「2次元スキャッタグラム」は,単なるドットをプロットした通常の2次元スキャッタグラムではなく,2次元的(平面的),例えば,「色」にて「頻度値」をも表示するものであることは明らかである。
してみると,「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データ」は,当業界で通常に使用される用語ではないとしても,2次元スキャッタグラム作成用の「円相当径をパラメータとする頻度データ」と「円形度をパラメータとする頻度データ」として明確であるから,本件特許の請求項1に係る発明が特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない,と迄はいえない。

(3)進歩性(29条2項の規定)について
ア 刊行物
請求人は,平成21年5月2日付け上申書に添付して,以下の刊行物を提出している。
(ア) 「粉体および粉末冶金」,第40巻12号,1993年12月,pp.1170-1173(以下,「乙4」という。)
(イ) Aerosol Age,1988年2月,pp.28?30(以下,「乙5」という。)
(ウ) Laboratory Practice,vol 39,No 11,pp.10-12(以下,「乙6」という。)
(エ) Sysmex Journal Vol. 14,No.2(1991),pp.173-180(以下,「乙7」という。)
(オ) 特開平6-186156号公報(以下,「乙8」という。)
(カ) Sysmex Journal Vol. 16,No.1 (1993),pp.39?47(以下,「乙9」という。)
(キ) 「Juliet by the Shapespeare Corporation」の製品カタログ,1988年(以下,「乙15」という。)
(ク) 「Juliet Image Analyzer」の製品カタログ,1990年8月(以下,「乙16」という。)

イ 乙4について
乙4には「粒子懸濁液のセルと、粒子を撮像する撮像手段と、撮像された粒子像を解析する画像解析手段と、を備え、画像解析手段は、撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し、その粒子データから粒子の粒径と円形度を算出する算出手段と、からなる粒子画像分析装置」が記載され,Fig.3には「横軸を粒子の大きさ(粒子径),縦軸をShape Factorとする,粒子の分布図(スキャタグラム)」が示されているのみであり,「2次元スキャッタ頻度データ(2次元頻度データ)に基づいて2次元スキャッタグラム」は記載されていない。また,Fig.4には「粒子の大きさ(粒子径)毎に,横軸をShape Factor,縦軸をFrequency(%,頻度)とする図」が示されているものの,この図は,「2次元スキャッタグラム」,すなわち,2次元散布図とはいえない。

ウ 乙5および乙6について
乙5および乙6には画像解析装置(Galai CIS-1 System)が紹介され,該装置が粒子の画像あるいはヒストグラムを表示することが記載されるものの,「2次元スキャッタグラム」を表示することは記載されていない。

エ 乙7について
乙7には自動尿沈渣分析装置(UA-1000)が紹介され,該装置が粒子の静止画像を得てその粒子をImage Processorで解析後,CRTに一括表示することが記載されているものの,「2次元スキャッタグラム」を表示することは記載されていない。

オ 乙8について
乙8には粒子分析装置が記載され,「粒子個々の特徴的パラメータデータはデータ解析装置に送られ、2次元スキャッタグラムや1次元ヒストグラム等が作成され」ることが記載されているものの,「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データ(2次元頻度データ)に基づいて2次元スキャッタグラムを作成」する点は記載されおらず,また,それを示唆する記載もない。

カ 乙9について
乙9には自動尿沈渣分析装置(UA-2000)が紹介され,該装置が粒子の静止画像を得てその粒子をImage Processorで解析後,CRTに一括表示することが記載されているものの,「2次元スキャッタ頻度データ(2次元頻度データ)に基づいて2次元スキャッタグラムを作成」することは記載されていない。

キ 乙15および乙16について
乙15および乙16には粒子のイメージアナライザー(Juliet)が記載され,「粒子を撮影し分析し、2次元スキャッタグラムや1次元ヒストグラムが作成・表示され」ることが記載されているものの,「2次元スキャッタ頻度データ(2次元頻度データ)に基づいて2次元スキャッタグラムを作成」することは記載されおらず,また,それを示唆する記載もない。

ク まとめ
そうすると,乙4?9および乙15?16には,本件訂正事項である「粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データ(2次元頻度データ)に基づいて2次元スキャッタグラムを作成」する点は記載されおらず,また,それを示唆する記載もないといえるから,これらの刊行物に記載された発明から当業者が容易に想到できたといえない。

第3 むすび
以上のとおり,本件審判の請求は,特許法第126条第1項に掲げる事項を目的とし,かつ,同条第3項および第4項に適合するとともに,訂正後の発明は,特許出願の際独立して特許を受けることができ,特許法第126条第5項の規定にも適合するものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
粒子画像分析装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】粒子懸濁液の流れをシース液で取り囲んだ流れに変換するシースフローセルと、変換された懸濁液流に対して光を照射する光照射手段と、照射された粒子を撮像する撮像手段と、撮像された粒子像を解析する画像解析手段と、表示手段とを備え、画像解析手段は、撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し、その粒子データから粒子の粒径と円形度を算出する算出手段と、粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段と、撮像された各粒子像を格納する記憶手段と、記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段とからなることを特徴とする粒子画像分析装置。
【請求項2】画像解析手段が、個々の粒子の円形度から円形度頻度データおよび/又は円形度の平均値と標準偏差を算出して表示手段に表示する演算手段をさらに備えてなる請求項1記載の粒子画像分析装置。
【請求項3】粒子懸濁液の特性に応じて、シース液の種類を選択し、シースフローセルに供給する供給手段および/又は粒子を予め染色するための染色手段をさらに備えてなる請求項1記載の粒子画像分析装置。
【請求項4】シースフローセルが、粒子懸濁液を偏平な流れに変換すると共に、撮像手段が粒子懸濁液流の偏平な面を撮像することを特徴とする請求項1記載の粒子画像分析装置。
【請求項5】算出手段および図表作成手段は、撮像手段から得られる撮像画面について、撮像画面の端にかかっている粒子像を無視し、粒度頻度データを円相当径の大きさに応じて補正することを特徴とする請求項1記載の粒子画像分析装置。
【請求項6】撮像手段は撮像倍率を選択する手段を有し、それぞれの撮像倍率での粒径測定範囲に違いを持たせるとともに、各倍率の粒径測定範囲が互に部分的にオーバーラップするようにしたことを特徴とする請求項1記載の粒子画像分析装置。
【請求項7】算出手段は、複数種類の撮像倍率で撮像された粒子像から、それぞれ粒度頻度データを算出し、それぞれの撮像倍率での試料分析量の違いにより粒度頻度データを補正し、さらにそれぞれの撮像倍率での粒度頻度データを加重平均法によって滑らかにつなぎ合わせることを特徴とする請求項6記載の粒子画像分析装置。
【請求項8】画像解析手段は、一括表示された各粒子像に対して単一の粒子であるか、複数個凝集した凝集粒子であるかを識別する入力手段と、識別された単一の粒子と凝集粒子の数の比を算出して表示手段に表示する手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の粒子画像分析装置。
【請求項9】画像解析手段は、一括表示された各粒子像に対して単一の粒子であるか、複数個凝集した凝集粒子であるかを識別する入力手段をさらに備え、算出手段は、単一の粒子として識別された粒子像だけを対象にして円相当径と円形度を算出することを特徴とする請求項1記載の粒子画像分析装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は液中の粒子を撮像し、その粒子像を記憶、表示するとともに、粒子像を画像解析することによって、粒子の大きさや形状に関する情報を求める粒子画像分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ファインセラミックス粒子、顔料、化粧品用パウダー等の粉体の品質を管理する上で、粒子の粒径を測定、管理することは非常に重要である。その測定装置として、古くから液相沈降法、電気的検知帯法(クールター法)による測定装置があり、最近ではレーザ回析散乱法による測定装置が広く使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のいづれの方式による測定装置においても、その測定精度(正確度)は、いまだに満足できるものではない。特に、対象とする粒子が偏平であったり細長い形をしている場合には、測定方法の違いによって、求められる粒径は大きく異なることがある。また、一般的に微小な粒子は測定中に凝集しやすく、その場合にも正確な粒度分布を求めることができない。また、粒子の球形度(円形度)や凝集度合い等に関する情報を、上記従来の粒度分布測定装置で得ることは困難である。
【0004】
懸濁液中の粒子の内、大きい粒子のほうが小さい粒子に比べて速く沈降するので、粒子濃度は時間的、空間的に変化する。この変化を光の透過量で検知して粒度分布を求める方法が、沈降法として代表的な液相沈降光透過法である。この沈降法では、同じ体積と密度の粒子でも、その粒子の形状が異なると沈降速度は異なる。また、粒子どうしが凝集していると、その凝集粒子は速く沈降する。
【0005】
電気的検知帯法による装置は、電解液に浮遊させた粒子が小さな穴を通過する時の電気抵抗の変化を検出するものであり、1個1個の粒子の体積相当径が形状にほとんど影響されずに測定できる。逆に言えば、電気的検知帯法では、粒子の形状に関する情報を得ることは困難である。また、粒子の大きさと比較して電気的検知領域がかなり広いので、粒子どうしが近接あるいは凝集していると、正確な粒度分布を求めることができない。
【0006】
最近広く使用されているレーザ回析散乱法の装置は、浮遊している粒子群にレーザ光を照射して得られる回析光/散乱光強度の角度分布情報から、ミー散乱理論に基づいて粒径分布を推定、算出するものである。この装置では粒度が未知の試料や屈折率が同じ粒子の混合試料でも、粒径が0.1μmから数百μmまでの粒子に対し、1回の測定で再現性のある粒度分布が得られるという利点がある。
【0007】
しかし、この方式の装置には次に挙げるような問題点がある。
1)粒子による散乱光強度は、形状、屈折率、表面状態等の違いによる影響を大きく受け、正確な粒度分布を求めるのは難しい。
2)測定する粒子の正確な屈折率を入力する必要があるが、粒子の表面が酸化していたり、不純物が混ざっていることがあり、文献値を入力しても正しく粒度分布が求められないことがある。
【0008】
3)粒子が球形で表面が滑らかであり凝集していないという仮定のもとに、多数の粒子による回析光/散乱光強度分布についての連立方程式を解いて粒度分布を推定する。その仮定を満足しない粒子に対しては、その連立方程式が満足に解けないことがあり、独自の補正を行っている。
4)上記のような独自の補正のために、機種間の測定結果に大きな差が生じることがある。
以上のように、従来の粒度分布測定装置では、粒子の形状や凝集の影響を大きく受け、正確な粒度分布を求めるのは難しい。また、粒子の形状や凝集度合いに関する情報を得ることも困難である。
【0009】
粒子の形状を測定する方法としては、顕微鏡と画像処理装置を組み合わせる方法がある。しかし、工業用の粉体は、粉砕して作られた粒子が多く、そのような粉体では、ひとつの試料でも各粒子の大きさが著しく異なり、スライドグラス上の粒子の全てにピントを合わすことはできない。すなわち、小さな粒子に対してピントを合わすと大きな粒子に対してピントが合わなくなる。大きな粒子に対してピントを合わすと小さな粒子に対してピントが合わなくなる。従って、この顕微鏡方式は、粒子の大きさが揃っている場合にしか利用できない方法である。
【0010】
また、この顕微鏡方式で何千個もの粒子像を解析しようとすると、撮像する視野を変更するためにスライドグラスを少しずつ移動させて何百枚も画像を取り込んで解析する必要があり、手間と時間がかかる。このような理由で、工業用粉体に対しては、粒子像から粒子の大きさや形状を測定することはあまり行われていないのが現状である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明は、粒子懸濁液の流れをシース液で取り囲んだ流れに変換するシースフローセルと、変換された懸濁液流に対して光を照射する光照射手段と、照射された粒子を撮像する撮像手段と、撮像された粒子像を解析する画像解析手段と、表示手段とを備え、画像解析手段は、撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを測定し、その粒子データから粒子の粒径と円形度を算出する算出手段と、粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成して表示手段にそれぞれ表示する図表作成手段と、撮像された各粒子像を格納する記憶手段と、記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する粒子像呼出手段とからなることを特徴とする粒子画像分析装置を提供するものである。
【0012】
この発明の装置の分析対象は、ファインセラミックス、顔料、化粧品用パウダーのような無機物の粉体および食品添加物のような有機物の粉体を含むものであり、予め染料や標識試薬によって染色処理された粒子であってもよい。
【0013】
シースフローセルは、粒子を含む試料液、すなわち、粒子懸濁液の流れをシース液で包んで流すことにより流体力学的効果によって、細いあるいは偏平な流れに変換することができるセルであり、これには、従来公知のものを用いることができる。
【0014】
なお、シースフローセルに供給されるシース液については、粒子懸濁液の性質(粒子や溶媒の性質)に対応してその種類を選択することが好ましい。光照射手段には、パルス発光するストロボやレーザ光源を用いることが好ましい。連続的に発光する光源を用いることもできるが、この場合には、撮像手段にシャッターを設ける必要がある。撮像手段には、一般的な2次元画像を撮像するビデオカメラを用いることができる。
【0015】
光照射手段と撮像手段とはシースフローセルを挟んで配置され、シースフローセルにおいて粒子懸濁液が偏平な流れに変換される場合、光照射手段は、粒子懸濁流の偏平な一面に直交して光を照射し、撮像手段はその光軸上に配置されることが好ましい。
【0016】
画像解析手段は、1/30秒ごとの撮像画面を実時間で処理できるパイプライン処理方式の画像処理回路、ならびにCPU,ROM,RAMおよびI/Oポートからなるマイクロコンピュータを備えることが好ましい。表示手段には、例えば、CRTや液晶ディスプレイを用いることができる。
【0017】
【作用】
シースフローセルは、粒子懸濁液の流れをシース液で取り囲み、細いあるいは偏平な流れに変換し、光照射手段は、変換された懸濁液流に対して光を照射し、撮像手段は、光照射された粒子を撮像する。画像解析手段は、撮像された粒子像を解析して解析結果を粒子像と共に表示手段に表示する。
【0018】
つまり、画像解析手段においては、算出手段が、撮像された各粒子像の面積および周囲長についての粒子データを算出し、そのデータから粒径と円形度を算出し、図表作成手段が、粒径による粒度頻度データに基づいてヒストグラムを作成すると共に、粒径と円形度とに対応する2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データに基づいて2次元スキャッタグラムを作成してそれらを表示手段に表示する。
【0019】
一方、記憶手段は、撮像された各粒子像を格納し、粒子像呼出手段は、記憶手段に格納された各粒子像を表示手段に一括表示する。つまり、この粒子分析装置では、撮像された各粒子像から粒子の大きさや周囲長を求め、また、実際の粒子の形態や凝集状態を一括表示される粒子像で確認することができる。
【0020】
具体的には、粒子懸濁液を透明なフローセルに導き、その懸濁液を細い又は偏平な流れにする。その流れに対して光照射することによって、流れの中の粒子をビデオカメラで撮像する。撮像された各粒子像の投影面積と周囲長を算出し、次に粒径と円形度を算出する。さらに、粒径による粒度ヒストグラムおよび粒径と円形度の2次元スキャッタグラムを作成する。この2次元スキャッタグラムと実際の粒子像を評価、確認することによって、粒子の円形度や凝集度合いに関する情報を得ることができる。
【0021】
【実施例】
この発明のフロー方式粒子画像分析装置の例を図1および図2に示す。これらの図において、まず粒子懸濁液はダイヤフラムポンプ等の吸引手段(図示していない)によって吸引ピペット1から吸引され、サンプルフィルター2を通りフローセル5の上部の試料チャージングライン3へ引き込まれる。サンプルフィルター2によって、懸濁液中の粗大な粒子やごみが取り除かれ、流路の細い(狭い)フローセル5が詰まらないようにしている。またこのサンプルフィルタ2は、粗大な凝集塊をほぐす効果も持っている。
【0022】
測定する粒子が半透明状の場合には、その粒子に対して適当な染色を施すのが好ましい。図1には図示していないが、装置内に染色液ボトルを設け、吸引した試料をその染色液で染色するための反応チャンバーを付加してもよい。
【0023】
チャージングライン3に引き込まれた粒子懸濁液は、シースシリンジ4を動作させることによってフローセル5に導かれ、サンプルノズル5aの先端から懸濁液が少しずつ押し出される。それと同時にシース液もシース液ボトル6からシース液チャンバー7を介してフローセル5に送り込まれ、粒子懸濁液はそのシース液で取り囲まれ、図2に示すように、液体力学的に懸濁液流は偏平に絞られてフローセル5の内を流れ、廃液チャンバー14を介して排出される。このように偏平に絞られた懸濁液流に対して、ストロボ8からパルス光を1/30秒ごとに周期的に照射することによって、1/30秒ごとに粒子の静止画像が対物レンズ9を介してビデオカメラ10で撮像される。
【0024】
粒子を懸濁する溶媒は粒子特性(粒径や比重)に応じて最適なものを選べばよい。また、懸濁液の流れを確実に偏平にあるいは細く絞り込むため懸濁液の特性に応じて、例えば溶媒の粘度や比重に応じて、シース液の粘度や比重を変更するのが好ましい。図1には図示していないが、複数種類のシース液ボトルを設け、測定する試料に応じて使用するシース液の種類を容易に切り換えられるような機構を付加してもよい。
【0025】
懸濁液流の偏平な面をビデオカメラ10で撮像すれば、ビデオカメラ10の撮像エリア全体に渡って粒子像を捉えることができ、1回の撮像で多数の粒子を撮像できる。また、撮像される粒子の重心とビデオカメラ10の撮像面との距離をほぼ一定にすることができるので、粒子の大きさに関わらず常にピントの合った粒子像が得られる。さらに、流体力学的な効果によって、偏平な粒子や細長い粒子の向きが揃いやすく、粒子像を解析して得られる特徴パラメータは、ばらつきが小さく再現性が良い。
【0026】
複数回のパルス光照射によって撮像される粒子像の数は、懸濁液流を偏平にした場合には、ビデオカメラ10の撮像エリアの面積、試料流の厚み、粒子懸濁液の単位体積当たりの粒子数、および撮像回数(フレーム数)によって決まる。例えば、撮像エリアを200×200μm、試料流の厚みを5μm、粒子濃度を10000個/μl、撮像フレーム数を1800(撮像時間を60秒)とした時に撮像される粒子数は3600個となる。
【0027】
撮像エリアの面積は、ビデオカメラ10の受光面に対する結像倍率とそのサイズによって決まる。対物レンズ9の倍率を大きくすれば撮像エリアが小さくなるが、小さな粒子まで大きく撮像できる。対物レンズ9の倍率を小さくすれば撮像エリアが大きくなり、大きな粒子を撮像するのに適している。この装置では、対物レンズ9の倍率を選択あるいは測定途中に切り換えできるようにしており(図示していない)、粒径の測定レンジを広くしている。
【0028】
ビデオカメラ10からの画像信号は、画像処理装置11で処理され、モニターテレビ12に表示される。13は各種の操作等を行うためのキーボード(又はマウス)である。
【0029】
1/30秒ごとの粒子撮像画面に対する画像処理の手順を図5に示す。画像信号は、画像処理装置11に取り込まれてA/D変換され、画像データとして取り込まれる(ステップS1)。まず懸濁液流に対する照射光の強度むら(シェーディング)を補正するためのバックグランド補正が行われる(ステップS2)。
【0030】
具体的には、粒子がフローセル5を通過していない時に光照射して得られる画像データを、測定前にあらかじめ取り込んでおき、その画像データと実際の粒子撮像画面の画像データとを比較演算することであり、画像処理として一般的によく知られた処理である。次に、粒子像の輪郭を的確に抽出するための前処理として輪郭強調処理を行う(ステップS3)。具体的には、一般的によく知られたラプラシアン強調処理を行う。
【0031】
次に、画像データをある適当なスレシホールドレベルで2値化する(ステップS4)。次に、2値化された粒子像に対してエッジ点かどうかを判定するとともに、着目しているエッジ点に対して隣合うエッジ点がどの方向にあるかの情報、すなわちチェインコードを生成する(ステップS5)。次に、このチェインコードを参照しながら粒子像のエッジトレースを行い、各粒子像の総画素数、総エッジ数、斜めエッジ数を求める(ステップS6)。
【0032】
高性能のパイプライン処理可能な画像処理装置を使用すれば、以上の画像処理を、1/30秒ごとに撮像される画面に対してリアルタイムに処理することができる。この装置では、ある倍率で撮像される複数の画面に対して上記画像処理を繰り返し行い、次に異なる撮像倍率に切り換えて撮像し、同様の画像処理を行う。また、撮像されたフレームから粒子像の切り出しを行い、切り出した粒子像を画像処理装置11の画像メモリに格納する(ステップS7)。
【0033】
撮像が終了すると(ステップS8)、各粒子像に対して求められた総画素数、総エッジ数、斜めエッジ数から、まず下記の式によって各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める。
【0034】
図10に示すように、2値画像の周囲のエッジの中心を結んでできる枠内の面積Sおよび枠の長さ(周期長L)は、1画素当たりの面積を1とした場合、
面積S=総画素数-(総エッジ数×0.5)-1……(1)
周囲長L=(総エッジ数-斜めエッジ数)+(斜めエッジ数×√2)……(2)
【0035】
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める(ステップS9)。厳密に言うと、縦横線と斜め45°の線で粒子像の輪郭を表わすと、上式で求められる周囲長Lは丸い粒子像の場合、1.05倍程度長くなり、円形度を求める際に少し補正が必要となる。円形当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円を想定し、その円の直径のことであり、式(3)で表される。円形度とは、例えば式(4)で定義される値であり、粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像が細長くなればなるほど円形度は小さい値になる。
【0036】
円相当径=(粒子投影像面積値/π)^(1/2)×2……(3)
円形度=(粒子像と同じ投影面積値を持つ円の周囲長)/粒子投影像の周囲長)……(4)
【0037】
各粒子像の円相当径が求められれば、次にその値をもとにして粒度頻度データを作成する(ステップS10)。工業用の粉体は多種多様で粒径も非常に広い範囲に渡っている。従って、一般的に粒径はLOG(対数)変換し、LOG変換した値を等分割した上で粒度頻度データを求める。
【0038】
ところで、粒子撮像画面(フレーム)において、画面の端にかかる粒子像からは正しくその粒子の円相当径や円形度を求めることはできない。従って、画面の端にかかって写っている粒子像は無視する必要がある。図3に示すように、大きな粒子像ほど画面の端にかかる確率が高いことは明らかであり、画像処理法で粒度分布を正しく求めるにはこのことを考慮しなければならない。そして、粒子像の大きさに応じてその頻度値を補正する。
【0039】
ビデオカメラ10の撮像エリアに対して粒子像が十分小さい場合には、画面の端にかからない粒子像の重心の存在エリアは、ほぼ撮像エリアと同じである。粒子像が大きい場合ほど、画面の端にかからない粒子像の重心の存在エリアは、撮像エリアに対して大きく狭まる。
【0040】
すなわち、大きな粒子ほど実質の試料分析量が減ることになり、大きな粒子ほど相対的に頻度が小さくなる。試料分析量は、画面の端にかからない粒子像の重心の存在エリアの面積に比例する。従って、円相当径がd?(d+Δd)の粒子頻度データは、式(5)で補正すればよい。つまり、頻度補正係数は、
(ビデオカメラの撮像エリアの面積)/{(撮像エリアX方向サイズ-d)×(撮像エリアY方向サイズ-d)}……(5)
となる。ビデオカメラの撮像エリアと画像処理対象エリアが異なる場合には、上記撮像エリアを画像処理対象エリアに置き換えて算出する。
【0041】
粒度頻度データは、まずそれぞれの撮像倍率で撮像された粒子像に対して独立に求める。それぞれの撮像倍率での粒径測定範囲は異なり、例えば図6に示すように、高倍率撮像での粒径測定範囲を1?30μm、低倍率撮像での粒径測定範囲を15?300μmとしている。この例では、15?30μmの範囲をオーバーラップさせている。
【0042】
図6の例は、粒径が15?30μmの範囲を越えて大きくばらついている粒子の例であり、高倍率撮像と低倍率撮像でのそれぞれの粒度頻度データをつなぎ合わせる必要がある。そのためには、まずそれぞれの撮像倍率での試料分析量の比に応じて、次式のような頻度補正を行う必要がある。低撮像倍率では撮像エリアが広いので、一般的に試料分析量を多くすることができる。
(高倍率撮像での頻度値)×(低倍率撮像での試料分析量)/(高倍率撮像での試料分析量)
なお、試料分析量は、
(撮像面積)×(粒子懸濁液流の厚み)×(撮像フレーム数)
で求めることができる。
【0043】
上記のような試料分析量の違いによる頻度補正を行っても、必ずしもそれぞれの頻度データによる頻度分布曲線が滑らかにつながらず、つなぎめで段差が生じることがある。その最も大きな原因は、粒子懸濁液の粒子濃度が薄い場合に、撮像された粒子数が少なくて、図6の破線で示すように頻度分布曲線が大きくがたつく場合である。
【0044】
他の原因として、対物レンズあるいは投影レンズの倍率が仕様通りの値になっていないために、高倍率撮像と低倍率撮像での真の試料分析量が予測とは異なり、上記試料分析量の違いによる頻度補正が正確でなくなる場合である。ただし、この撮像倍率が不正確であることによる段差の原因は、あらかじめ測定装置1台ごとに撮像倍率を校正することによって解決することができる。この装置では、異なる撮像倍率での粒径測定範囲を一部オーバーラップさせ、そのオーバーラップ測定範囲において、それぞれの撮像倍率での頻度値を加重平均するようにしている。
【0045】
オーバーラップ測定範囲の上限に近いほど低倍率撮像での頻度値に大きな重みを付け、下限に近いほど高倍率撮像での頻度値に大きな重みを付けて加重平均する。このような加重平均法による頻度補正をすることによって、撮像粒子数が少ない場合でも、異なる撮像倍率での頻度分布データを滑らかにつなぎ合わせることができる。例えば、高倍率撮像と低倍率撮像でのオーバーラップ範囲を15?30μmとした場合、そのオーバーラップ範囲内の粒径d?d+Δd(μm)の粒子頻度値f(d)は、次式で算出する。
【0046】
f(d)=高倍率撮像頻度値(d)×(1-(d-15)/(30-15))+低倍率撮像頻度値(d)×(1-(30-d)/(30-15))
以上のようにして求められた粒度頻度データを用いて、さらに累積粒度データを求める。例えば、個数基準の累積粒度データ(%)は、次式で算出する。
粒度dにおける累積粒度(d)=(粒径d以下の粒子数)×100/(全粒子数)
【0047】
次に、円相当径と円形度の2つのパラメータによる2次元スキャッタ頻度データを求める(ステップS11)。この場合にも、まず高倍率撮像と低倍率撮像のそれぞれに対して2次元頻度データを求める。次に、粒度頻度データの補正処理と同様に、粒子像の大きさの違いによる頻度補正、異なる撮像倍率での試料分析量の違いによる頻度補正を行う。さらに、異なる撮像倍率でのオーバーラップ測定範囲での2次元頻度補正を、前記粒度頻度データのつなぎ合わせの時と同様に行う。
【0048】
上記のようにして求められた粒度頻度データ、累積粒度データ、および円相当径と円形度の2次元頻度データを用いて、さらに平均粒径、粒径の標準偏差、モード径、10%径、50%径、90%径、平均円形度、円形度標準偏差等を算出する(ステップS12)。
【0049】
モード径とは、粒度頻度値が最大であるところの粒径のことを指す。10%径、50%径、90%径は、累積粒度データの値がそれぞれ10、50、90%の値になるところの粒径のことを指す。すなわち、50%径とは、粒径の中心値のことであり、メジアン径とも言う。
【0050】
以上のようにして求められた頻度データおよび解析結果から、図7、図8に示すような粒度ヒストグラム、円相当径と円形度の2次元スキャッタグラム、および平均粒径や50%径等の解析結果を表示する(ステップS13)。図7では、横軸をLOG変換した円相当径、縦軸を頻度%と累積%の2つの意味に割当て、累積粒度分布曲線の表示も同時に表示している。図8に示すスキャッタグラム表示では、横軸をLOG変換した円相当径、縦軸を円形度としており、各分割点(ドット)の色を2次元頻度値に応じて変えるようにしている。
【0051】
この装置では、上記のように撮像した粒子像から円相当径や円形度を求めるだけでなく、撮像した粒子像を記憶しておき、測定後に大きさ別にクラス分けして図4に示すように、一括表示する機能も有している。もっとも、画像を記憶する画像メモリの容量に制限があるので、撮像された全ての粒子像を記憶、表示するわけではない。撮像された粒子像を一括表示できる機能を有しているので、粒子の形態や凝集状態を直接使用者が確認することができる。
【0052】
粒子どうし凝集することが重要な意味を持つような場合には、図4に示す各枠内の粒子像について、一次(単独)粒子像か、2個凝集粒子像か、3個凝集粒子像か、高次凝集塊か、あるいは対象外の粒子かを、使用者が指定しキーボード13を用いて入力する。その指定結果をもとにして、凝集している粒子の数の比率を自動的に計算することができる。もし、一括表示された粒子像の中に凝集粒子像が全く無い場合には、上記2次元スキャッタグラムでの円形度算出値は、真に粒子の円形度を表していると考えてよい。
【0053】
また、上記指定結果をもとにして、一次粒子像だけを対象にして画像解析し直すこともできる。記憶できる粒子像の数に限りがあるので、再現性の良い解析結果が得られない場合もあるが、対象外の粒子(ごみ等)や凝集粒子を除いて解析するので、より正確な粒度分布、円形度が求められる。
【0054】
また、一括表示された粒子像により、使用者が、測定した粒子が球形であることを確認した場合には、凝集しやすい粒子でも円形度が1に近い粒子だけに限定して粒度解析しなおせば、より正確な粒度分布が求められる。また、粒子が球形である場合には、図9に示すように、円相当径と円形度による2次元スキャッタグラムにおいて、凝集粒子が分布していると考えられる領域を推定することもできる。
【0055】
図9の例では、点線で囲んだ枠内に分布する粒子は、凝集粒子と推定している。粒径の揃っている球形の粒子が2個凝集あるいは3個凝集した場合の粒子像では、その投影面積は大きく、円相当径は約√2倍あるいは√3倍になり、円形度は0.9以下と小さくなる。点線で囲った枠内の粒子数を計算すれば、粒子凝集度合いに関する指標を求めることができる。
【0056】
この装置では、図9の例のように円相当径と円形度による2次元スキャッタグラムにおいてある2次元領域を設定し、その領域内あるいは領域外の粒子のデータだけに限定して粒度解析、円形度解析させることもできる。このような機能を利用することによって、ごみや凝集粒子を除いての粒度分布や平均円形度を求める、あるいは凝集している粒子数の比率を推定するといったことが可能になる。このような2次元領域は、測定する試料の種類ごとに、使用者がキーボード13やマウスを使って任意に設定、変更できる。
【0057】
以上のように、このフロー方式粒子画像分析装置では、粒子像を使用者が直接目で確認できることはもちろんのこと、従来の電気的検知帯法やレーザ解析散乱法の測定装置では得られなかった定量的な情報、すなわち円形度や凝集度合い等の新規の情報が得られる。また、円相当径と円形度の2次元スキャッタグラムによって、試料中のごみや凝集粒子の分布領域を推定することができ、その領域内のデータを除外して粒度解析すれば、より正確な粒度分布が求められる。
【0058】
【発明の効果】
この発明は、次のような効果を奏する。
1.粒子像を画像解析することによって、粒子の大きさ(円相当径)だけでなく、粒子像の周囲長や円形度の情報も求められる。
2.粒子懸濁液の流れを、シース液によって流体力学的に細い又は偏平な流れにするので、粒子の大きさに関わらず、粒子の重心の通過する位置は、撮像方向に対してほとんど変動しないため、常にピントの合った粒子像が撮像され、従来の顕微鏡画像処理法より信頼性の高い測定結果が得られる。
【0059】
3.粒子懸濁液流を流体力学的に細い又は偏平な試料流にするので、偏平な粒子や細長い粒子の向きが揃いやすく、粒子像から求められる円相当径や円形度のばらつきは小さく再現性が良い。
4.撮像、記憶した粒子像を、測定後に表示手段に一括表示できるので、粒子の形態や凝集状態を容易に確認することができる。
【0060】
5.撮像、記憶した粒子像により、粒子が凝集しているかどうかを使用者が目視で識別分類でき、凝集している粒子の比率を求めることができる。
6.粒子像一括表示により粒子が球形であることが確認された場合には、凝集しやすい粒子でも、円形度が1に近い粒子のデータだけに限定して粒度解析すれば、より正確な粒度分布が求められる。
7.粒子像一括表示により粒子が球形であることが確認された場合には、円相当径と円形度の2次元スキャッタグラムから粒子凝集度合いに関する指標を得ることができる。
【0061】
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施例の構成説明図である。
【図2】
図1の要部拡大断面図である。
【図3】
粒子撮像画面の例を示す説明図である。
【図4】
モニターテレビの表示画像の例を示す説明図である。
【図5】
実施例の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】
撮像倍率の異なるデータから合成したヒストグラムである。
【図7】
粒度分布および累積粒度分布の表示例を示す説明図である。
【図8】
スキャッタグラムの表示例を示す説明図である。
【図9】
スキャッタグラムにおける領域設定例を示す説明図である。
【図10】
粒子の撮影面積と周囲長の算出を示す説明図である。
【符号の説明】
1 吸引ピペット
2 サンプルフィルター
3 試料チャージングライン
4 シースシリンジ
5 フローセル
6 シース液ボトル
7 シース液チャンバー
8 ストロボ
9 対物レンズ
10 ビデオカメラ
11 画像処理装置
12 モニターテレビ
13 キーボード
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2009-05-28 
出願番号 特願平6-271453
審決分類 P 1 41・ 853- Y (G01N)
P 1 41・ 851- Y (G01N)
P 1 41・ 856- Y (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 郡山 順  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 秋月 美紀子
小島 寛史
登録日 2003-03-20 
登録番号 特許第3411112号(P3411112)
発明の名称 粒子画像分析装置  
代理人 奥村 茂樹  
代理人 奥村 茂樹  

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