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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28F |
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管理番号 | 1199369 |
審判番号 | 不服2006-23449 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-16 |
確定日 | 2009-06-17 |
事件の表示 | 特願2003-323006号「織目加工された表面を有するプレートフィン熱交換器」拒絶査定不服審判事件〔平成16年4月8日出願公開、特開2004-108769号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成15年9月16日(パリ条約による優先権主張2002年9月13日、米国)の出願であって、平成18年8月3日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年8月8日)、これに対し、同年10月16日に審判請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成18年10月16日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年10月16日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 平成18年10月16日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、 「プレートフィン熱交換器が: 第一仕切板と; 該第一仕切板に隣接してほぼ平行な、第二仕切板と; 該第一仕切板と該第二仕切板との間に配列された少なくとも一つの波形フィンであって、該波形フィンは少なくとも一つの表面を有していて、該表面の少なくとも一部に表面織目が断面においてほぼ正弦曲線の溝又は縦溝形状に加工されている、少なくとも一つの波形フィンと;を具備していて、 該表面織目の少なくとも一部が水平な縞溝の形状である; プレートフィン熱交換器。」 と補正された(以下、「本件補正発明」という。)。 上記補正は、本件補正前の「溝又は縦溝形状に加工されている」を、「断面においてほぼ正弦曲線の溝又は縦溝形状に加工されている」と限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項に適合するか)否かについて、以下検討する。 (2)刊行物 (2-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である実願昭63-045658号(実開平01-151081号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.「プレートフィン熱交換器 ・・・ 平行する隔壁板に挟持されるフィンの少なくとも一部は、隔壁板に当接する隔壁板側部と、隔壁板の間で、それらを互に連接するフィン面部とが交互にくるように折り曲げられて形成され、フィン面部は断続的にオフセットしているオフセットフィン付プレートフィン熱交換器において、フィン面部に乱流を起させる突起が設けられていることを特徴とするプレートフィン熱交換器。 ・・・ 本考案は高温流体と低温流体との間で熱交換する場合に熱伝達率が高く、形状がコンパクトにできるプレートフィン熱交換器に関する。」(第1頁第3?18行) イ.「本考案は上記問題点に鑑みてなされたもので、熱伝達率のより大きい熱交換器を提供することを目的とする。」(第3頁第12?14行) ウ.「以下本考案の一実施例について図面を参照しつつ説明する。 第1図は本考案のプレートフィン熱交換器のフィンの部分斜視図である。第2図は第1図のII-II矢印断面図である。第1図において2はフィン、2aはフィン2の隔壁板側部、2bはフィン面部、2cは平型の突起、hは隔壁板間の距離即ちフィンの高さ、mはオフセット長さ、tはフィン厚さ、sはフィン面間距離、gは突起2cのフィン高さ方向の長さである。 図のように平型突起2cはフィン面部2bの略中央部にフィン高さ方向に向いて、両面に少なくとも1条づつプレス成型により形成されている。 突起の長さgはフィン高さh、フィン面間距離sに対してg≦h-s程度が好ましい。突起2cは両端がフィンの天井と底部から等距離に位置するように設けられる。」(第4頁第7行?第5頁第3行) エ.「以上のべたように本考案のプレートフィン熱交換器には以下の効果がある。 (1)フィン面部に乱流を起させる突起を設けたので流体の流れが隔壁板近くに片寄り、熱伝達効率が向上し、熱交換器のコンパクト化がより一層可能となる。 (2)同様の理由でフィンに熱伝導度の低い材質を使用しても熱伝達率の低下が少ない。 (3)突起の乱れ効果のためフィン面部における熱伝達率の低下もない。 (4)熱交換器全体として熱伝達効率が向上する。」(第6頁第9?19行) オ.第1図には、凹凸形状のフィン2のフィン面部2bの両面に1条づつの平型の突起2cが、熱交換流体の流れ方向と直交するように形成されたこと、第2図には、平型突起2cが、断面においてほぼ波形に形成されたことが記載されている。 上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物1には、次の発明が記載されている。 「熱伝達効率を高くするために、 プレートフィン熱交換器が、 平行する隔壁板1、1に挟持される凹凸形状のフィン2であって、凹凸形状のフィン2は、フィン面部2bを有し、フィン面部2bの両面に少なくとも1条づつの平型の突起2cが断面においてほぼ波形の条により形成される凹凸形状のフィン2を具備し、 1条づつの平型の突起2cが熱交換流体の流れ方向と直交する方向のほぼ波形の形状であるプレートフィン熱交換器。」 (2-2)同じく国際公開00/16029号パンフレット(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.「本発明は熱交換器及び冷凍空調システムに関し、特にプレート式熱交換器を用いたチラーユニットに好適である。」(第1頁第4、5行) イ.「本発明の目的は、コンパクトで伝熱性能が良くかつ圧力損失の少ない熱交換器及び冷凍空調システムを提供することにある。」(第2頁第3?5行) ウ.「伝熱面要素3は、プレート1の厚さ方向に山又は谷状に突き出され、正方型形状であり、網状に配置、あるいは千鳥状に多数配列され、その間には、網掛け状に流路5が形成される。伝熱面要素3は、図5に示すごとくプレート1面に対して垂直方向に若干出張りを持った形状をしており、プレート1底面と平面状の上端部6との間には底面から上端部に向かって斜面となったスロープ部を有する。そして、スロープ部には伝熱面要素3の高さよりも十分に小さい多数の微細な波状の凹凸が形成された微細フィン7が設けられる。微細フィン7の凹凸の高さやピッチは、例えば伝熱面要素3の高さが2?3mm程度とし、0.1?1.0mm、望ましくは0.5mm前後又はこれ以下の値が良い。 図2に示したようにプレート1を交互に上下反転して積層した状態では、下側のプレート1の上端部6と上側のプレート1の流路5の交差する部分が接触するようになっており、プレート1上に多数の接触点が形成され、高い耐圧強度を得る事が出来る。」(第8頁第1?17行) エ.「図6の要部拡大断面図に示されるように、プレート1間を流れる流体は、伝熱面要素3に衝突後、スロープ部に形成された微細フィン7に沿ってスムーズに流れる。流体が冷媒の際は、微細フィン7が管内溝付き伝熱管におけるマイクロフィンと同様な機能を発揮し高い熱伝達率を得ることができる。すなわち、プレート1が蒸発面として使用される場合、二相流状態の冷媒は伝熱面要素3に衝突後、キャピラリー効果により微細フィン7に沿って伝熱面要素3のほぼ全域に広がり、伝熱面要素3全体が濡れた状態になる。 また、プレート1が凝縮面として使用される場合、二相流状態の冷媒は伝熱面要素3に衝突後、微細フィン7に沿って流れるが、液の持つ慣性が大きい事に加え、表面張力が液を微細フィン7の隙間側へ引っ張る効果と、同じく表面張力が液を上端部6に形成されるキャビティ部に引っ張る効果との相乗作用により、微細フィン7の先端部に液膜の薄い部分が形成される。 以上により、冷媒側については極めて高い熱伝達特性が得られる。」(第9頁第18行?第10頁第9行) オ.第5図には、スロープ部表面に微細フィン7が、断面波状の多数の微細な波状の凹凸により形成されていることが記載されている。 上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物2には、次の発明が記載されている。 「伝熱性能をよくするために、 プレートのスロープ部表面に形成された微細フィン7が、断面波状の多数の微細な波状の凹凸により形成され、 伝熱面要素3全体を濡れた状態としたプレート式熱交換器。」 (3)対比 本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。 刊行物1に記載された発明の「平行する隔壁板1、1」は、本件補正発明の「第一仕切板と第一仕切板に隣接してほぼ平行な、第二仕切板」に相当し、同様に、 「隔壁板に挟持」は「第一仕切板と第二仕切板との間に配列」に、 それぞれ相当する。 刊行物1に記載された発明の「凹凸形状のフィン2はフィン面部2bを有し」は、本件補正発明の「波形フィンは少なくとも一つの表面を有し」と同義である。 刊行物1に記載された発明の「フィン面部2bの両面に少なくとも1条づつの平型突起2cが・・・形成され」は、本件補正発明の「表面の少なくとも一部に表面織目が・・・加工され」と同義である。 本件補正発明においては、熱交換流体の通路が垂直方向となるように熱交換器が設置されており、「水平」とは、熱交換流体の流れ方向と直交する方向を指すものであることから、刊行物1に記載された発明の「熱交換流体の流れ方向と直交する方向に」は、本件補正発明の「水平な」に相当する。 したがって、上記両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「プレートフィン熱交換器が、 第一仕切板と、 第一仕切板に隣接してほぼ平行な、第二仕切板と、 該第一仕切板と該第二仕切板との間に配列された波形フィンであって、該波形フィンは少なくとも一つの表面を有していて、該表面の少なくとも一部に表面織目が加工されている、波形フィンとを具備していて、 表面織目が水平な形状である; プレートフィン熱交換器。」 [相違点1] 表面織目が、 本件補正発明では、断面においてほぼ正弦曲線の溝又は縦溝形状に加工されているのに対して、 刊行物1に記載された発明では、断面においてほぼ波形の条により形成されている点。 [相違点2] 表面織目の形状が、 本件補正発明では、少なくとも一部が縞溝であるのに対して、 刊行物1に記載された発明では、ほぼ波形である点。 (4)当審の判断 以下、上記相違点について検討する。 まず、上記相違点1について検討する。 本件補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比する。 刊行物2に記載された発明の「プレートのスロープ部表面に形成された微細フィン7」は、「微細フィン7」が、フィンとしての機能を有するとともに、表面織目を形成するものであることから、本件補正発明の「(フィン)表面の表面織目」に相当する。 刊行物2に記載された発明の「凹凸が形成され」は、本件補正発明の「溝状に加工され」と同義である。 したがって、刊行物2に記載された発明は、 「伝熱性能をよくするために、 フィン表面の表面織目が、波状である溝状に加工され、 伝熱面要素3全体を濡れた状態としたプレート式熱交換器。」と言い換えることができる。 刊行物1及び2に記載された発明は、ともにプレートで囲まれる内部にフィンを備えた熱交換器という共通する技術分野に属する発明であり、しかも、両者は、熱交換器の伝熱性能を向上させるという共通の課題を解決するものである。 そして、刊行物2に記載された発明は濡れ性を向上させること(2.[理由](2)(2-2)エ)参照。)により伝熱性能を向上させるものであるが、伝熱性能の向上を濡れ性を向上させることにより実現するか否かは、熱交換流体の気液の状態、性質等を考慮して当業者が決定し得た事項であることから、伝熱性能を向上させるために、刊行物2に記載された発明のフィン表面の波状の表面織目を刊行物1に記載された発明の表面織目(1条づつ平型突起2c)に適用することは当業者が容易に想到し得たものである。 また、熱交換器において、伝熱性能を向上させるために熱交換器構成要素の断面をほぼ正弦曲線とすることは、本願の優先権主張日前に周知の技術事項であり(例えば特開平9-138082号公報の段落【0002】、【0023】、【図2】、【図6】、特許第2977128号公報の段落【0001】、【0033】参照。)、刊行物2に記載された発明を刊行物1に記載された発明に適用するに際して、上記周知の技術事項に倣って、刊行物1に記載された発明の表面織目の断面をほぼ正弦曲線とすることは、当業者が適宜なし得たものである。 次に、上記相違点2について検討する。 刊行物1に記載された発明のフィン表面に形成される1条づつの平型突起25は、2本の水平な条により形成されるほぼ波形の縞模様とみなせる。 しかも、熱交換器の伝熱性能を向上させるために熱交換器構成要素に縞溝を形成することは、本件優先権主張日前に周知の技術事項である(例えば、特許第2977128号公報の段落【0029】、特開昭54-16761号公報の第2頁右下欄?第3頁左上欄、Fig.1、Fig.2参照。) したがって、刊行物1に記載された発明において、熱交換器の伝熱性能を向上させるために、平型突起を縞溝の形状とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 また、本件補正発明の奏する効果についてみても、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知の技術事項により奏される効果の範囲内のものである。 よって、本件補正発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成18年10月16日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年4月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「プレートフィン熱交換器が、: 第一仕切板と; 該第一仕切板に隣接してほぼ平行な、第二仕切板と; 該第一仕切板と該第二仕切板との間に配列された少なくとも一つの波形フィンであって 、該波形フィンは少なくとも一つの表面を有していて、該表面の少なくとも一部に表面織目が溝又は縦溝形状に加工されている、少なくとも一つの波形フィンと;を具備していて 、 該表面織目の少なくとも一部が水平な縞溝の形状である; プレートフィン熱交換器。」 (2)刊行物 原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項、及び、刊行物に記載された発明は、前記「2.[理由](2)刊行物」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。 本願発明は、前記「2.[理由]」で検討した本件補正発明において、「断面においてほぼ正弦曲線の溝又は縦溝形状に加工されている」とあったところを、「溝又は縦溝形状に加工されている」と限定を省くものである。 そうすると、本願発明の構成要件の全てを含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が前記「2.[理由](4)当審の判断」に示したとおり、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-12-18 |
結審通知日 | 2009-01-06 |
審決日 | 2009-01-30 |
出願番号 | 特願2003-323006(P2003-323006) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F28F)
P 1 8・ 121- Z (F28F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山村 秀政、神崎 孝之、田々井 正吾 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
豊島 唯 長崎 洋一 |
発明の名称 | 織目加工された表面を有するプレートフィン熱交換器 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 篠崎 正海 |
代理人 | 島田 哲郎 |
代理人 | 青木 篤 |