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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1199518
審判番号 不服2007-35187  
総通号数 116 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-27 
確定日 2009-06-26 
事件の表示 特願2002-270301「コントラスト検出方式オートフォーカス装置、及び合焦位置検出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 8日出願公開、特開2004-109357〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年(2002年)年9月17日の出願(特願2002-270301号)であって、平成19年11月7日付けで手続補正がなされ、同年12月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月27日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年12月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成19年12月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成19年11月7日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、

「撮像素子と、前記撮像素子に被写体像を結像させる結像光学系と、を有し、前記撮像素子で生成される被写体像の画像信号のコントラストを検出し、前記結像光学系の一部であるフォーカスレンズを移動させることによる前記コントラストの増減に基づいて、合焦位置を検出するコントラスト検出方式オートフォーカス装置において、
前記フォーカスレンズは、合焦位置の検出を開始してから前記合焦位置の検出が完了するまで連続して移動し、
前記コントラスト検出方式オートフォーカス装置は、
前記フォーカスレンズが所定の間隔を移動する度に、画像信号から抽出した高周波成分に積分処理を施してコントラストを取得し、
前記積分処理を行う時間である積分時間を複数の時間t_(0)?t_(n)に分割し、
前記分割された複数の時間t_(0)?t_(n)に、それぞれ対応する前記フォーカスレンズの位置P_(0)?P_(n)をサンプリングし、
前記取得したコントラストに対応する前記フォーカスレンズの位置P_(S)を、
【数1】

【数2】

で表す関数fに基づいて算出すること、を特徴とするコントラスト検出方式オートフォーカス装置。」が

「撮像素子と、前記撮像素子に被写体像を結像させる結像光学系と、を有し、前記撮像素子で生成される被写体像の画像信号のコントラストを検出し、前記結像光学系の一部であるフォーカスレンズを移動させることによる前記コントラストの増減に基づいて、合焦位置を検出するコントラスト検出方式オートフォーカス装置において、
前記フォーカスレンズは、合焦位置の検出を開始してから前記合焦位置の検出が完了するまで連続して移動し、
前記コントラスト検出方式オートフォーカス装置は、
前記フォーカスレンズが所定の間隔を移動する度に、画像信号から抽出した高周波成分に積分処理を施してコントラストを取得するものであって、
前記撮像素子における画像信号の生成にかかる積分時間を複数の時間t_(0)?t_(n)に分割し、
前記分割された複数の時間t_(0)?t_(n)に、それぞれ対応する前記フォーカスレンズの位置P_(0)?P_(n)をサンプリングし、
前記取得したコントラストに対応する前記フォーカスレンズの位置P_(S)を、
【数1】

【数2】

で表す関数fに基づいて算出し、
前記撮像素子における画像信号の生成にかかる積分時間の変化に伴い、前記フォーカスレンズの移動速度を変化させること、を特徴とするコントラスト検出方式オートフォーカス装置。」と補正された。

そして、この補正は、フォーカスレンズの移動のしかたについて、具体的に「撮像素子における画像信号の生成にかかる積分時間の変化に伴い、前記フォーカスレンズの移動速度を変化させる」と限定したものであるから、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とするものに該当する。
すなわち、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものを含む。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成19年12月27日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるものである。(上記「第2 平成19年12月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)
上記の平成19年12月27日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載において、【数1】【数2】の式(1)(2)を便宜上、単に、「本願の式(1)(2)」と記載すると、本願補正発明は、次のとおりに記載される。

「撮像素子と、前記撮像素子に被写体像を結像させる結像光学系と、を有し、前記撮像素子で生成される被写体像の画像信号のコントラストを検出し、前記結像光学系の一部であるフォーカスレンズを移動させることによる前記コントラストの増減に基づいて、合焦位置を検出するコントラスト検出方式オートフォーカス装置において、
前記フォーカスレンズは、合焦位置の検出を開始してから前記合焦位置の検出が完了するまで連続して移動し、
前記コントラスト検出方式オートフォーカス装置は、
前記フォーカスレンズが所定の間隔を移動する度に、画像信号から抽出した高周波成分に積分処理を施してコントラストを取得するものであって、
前記撮像素子における画像信号の生成にかかる積分時間を複数の時間t_(0)?t_(n)に分割し、
前記分割された複数の時間t_(0)?t_(n)に、それぞれ対応する前記フォーカスレンズの位置P_(0)?P_(n)をサンプリングし、
前記取得したコントラストに対応する前記フォーカスレンズの位置P_(S)を、本願の式(1)(2)で表す関数fに基づいて算出し、
前記撮像素子における画像信号の生成にかかる積分時間の変化に伴い、前記フォーカスレンズの移動速度を変化させること、を特徴とするコントラスト検出方式オートフォーカス装置。」

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-200597号公報(以下、「引用例」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。(後述の「イ 引用に記載された発明」の認定において直接関係する記載に下線を付した。)

「【0013】 図1に示すように本撮像装置1は、主に、被写体を撮像するためにその光学像を結ぶ撮像レンズ2と、この撮像レンズ2の光軸O上の所定位置にその受光面(或いは撮像面)が垂直に配置され、受光面に結像された被写体の光学像を電気信号に変換する撮像素子3と、この撮像素子3に対して撮像信号増幅やサンプルホールド、A/D変換、γ補正、輝度/色変換処理等を行い、輝度信号Y等を生成する撮像処理回路(或いは映像信号処理回路)4と、撮像素子3を駆動する駆動信号及び映像信号処理に必要な基準信号(水平、垂直同期信号等の各種パルス)を発生させるパルス発生回路(SSG回路と略記)5と、図示しない映像記録再生系に映像信号を出力する出力端子部6と、前記撮像レンズ2を光軸O方向に移動し、撮像素子3の合焦位置に駆動する駆動モータ(合焦用モータとも記す)7と、この合焦用モータ7に対し、駆動する駆動信号を供給するモータドライブ回路8と、合焦の程度を評価するためのコントラスト値を得るために輝度信号Yから高周波成分を抽出するバンドパスフィルタ(BPF回路)9と、CPU,ROM,RAM、タイマ等で構成され、前記モータドライブ回路8を制御して、前記撮像レンズ2を最大のコントラスト値が得られる合焦位置に設定するための演算処理を行う演算処理回路10と、により構成されている。
【0014】本撮像装置1では、被写体光が撮像レンズ2を介して取り込まれ、撮像素子3の受光面上に被写体像として結像する。この撮像素子3の受光面の直前に図示しないモザイクフィルタ等のカラーフィルタが配置され、各ピクセル単位で光学的に色分離された後、撮像素子3で光電変換され、その出力信号、つまり撮像信号は撮像処理回路4に入力され、撮像信号の増幅やサンプルホールド、A/D変換、輝度/色変換処理等が行われて、出力端子部6、BPF回路9及び演算処理回路10に出力される。
【0015】 このとき、出力端子部6へはγ補正等を行った後の輝度信号Yγと、色信号Cが出力される。そして、出力端子部6から映像記録再生系の回路へと出力される。また、BPF回路9、演算処理回路10にはγ補正を行っていない輝度信号Yを出力する。
【0016】 このBPF回路9は入力される輝度信号Yより、その高周波成分の量(以下コントラスト値)を抽出し、演算処理回路10に出力する。この演算処理回路10においては撮像処理回路4から出力された輝度信号Yを積分することにより測光(AE)処理を行い、また色信号Cによりホワイトバランス(WB)処理を行っている。また、BPF回路9の出力信号、つまりコントラスト値を、所定のAFエリアに対して積分することで自動合焦(AF)処理を行う。
【0017】この演算処理回路10にはSSG回路5からの垂直同期信号VD、水平同期信号HDが入力され、これらの信号から撮像素子3のAF処理を行うAFエリア或いはAFエリアのコントラスト値を取り込むタイミングを決定する。
【0018】この場合、垂直同期信号VD、水平同期信号HDを利用してAFエリアを複数設定、或いは選択(可変)することが可能である。同様にAE/WBのエリアを複数設定、可変も可能となる。AF処理に利用する、コントラスト値の積分値をAF評価値と呼ぶ。
【0019】 本実施の形態では、垂直同期信号VD,水平同期信号HDは演算処理回路10の割り込み端子に印加され、AF,AE,WB等の処理に利用される。かつ、演算処理回路10は合焦判別手段や撮像レンズ2のレンズ位置の管理を行い、更に、合焦位置検出処理に加えて、AF動作時にモータドライブ回路8を介して合焦用モータ7をステップ駆動し、撮像レンズ2を所定の位置に移動せしめる制御手段、AEによる撮像素子3の蓄積積分時間を可変(以下、素子シャッタと略記)する手段を内蔵している。
【0020】以下に説明するように本実施の形態では、AF動作時に(撮像レンズ駆動装置を構成するモータ7に駆動パルスを印加して)撮像レンズ2を光軸O方向にステップ駆動し、その駆動中における撮像信号からコントラスト値を生成する。そしてそのコントラスト値に対応するレンズ位置を、撮像素子3の蓄積積分期間に撮像レンズ2を駆動した駆動量(具体的にはステップ数)の中心(但し、等速で駆動した場合)等とすることにより、コントラスト値を生成するまで、レンズ駆動を停止させることを不要にして、短時間に合焦点検出を行うことができるようにしている。
【0021】自動焦点検出装置に対して相対的に被写体を固定(静止)させ、明るさが一定の条件下で撮像レンズ2を光軸方向にある距離離れた2つの撮像レンズ位置(単にレンズ位置と略記)d1,d2でコントラスト値を取得した結果を図2に示す。その結果、レンズ位置d1でコントラスト値C1,レンズ位置d2でコントラスト値C2となった(シャッタ速度を1/60秒に固定し、かつ、1フィールドの映像期間に相当する1VD期間が1/60秒とする)。
【0022】さらに、この条件下で2つのレンズ位置d1,d2間を等速度で撮像レンズ2を駆動させた(2つのレンズ位置d1,d2間を1/60秒で撮像レンズ2を駆動する)場合、得られるコントラスト値は略(C1+C2)/2であり、このコントラスト値に対応するレンズ位置は略(d1+d2)/2であることは実験で求められる。
【0023】上記撮像レンズ2を駆動した場合におけるコントラスト値及びレンズ位置の関係を利用することにより、本実施の形態ではAF処理を実施する場合は、撮像素子3に蓄積積分される間に駆動したステップ数の略中心を合焦処理に利用するステップ数とする。
【0024】換言すると、上記コントラスト値及びレンズ位置の関係を利用することにより、撮像レンズ2を駆動中にもAF処理のコントラスト値及びそのコントラスト値に対応するレンズ位置を得られるようにして、従来例におけるAF処理のコントラスト値を得るまでは撮像レンズの駆動を停止させることを不要として、短時間或いは高速に合焦点の検出を行えるようにしている。
【0025】より具体的には撮像レンズ2を駆動し、その駆動中における撮像素子3で蓄積積分されて出力された撮像信号における高周波成分の出力値(つまりコントラスト値)からその蓄積積分時間で駆動(移動)した撮像レンズ2のレンズ移動量の中心位置等をそのコントラスト値に対応するレンズ位置とすることを特徴とする。例えば、NTSCの映像信号を具体例にとり、図3を参照して説明する。
【0026】図3において、(A)は垂直同期信号VD,(B)はレンズ駆動パルス(ステップ数)を示し、(C)は各フィールドn,n+1,n+2の蓄積積分時間を示し、(D)は各蓄積積分時間の中心を示している。また、撮像素子3の撮像エリア或いは光電変換エリアの全域を合焦点検出に利用する場合で説明する。
【0027】また、簡単化のため撮像同期信号は、映像信号の同期信号と一致させている。つまり、映像信号の垂直同期信号VDと同期させて撮像素子3に蓄積積分された撮像信号を読み出す撮像素子駆動信号を印加し、各フィールドの撮像信号を出力させ、その撮像信号から映像信号を生成するとしている。
【0028】この図3に示すように各露光時間或いは蓄積積分時間を1/60秒にした場合、nフィールド目の映像信号から得られたコントラスト値は5或いは6パルス目(に対応するレンズ位置)に得られたとして合焦点検出の動作を行う。
【0029】同様にn+1フィールド目の映像信号から得られたコントラスト値は12パルス目、n+2の映像信号から得られたコントラスト値は19パルス目として利用すれば良い。よって、撮像素子3に蓄積積分される間に駆動したパルス(ステップ)数の略中心のステップ数を利用することで映像信号を生成する同期信号(この場合VD)或いは撮像同期信号に同期して撮像レンズ2を駆動させなくともAF動作が可能となる。
【0030】つまり、図3(A),(B)に示すように本実施の形態では、撮像レンズ2を駆動するモータ7に与えるレンズ駆動パルスを撮像を行う同期信号とは非同期であって、この同期信号とは独立に発生させるようにして、同期信号と同期を取るための待ち時間を不必要として、レンズ駆動を高速に行う(或いはレンズ駆動時間を多くとれる)ようにしている。もっとも、図3では蓄積積分時間の中心に対応するレンズ駆動パルスの位置或いはこのレンズ駆動パルスの位置に対応するレンズ位置を検出する手段を有する。
【0031】この蓄積積分時間の中心を求める実施の形態を蓄積積分時間を可変の場合に対して図4を参照して説明する。図4の(A)?(C)は図3の(A)?(C)と同様の意味であり、図4(D)は蓄積積分時間の中心のタイミングを第1タイマで計測する作用を示し、図4(E)は蓄積積分時間の中心のタイミングを第2タイマでより詳細に計測する作用を示している。
【0032】また、説明の都合上、前提条件として、素子シャッタを可変する場合、素子シャッタによる蓄積積分期間の終了位置が常に1サンプリング期間(1VD期間)の終了位置と一致しているとする。
【0033】素子シャッタを使用する場合、その素子シャッタによる蓄積積分時間は既知のため、下記(1)式によって蓄積積分時間の中心が求められる。
蓄積積分時間の中心までの時間
=1サンプリング期間-素子シャッタ時間/2 …(1)
(ここで、素子シャッタ時間=蓄積積分時間)
となる(NTSCの場合1サンプリング時間は1/60秒となる)。
【0034】よって、制御としては、垂直同期信号VDの立ち上がりで演算処理回路10の第1タイマを駆動させ、(1)式より求めた蓄積積分時間の中心までの時間が経過した時点のレンズのステップ数をメモリする(図4では7ステップ)。このメモリされたステップ数が現在蓄積積分されている映像信号から得られるコントラスト値のステップ数に対応する。
【0035】これは、合焦動作中にAEによって素子シャッタ時間が可変した場合でも(1)式を利用し蓄積積分時間の中心までの時間が正確に求められるため、AF精度が悪化することがない。以上は、撮像素子3の蓄積積分期間中は等速でステップ駆動を行うことが前提である。等速でない場合は、実験等により、(1)式の演算式に相当する近似式等を決定し、その近似式等を(1)式の代わりに採用すれば良い。」


「【0054】 この状況を図9で説明する。横軸が撮像レンズのレンズ位置で、縦軸が各レンズ位置に対応したコントラスト値である。また、撮像レンズ位置dtが真の合焦位置であり、かつ、d0からd6までサンプリングして、それぞれコントラスト値C0からC6が対応して得られる。
【0055】 このとき、AF動作はd0からd6方向へ順に撮像レンズ2を駆動し各レンズ位置に対応したコントラスト値を取得していく。・・・」

【図7】及び【図9】には、レンズ位置とコントラスト値の関係を示す図が記載されている。

イ 引用例に記載された発明の認定
上記記載事項から、引用例には、自動焦点検出装置に関し、
「本撮像装置1は、主に、
被写体を撮像するためにその光学像を結ぶ撮像レンズ2と、
この撮像レンズ2の光軸O上の所定位置にその受光面(或いは撮像面)が垂直に配置され、受光面に結像された被写体の光学像を電気信号に変換する撮像素子3と、
この撮像素子3に対して撮像信号増幅やサンプルホールド、A/D変換、γ補正、輝度/色変換処理等を行い、輝度信号Y等を生成する撮像処理回路(或いは映像信号処理回路)4と、
前記撮像レンズ2を光軸O方向に移動し、撮像素子3の合焦位置に駆動する駆動モータ(合焦用モータとも記す)7と、
この合焦用モータ7に対し、駆動する駆動信号を供給するモータドライブ回路8と、
合焦の程度を評価するためのコントラスト値を得るために輝度信号Yから高周波成分を抽出するバンドパスフィルタ(BPF回路)9と、
CPU,ROM,RAM、タイマ等で構成され、前記モータドライブ回路8を制御して、前記撮像レンズ2を最大のコントラスト値が得られる合焦位置に設定するための演算処理を行う演算処理回路10と、により構成され、
BPF回路9は入力される輝度信号Yより、その高周波成分の量(以下コントラスト値)を抽出し、演算処理回路10に出力し、
AF動作時に(撮像レンズ駆動装置を構成するモータ7に駆動パルスを印加して)撮像レンズ2を光軸O方向にステップ駆動し、その駆動中における撮像信号からコントラスト値を生成し、そしてそのコントラスト値に対応するレンズ位置を、撮像素子3の蓄積積分期間に撮像レンズ2を駆動した駆動量(具体的にはステップ数)の中心(但し、等速で駆動した場合)等とすることにより、コントラスト値を生成するまで、レンズ駆動を停止させることを不要にして、短時間に合焦点検出を行うことができるようにしており、
撮像レンズ2の駆動中における撮像素子3で蓄積積分されて出力された撮像信号における高周波成分の出力値(つまりコントラスト値)からその蓄積積分時間で駆動(移動)した撮像レンズ2のレンズ移動量の中心位置等をそのコントラスト値に対応するレンズ位置とし、
蓄積積分時間の中心に対応するレンズ駆動パルスの位置或いはこのレンズ駆動パルスの位置に対応するレンズ位置を検出し、
素子シャッタを使用する場合、その素子シャッタによる蓄積積分時間は既知のため、下記(1)式によって蓄積積分時間の中心が求められ、
蓄積積分時間の中心までの時間
=1サンプリング期間-素子シャッタ時間/2 …(1)
(ここで、素子シャッタ時間=蓄積積分時間)となり、
以上は、撮像素子3の蓄積積分期間中は等速でステップ駆動を行うことが前提でり、等速でない場合は、実験等により、(1)式の演算式に相当する近似式等を決定し、その近似式等を(1)式の代わりに採用すれば良いものである自動焦点検出装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(3)本願補正発明と引用発明との対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「受光面に結像された被写体の光学像を電気信号に変換する撮像素子3」が、本願補正発明の「撮像素子」に相当する。

引用発明の「被写体を撮像するためにその光学像を結ぶ撮像レンズ2」は、この撮像レンズ2の光軸O上の所定位置に撮像素子の撮像面が垂直に配置されるものであるから、引用発明の「被写体を撮像するためにその光学像を結ぶ撮像レンズ2」を含む光学系が、本願補正発明の「撮像素子に被写体像を結像させる結像光学系」に相当する。

引用発明の「撮像素子3に対して撮像信号増幅やサンプルホールド、A/D変換、γ補正、輝度/色変換処理等を行い、輝度信号Y等を生成」し、「コントラスト値を得るために輝度信号Yから高周波成分を抽出する」ことが、本願補正発明の「前記撮像素子で生成される被写体像の画像信号のコントラストを検出」することに相当する。

引用発明の「撮像レンズ2」は、合焦の機能を有するものであるから、本願補正発明の「フォーカスレンズ」に相当する。したがって、引用発明の「撮像レンズ2を光軸O方向に移動し、撮像素子3の合焦位置に駆動」し、「撮像レンズ2を最大のコントラスト値が得られる合焦位置に設定する」ことが、本願補正発明の「結像光学系の一部であるフォーカスレンズを移動させることによる前記コントラストの増減に基づいて、合焦位置を検出する」ことに相当する。

引用発明の「AF動作時に」「コントラスト値を生成するまで、レンズ駆動を停止させることを不要にして、短時間に合焦点検出を行うことができるように」することが、本願補正発明の「フォーカスレンズは、合焦位置の検出を開始してから前記合焦位置の検出が完了するまで連続して移動」することに相当する。

引用発明の「撮像レンズ2の駆動中における撮像素子3で蓄積積分されて出力された撮像信号における高周波成分の出力値(つまりコントラスト値)」に関しては、引用例1の【0016】における「輝度信号Yより、その高周波成分の量(以下コントラスト値)を抽出し、」の記載を加味すれば、撮像信号における高周波成分に積分処理を施してコントラスト値が得られたものといえる。
また、引用例1の【図9】のレンズ位置とコントラスト値の関係の記載、及び、【0054】の「d0からd6までサンプリングして、それぞれコントラスト値C0からC6が対応して得られる。」記載から、引用例1には、レンズが移動する間で複数の箇所で、コントラストを取得することも記載されているから、引用発明の「撮像レンズ2の駆動中に・・・・撮像信号における高周波成分の出力値(つまりコントラスト値)」を得ることには、レンズが移動する間に複数の箇所で、コントラストを取得することも含まれる。
したがって、引用発明の「撮像レンズ2の駆動中における撮像素子3で蓄積積分されて出力された撮像信号における高周波成分の出力値(つまりコントラスト値)」を得ることと、本願補正発明の「フォーカスレンズが所定の間隔を移動する度に、画像信号から抽出した高周波成分に積分処理を施してコントラストを取得する」こととは、「フォーカスレンズが移動する間に複数の箇所で、画像信号から抽出した高周波成分に積分処理を施してコントラストを取得する」ことで一致する。

引用発明の「コントラスト値に対応するレンズ位置を、撮像素子3の蓄積積分期間に撮像レンズ2を駆動した駆動量(具体的にはステップ数)の中心(但し、等速で駆動した場合)等とする」こと、及び、「素子シャッタを使用する場合、その素子シャッタによる蓄積積分時間は既知のため、下記(1)式
蓄積積分時間の中心までの時間
=1サンプリング期間-素子シャッタ時間/2 …(1)
(ここで、素子シャッタ時間=蓄積積分時間)
によって蓄積積分時間の中心が求められ」ることと、本願補正発明の「前記撮像素子における画像信号の生成にかかる積分時間を複数の時間t_(0)?t_(n)に分割し、前記分割された複数の時間t_(0)?t_(n)に、それぞれ対応する前記フォーカスレンズの位置P_(0)?P_(n)をサンプリングし、前記取得したコントラストに対応する前記フォーカスレンズの位置P_(S)を、本願の式(1)(2)で表す関数fに基づいて算出」することとは、「コントラストに対応する前記フォーカスレンズの位置P_(S)を計算式を用いて算出」することである点で一致している。

引用発明の「コントラスト値を、所定のAFエリアに対して積分することで自動合焦(AF)処理を行」う「自動焦点検出装置」は、本願補正発明の「コントラスト検出方式オートフォーカス装置」に相当する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明は、
「撮像素子と、前記撮像素子に被写体像を結像させる結像光学系と、を有し、前記撮像素子で生成される被写体像の画像信号のコントラストを検出し、前記結像光学系の一部であるフォーカスレンズを移動させることによる前記コントラストの増減に基づいて、合焦位置を検出するコントラスト検出方式オートフォーカス装置において、
前記フォーカスレンズは、合焦位置の検出を開始してから前記合焦位置の検出が完了するまで連続して移動し、
前記コントラスト検出方式オートフォーカス装置は、
前記フォーカスレンズが移動する間に複数の箇所で、画像信号から抽出した高周波成分に積分処理を施してコントラストを取得するものであって、
取得したコントラストに対応する前記フォーカスレンズの位置P_(S)を計算式を用いて算出するコントラスト検出方式オートフォーカス装置。」の発明である点で一致し、次の各点で相違する。

ウ 相違点
(ア)相違点1
フォーカスレンズが移動する間にコントラストを取得する複数の箇所に関して、本願補正発明においては、「フォーカスレンズが所定の間隔を移動する度に」画像信号から抽出した高周波成分に積分処理を施してコントラストを取得するものであり、そして、「撮像素子における画像信号の生成にかかる積分時間の変化に伴い、前記フォーカスレンズの移動速度を変化させる」ものであるのに対し、引用発明においては、そのような限定がなされていない点。

(イ)相違点2
取得したコントラストに対応する前記フォーカスレンズの位置P_(S)を、本願補正発明においては、「撮像素子における画像信号の生成にかかる積分時間を複数の時間t_(0)?t_(n)に分割し、前記分割された複数の時間t_(0)?t_(n)に、それぞれ対応する前記フォーカスレンズの位置P_(0)?P_(n)をサンプリングし」、「本願の式(1)(2)で表す関数fに基づいて算出し」ているのに対して、引用発明においては、レンズの駆動が等速の場合は「積分時間の中心までの時間を求める(1)式」から駆動量の中心を求め、等速でない場合は上記(1)式の代わりに近似式を採用するものである点。

(4)当審の判断
ア 上記各相違点について検討する。
(ア)相違点1について
カメラの自動焦点検出装置において、レンズが所定の間隔を移動する度に積分を行い、そのときの積分時間に応じてレンズの駆動速度を設定することは、例えば、特開平3-163408号公報(レンズが所定の間隔を移動する度に積分を行うことについては、第3ページ左下欄第10?19行、積分時間に応じてレンズの駆動速度を設定することについては、第5ページ右上欄第15行?同ページ左下欄第7行)に記載されているように周知の技術である。
引用発明と上記の周知技術の技術分野の共通性から、引用発明においても、上記周知技術を採用して、「フォーカスレンズが所定の間隔を移動する度に、画像信号から抽出した高周波成分に積分処理を施してコントラストを取得するものであり、そして、撮像素子における画像信号の生成にかかる積分時間の変化に伴い、前記フォーカスレンズの移動速度を変化させるもの」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)相違点2について
取得したコントラストに対応する前記フォーカスレンズの位置P_(S)を求めるに当たり、引用発明においても、レンズの駆動速度が等速でない場合は近似式を採用することからして、引用発明においても、レンズの駆動速度が等速でない場合は上記位置P_(S)を、単に、駆動量の中心位置としては、不都合が生じることを開示するものであるところまでは、本願補正発明と共通するものである。
一般に、値の分布に偏りがある場合に、代表の値を、単に、分布範囲の中心の値とせず、平均の値とすることは、統計学上、通常行われている技術常識であるといえる。
したがって、所定期間内に移動するものの異なる時刻における位置などの複数の位置の代表位置を求める場合に、所定期間における位置の分布密度が異なる場合においては、該代表位置を、単に、分布範囲の中心の位置とせず、所定期間における平均の位置、すなわち、所定期間を等分割した各時間(時刻)における位置の平均の位置とすることは、上記の統計学上の技術常識を参照して、当業者が容易に想到し得ることである。
一方、本願補正発明の、「本願の式(1)(2)」は、「撮像素子における画像信号の生成にかかる積分時間を複数の時間t_(0)?t_(n)に分割し、前記分割された複数の時間t_(0)?t_(n)に、それぞれ対応する前記フォーカスレンズの位置P_(0)?P_(n)」の平均の位置を算出する式であるから、上記の所定期間を等分割した各時刻における位置の平均の位置に他ならない。
したがって、引用発明においても、レンズの駆動速度が等速でない場合に、取得したコントラストに対応するフォーカスレンズの位置を、所定期間を等分割した各時刻における位置の平均の位置を算出する式である「本願の式(1)(2)」に基づいて求め、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び上記の周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成19年12月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年11月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成19年12月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された各引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成19年12月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 平成19年12月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」に記載したように、本願補正発明から、フォーカスレンズの移動のしかたについて、具体的に「撮像素子における画像信号の生成にかかる積分時間の変化に伴い、前記フォーカスレンズの移動速度を変化させる」とする限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成19年12月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件についての検討」の「(3)対比」及び「(4)当審の判断」において記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-04-27 
結審通知日 2009-04-28 
審決日 2009-05-15 
出願番号 特願2002-270301(P2002-270301)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 森林 克郎
越河 勉
発明の名称 コントラスト検出方式オートフォーカス装置、及び合焦位置検出方法  
代理人 松岡 修平  

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