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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1199560 |
審判番号 | 不服2006-25229 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-11-06 |
確定日 | 2009-06-22 |
事件の表示 | 平成11年特許願第323204号「情報処理装置及びその方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月22日出願公開、特開2001-138607〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成11年11月12日の出願であって、平成18年4月27日付けで通知した拒絶理由に対して、同年7月5日付けで手続補正書が提出されたが、同年10月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月6日付けで審判請求がなされたものである。 本願の請求項1?6に係る発明は、平成18年7月5日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】オペレータが、手差し給紙を指定して印刷指示したかどうかを判定する手差し判定手段と、 前記手差し判定手段での判定の結果、手差し給紙が指定されていた場合に、用紙をプリンタの手差し給紙口にセットするように促す表示を行なう表示手段と、 プリンタの手差し給紙口に用紙がセットされているかどうかを検知する用紙セット検知手段と、 前記表示手段による表示を、任意のタイミングで終了させる表示終了手段と、 前記手差し給紙口にセットされた用紙に対し画像記録を開始する記録開始手段とを有し、 前記表示終了手段で前記表示手段による表示を終了させたにもかかわらず、前記用紙セット検知手段がプリンタの手差し給紙口に用紙がセットされていないことを検知した場合には、前記表示手段による用紙をプリンタの手差し給紙口にセットするように促す表示を再び行い、前記用紙セット検知手段がプリンタの手差し給紙口に用紙がセットされたことを検知した場合には、前記表示を終了し、印刷データをプリンタエンジンに転送し、前記記録開始手段による画像記録を開始することを特徴とする情報処理装置。」 2.引用例の記載事項 これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平11-194900号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面ともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。 (a)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、パーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という)等の外部端末装置からの画データを記録紙にプリント可能なファクシミリ装置等の通信端末装置に関するものである。」 (b)「【0004】一方、手差し給紙部の記録紙に対するプリントは、パソコンからの画データを受けて行われることが多く、ファクシミリやコピーによる画データをプリントすることはあまりない。このため、従来のファクシミリ装置等においては手差し給紙部に記録紙がセットされていないときには、画データを受け付けないようになっている。このため、手差し給紙部に記録紙をセットするのを忘れた状態でパソコンからプリント指令を行った場合、手差し給紙部に記録紙をセットした後に、あらためてプリント指示を行う必要があった。 【0005】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は外部端末からの画データを手差し給紙部の記録紙にスムーズにプリントすることができるとともに、ペーパージャムを防止できる通信端末装置を提供することにある。」 (c)図1は、以下のとおりである。 (d)「【0010】この実施形態はコピー・ファクシミリ複合機に具体化したものである。まず、本実施形態の複合機の主に回路構成について、図1を用いて説明する。CPU1は、バス11を介して複合機Tの各部を制御する。ROM(Read Only Memory)6は、複合機Tの動作に必要なプログラムを記憶している。RAM(Random Access Memory)7は、プログラムの実行時に発生する一時的なデータを記憶する。 【0011】読取部2は、コピー原稿上の画像を読み取って、白黒2値のイメージデータを出力する。記録部3は、電子写真方式のプリンタよりなり、受信画データや読取部2で読み取られた画データを記録紙(カット紙)上にプリントする。 【0012】LCD(Liquid Crystal Display)等よりなる表示部4は、複合機Tの動作状態等の各種情報の表示を行う。操作部5は、ファクシミリ番号等を入力するためのテンキーの各種操作キーを備えている。複合機Tの外面には操作パネルPが設けられ、この操作パネルP上に前記表示部4及び操作部5が配置されている。この実施形態では、CPU1、フラッシュメモリ17等により出力手段が構成され、CPU1、表示部4等により表示手段が構成されている。 【0013】画像メモリ8は、受信された画データや読取部2で読み取られた画データを一時的に記憶する。モデム9は、送受信データの変調及び復調を行うものである。NCU(Network Control Unit)10は、電話回線L1の閉結及び開放を行うとともに、相手先のファックス番号に対応したダイヤルパルスの送出及び着信を検出する機能等を備えている。 【0014】用紙センサ12は、後述する手差し給紙部としての手差しトレイ48上の記録紙47(以下、手差し用紙という)の有無を検出して、検出信号をCPU1に出力する。外部端末インタフェース15は、外部端末装置としてのパソコン16と複合機TとをシリアルポートとRS232Cとによって接続している。 【0015】プログラム記録媒体としてのフラッシュメモリ17は、接続離脱可能なコネクタ18を介してデータ読取装置19に接続されている。そして、プログラム記録媒体としての磁気ディスク20のプログラムデータがデータ読取装置19により読み取られて、フラッシュメモリ17に転送記憶される。このプログラムデータは後述する図3のフローチャートを実行するためのものである。 【0016】次に、複合機Tの主に機械的構成について、図2を用いて説明する。図1に示すように、この複合機Tには、原稿給送部22と、原稿載置部21と、読取部2と、カット紙供給部24と、手差し用紙供給部25と、記録部3と、排出部27とが装設されている。 ・・・(中略)・・・ 【0021】前記カット紙供給部24は、所定サイズのカット紙(以下、記録紙という)44を積層状態で収容した複数(本実施形態では2つ)のカセット給紙部43と、各カセット給紙部43内の記録紙44を1枚ずつ記録部3に向けて給送する給紙ローラ45と、手差し用紙47の給送を案内するとともに搬送ローラ49を有するガイド通路46とを備えている。さらに、手差し用紙供給部25は、手差し用紙47を載置するための手差しトレイ48を備えている。給紙ローラ45、ガイド通路46、搬送ローラ49等により用紙搬送機構が構成されている。 【0022】手差し用紙47は、手差しトレイ48の傾斜を利用してガイド通路46に送り込まれ、搬送ローラ49により記録部3に搬送される。従って、記録紙44と手差し用紙47とは、その搬送経路の一部を共有する。前記用紙センサ12は手差し用紙47の有無及びガイド通路を通過する記録紙44を検出する。排出部27は排紙トレイ40を有している。 【0023】前記記録部3は、感光ドラム50と、感光ドラム50の表面を所定電位に一様帯電させる帯電器51と、感光ドラム50上に画像の静電潜像を形成する露光器52と、感光ドラム50上の静電潜像にトナーを供給してその潜像を顕像化する現像器53とを備えている。さらに、記録部3は、トナー画像を感光ドラム50上から記録紙上に転写させる転写器54と、記録紙上のトナー画像を加熱定着させる加熱定着器55とを備えている。前記排出部27は、記録済みの記録紙44及び手差し用紙47を受ける排紙トレイ40とを備えている。」 (e)また、図3は以下のとおりである。 (f)「【0024】次に、この実施形態の動作を、図3に示すフローチャートを用いて説明する。パソコン16がインタフェース15に接続された状態においては、手差しトレイ48に手差し用紙47がセットされていない状態においても、ステップS1においてパソコン16に対して手差し用紙47がセットされた旨を示す信号が出力される。 【0025】次いで、ステップS2においてパソコン16からこの複合機Tに対するデータの転送要求があったことが判別されると、ステップS3においてパソコン16からのデータが受信される。そして、S4において、パソコン16からの受信データ内に画像データが含まれているのが確認された後に、ステップS5においてファクシミリ,コピー等の他の原稿、すなわちパソコン16から転送された画像データ以外の画像データがプリント中か否かが判断される。なお、ステップS4における判断結果が否定の場合は、後述するステップS11に進行する。 【0026】ステップS5における判断結果が肯定の場合には、ステップS6において、1頁分のプリント終了を待って他原稿のプリントが一時中止され、ステップS7において、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求が行われる。この要求は、表示部4に表示される。ステップS8において、用紙センサ12の出力が検出され、手差し用紙47が手差しトレイ48にセットされたと判別されると、ステップS9において前記表示が停止され、手差しトレイ48から手差し用紙47が搬送されてプリントされた後、排出される。 【0027】続いて、ステップS10においてプリントが終わっていないパソコン16からの画データがあるか否かが判定され、手差し用紙47が未だ残っている場合にはステップS7に戻って同じ動作を繰り返し、残っていない場合にはプリント動作を終了し、ステップS11に進行する。 【0028】そして、ステップS11において、用紙センサ12からの出力により手差しトレイ13に手差し用紙47が残っているか否かが判定される。残っている場合にはステップS12でブザー等により警報が発せられる。従って、この状態で操作者は手差しトレイ48から手差し用紙47を除去して、その後のジャムを防止できる。 【0029】その後、ステップS13において、前記ステップS6で他の画データのプリントを中断したか否かが判定され、中断した場合にはステップS14で残りの他の画データのプリントが続行される。 【0030】次に、本実施形態から見い出せる効果を以下に記載する。 ・パソコン16から複合機Tに対してデータ転送要求が行われた場合、実際に手差しトレイ48に手差し用紙47がセットされてなくても、複合機Tは手差し用紙ありとの情報を出力するため、パソコン16から画像メモリ8に画データを転送して処理することができる。これにより、手差しトレイ48に手差し用紙47をセットした後に、あらためてパソコン16からプリント指令を行うような手間を省くことができる。 【0031】・パソコン16からの画データを受信した後、手差し用紙47を要求するメッセージを表示部4に表示するので、手差し用紙47を手差しトレイ13に差し込んでセットするタイミングを容易に判別できる。この結果、作業性が向上するばかりでなく、誤って早期に手差し用紙47をセットしてしまうことによるペーパージャムを防止できる。 ・・・(中略)・・・ 【0033】なお、前記実施形態は次のように構成して具体化することも可能である。 ・・・(中略)・・・ 【0036】・図3のステップS10における判定結果が肯定と判定された後、用紙センサ12により手差し用紙47が無くなったと検出された場合には、手差し用紙47を要求するメッセージを、表示部4の表示にて報知すること。また、表示による報知だけでなく、ブザー音による報知にすれば、操作者に手差し用紙47のセットをよりいっそう明確に知らせることができる。」 (g)上記(f)には、ステップS1?S4において、パソコン16がインタフェース15に接続された状態においては、手差しトレイ48に手差し用紙47がセットされていない状態においても、パソコン16に対して手差し用紙47がセットされた旨を示す信号が出力され、パソコン16からの受信データ内に画像データが含まれているときは、手差し給紙を指定して印刷指示がされたものとして判定されることが、実質的に記載されており、それらを実行する手段は、手差し判定手段ということが一応でき、 手差し給紙を指定して印刷指示がされたと判定されたときには、ステップS7において、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求を表示部4に表示を行うが、その表示を行う表示手段があるということができる。 図3からは、ステップS8で、用紙センサ12の出力が検出されなかった場合には、ステップS7に戻り、引き続き、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示が行われることが理解される。 また、上記(d)からは、CPU1は、バス11を介して複合機Tの各部を制御しており、記録部3に対し、その電子写真方式のプリンタにより、パソコン16からの受信画データを、手差しトレイ48にセットされた手差し用紙47上にプリントすることを指示し、記録部3を制御する機能も有しており、それは、記録指示制御手段ということができ、 コピー・ファクシミリ複合機Tと、外部端末装置としてのパソコン16とは、外部端末インタフェース15により接続されており、一つのシステムを構成しているということができる。 以上の記載事項によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「パソコン16がインタフェース15に接続された状態においては、手差しトレイ48に手差し用紙47がセットされていない状態においても、パソコン16に対して手差し用紙47がセットされた旨を示す信号が出力され、パソコン16からの受信データ内に画像データが含まれているときは、手差し給紙を指定して印刷指示がされたものとして判定する、手差し判定手段と、 手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求を表示部4に表示する、表示手段と、 手差しトレイ48上の手差し用紙47の有無を検出する、用紙センサ12と、 電子写真方式のプリンタよりなる記録部3に対し、パソコン16からの受信画データを、手差しトレイ48にセットされた手差し用紙47上にプリントすることを指示し、記録部3を制御する、記録指示制御手段とを有し、 手差し給紙を指定して印刷指示がされたと判定されたときには、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示が行われ、 その後、用紙センサ12の出力が検出され、手差し用紙47が手差しトレイ48にセットされたと判別された場合には、前記表示が停止され、手差しトレイ48から手差し用紙47が搬送されてプリントされ、 用紙センサ12の出力が検出されなかった場合には、プリントはせずに、引き続き、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示が行われる、 コピー・ファクシミリ複合機Tと、外部端末装置としてのパソコン16とからなるシステム。」 3.対比・判断 そこで、本願発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、 刊行物1記載の発明の「手差し用紙47」「手差しトレイ48」は、それぞれ、本願発明1の「用紙」「手差し給紙口」に相当する。 刊行物1記載の発明の「パソコン16がインタフェース15に接続された状態においては、手差しトレイ48に手差し用紙47がセットされていない状態においても、パソコン16に対して手差し用紙47がセットされた旨を示す信号が出力され、パソコン16からの受信データ内に画像データが含まれているときは、手差し給紙を指定して印刷指示がされたものとして判定する、手差し判定手段」と、本願発明1の「オペレータが、手差し給紙を指定して印刷指示したかどうかを判定する手差し判定手段」とは、「手差し給紙を指定して印刷指示がされたかどうかを判定する手差し判定手段」の点で共通する。 刊行物1記載の発明の「手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求を表示部4に表示する、表示手段」は、「手差し給紙を指定して印刷指示がされたと判定されたときには、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示が行われ」るから、本願発明1の「前記手差し判定手段での判定の結果、手差し給紙が指定されていた場合に、用紙をプリンタの手差し給紙口にセットするように促す表示を行なう表示手段」に相当するということができる。 刊行物1記載の発明の「手差しトレイ48上の手差し用紙47の有無を検出する、用紙センサ12」は、本願発明1の「プリンタの手差し給紙口に用紙がセットされているかどうかを検知する用紙セット検知手段」に相当する。 刊行物1記載の発明の「電子写真方式のプリンタよりなる記録部3に対し、パソコン16からの受信画データを、手差しトレイ48にセットされた手差し用紙47上にプリントすることを指示する、記録指示制御手段」は、実質的に、本願発明1の「前記手差し給紙口にセットされた用紙に対し画像記録を開始する記録開始手段」に相当する。なお、本願発明1の「記録開始手段」は、本願発明1の他の記載事項である「前記用紙セット検知手段がプリンタの手差し給紙口に用紙がセットされたことを検知した場合には、前記表示を終了し、印刷データをプリンタエンジンに転送し、前記記録開始手段による画像記録を開始する」も勘案し、刊行物1記載の発明の「記録指示制御手段」と同等であると判断した。 刊行物1記載の発明の「手差し給紙を指定して印刷指示がされたと判定されたときには、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示が行われ、その後、用紙センサ12の出力が検出され、手差し用紙47が手差しトレイ48にセットされたと判別された場合には、前記表示が停止され、手差しトレイ48から手差し用紙47が搬送されてプリントされ」は、 本願発明1の「前記用紙セット検知手段がプリンタの手差し給紙口に用紙がセットされたことを検知した場合には、前記表示を終了し、印刷データをプリンタエンジンに転送し、前記記録開始手段による画像記録を開始する」に実質的に相当する。 刊行物1記載の発明の「コピー・ファクシミリ複合機Tと、外部端末装置としてのパソコン16とからなるシステム」は、本願発明1の「情報処理装置」に実質的に相当する。なお、本願の実施例で、コンピュータとプリンタとから構成されるシステムを「情報処理装置」と表現していることから、本願発明1の「情報処理装置」を、コンピュータとプリンタとから構成されるシステムを含む概念として把握して、上記のように判断した。 そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりと認められる。 [一致点] 「手差し給紙を指定して印刷指示がされたかどうかを判定する手差し判定手段と、 前記手差し判定手段での判定の結果、手差し給紙が指定されていた場合に、用紙をプリンタの手差し給紙口にセットするように促す表示を行なう表示手段と、 プリンタの手差し給紙口に用紙がセットされているかどうかを検知する用紙セット検知手段と、 前記手差し給紙口にセットされた用紙に対し画像記録を開始する記録開始手段とを有し 前記用紙セット検知手段がプリンタの手差し給紙口に用紙がセットされたことを検知した場合には、前記表示を終了し、印刷データをプリンタエンジンに転送し、前記記録開始手段による画像記録を開始する、 情報処理装置。」 [相違点1] 手差し判定手段に関して、 本願発明1は、オペレータが、手差し給紙を指定して印刷指示したかどうかを判定する手差し判定手段であるのに対し、 刊行物1記載の発明は、パソコン16がインタフェース15に接続された状態においては、手差しトレイ48に手差し用紙47がセットされていない状態においても、パソコン16に対して手差し用紙47がセットされた旨を示す信号が出力され、パソコン16からの受信データ内に画像データが含まれているときは、手差し給紙を指定して印刷指示がされたものとして判定する、手差し判定手段である点。 [相違点2] 本願発明1は、 前記表示手段による表示を、任意のタイミングで終了させる表示終了手段を有し、 前記表示終了手段で前記表示手段による表示を終了させたにもかかわらず、前記用紙セット検知手段がプリンタの手差し給紙口に用紙がセットされていないことを検知した場合には、前記表示手段による用紙をプリンタの手差し給紙口にセットするように促す表示を再び行うのに対し、 刊行物1記載の発明は、 オペレータが使用するような表示終了手段を有しておらず、 手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示が行われた後に、用紙センサ12の出力が検出されなかった場合には、プリントはせずに、引き続き、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示が行われる点。 そこで、相違点について検討する。 (相違点1について) 一般に、手差し給紙コマンドを検出する等により、オペレータが手差し給紙を指定して印刷指示したかどうかを、判定することは、文献を示すまでもなく、本願出願前に周知の技術であるから、 刊行物1記載の発明において、手差し判定手段として、周知技術を採用し、本願発明1のごとく、オペレータが、手差し給紙を指定して印刷指示したかどうかを判定するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 (相違点2について) 一般に、プリンタや複写機等の画像成形装置において、表示部にメッセージが表示され、オペレータが、メッセージ内容を確認したら、OKボタン又は確認ボタンを押して、表示を終了させることは、本願出願前に、周知の技術である。 例えば、特開平11-31030号公報には、 「【0012】次に、このような構成からなる第1の実施の形態おいて、プリンタ4の電源の入れ忘れ防止の動作例について、図3を参照して説明する。いま、パーソナル・コンピュータ2、3、およびプリンタ4の各電源をオフ状態とし、パーソナル・コンピュータ(PC)2の電源のみをオンにしたものとする(ステップ1)。次に、パーソナル・コンピュータ2は、Ping等の通信コマンドを使用してプリンタ4(図3では、I/O装置と記載)の動作状態を調べる(ステップ2、3)。すなわち、パーソナル・コンピュータ2は、プリンタ4の電源がオン状態かオフ状態かを、ネットワークを通じてプリンタ4に問い合わせ、その結果により、プリンタ4の電源がオフか否かを判定する(ステップ3)。 【0013】パーソナル・コンピュータ2が、プリンタ4の電源がオフであると判定されたときには(ステップ3;Y)、パーソナル・コンピュータ2の表示画面上に、「プリンタ(I/O装置)の電源を入れて下さい」などのポップアップメッセージが表示される(ステップ4) 操作者は、そのポップアップメッセージを確認し、OKボタンなどのボタンを押すと(ステップ5)、そのポップアップメッセージが表示画面から消され(ステップ6)、パーソナル・コンピュータ2が立ち上がる(ステップ7)。その後、操作者はプリンタ4の電源を入れる。」という記載があり、 また、特開平10-143029号公報には、 「【0023】また、紙の排出をジャムセンサーで確認後、装置の主電源を切ることで、災害時においてカーテンなどの可燃物が定着器など熱源の近くに動いて本来の安全が確保されなくなった場合においても、複写機に起因する発煙、発火などの二次災害を予防している。 【0024】警報解除後の再起動は、ユーザーの確認を促す警告文章をディスプレイ上に表示してから行う。このとき、例えば「緊急警報を受信しましたので、機能を停止させています。」あるいは「複写機の回りの安全を確認して下さい。」のような文章を表示する。 【0025】そして、ユーザーが安全を確保した後、ユーザーが確認ボタンを押したことを受けて、初めて定着器のヒーター、メインモーターなどの通電を開始する。その後は通常のコピー機のシーケンスに従う。」という記載がある。 ここで、OKボタンや確認ボタンは、本願発明1の「表示手段による表示を、任意のタイミングで終了させる表示終了手段」の具体例ということができる(本願の実施例でもOKボタンを用いている)。 そうすると、刊行物1記載の発明において、 「手差し給紙を指定して印刷指示がされたと判定されたときには、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示が行われ、 その後、用紙センサ12の出力が検出され、手差し用紙47が手差しトレイ48にセットされたと判別された場合には、前記表示が停止され、手差しトレイ48から手差し用紙47が搬送されてプリントされ、 用紙センサ12の出力が検出されなかった場合には、プリントはせずに、引き続き、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示が行われる」という諸手順のなかに、上記の周知技術を適用して、 「手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示が行われ」た後に、『オペレータが、メッセージ内容を確認したら、OKボタン又は確認ボタンを押して、表示を終了させること』を採用する程度のことは、当業者が容易になし得ることである。 そして、その適用に際しては、表示の終了後に、刊行物1記載の発明の「用紙センサ12の出力が検出され、手差し用紙47が手差しトレイ48にセットされたと判別された場合には、前記表示が停止され、手差しトレイ48から手差し用紙47が搬送されてプリントされ」るという手順は、そのままで何ら変更する必要はないが、 刊行物1記載の発明の「用紙センサ12の出力が検出されなかった場合には、プリントはせずに、引き続き、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示が行われる」という手順については、周知技術の適用により、表示が終了してしまっている(OKボタン又は確認ボタンが押されている)から、そのまま放置すれば、手差し用紙がないことをオペレータに知らせることができないが、刊行物1記載の発明の当該手順は、オペレータに表示を継続して知らせるという基本思想であるから、当業者であれば、放置はせず、手差し用紙47を手差しトレイ48にセットする要求の表示を再開させることを、当然に行うというべきである。 したがって、刊行物1記載の発明において、周知技術を適用して、相違点2に係る本願発明1のごとくなすことは、当業者が容易に想到し得ることである。 (効果について) また、全体として、本願発明1によってもたらされる効果も、刊行物1に記載された事項及び周知技術から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (まとめ) したがって、本願発明1は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-04-23 |
結審通知日 | 2009-04-27 |
審決日 | 2009-05-08 |
出願番号 | 特願平11-323204 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41J)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 名取 乾治 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
柏崎 康司 大森 伸一 |
発明の名称 | 情報処理装置及びその方法 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 大塚 康弘 |
代理人 | 木村 秀二 |