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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B66F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66F |
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管理番号 | 1199703 |
審判番号 | 不服2007-480 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-01-10 |
確定日 | 2009-06-25 |
事件の表示 | 特願2000-313005「バッテリ車のバッテリ情報の管理方法及び管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月23日出願公開、特開2002-120999〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年10月13日の出願であって、平成18年6月27日付けで拒絶理由が通知され、同年8月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年10月26日付けで拒絶査定がなされ、平成19年1月10日付けで同拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年1月25日付けで明細書を補正する手続補正がなされ、その後、平成20年10月16日付けで当審において書面による審尋がなされたものである。 2.平成19年1月25日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年1月25日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正後の本願発明 平成19年1月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、 「バッテリ車(1)のモータ電流のデータおよび充電電流のデータを含む稼働状態データを連続的に収集し、所定時間毎に稼働状態データに基づいて、バッテリ寿命を管理するための充電量のデータおよび放電量のデータを含むバッテリ情報データを算出し、算出したバッテリ情報データを時系列的に記憶し、時系列的に記憶したバッテリ情報データを所定形式のグラフ又はデータリストとして表示し、又はプリントアウトして、バッテリ情報を管理する ことを特徴とするバッテリ車のバッテリ情報の管理方法。」 と補正された。(下線は、補正個所を示すためのものである。) 上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「バッテリ情報データ」について「算出したバッテリ情報データを時系列的に記憶し、時系列的に記憶した」との限定を付加するものであって、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-110685号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。 (ア)「[産業上の利用分野] この発明はバッテリ車の運行記録装置に関するものである。」(第1頁左下欄末行ないし右下欄2行) (イ)「第1図において、パネル1の上面のにはキーボード2及びLCDディスプレー3が設けられ、さらにこれらに隣接して記憶媒体としてのICカード4が差込まれる書込み手段としてのカード書込み装置5が配設されている。そして、これらキーボード2、ディスプレー3及びカード書込み装置5は車両後部に収容されたコントローラ8に接続されている。」(第2頁左下欄10?17行、第1図) (ウ)「タイマIC10からの与えられる時間情報に基き例えば30秒等の予め定めた時間毎(サンプリング時間毎に)に、前記制御プログラムに従って各種入力信号を演算処理を行い、この演算結果をRAM12に一時的に記憶させる。車両の電気部位に接続されたバッテリBの電圧は電圧センサ13にて、バッテリBが出力する電流は電流センサ14にてそれぞれ検出され、これら検出信号がA/D変換器9aを介してCPU9に入力される。また、フォークリフトの駆動源から駆動輪に駆動力を伝達する作動歯車機構のリングギヤ15に対向する電磁ピックアップ16は回転するリングギヤ15の歯数を検出し、歯数検出信号をCPU9に出力する。」(第2頁右下欄14行?第3頁左上欄7行、第2図) (エ)「今、電源はオンされ、ICカード4はこれを保有する作業者によりカード書込み装置5に差し込まれている。すると、第3図に示すようにCPU9はキーボード2の操作に基く記録開始指示信号が入力されたことを確認し、タイマIC10からその時の時刻、即ち記録開始時刻を読取り開始したのち、RAM12の記憶内容を消去する。そして、各種センサからの信号の読込み及びタイマIC10のカウント値の読み込みを開始し、サンプリング時間に達すると、電磁ピックアップ16からの歯数検出信号に従ってその時の走行速度を演算し、この演算結果をRAM12に記憶させる。次いで、CPU9は電圧センサ13からの検出信号に従いバッテリBの電圧を演算し、この演算値に基いてバッテリBの残存容量を演算し、これをRAM12に記憶させる。この後、CPU9はバッテリ電流センサ14から入力される検出信号に基いてバッテリBの出力電流を演算し、これをRAM12に記憶させる。そして、CPU9はこれら演算にて求めた各種データを及びその時の時刻をICカード4に書込む。次いで、CPU9はタイマIC10のカウント動作に従い所定時間内におけるキーボード2の操作に基く作業終了指示信号が入力していないときには、再度RAM12内の記憶内容を消去して上記の動作を繰り返し、その時々の電流データ、バッテリ容量データをICカード4に記録する。そして、記録終了指示信号を入力すると、CPU9はその動作を終了する。」(第3頁左上欄10行?右上欄18行、第2図、第3図) (オ)「上記のようにしてICカード4に書込まれたデータは管理用コンピュータにて解析される。即ち、第4図に示すように同コンピュータの画面17に各時間における電圧(バッテリ残存容量)、電流、走行速度が表示され、実線で示す電流値が極めて高い9時?10時及び14時?16時までは荷役作業が行われていたことが確認される。その他の時間で電流値が一定の時間帯では走行作業が行われ、この時間帯における走行速度は一点鎖線で示す線図の変化により分かる。さらに、電流値が零を記録する時間帯では車速も零を示し、荷役、走行の両作業が停止されていたことが解析可能である。また、バッテリ容量は二点鎖線で示され、これが少なくなると、線図にて以後にこの車両が使用される場合には充電が必要とされることを示唆する。」(第3頁左下欄3?19行、第4図) 上記記載事項(ア)ないし(オ)及び図面によると、引用例には、 (A)上記記載事項(ア)から、「バッテリ車の運行記録装置」の事項、 (B)上記記載事項(イ)ないし(エ)から、「車両の電気部位に接続されたバッテリBの電圧を電圧センサ13にて、バッテリBが出力する電流を電流センサ14にて、フォークリフトの駆動源から駆動輪に駆動力を伝達する作動歯車機構の回転するリングギヤ15の歯数を電磁ピックアップ16にて、それぞれ検出し、予め定めた時間(サンプリング時間)毎に電圧センサ13にて検出されたバッテリBの電圧値に基いてバッテリBの残存容量のデータを演算し、その時々のバッテリBの残存容量のデータをICカード4に記録する」事項、及び (C)上記記載事項(オ)から、「ICカード4に記録されたその時々のバッテリBの残存容量のデータを管理用コンピュータの画面17に二点鎖線として表示し、バッテリBの残存容量が少なくなると充電が必要とされることを示唆する」事項 がそれぞれ記載されていることが分かる。 そうすると、引用例には、 「車両の電気部位に接続されたバッテリBの電圧を電圧センサ13にて、バッテリBが出力する電流を電流センサ14にて、フォークリフトの駆動源から駆動輪に駆動力を伝達する作動歯車機構の回転するリングギヤ15の歯数を電磁ピックアップ16にて、それぞれ検出し、予め定めた時間(サンプリング時間)毎に電圧センサ13にて検出されたバッテリBの電圧値に基いてバッテリBの残存容量のデータを演算し、その時々のバッテリBの残存容量のデータをICカード4に記録し、ICカード4に記録されたその時々のバッテリBの残存容量のデータを管理用コンピュータの画面17に二点鎖線として表示し、バッテリBの残存容量が少なくなると充電が必要とされることを示唆する バッテリ車の運行記録装置。」 の発明(以下、「引用例に記載された発明」という。)が記載されているといえる。 (3)対比 本願補正発明と引用例に記載された発明を対比すると、引用例に記載された発明における「バッテリBが出力する電流」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「バッテリ車のモータ電流のデータ」に相当し、以下同様に、「車両の電気部位に接続されたバッテリBの電圧;バッテリBが出力する電流;フォークリフトの駆動源から駆動輪に駆動力を伝達する作動歯車機構の回転するリングギヤ15の歯数」は「バッテリ車の稼働状態データ」に、「検出し」は「連続的に収集し」に、「予め定めた時間(サンプリング時間)」は「所定時間」に、「電圧センサ13にて検出されたバッテリBの電圧値」は「稼働状態データ」に、「バッテリBの残存容量のデータ」は「バッテリ情報データ」に、「演算し」は「算出し」に、「その時々のバッテリBの残存容量のデータをICカード4に記録し」は「算出したバッテリ情報データを時系列的に記憶し」に、「ICカード4に記録されたその時々のバッテリBの残存容量のデータ」は「時系列的に記憶したバッテリ情報データ」に、「管理用コンピュータの画面17に二点鎖線として表示し」は「所定形式のグラフとして表示し、バッテリ情報を管理する」に、それぞれ相当する。 また、引用例に記載された発明における「バッテリBの残存容量のデータ」は、バッテリBの残存容量が少なくなると充電が必要とされることを示唆することに役立つのであるから、すなわち、バッテリBの過放電を防ぐことに役立つものであるので、「バッテリ寿命を管理するためのデータ」であるといえ、同じく、「バッテリ車の運行記録装置」は、バッテリ車のバッテリ情報を管理する方法でもあるから、「バッテリ車のバッテリ情報の管理方法」であるといえる。 してみると、本願補正発明と引用例に記載された発明は、 「バッテリ車のモータ電流のデータを含む稼働状態データを連続的に収集し、所定時間毎に稼働状態データに基づいて、バッテリ寿命を管理するためのバッテリ情報データを算出し、算出したバッテリ情報データを時系列的に記憶し、時系列的に記憶したバッテリ情報データを所定形式のグラフとして表示して、バッテリ情報を管理する バッテリ車のバッテリ情報の管理方法。」 の点で一致し、次の[相違点]でのみ相違している。 [相違点] 本願補正発明においては、「稼働状態データ」が「バッテリ車のモータ電流のデータおよび充電電流のデータを含む」と共に「バッテリ情報データ」が「バッテリ寿命を管理するための充電量のデータおよび放電量のデータを含む」のに対し、引用例に記載された発明においては、「稼働状態データ」が「バッテリ車のモータ電流のデータ」を含むものの、「充電電流のデータ」を含むものでなく、「バッテリ情報データ」が「バッテリ寿命を管理するためのバッテリBの残存容量のデータ」であって、「充電量のデータおよび放電量のデータ」ではない点。 (4)上記[相違点]に対する当審の判断 バッテリ車において、「モータ電流のデータおよび充電電流のデータを連続的に収集し、モータ電流のデータおよび充電電流のデータに基づいて充電量のデータおよび放電量のデータを算出し、さらに、充電量のデータ及び放電量のデータに基づいてバッテリの残存容量のデータを算出する」ことは、周知技術(例えば、周知例として、特開平5-276603号公報、特開平8-140271号公報、特開平11-49079号公報、特開平5-227603号公報及び特許第2761327号公報参照。)である。また、充電回数や過放電がバッテリの寿命に影響を与えることは、当該技術分野の技術常識であり、上記周知例にも、充電回数や過放電を考慮することについて記載されている。 そうすると、引用例に記載された発明において、バッテリの残存容量のデータを算出するに際し、上記周知技術を適用し、もって、上記[相違点]に係る本願補正発明のような構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用例に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5) 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 3.本願発明について 平成19年1月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年8月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「バッテリ車(1)のモータ電流のデータおよび充電電流のデータを含む稼働状態データを連続的に収集し、所定時間毎に稼働状態データに基づいて、バッテリ寿命を管理するための充電量のデータおよび放電量のデータを含むバッテリ情報データを算出し、この算出したバッテリ情報データを所定形式のグラフ又はデータリストとして表示し、又はプリントアウトして、バッテリ情報を管理する ことを特徴とするバッテリ車のバッテリ情報の管理方法。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記2.[理由](2)に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、上記2.[理由](1)で検討したように、本願補正発明から「バッテリ情報データ」の限定事項である「算出したバッテリ情報データを時系列的に記憶し、時系列的記憶した」との事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したもの相当する本願補正発明が、上記2.[理由](4)で検討したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-04-24 |
結審通知日 | 2009-04-28 |
審決日 | 2009-05-11 |
出願番号 | 特願2000-313005(P2000-313005) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B66F)
P 1 8・ 121- Z (B66F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 千葉 成就、見目 省二 |
特許庁審判長 |
深澤 幹朗 |
特許庁審判官 |
志水 裕司 中川 隆司 |
発明の名称 | バッテリ車のバッテリ情報の管理方法及び管理システム |
代理人 | 木村 高久 |