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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服200520859 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1200173 |
審判番号 | 不服2005-25280 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-28 |
確定日 | 2009-07-09 |
事件の表示 | 平成10年特許願第362486号「メイクアップ化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月 4日出願公開、特開2000-186015〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成10年12月21日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年10月31日受付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 次の成分(a)?(c)、 (a)疎水化処理された、酸化チタン、酸化亜鉛、雲母チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸化鉄、水酸化鉄、黄土、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、コバルトチタン、群青及び紺青から選ばれる1種又は2種以上の顔料 20?30重量% (b)球状粉体10?30重量% (c)直鎖状のシリコーン油10?25重量% を含有するメイクアップ化粧料。」 2.引用例 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前の刊行物である、特開平9-227338号公報(以下、「引用例」という。)には、次のような技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。 (i)「【0009】本発明において水膨潤性粘土鉱物とともに配合される疎水化処理粉末としては、タルク、カオリン、セリサイト、炭酸カルシウム、亜鉛華、二酸化チタン、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、チタンコーティッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、ベンガラ、焼結顔料、グンジョウピンク、水酸化クロム、雲母チタン、酸化クロム、酸化アルミニウムコバルト、紺青、カーボンブラック、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ベントナイト、マイカ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどを疎水化処理したものである。 【0010】疎水化処理の種類としては例えば、高粘度シリコーン油処理、アルキルハイドロジェンポリシロキサンを反応させたシリコーン樹脂処理、あるいはそれらをアルケン処理したもの、ワックス処理、デキストリン脂肪酸処理、フッ素処理などが例示され、いずれも公知の処理方法で得られるものである。」(2頁2欄6?21行参照) (ii)「【0011】本発明に係る固形粉末メーキャップ化粧料に配合される疎水化処理粉末の総量は本発明の効果からは特に制限はないが、メーキャップ化粧料としての剤形、使用性を鑑みると、2重量%以上80重量%以下である。」(2頁2欄22?26行参照) (iii)実施例1として、 「(1)球状シリコーン樹脂粉末 10 (2)球状ナイロン粉末 12 (3)シリコーン処理タルク 全体を100とする量 (4)シリコーン処理セリサイト 25 (5)シリコーン処理微粒子酸化チタン 10 (6)シリコーン処理酸化チタン 20 (7)シリコーン処理黄酸化鉄 2.2 (8)シリコーン処理赤酸化鉄 0.65 (9)シリコーン処理黒酸化鉄 0.15 (10)メチルフェニルポリシロキサン 5 (11)ジメチルポリシロキサン(6cs) 5 (12)ソルビタンセスキイソステアレート 1 (13)オクチルメトキシシンナメート 2 (14)エチルパラベン 0.3 (15)合成サポナイト(商品名:スメクトンSA) 2」 を処方したメーキャップ化粧料について、20?29歳の女性パネル20名に顔面に塗布させたのち、2時間室内で読書させ、その時点の化粧持ちを自己判定させた結果が「○」(化粧くずれしたを回答したパネルの人数が20名中1名)であり、2時間の読書中の化粧持ちが良好であったこと。(【表1】、2頁3欄42行?3頁4欄下から16行参照) 3.対比、判断 引用例には、前記「2.」の摘示事項(特に実施例1)の記載からみて、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、実施例1には配合量の単位が記載されていないが、引用例の全体の記載並びに技術常識からみて、「重量%」であるものと認められる。 「(1)球状シリコーン樹脂粉末 10重量% (2)球状ナイロン粉末 12重量% (3)シリコーン処理タルク 全体を100重量%とする量 (4)シリコーン処理セリサイト 25重量% (5)シリコーン処理微粒子酸化チタン 10重量% (6)シリコーン処理酸化チタン 20重量% (7)シリコーン処理黄酸化鉄 2.2重量% (8)シリコーン処理赤酸化鉄 0.65重量% (9)シリコーン処理黒酸化鉄 0.15重量% (10)メチルフェニルポリシロキサン 5重量% (11)ジメチルポリシロキサン(6cs) 5重量% (12)ソルビタンセスキイソステアレート 1重量% (13)オクチルメトキシシンナメート 2重量% (14)エチルパラベン 0.3重量% (15)合成サポナイト(商品名:スメクトンSA)2重量% を含有する固形粉末メーキャップ。」 そこで、本願発明と引用例発明とを対比する。 (イ)引用例発明の「(1)球状シリコーン樹脂粉末 10重量%」と「(2)球状ナイロン粉末 12重量%」は、いずれも本願発明の「球状粉体」に相当し、その合計22重量%は、本願発明の「球状粉体10?30重量%」の範囲内である。 (ロ)引用例発明の「(8)シリコーン処理赤酸化鉄」の「赤酸化鉄」は、「ベンガラ」のこと(例えば、「最新化粧品科学、-改訂増補II-」、平成4年7月10日、日本化粧品技術者協会編集、株式会社薬事日報社、第364?365頁の「C. 酸化物 i)酸化鉄、及び表-10「顔料用酸化鉄系化合物の結晶変態」参照)であるから、本願発明の「酸化鉄(ベンガラ)」に一致し、また、引用例発明の「シリコーン処理」は、疎水化処理に相当する(摘示事項(i)(ii)参照)。 そうすると、引用例発明の「(5)シリコーン処理微粒子酸化チタン 10重量%」と「(6)シリコーン処理酸化チタン 20重量%」、「(7)シリコーン処理黄酸化鉄 2.2重量%」、「(8)シリコーン処理赤酸化鉄 0.65重量%」、「(9)シリコーン処理黒酸化鉄 0.15重量%」は、いずれも、本願発明の「(a)疎水化処理された、酸化チタン、酸化亜鉛、雲母チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸化鉄、水酸化鉄、黄土、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、コバルトチタン、群青及び紺青から選ばれる1種又は2種以上の顔料」に対応し、疎水化処理された、「酸化チタン」、「黄酸化鉄」、「酸化鉄(ベンガラ)」、「黒酸化鉄」を選んだ顔料に一致する。しかし、引用例発明の成分(5)?(9)の合計33重量%は、本願発明の成分(a)の合計20?30重量%とわずかに一致しない。 (ハ)引用例発明の「(10)メチルフェニルポリシロキサン」は、「シロキサン結合を骨格としたフェニル基をもつ直鎖状の重合物」であるシリコーン油(例えば「化粧品原料辞典」平成3年11月29日発行、代表者 関根茂、編集者 蔵多淑子外4名、日光ケミカルズ株式会社外2社、第464頁の、「メチルフェニルポリシロキサン」の項参照)であるから、直鎖状のシリコーン油に該当し、「(11)ジメチルポリシロキサン」は、本願発明の実施例で用いられている直鎖状のシリコーン油である。そうすると、「(10)メチルフェニルポリシロキサン 5重量%」と「(11)ジメチルポリシロキサン(6cs) 5重量%」は、本願発明の「直鎖状のシリコーン油」に一致し、その合計10重量%は、本願発明の成分(c)の10?25重量%の範囲内である。 (ニ)引用例発明の「固形粉末メーキャップ化粧料」は、本願発明の「メイクアップ化粧料」に相当する。 (ホ)本願発明の成分(a)?(c)の成分割合の合計は、最大でも85重量%(各成分の最大配合量の30重量%、30重量%、25重量%の合計)であるから、本願発明のメイクアップ化粧料には、成分(a)?(c)以外の他の成分が配合されることは明らかであり、本願明細書段落【0013】に例示されたものが適宜含まれるものといえ、格別に特定されているわけではない。そうすると、引用例発明の「(3)シリコーン処理タルク」と、「(4)シリコーン処理セリサイト」、「(12)ソルビタンセスキイソステアレート」、「(13)オクチルメトキシシンナメート」、「(14)エチルパラベン」、「(15)合成サポナイト(商品名:スメクトンSA)」は、本願発明の特定されないその他の成分に対応するものであり、何ら相違するものとは言えない。なお、シリコーン処理されたタルクとセリサイトは、本願発明の実施例でも配合されているものである。また、引用例において、「(15)合成サポナイト(商品名:スメクトンSA)」の水膨潤性粘度鉱物を含有しない比較例1をみても、2時間読書後の化粧持ちの判定は、「○」(化粧くずれしたを回答したパネルの人数が20名中1名)であるから、水膨潤性粘度鉱物を含有しなくとも、多量の発汗を伴わない場合には化粧持ちに優れていることが示されている。 そうすると、本願発明と引用例発明は、 「(a)疎水化処理された、酸化チタン、酸化鉄(ベンガラ)、黄酸化鉄、黒酸化鉄を選んだ顔料 (b)球状粉体(球状シリコーン樹脂粉末と球状ナイロン粉末) 22重量% (c)直鎖状のシリコーン油 10重量% を含有するメイクアップ化粧料。」 で一致し、以下の相違点で相違する。 <相違点> 「(a)疎水化処理された、酸化チタン、酸化鉄(ベンガラ)、黄酸化鉄、黒酸化鉄を選んだ顔料」の配合割合(合計量)に関し、本願発明では20?30重量%であるのに対し、引用例発明では33重量%である点 そこで、この相違点について検討する。 引用例発明の「固型粉末メーキャップ化粧料」は、「20?29歳の女性パネル20名に顔面に塗布させ」(摘示事項(iii)参照)て評価しているから、顔面に塗布する化粧料であるファンデーション(例えば、「最新化粧品科学、-改訂増補II-」、平成4年7月10日、日本化粧品技術者協会編集、株式会社薬事日報社、第66頁の「はじめに」の、「(1)ファンデーション 肌色を整え、皮膚の欠陥をかくす目的で、仕上化粧のはじめに顔全体に塗布するもの」の記載参照)に該当するメーキャップ化粧料であり、更に、「メチルフェニルポリシロキサン、及びジメチルポリシロキサン」のシリコーン油を配合しているから、油性ファンデーションに相当する化粧料といえる。そして、「油性ファンデーション」の処方設計上の顔料の留意点としては、「使用する顔料の種類、組成、処方中の顔料の量は、製品に要求される色調や被覆力により決められる。製品の色調は、酸化チタンのような白色顔料、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄のような着色顔料を使って調整される。製品の被覆力は処方中の顔料使用量を増やすと大きくなる。」(例えば「最新化粧品科学、-改訂増補II-」、平成4年7月10日、日本化粧品技術者協会編集、株式会社薬事日報社の第70?72頁、特に「72頁の(ii)顔料」の項参照)ことが本願の出願前に周知の技術事項である。 そして、引用例には、「本発明に係る固形粉末メーキャップ化粧料に配合される疎水化処理粉末の総量は本発明の効果からは特に制限はないが、メーキャップ化粧料としての剤形、使用性を鑑みると、2重量%以上80重量%以下である。」(摘示事項(ii)参照;なお、疎水化処理した顔料は、疎水化処理粉末であることは明らかである。)と記載されているから、疎水化処理した顔料は、メーキャップ化粧料としての剤形、使用性を鑑みて、2重量%?80重量%の範囲内で適宜検討し、決めることが示唆されているといえる。 してみると、引用例発明において、顔料の配合量を、メイクアップ化粧料としての剤形、及び使用性を鑑みて、特に所望とする被覆力(即ち、隠蔽力)に応じて、引用例発明の配合量である33重量%を、少なくとも20?30重量%と重複する範囲内のものとすることは当業者であれば容易になし得ることである。 以上のとおり、上記相違点にかかる本願発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得る程度のものと認められ、その相違点によって格別予想外の作用効果を奏しているとも認められない。 なお、審判請求人は、審判請求理由(平成18年2月21日付け手続補正書の【本願発明が特許されるべき理由】を参照)において、油性固形ファンデーションについての追加実験の結果を示し、新たに実施例2?3、及び比較例6?7の処方例とその隠蔽力、化粧持ち、及び使用感の評価結果を記載し、実施例2として、(a)成分の疎水化処理された顔料が20.0重量%であるメイクアップ化粧料の場合、隠蔽力、化粧持ち、及び使用感がすべて「○」であり、実施例3として、(a)成分の疎水化処理された顔料が30.0重量%であるメイクアップ化粧料の場合、隠蔽力、化粧持ち、及び使用感がすべて「○」であるが、比較例6として、(a)成分の疎水化処理された顔料が19.0重量%であるメイクアップ化粧料の場合、隠蔽力が「△」であり、比較例7として、(a)成分の疎水化処理された顔料が31.0重量%であるメイクアップ化粧料の場合、化粧持ち、及び使用感が「△」であり(「○」は、「10人の専門パネリストが評価を行い、「良い」が8人以上」、「△」は、「10人の専門パネリストが評価を行い、「良い」が4?7人」)(【0017】【0018】)、顔料が本願発明の範囲外である19.0重量%、及び31.0重量%配合されている比較例6?7のメイクアップ化粧料は、実施例2?3のメイクアップ化粧料より評価の結果が劣るので、(a)成分を20?30重量%の含有量で用いることが非常に重要である旨を主張している。 しかし、本願明細書には、疎水化処理された着色顔料の配合割合に関しては、「成分(a)の本発明のメイクアップ化粧料への配合量は、メイクアップ化粧料全量中に20?30重量%(以下単に「%」という)であり、より好ましくは20?26%である。20%未満では隠蔽力が不十分であり、30%を超えると過度の隠蔽となり化粧料としては劣る。」(段落【0008】参照)と説明し、隠蔽力の程度に応じて20?30重量%を決めたことが明らかであり、他方、疎水化処理された着色顔料の配合割合の数値を、化粧持ちと使用感の観点から決めたとは記載されていないし、むしろ、使用感に関しては、シリコーン系油分の割合・比率に絡んで説明(段落【0003】,【0012】など参照)されているにすぎない。ただ、従来例の問題点として、「着色顔料はそのほとんどが粒子径の小さいものであるため配合量が多くなるとざらつきやのびが悪くなるといった使用感上の問題点や粉がよれたり、汗等で流れやすくなるなどの化粧くずれの問題がある。」(段落【0002】参照)との記載があるが、一般論として記載されているに過ぎず、「20?30重量%」に設定することを示唆するものではない。 そうすると、追加実験で記載されている、実施例2?3,及び比較例6?7については、その評価結果はもとより、かかる実施例2?3,及び比較例6?7の処方例の記載自体も当初明細書には何等記載されていないことをも勘案すると、前記請求人の主張は、当初明細書の記載に基づかないものであり、到底採用できないものである。 しかも、たとえ油性固形ファンデーションについての追試データを検討したとしても、本願発明で剤形として意図されている、ファンデーションに限らないアイシャドウやマスカラ、口紅、ネイルエナメルなどの剤形の場合を含む(本願明細書段落【0014】参照)全ての場合にまで同様な効果があるとは言えないから、その追加のデータをもって本願発明に包含される全ての場合にまで格別の作用効果があるということができないし、更に、ファンデーションにおいて、引用例発明でも、化粧持ちの観点から評価していること、及び、メイクアップ等の化粧料において使用感が重要な評価対象であることは知られており、隠蔽力の観点からと同時にそれら化粧持ち、使用感の点からも併せ検討し、配合割合を決定することは、当業者が容易に為しえることにすぎないと言うべきであって、油性固形ファンデーションについての追加実験のデータによっても格別顕著な作用効果があるとまでは言うことができない。 4.むすび したがって、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-05-01 |
結審通知日 | 2009-05-12 |
審決日 | 2009-05-25 |
出願番号 | 特願平10-362486 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 清野 千秋 |
特許庁審判長 |
川上 美秀 |
特許庁審判官 |
星野 紹英 弘實 謙二 |
発明の名称 | メイクアップ化粧料 |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 村田 正樹 |